前回記事:
【Bパート コツメカワウソ、ジャガーとの別れ】
サーバルはジャパリバスに轢かれたものの、幸い大したことはありませんでした。コツメカワウソ、ジャガーと別れ2人は新たなちほーにむけてジャパリバスから出発します。
ジャパリバスの速さに驚く2人の前に、先ほどまで登っていたこうざんが姿を表しました。山登りの大変さを語るサーバルと、話を聞くかばんちゃんを乗せたままジャパリバスは次のちほーへと進んでいきます。
意外とあっさり別れるコツメカワウソとジャガー
2話から登場したフレンズであるコツメカワウソとジャガーとは、ここでお別れとなります。彼らはサーバルのように自分の住むちほーから離れてついてきてくれることはありませんでした。
サーバルだけがかばんちゃんについてきている理由は、周囲から「ドジー」、「ゼンゼンヨワイー」と言われていた自分のことを初めて頼りにしてくれたのがかばんちゃんだったからです。それについては1話の考察の中で明らかにしてきました。
逆に、コツメカワウソやジャガーには自分の住むちほーから遠く離れてまで2人についていく理由がありません。橋づくりを手伝ったのは単にコツメカワウソは「道具を使って遊びたかったから」であり、ジャガーは「頼まれると断れない性格」だったからです。さーばるもかばんちゃんもバスが動いた以上じゃんぐるちほーに来たそもそもの目的は達成できたので、あえて2人についてきてくれるよう頼む理由もなかったでしょう。
「サーバルが轢かれるシーン」は最初から構想にあった
けものフレンズの3話は、少し変わった部分があります。それは「3話で出会ったトキ、アルパカ・スリと別れた後で、2話で出会ったコツメカワウソ、ジャガーと別れる」という構成になっている点です。
この点については、本作のたつき監督からも気になる発言が出てきています。2017年5月26日にニコニコ動画で行われた「けものフレンズ一挙放送」において、次のようなコメントがあったのです。
1話は世界観を形にするのがいいと思い、先行で半分ほど作ってみる、をやりました。
最初のコンテだとここ(1話)でサーバルがバスにはねられてました。
下記のリンク先からたつき監督のコメントを確認できます。
http://kemono-friendsch.com/archives/15540
これらの発言から、「1話は一度半分ほど作ってから作り直していること」、「サーバルがジャパリバスに轢かれる構想は最初からあったこと」などが確認できます。
異なる動物が仲良くなることの光と影
1話から3話までの主要なストーリーを箇条書きにすると以下のようになります。
- サーバルとかばんちゃんが出会う
- ラッキービーストと出会う
- かばんちゃんとフレンズが橋を完成させる
- トキ、アルパカ・スリと出会う
- トキ、アルパカ・スリとの別れ
- ジャパリバスの起動、サーバルが轢かれる
- コツメカワウソ、ジャガーとの別れ
- ジャパリバスに乗る
さらにそれぞれのシーンの因果関係を表すと次のようになります。
- サーバルとかばんちゃんが出会う→「親子」から「友達」になり、2人の旅がスタート
- ラッキービーストと出会う→「バスに乗る」という目的ができる
- かばんちゃんとフレンズが橋を完成させる→仲間と協力すればいい成果があげられる
- トキ、アルパカ・スリと出会う→異なる種類の動物(フレンズ)も仲間になれる
- トキ、アルパカ・スリとの別れ
- ジャパリバスの起動、サーバルが轢かれる→異なる種類の動物(ヒトと動物)が出会ったことで、良くないことが置きた
- コツメカワウソ、ジャガーとの別れ
- ジャパリバスに乗る→???
青字で書いた、それぞれのシーンの意味合いに注目してみてください。サーバルとかばんちゃんは1話で「友達」の関係になることができました。かばんちゃんの正体はまだ不明ですが、サーバルとは「異なる動物」であることは確かです。
2人はその後、「バスに乗る」という共通の目的のために協力します。ほかのフレンズの力も借りながら、バスにのるために必要な「橋をかける」という作業を完遂することができました。たとえ異なる種族であっても、協力すればいい結果が得られることが示されたのです。
しかも、異なる動物同士で仲良くなれるのはかばんちゃんとサーバルだけではありませんでした。トキとアルパカ・スリという新たな「成功例」ができたことで、「違う種類の動物同士でも仲良くなれる」ということが示されます。
ですが、物事にはメリットもあればデメリットもあります。サーバルはかばんちゃんと出会ったことで「ジャパリバスに轢かれる」という事故を経験してしまいました。幸いサーバルは頑丈だったので笑い事で済みましたが、視聴者の心には「異なる種類の動物同士が近づくと、悪い結果を生む場合もある」という事実が突きつけられることになるのです。
私は、以上のようなストーリーを視聴者に見せるために1~3話はこのような構成になったのだろうと思います。たつき監督の構想には、最初から「サーバルが轢かれるシーン」がありました。つまり、このシーンは単なるギャグシーンではなく「異なる動物との出会いが悲しい結果をもたらす可能性」を示唆する重要な意味合いを持っていたということです。
そして、このシーンを効果的に見せるためにはまず「異なる種族同士で協力したり、友達になるシーン」、「異なる種族の友達と協力して、良い結果がもたらされたシーン」を描く必要がありました。最初に幸せな光景を見せつけた後で、サーバルが「ドン」と轢かれた方が落差が生まれ、シーンにインパクトも出ます。
3話で出会ったフレンズと、2話で出会ったフレンズよりも先に別れているのは、そうした意図で2話、3話の話の流れを考えたからでしょう。
ラッキービースト≒ジャパリバスは「文明の象徴」
以上のような仮説をベースに考えると、ラッキービースト(ボス)というキャラクターに付与された役割がより鮮明になってきます。ラッキービーストというキャラクターは「ジャパリバスト一体不可分の存在である」という話を過去の考察の中でしてきました。
簡単に言うと、「ラッキービーストは2人をジャパリバスに乗せるために登場したキャラクターである」という説です。
今回の考察で新たに明らかになったのは、ジャパリバス=文明の象徴だということです。人間は文明を手にすることで自然界から離れ「人間界」を作ることに成功しましたが、その一方で動物など自然との距離は離れてしまいました。
フレンズは「動物がヒトの姿になった存在」です。しかし、ヒトは「動物から離れていったからこそ文明を持つことができた」と考えることもできます。フレンズとは「ヒト」と「動物」という矛盾する概念を同時に併せ持った極めて不安定な存在なのです。ラッキービーストというキャラクターは、フレンズたちにその現実を否応なしに見せつけるために作られた存在だといえるでしょう。
「文明の象徴」であるジャパリバスに揺られながら、かばんちゃんとサーバルは楽しそうに会話を弾ませていました。放映当時、2人の幸せそうな光景の裏に何とも言えない不安な気持ちを抱いた視聴者も多かったのではないかと思います。