【Aパート セルリアンとは何なのか】
黒いセルリアンに襲われているところを助けられ、セルリアンハンターのキンシコウと出会ったかばんちゃんたち。セルリアンを撃退したあと、ラッキービースト(ボス)が「様子を見に行く」としゃべりだしました。
サーバル:ボスが行くなら、私たちも行くよ。
キンシコウ:多分逃げたのは、あの一体だけですが・・・用事が済んだら隠れてくださいね。
(かばんちゃんとサーバル、キンシコウとともにラッキービーストについていく)
かばんちゃん:そういえば、セルリアンに食べられたらどうなるんですか?
キンシコウ:死んでしまうというと言いすぎかもしれませんが・・・。
サーバル:お話できなくなるし、私たちのことも忘れちゃうもんね。
かばんちゃん:えーっ!
サーバル:でも、なんでセルリアンってこっちに向かってくるんだろう?
キンシコウ:サンドスターを食べてるっていう話もありますね。
サーバル:えっ!
キンシコウ:何にせよ、山火事みたいなものですから、逃げることです。
周辺には、まだセルリアンの脅威が残っている?
キンシコウの「多分逃げたのはあの一体だけですが」というセリフからは、実に多くの情報が得られます。まずすぐにわかるのは、キンシコウがこの周辺にいたのは偶然ではないということです。
おそらく、キンシコウはこのあたりにセルリアンが出現したという情報を受け、周囲でセルリアンを退治していたのでしょう。そして、最後の1匹が先程撃退した黒いセルリアンであった、と考えると辻褄が合います。「(周辺に出現したセルリアンは皆倒したので、すでにあたりは安全になっているはずだが)用事が済んだら隠れるように」と注意しているのはそのためでしょう。
ただし、セルリアンをすでに退治したあとなら、用事を済ませた後で隠れる必要はないはずです。キンシコウがなぜそのようにいったのか、その理由はもう少し後のシーンで明らかになります。
普通の作品であれば、ここでキンシコウ自身の口から自分がなぜここにいて、周囲でどんな事件が発生しているのか説明するようなセリフが挿入されるはずです。たとえば、「このあたりにセルリアンが出現したので、今ハンターが退治している途中です。危ないのでできるだけ速く避難してください」というようなセリフが考えられるでしょう。
しかし、けものフレンズではそうした必要以上に説明くさいセリフなどは挿入されず、必要最低限の情報だけを与えてテンポよくストーリーが進行していきます。以上のようなことは今後の展開を見ていけばわかることなので、この時点では必ずしも説明する必要はありません。そうすることで無駄な演出を極力省いているのです。
セルリアンに食べられたらどうなるか、サーバルは知っていた?
キンシコウは2人を心配したのか、一緒についてきてくれることになりました。話題は自然と、セルリアンに関することになります。
かばんちゃんは、「セルリアンに食べられたらどうなるのか?」とキンシコウに説明します。それに対して、キンシコウとサーバルは次のように説明しました。
- 死んでしまうわけではない。
- 会話ができなくなり、記憶もなくなってしまう
これらの内容自体は、過去にミライさんのメッセージでも語られていたことなので、特に真新しい情報というわけではありません。
注目すべきは、サーバルもセルリアンに食べられたフレンズがどうなるか知っていたということでしょう。思い返してみれば、1話でゲートのセルリアンに戦いを挑んだとき、自分より遥かに大きなセルリアンであるにも関わらず積極的に攻撃を試みたのは、誰かの悲鳴が聞こえたため「ほかのフレンズが先に襲われていた可能性がある」と判断できる状況にあったからです。そう考えると、やはりサーバルはセルリアンに食べられたフレンズがどうなるか、最初から知っていたと考えていいでしょう。
サーバルが今になってそのことを語ったのには2つの理由が考えられます。もちろん、直接的な理由はかばんちゃんからの質問があったからでしょうが、ひとつ目の理由は「かばんちゃんを不安がらせないようにするために黙っていた」からでしょう。
特に1話においてゲートのセルリアンを撃退したとき、最初サーバルはうつむいて険しい表情を浮かべています。私はその理由は「襲われて悲鳴を上げたフレンズを助けることができなかったため」だと考えました。
しかし、その後サーバルはそのことを一切かばんちゃんに悟らせることなく、いつものような表情に戻って紙飛行機に関する質問をしています。かばんちゃんを不安にさせるおそれがあることは、その時点では伝える必要が無いと考えていたのでしょう。
セルリアンに食べられたフレンズがどうなるか、サーバルが今まで話さなかったふたつ目の理由として考えられるのは、物語の演出上このタイミングで明かすのが、最も効果的だと考えられるためです。
少し先の展開になりますが、もうすぐ実際に「フレンズがセルリアンに食べられる」シーンが劇中で初めて明確に描かれることになります。そのときの衝撃と、視聴者に対するインパクトを増すためにも、この時点でセルリアンに食べられたフレンズがどうなるかを伝える必要があった、ということです。
セルリアンは自然災害の象徴だった?
もうひとつ、今回の会話で気になるポイントは、キンシコウがセルリアンを「山火事のようなもの」と表現しているところです。この発言には2重の意味があります。
第一に、言葉通り「フレンズがセルリアンをどのようなものとして認識しているか」ということが、初めて明確に示されたのが重要です。これまで、セルリアンという脅威がジャパリパークに存在すること自体は示されてきました。しかし、フレンズたちがセルリアンをどのような存在と捉えているか、それが明確に言葉で示されたことはありません。
キンシコウの発言は、フレンズたちの基本的な認識を示すものと考えていいでしょう。つまり、フレンズにとってセルリアンとは「自然災害」そのものだということです。
第二に、このキンシコウのセリフには、視聴者に対して「セルリアンというキャラクターは、何の象徴であるか」という、作品を通じて描きたいテーマを明確にするための説明という意味合いがあります。
つまり、けものフレンズにおいてセルリアンは「自然災害」の象徴として描かれているということです。現実の自然災害とは異なり、自ら行動し能動的にフレンズを襲いますが、行動原理が明確には判明しておらず、どう対処するべきか完全な対策がないという点では地震や火事と変わりません。
「セルリアンに襲われたらどうなるか」、「セルリアンはフレンズから見てどういう存在か」、それが今回のシーンのポイントです。