けものフレンズ3話感想その2:トキの歌とかばんちゃん、サーバルのリアクション

諸注意

前回記事:【3話 その1】アニメ感想「けものフレンズの謎」:コツメカワウソとジャガーがこうざんへ行かなかった理由

【冒頭 トキとの出会い】

こうざんの頂上へ向かうため、ロープウェイ乗り場を訪れたかばんちゃんとサーバルですが、ロープウェイは見つからずラッキービーストはフリーズしてしまいます。サーバルはロープを綱渡りして山頂を目指すも失敗。崖を登ることも考えますが、かばんちゃんには無理そうなことから立ち往生してしまいます。そんなとき、2人の前に現れたのは・・・。

突如上空から新たなフレンズ「トキ」が現れ、ロープウェイの柱の上に降り立ちます。トキは歌を一曲歌い始めますが、この歌に関することから考察してみましょう。

トキの歌声を再現した金田朋子の演技と声

ニコニコ大百科の「トキ(けものフレンズ)」の記述によれば、トキが歌った歌の歌詞はCVを務める金田朋子さんのアドリブとのことです。ただし、「ときがすでに絶滅している」ということを訴えるため「仲間を探している」とのフレーズが入れられたという経緯があるそうです。

金田さんは子どもとも間違えられるほどの個性的な声を持っており「人間の可聴域を超えた20kHzの超音波を発生させることができる」とも言われています。後にラッキービーストによる説明がありますが、トキの鳴き声は人間からはうるさく聞こえたため、それを表現したものと考えられます。

ニコニコ大百科「金田朋子」

絶滅動物であるトキには瞳のハイライトがない

トキの瞳にはハイライトがありません。これはほかのフレンズには見られない特徴です。けものフレンズのアニメでは、「絶滅動物のフレンズは、瞳にハイライトを描かない」という演出がなされており、今後登場する別の絶滅動物のフレンズも同様にハイライトが描かれない形になります。

ただし、厳密に言えばトキは種として絶滅しているわけではありません。絶滅したのは日本国産のものであって、中国など外国にいる同種のトキは未だに生き残っています。現在、日本の佐渡トキ保護センターで飼育、繁殖が勧められているのも、中国から譲り受けたトキです。

歌の歌詞といい、瞳のハイライトを消す演出といい、「トキという動物が絶滅してしまっている」という悲哀を視聴者に伝えようとする強い演出上の意図が見て取れます。これも「動物が原作」と言われるけものフレンズならではの主張の仕方だといえるでしょう。

トキの歌に対する2人のリアクション

トキの歌声を聴いたかばんちゃんとサーバルのリアクションは対象的なものでした。トキが歌い始めた段階から笑顔を見せ、トキに拍手を送るかばんちゃんに対して、サーバルは頭をフラフラさせ、目も虚ろな様子を見せています。

先に述べたように、トキ(金田さん)の声には超音波が含まれていると考えられます。よって、「ヒトよりも耳が良い」とされるサーバルは、ヒトには聴こえない超音波も耳で拾ってしまい、その音量と音痴ぶりに参ってしまったのでしょう。一方、サーバルよりも耳が鈍いかばんちゃんはそれほど大きな影響を受けなかったと考えられます。現時点ではかばんちゃんの正体はまだ判明していませんが、このシーンもそれを示唆する場面(サーバルよりも耳が鈍いことが示された)です。

トキとかばんちゃん、サーバルの初会話シーン

トキ:こんにちは。初めまして、私はトキ。私の歌どうだった?

サーバル:ち、力強い、ね。

かばんちゃん:羽がふさふさしてて、とっても綺麗でした。

トキ:うふふ、ありがとう。やっぱり誰かに聴いてもらえるといいわね。

サーバル:なんだか2人、嬉しそうでよかった。

トキ:アンコール、ということかしら?

サーバル:えっ!

トキ:(再度、歌を歌う)

サーバル:あ、あとで・・・ゆっくり・・・ねっ?

トキの歌声は苦手だが、最大限の配慮を見せるサーバル

トキは挨拶もそこそこに、2人に歌の感想を求めます。「やっぱり誰かに聴いてもらえるといい」といっていることから、「多くの人に歌を聴いてもらいたくて、普段から出会う人全員にいきなり歌を聞かせている」と想像できます。

サーバルは明らかに動揺した様子を見せ、歌が苦痛だったことを伺わせますが、決して「音痴だった」、「下手だった」というようなマイナスの感想は伝えませんでした。このあたりも、サーバルのコミュニケーション能力の高さを伺わせる部分です。コミュニケーション能力が高い人は、相手を不快にさせるような表現はできるだけ避けるものだからです。

実は歌には全然興味がないかばんちゃん

一方、かばんちゃんの感想も奇妙です。歌の感想を尋ねられているにもかかわらず、「羽がふさふさしてキレイだった」という、ビジュアルに関する感想を述べているからです。過去の考察で、私はかばんちゃんのことを「外見的な特徴(他社との差異)に注目する」と考えましたが、このシーンもそれを裏付ける証拠となっています。端的に言えば、かばんちゃんは歌を聴いていたというよりは、「歌を歌うトキの姿を観察していた」といった方が適切な表現になるでしょう。

サーバルは、「なんだか2人、嬉しそうでよかった」と語りますが、これもまた「サーバルにはトキの歌は不快だった」という事実を示すセリフです。「2人(は、が)嬉しそうでよかった」ということは「(自分は嬉しくなかったけど)」というふうに解釈できるからです。ただ、やはりここでも決して自ら「マイナスの表現はしない」という行動原理が徹底されています。

トキは、かばんちゃんの「(羽が)キレイだった」という言葉を「歌声がキレイだった」と解釈したように見えます。サーバルの台詞もあって「アンコール」に応えようとしますが、サーバルは止めようとしながら後ずさりします。ここでもやはり「あとでゆっくり・・・」と伝えるのみで、「苦しいからやめろ」とはいいません。どこまでも相手のことを考え、相手を不快にさせる表現はしないサーバルのコミュニケーション能力の高さが際立つシーンです。

挨拶が済んだあとは、いよいよ本題であるこうざんの頂上へどうやって進むかの話になります。次回の考察ではこの続きから始めていきましょう。

今回ご紹介した「トキの歌」は、下記のアルバムに収録されます。