【Aパート アミメキリンの迷推理】
タイリクオオカミとの会合の後、サーバルとかばんちゃんは別の部屋に向けてロッジの中の探検を続けていました。
サーバル:ひどいや!本気でびっくりちゃったじゃない!
かばんちゃん:うう、僕もまだあの話、まだ怖いんだけど・・・。
(サーバル、階段の上の広場でアミメキリンと出会う)
サーバル:あっ。
アミメキリン:あら?あなたたち・・・。
サーバル:初めまして、私は・・・。
アミメキリン:待って!私が推理してあげる!うーん、その出で立ち・・・そしてこうして木の高いところに来る習性・・・。時間・・・。これらの証拠からあなたが何の動物か、私にはお見通しよ!
あなたは・・・ヤギね!
サーバル:ぜんぜん違うよ!
アミメキリン:うぐっ!おかしいわね・・・名探偵であるこのアミメキリンが間違えるはずがないわ。
あなた、何か嘘ついてるわね!
サーバル:えーっ!無茶苦茶だよ!私はサーバルだよ!ホントだよ!
アミメキリン:その必死さがますます怪しいわ!はきなさい!
「作家」を自ら名乗るタイリクオオカミ
今回取り上げたシーンの考察に移る前に、前回のタイリクオオカミとの会話を少し振り返っておきましょう。タイリクオオカミはかばんちゃんたちと出会うなり、自分のことを「作家のタイリクオオカミ」と名乗りました。フレンズがこのように自身の立場、職業を名乗るのは珍しい事例です。
他に同様の名乗り方をした事例としてはアフリカオオコノハズク(博士)と、ワシミミズク(助手)が挙げられます。彼女たちはジャパリパークの中でも特別な地位を持っており、そのことを示すために博士、助手といった肩書を名乗っていたと思われます。
しかし、タイリクオオカミの場合は作家という、より個人的な立場・職業を名乗っています。さらにより正確に言えば、作家というよりもむしろ「漫画家」であったことが判明しました。
放映当時、タイリクオオカミが漫画家を名乗っていたことから「タイリクオオカミも文字が読めるのではないか」という考察がなされたこともあります。この点は、後に劇中で明らかになるように、「文字のないイラストだけの漫画」を描いていたのだということが判明しました。いわば紙芝居と同じような形式で、物語の進行に合わせて次のイラストを見せ、話を読み上げるという形式のものを「漫画」と呼んでいただけのようです。
「物語を生み出す」タイリクオオカミの特徴
もうひとつ、タイリクオオカミが話した怖い話「紫色のセルリアン」についても振り返っておきましょう。このセルリアンは現実に存在するものと違い「夢の中に出現し、食べられると夢から帰ってこられなくなる」という特徴を持っています。
この話自体は、タイリクオオカミがかばんちゃんたちを怖がらせるために考えた作り話であることが判明しますが、このような高度な作り話を考える能力をタイリクオオカミが持っていることは驚愕に値します。さすがに作家を名乗るだけのことはあり、ストーリーを創作する能力はフレンズとは思えません。
けものフレンズのアニメ中においては、「ヒトとフレンズとの違い」が繰り返し対比されてきました。たとえば、前回9話においてクローズアップされたのは、「道具を作り使えるか」、「羞恥心があるかどうか」といった点でした。
そういった意味からすると、今回は「物語(ストーリー)を作る」という能力が、ヒト特有の能力としてクローズアップされているといえるでしょう。
ヒトには、周囲で起きた出来事や自分自身の体験などを物語化する能力があるとされています。特に、「自分自身を物語化する」という能力はヒトにしかないとも言われています。しかし、ヒトと物語化というテーマは非常に難しく、研究者によって細かく意見が分かれているため、けものフレンズの考察では深入りして説明するのは避けたいと思います。
現時点においては、「物語を創り出すという、本来はヒトにしか備わっていないはずの能力を持つフレンズが登場した」というポイントを抑えておけば十分でしょう。
新しいフレンズの元動物「アミメキリン」の特徴
前回の振り返りが長くなってしまいましたが、今回取り上げたシーンの考察に移りたいと思います。タイリクオオカミと別れたかばんちゃんとサーバルは、螺旋階段を登り木の上に移動しています。タイリクオオカミの嘘に対して、珍しく感情的になっているサーバルが印象的です。
階段を登りきったところには、新しいフレンズである「アミメキリン」がいました。元動物の特徴を確認しておきましょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%83%B3
アミメキリンは、キリンの中でも代表的な種類であり日本の動物園でも多く飼育されています。しかし、今回に関してはあまり動物としての特徴は重要ではありません。というよりも、今回アミメキリンが登場するフレンズに選ばれた理由はかなり希薄だと言わざるをえないでしょう。つまり、アミメキリンが果たすポジションはほかのフレンズであっても代替可能であったということです。
物語も終盤に差し掛かり、それだけフレンズの動物的な特徴よりも、「ヒトと対比する相手として」の役割が重要になってきているということでしょう。
「推理」するフレンズ、アミメキリン
というわけで、ここからはアミメキリンのフレンズとしての特徴を見ていくことにします。アミメキリンは、挨拶しようとしたサーバルの発言を遮り、サーバルの正体を「推理」しようとしました。
この「推理」という行動も、「物語化」の一種です。オオカミが行っている「漫画を描く」、「嘘をつく」といった行動が「空想のストーリーを創り出す行為」だといえるのであれば、アミメキリンもまたそれを別の方法によって行おうとしているフレンズだといえるでしょう。
ただし、オオカミの嘘が非常にうまく、かばんちゃんやサーバルを震え上がらせたのに対して、アミメキリンの推理はまだまだ十分な腕前とは言えません。アミメキリンは、以下の証拠からサーバルを「ヤギ」だと推理しました。
- サーバルの出で立ち(外見)
- 高いところに来る習性
- 現在の時間
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%82%AE
アミメキリンがピックアップした証拠そのものは、悪いチョイスとはいえません。しかし、それぞれに対する認識が根本的に間違っていたのです。フレンズは基本的に元動物の姿に似たヒトのような姿をしているため、ネコ科のサーバルをウシ科のヤギと見間違えたのは判断ミスと言わざるを得ません。
「高いところに来る習性」に関しては、ヤギは木や崖など高いところも平気で登るため、必ずしも間違いとはいえませんが、それだけでは証拠として不十分です。さらに「時間」に関しては、サーバルとアミメキリンが出会ったのはすでに日が落ちて夜になったあとのことなので、実際のヤギが昼行性なことを考えると、完全に間違った判断だと言っていいでしょう。
このように、「物語を考える」という能力を持ったオオカミ、アミメキリンという2人のフレンズが登場したことが、10話の大きな特徴です。