【Bパート 火を恐れるけものたち】
料理で「煮る」を行うために、火の起こし方を探していたかばんちゃん。何か方法を見つけた様子でサーバルたちの元へ帰ってきました。
サーバル:そうだ、火って見つかった?
アフリカオオコノハズク(博士):そうです。そこで火です。
ワシミミズク(助手):手に入れてみるのです。
かばんちゃん:これで、やってみようかと。(ルーペと紙を見せる)・・・こうして地面において、日当たりのいい場所で・・・。(ルーペを紙にかざし、焦点を1点に合わせる)
サーバル:きらきらしてるね。
博士&助手:はぁー・・・(感心した様子を見せる)。
(ルーペの焦点があった部分から、黒い煙が上がり、火がつく)
サーバル&博士&助手:おおっ!!
かばんちゃん:これを木くずに移しながら、だんだん大きい木に・・・。これで「煮る」ができると思いま・・・あ、あれ?皆さん、なんで後ろの方に・・・。
博士:いや・・・。
助手:なんか・・・。
サーバル:なんか怖い・・・。
博士と助手は「火おこし」で挫折していた?
かばんちゃんが挑戦する料理の中でも最大の関門とも言えるのが、火を起こすことです。サーバルだけでなく、博士や助手もかばんちゃんがどのように火を起こすのか興味津々な様子。いったいかばんちゃんはどんな方法を選んだのでしょうか?
過去の考察の中でお伝えしたように、博士と助手は「料理が食べたい」と望んでいながらも何らかの理由によって自分たちでは料理を作れず、料理が作れる存在=かばんちゃんとの出会いを待ち望んでいた可能性が示唆されています。
このとき、「なぜ博士と助手は自力で料理ができなかったのか」という点について特に説明していませんでしたが、今回の描写を見るにおそらくは「火をおこす」という行程で行き詰まってしまっていたのではないでしょうか。
後ほど描写があるように、元が動物であるかばんちゃん以外のフレンズは、皆基本的に火を恐れている様子が確認できます。博士と助手といえどもそれは例外ではありません。火に対する恐怖は本能的なものだと思われるからです。
かばんちゃんに火を起こすことが可能なのか、博士と助手が熱意を持って確認していたのも「自分たちにも無理だった火おこしが、この子なら可能かもしれない」という期待に基づくものだったと考えれば納得がいきます。
太陽光とルーペを使う方法を選択
かばんちゃんが選んだ火おこしの方法は、ルーペを使って太陽光を集める方法でした。非常に基本的で簡単な方法なので、子どものころにやったことがある方も多いのではないでしょうか。
思えば、図書館のテーブルの上にルーペが置いてあったのもたまたまではなかったのかもしれません。先ほどの「博士と助手は過去に火おこしで失敗していた」という説に従うなら、当然彼女たちもルーペを使う方法は試していたはずです。
もしかしたら、火をおこすこと自体には成功していたのかもしれませんが、火を大きくして「煮る」段階までにはいたらなかったのかもしれません。かばんちゃんのための「ヒント」としてルーペを用意していたと考えると、ここまでの流れは博士たちの「計算通り」である可能性もあります。
目を輝かせて火おこしを説明するかばんちゃん
ちなみに、火おこしについて尋ねられたときのかばんちゃんは、どこか自信に満ち溢れた清々しい表情を見せています。これは5話においてアメリカビーバーやオグロプレーリードッグから「(かばんちゃんの正体は)いい動物に違いない」と言われたときにも匹敵するような、強い自信が感じられます。
「知識を得て新しいことができるようになった」という自身の成長を楽しんでいるともいえますし、サーバルのように頼りにされていることを喜んでいるともいえるでしょう。どちらにしろ、この瞬間のかばんちゃんからは、普段からは見られなかった、強い自信が現れているのは事実です。
紙を地面に置き、ルーペをかざして太陽光を1点に集め、かばんちゃんは見事火おこしに成功しました。よく見ると、火がつく以前に小さな木片を用意しているのが確認できるので、最初から小さな火を徐々に大きくしていくという展開を見据えて行動していることがわかります。
野生動物にとって火は恐怖の対象
かばんちゃんは起こした火をそばのかまどに移しましたが、ここでひとつ特徴的な描写がありました。大きな木の枝に燃え移り「煮る」ができるほど大きくなった火を見て、サーバルや博士、助手たちが恐怖を感じてしまったのです。平気そうにしているかばんちゃんに対して、彼らは火から大きく距離をとり、緊張した表情を見せています。
火は、多くの動物にとって恐怖の対象です。彼らが火に接するのは、山火事などの場合。従って、命に関わる危険なものという認識が本能レベルで備わっていても不思議はありません。
猫のように、飼育下にあって人間が火を使う様子に慣れている動物は火を恐れないとも言われていますが、ジャパリパークのフレンズたちは皆、元は野生動物です。「火を恐れるのが当たり前」という環境で過ごしてきた彼らにとって、火を何事もなさそうに扱うかばんちゃんは尊敬と畏怖の対象になったかもしれません。
「人間社会」と「自然」との調和
余談ですが、ここで人間と火の関係について少し学んでおきましょう。Wikipediaの「火」の項目には以下のような記載があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB#.E6.96.87.E5.8C.96.E3.83.BB.E6.96.87.E6.98.8E.E3.81.A8.E7.81.AB
人類がいつごろから火を使い始めたのか、はっきりした事は解っていない。人類が突如、火起こしをはじめたとは考えにくいため、初期の火は落雷や山火事によって燃えている木の枝などを住居あるいは洞窟に持ち帰り、火種として保存していたと考える人も多い。
現在では明かりの主力は電気であるが、蝋燭は宗教行事では多用するし、薪能のように松明の明かりの雰囲気を楽しむ例もある。
このように、人間が用いる火の用途は「光源、暖房、調理」の3つがあります。今回はそのうちのひとつである「調理」に使用する描写が描かれたわけです。ほかにも、「工業製品の加工」、「武器としての利用」など、活用方法はたくさんあります。火は我々の生活とは切っても切れない重要な役割を担っていると言えるでしょう。
しかし、それはあくまでも人間社会での話。フレンズたちが暮らすジャパリパークでは7話まで火は登場しませんでしたが、それでもフレンズたちは特に問題なく暮らしていました。ですが、ジャパリバスや各種アトラクションを始め、ジャパリパーク内には明らかな人工物やヒトのためにつくられた遺物がたくさんあります。
こういった「人間社会由来のもの」と「自然由来のもの」がどのように調和していくのかが、今後のストーリーの中におけるひとつのテーマになっていくことでしょう。