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【Bパート ツチノコを加え、3人で遺跡の出口を探す】
遺跡に閉じ込められ、出口を探そうとするかばんちゃんとサーバルは遺跡について詳しそうなツチノコに同行させてくれるよう頼みました。最初は渋っていたツチノコでしたが、紆余曲折の結果3人で行動することになります。
かばんちゃん:ここは・・・?
ツチノコ:昔作られた・・・遺跡だ。
かばんちゃん:いせき・・・。
サーバル:ずんずん行くけど、出口わかるの?
ツチノコ:臭いがするからな。外の空気の。
かばんちゃん:すごーい!
サーバル:すごーい!
ツチノコ:お前の鼻は飾りか!
サーバル:だって、どれが外の臭いかわかんないよ~。
フレンズ「ツチノコ」の特徴と役割
4話のBパートは登場するフレンズであるツチノコ、舞台となる遺跡ともに謎が多いままストーリーが展開してきます。そのため、新しい情報が出てくるたびに立ち止まって考察していかなければいけません。今回のシーンを見ていく前におさらいとして、ここまででツチノコについてわかっていることをまとめておきましょう。
フレンズとしてのツチノコの特徴は次のとおりです。
- 人前に出るのが苦手
- 人とコミュニケーションをとることが苦手
- 遺跡に度々足を運んでいる
- 下駄が体の一部ではないことを知っている
これらの情報から、ツチノコはおそらくジャパリパークやフレンズのことについて、かばんちゃんやサーバルはもちろん、今までに登場したあらゆるフレンズよりも段違いに詳しいキャラクターであると想像できます。それが間違いではないことは、この後のシーンに出てくるセリフなどからも明らかだといえるでしょう。
ツチノコが登場したのは「伏線をばら撒くため」?
さらに、「作者がここでツチノコを登場させた理由は何か」といった、メタ的な視点からも考察してみることにします。ここで重要になるのは、「人前に出るのが苦手」、「コミュニケーションが苦手」というツチノコの特徴です。
「他人と話すのは苦手だが、重要な情報を知っている」というキャラクターが登場するタイミングは、ストーリーの中で「将来の展開への伏線」のいくつかが明らかになるときであるパターンが多いといえます。ツチノコもおそらくはそういった意図を持って登場したキャラクターであると考えていいでしょう。
ツチノコ=オタク、歴女説
続けて、このシーンの演出と会話の内容を考察します。「ここは(どこ)?」というかばんちゃんの問いかけに対して、ツチノコは「遺跡だ」と答えました。これは「ツチノコがここがどんな場所か知っていて、繰り返し何度も足を運んでいる」という考えの根拠にもなるセリフです。
このとき、ツチノコは少し間を置きながら、かつ嫌そうな素振りも見せず、どちらかというとやや嬉しそうにしてかばんちゃんの問いかけに答えています。ツチノコは人間でいえば「内向的な性格」だといえるキャラクターです。また、何度も遺跡を訪れていることから、遺跡に強い興味があることも間違いないでしょう。
これらのことから、このシーンを「内気なオタク趣味の女の子が、自分の好きな分野に関する話を振られたシーン」だと解釈するとツチノコのリアクションがしっくりきます。かばんちゃんが遺跡に興味を持ってくれたことが嬉しく、自分の趣味に関する知識で応えられる質問をしてくれたことも嬉しかったのでしょう。
ネット上のファンの中には、ツチノコを「歴女」と表現する人もいます。私自身、初見時はまったく意識していなかったのですが、この例えを聞いたときに「たしかにそう考えるとしっくりくるな」と思ったことを覚えています。ツチノコの「歴女っぽさ」、「オタクっぽいところ」は今後のストーリーの中でも何度も出てきます。
得意分野で饒舌になるオタク特有のリアクション
ツチノコの回答を聞いたかばんちゃんは、「遺跡」という固有名詞がどのような意味を持つのか自分自身で捉えなおそうとしているように見えます。一方のサーバルはあまり良く意味を理解できなかったようで、「ずんずん進んでいくが、出口の方向がわかるのか?」と別のことを質問しました。
「外の空気の臭いがするから出口の方角もわかる」と答えるツチノコはどこか得意げに見えます。これもやはりツチノコを「オタク・歴女」と捉えれば「自分の得意分野について質問してくれたから、知識を披露できるチャンスが得られたことに喜んでいる」と解釈できます。
「嗅覚に優れている」というツチノコの新たな特徴が明らかになったわけですが、素直に「すごーい!」と感想を示すかばんちゃんとサーバルの2人に、ツチノコは対象的な反応を見せました。どちらも同じようにリアクションしているのに、なぜかサーバルに対してだけ「お前の鼻は飾りか!(お前も外の臭いを嗅いで出口の方向を考えろ)」とツッコミを入れているのです。
かばんちゃんに優しく、サーバルに厳しい理由
この時点でツチノコとかばんちゃん・サーバルはまだ出会ったばかりです。従ってツチノコが「サーバルは嗅覚が優れていそうだが、かばんちゃんはそうでもなさそうだ」といったように2人の得意なことを推理してツッコミを入れたとは考えられません。
ではなぜサーバルだけがツッコミを食らったかといえば、おそらくここまでの言動によって2人の信用度・好感度に差があったからでしょう。
かばんちゃんは遺跡に興味を持ったり、遺跡に詳しそうなツチノコに同行を依頼するなど、「頭が良さそうな行動」を取っていました。一方、サーバルは扉に挟んだ下駄を蹴飛ばす、遺跡をツメで破壊するなど不用意な行動が多く、そのためにツチノコに「こいつは頼りにならなさそうだ(頭が悪そうだ)」という印象を持たれてしまった可能性があります。そうした2人への印象の違いが「サーバルにだけツッコミを入れる」というリアクションの違いに結びついたのではないでしょうか。
ツチノコの優れた能力や知識は、今回ご紹介したものにとどまりません。次回以降の解説ではさらにツチノコや遺跡の謎に触れていきたいと思います。