【Bパート オグロプレーリードッグへのアドバイス】
心配症な性格が災いして家造りが進まないアメリカビーバーの元を離れ、サーバルとかばんちゃんはオグロプレーリードッグの様子を見に行きます。
サーバル:プレーリーの方、どうだろうね。
かばんちゃん:もう作っちゃってそうだね。
サーバル:あれ?どこだろうプレーリー?プレ・・・うわーっ!(上半身が穴に埋まっているプレーリーを発見する)
かばんちゃん:プレーリーさん!
サーバル&かばんちゃん:よいしょ、よいしょ!(プレーリーの腰を掴んで穴から引っ張り出す)
プレーリー:んんんんん・・・!
プレーリー:ありがとう・・・、気づいたらまた生き埋めに・・・。
かばんちゃん:大丈夫ですか?
サーバル:私たちがこなかったらどうしてたの?
プレーリー:でも、ここの土は把握したでありますよ!行くでありますーっ!ホリホリホリホリホリホリホリホリ・・・、アーッ!岩がー!岩がー!あはぁぁぁぁぁ!!
かばんちゃん&サーバル:うわぁぁぁぁ!!
サーバル:大丈夫?
プレーリー:かたじけないであります・・・。
かばんちゃん:もうちょっとゆっくり掘ったほうが・・・。
プレーリー:わかったであります!
2度、穴掘りに失敗したプレーリー
プレーリーは最初針葉樹林のそばで出会ったときのように、頭を自分で掘った穴に突っ込んだ状態で動けなくなっていました。木を切る前の話から前回失敗したのと同様に「穴を掘っている途中で崩れてしまった」ことが原因でしょう。
しかし、失敗してもめげないのがプレーリーのいいところです。すぐさま穴掘りを再開しますが、今度は岩が障害となって(おそらく穴掘りの途中で硬い岩にぶつかったか、穴の一部が崩れて岩が落ちてきた)、再び穴掘りに失敗してしまいました。
「土を把握していなかった」のが失敗の原因か?
最初の穴掘りに失敗したとき、プレーリーは「ここの土は把握した」という気になるセリフを口にします。普通に解釈すれば「穴を掘る前は土の質がわからなかったため失敗したが、もう理解したので2度めは失敗しない」という意味になるでしょう。実際、2度めに穴を掘り進めたときは途中で生き埋めになることもなく(岩にぶつかるまでとは言え)ある程度穴掘りに成功しています。
しかし、一度穴を掘れば土の質を理解できるのなら、針葉樹林であれほど何度も穴掘りに失敗していた理由が説明できません。つまり、プレーリーの家づくりがうまくいかないのは、プレーリーが理解しているのとは違う部分に原因があるということです。
2度めの失敗は焦り過ぎが原因
プレーリーが「土を把握した(から、次の穴掘りはうまくいく)」と言っているのは、家づくりの失敗を「土のせい(土の質を理解できていないから穴掘りに失敗してしまう)」と考えているからでしょう。
たしかに、土を把握できれば穴掘りが楽になるのは間違いありません。ですが、その後も穴掘りに失敗したのはサーバルやかばんちゃんが指摘したように、プレーリーがあまりにも穴掘りを急いでやってしまっているためです。「もうちょっとゆっくり掘ったほうがいい」というかばんちゃんのアドバイスは適切なものだったといえるでしょう。
「悩みの本質」に刺さるアドバイスをしたサーバル
ここで前回取り上げたビーバーへのアドバイスを思い返してみましょう。ビーバーは家づくりについてあまりにも色々なことを考慮しすぎてしまうために、最適な家の形がイメージできず木材を加工できずにいました。サーバルはこの様子を見て「考えすぎてしまうこと」が問題の本質だと見破り「ほどほどにね」というアドバイスを送っています。
このときの肝は「サーバルはビーバーが何に悩んでいるのかはわからないが、『悩みすぎているから作業が進まない』という問題の本質を見抜いている」という点です。
「対症療法」にとどまったかばんちゃん
では、かばんちゃんがプレーリーに対して行ったアドバイスの内容はどうでしょうか?かばんちゃんはプレーリーの元を訪れたとき、自分で掘った穴に埋まっているプレーリーを発見して救出しました。言い換えると、プレーリーが失敗する瞬間は見ていないので、「プレーリーが失敗した理由」はわからないことになります。
その後、プレーリーは失敗の理由を「土を把握できていなかった」と解釈して自ら穴掘りを再開します。正解かどうかはともかく、自ら原因を突き止めて改善しているわけなのでかばんちゃんたちのサポートは必要ないことになります。
そしてプレーリーは「岩にぶつかる」という2度めの失敗を犯しました。岩にぶつかるまでの間、穴掘りに問題はなかったのですから、プレーリーがすべきことは「岩にぶつからないよう注意して掘る」ことだけです。かばんちゃんが指摘したのもまさにこの点でした。
「かばんちゃんのプレーリーへのアドバイス」は、いわば対症療法のようなものです。「岩にぶつからないための方法」ではありますが、実行したところで実現するのは「安全に穴が掘れるようになる」というだけです。それだけでも重要な進歩ではありますが、「穴さえ掘れれば家造りがうまくいくのか?」という点についてはまったく未知数だと言っていいでしょう。
相手の理解度に合わせてアドバイスの仕方を変えている
ですが、これをもって「サーバルのアドバイスのほうがかばんちゃんのアドバイスより優れている」と断言することはできません。ビーバーは「家づくりの手順が全て見えている」状態にあり、木材の加工さえスタートできれば家づくりがうまくいくのはほぼ確実でした。
一方、プレーリーは穴を掘って生き埋めになり、再び掘っては岩にぶつかるというふうに常に行き当たりばったりで計画性がありません。感性までの道筋が見えていないという点でビーバーとは雲泥の差があるのです。
つまり、かばんちゃんは「プレーリーの理解度に合わせたアドバイスをした」と表現するほうが適切でしょう。「穴掘りができるようになっても、すぐ家が完成することはないだろうが少なくとも一歩前進だ」といえるはずだからです。
かばんちゃんのアドバイスをもって、かばんちゃんとサーバルは再びビーバーのもとへ向かいます。今のプレーリーに必要なのは「試行錯誤を繰り返して家づくりへの道を見つけること」であって、誰かのアドバイスではありません。「手助けが必要なのはむしろビーバーの方だ」と判断したのでしょう