【Aパート アメリカビーバーとの出会い】
サーバルの不注意から、丸太の山を散乱させてしまったかばんちゃんたち。丸太を並べて使うつもりだった(と思われる)アメリカビーバーを前に、なんと声をかけたものか思案します。
アメリカビーバー:う、ああ、うう・・・。(湖の中に入ってうつむいている)
(かばんちゃん、サーバル、ラッキービーストの3人はビーバーの前に正座し、申し訳なさそうにしている)
サーバル:・・・ご、ご、ご、ごめんね・・・。
アメリカビーバー:あ・・・いいっすいいっす・・・。どのみちまだつくる前だったから・・・気にしなくて・・・いいっす。俺っちはアメリカビーバー、ビーバーでいいっす。よろしくっす。
サーバル:私はサーバルだよ。こっちはかばんちゃん。
かばんちゃん:よろしくお願いします。
アメリカビーバー:かばん?
かばんちゃん:何かつくろうとしてたんですか?
アメリカビーバー:そうっす。これをつくろうと思って。(ログハウスが描かれた画像を見せる)これ、何かわかるっすか?
サーバル:不思議な形だね。
かばんちゃん:木、ですか?
アメリカビーバー:俺っちはこれ、家だと思うんっすよ。最高・・・。
気まずい雰囲気の中で会話の口火を切ったサーバル
5話で新たに登場するフレンズ「アメリカビーバー」との出会いが描かれるシーンを考察します。冒頭のシーンでサーバルがジャパリバスをぶつけてしまった丸太は、このビーバーが用意していたものだったのです。
出会い方がまさかの「交通事故の被害者と加害者」という形だったため、始めは両者とも気まずそうにしていますが、会話の口火を切ったのはサーバルです。改めて注目される機会は少ないように思いますが、サーバルはコミュニケーション能力に極めて優れたキャラクターであり、最初に話を切り出したところからもそれは伺えます。
サーバルの謝罪を受けてビーバーも事故のことはあっさり水に流したらしく、すぐに自己紹介を始めます。かばんちゃんを紹介されたとき「かばん・・・」とつぶやいたのは、おそらく動物の名前にしては馴染みのないものだと感じたからでしょう。
ビーバーはログハウスの画像をどこから入手した?
かばんちゃんは早速、丸太をたくさん用意していたのは何のためかビーバーに尋ねます。ビーバーが直前に「まだつくる前だったから(丸太が流れてしまっても)構わない」と語っていることから、丸太は「何かをつくる材料として用意していたのだろう」と考えられます。
おそらくはかばんちゃんも同様に推理し「何をつくろうとしていたのか」とビーバーに尋ねました。それを受けてビーバーが3人に見せた画像が、この5話のテーマとなる題材につながっていきます。
ビーバーが見せた画像に写っていたのは「ログハウス」でした。アニメの絵なので劇中の描写からは「実際のログハウスを写したもの(写真)」か、「ログハウスの絵を描いたもの(イラスト)」かは判別できません。
もし、ビーバーが見せた画像が「写真」だったとすると、これはけものフレンズの「劇中で初めて写真が登場した瞬間」だったことになります。これまでもかばんちゃんが1話で見つけたパークの地図や4話で登場した「猫の絵が描かれた石版」のように絵=イラストは劇中にも登場してきました。しかし、写真だとするならこれが初登場の瞬間です。
ジャパリパークの中に写真があったとしてもおかしいことは何もありません。ただし、パーク内から人がいなくなっている現在の状況では入手する手段がかなり限られるであろうことは事実です。5話の現時点までの状況ではビーバーがどうやってこの画像を入手したのか明確なヒントはありませんが、その後のストーリーから得られる情報も合わせて考えると、おそらく図書館で入手したと考えて間違いないでしょう。
5話は「会話がメインになる」初の回
ログハウスについては次回の考察で詳しく触れるとして、ここで一度5話全体のストーリーについて簡単に触れておきたいと思います。
私は「けものフレンズのストーリーは素晴らしい」と考えていますが、そのひとつの理由が「余計なセリフや描写が少ない」からです。ストーリーを描く際、見る人に必要な情報を伝える最も簡単な方法が「キャラクターに伝えたいことを喋らせる」という方法です。
しかし、この方法を多用してしまうと「登場キャラクターが説明くさいセリフをずっとしゃべり続ける」、「解説係のキャラクターが必要になる」、「回想シーンが何度も挿入される」といった弊害が発生してしまいます。
ですから、私は「説明のためのセリフ」や「説明のための回想シーン」が少ない作品はそれだけ「見る人に伝えたいことをスマートに伝えているいい作品」だと考えています。そういった意味から言うとアニメ「けものフレンズ」はまさに説明のためのセリフや描写が最小限に抑えられた、スマートな作品であるといえるでしょう。
なぜこんな話をしたかというと、けものフレンズ5話は4話までとは異なり、かばんちゃん・サーバルとその他のフレンズとの会話がメインになる話だからです。つまり、これまでは会話ではなくキャラクターの行動や表情、演出などによって伝えたいことを表現していた作品で、初めて「会話がメインになる回」が登場することになります。
もちろん、会話がメインになったからと言って話の面白さが低下するわけではありません。むしろ、新たな切り口からストーリーを表現しようとする挑戦だと捉えることもできるでしょう。
しかし、会話がメインになることによって作品内で注目するべきポイントは変わってきます。これまではストーリーの中で順番に描かれるシーンの意味や、キャラクターの行動の意味などを中心に解釈してきましたが、5話に限ってはキャラクター同士の会話のセリフやその前後で見せる表情などに注目する必要がある、ということです。
このように、けものフレンズの5話では今までの話よりも「キャラのセリフや掛け合い」に注目していくとより面白く見ることができます。この点に注意した上で次回からは今回のメインテーマとなる「家づくり」を考察していきましょう。