前回記事:【2話 その3】アニメ感想「けものフレンズの謎」:「ジャパリバス」に仕込まれた伏線
【Aパート サーバルの問いかけに返事をしないラッキービースト】
前回は、ラッキービースト(ボス)がサーバルと会話しない理由から、ラッキービーストの役割を考察してみました。今回は、サーバルに注目して同じシーンを振り返ってみましょう。
ラッキービーストは、正確にはサーバルを無視しているわけではありません。サーバルの動きに反応して視線を向けるなど、サーバルの存在自体は認識しています。ただ、会話をしないというだけです。
一方、サーバルの方もラッキービーストがフレンズではない、別の存在だということは認識しているようです。そもそも見てくれがフレンズとは全く違いますし、後に判明するように「パーク上に複数存在する」、「パークの施設を整備する」、「フレンズに食料を配給する」といった活動を行っているなど、「フレンズではないが、比較的身近な存在」として理解しているはずだからです。そのためか、ラッキービーストが会話してくれなくても、そこまでサーバルは気にする様子も見せません。
【Aパート 翌朝の目覚めと出発】
朝日とともに目を覚ましたかばんちゃんの前に、草むらの中からサーバルが飛び出してきます。かばんの中に入っていたラッキービーストも登場し、いよいよ3人での旅がスタートします。
生まれたばかりのかばんちゃんにとって、今回は「初めての睡眠」となりました。そのためか、起床した直後に「ここどこ?」と記憶が曖昧な素振りを見せています。かばんちゃんが目覚めるとほぼ同時に草むらからサーバルが飛び出してきたことから、サーバルは先に目が覚めていたであろうことがわかります。おそらく、かばんちゃんが眠ったあと、自分は近くの木の上に移動して眠り、目が覚めたあとはかばんちゃんを起こさないよう、周囲にいたものと考えられます。
ラッキービーストは、なぜかかばんちゃんの「かばん」の中に入っていました。おそらく、サーバルが入れたか自分で入ったか、どちらかだと思いますが判然としません。ラッキービーストがかばんの中に入る光景は、このあとも度々出てきます。
また、この後3人での会話シーンとの間に一瞬、2話の鳥が飛び立つシーンが挿入されます。これはジャパリパークに「フレンズ化していない普通の動物もいる」ということを示唆する重要なシーンです。
ラッキービーストは、なぜかばんちゃんに正体を教えなかったのか?
ラッキービースト:じゃあ、確認するよ。目的地はジャパリ図書館だね。
かばんちゃん:はい。ぼくが何の動物か調べたいんです。
サーバル:私は付き添い!
ラッキービースト:わかった。じゃあ図書館までのルートを検索するね。
ラッキービーストのセリフから、図書館の正式名称が「ジャパリ図書館」であるとわかります。また、かばんちゃんが図書館に行く目的を「自分が何の動物か調べたいから」と説明していますが、ラッキービーストは特に反応を示していません。のちに判明することですが、ラッキービーストはこの時点で、かばんちゃんが何の動物であるかを明らかに知っています。そのため、本来であれば図書館に行く前にかばんちゃんに対して何の動物か教えてあげることもできたはずですが、そうしていません。なぜそうしなかったのか、その理由は次のような可能性が考えられます。
- 直接尋ねられなかったから答えなかった
- かばんちゃんがヒトだとわかっていなかった
- ヒトである可能性は理解していたが、確証はなかった
まず、「直接尋ねられなかったから答えなかった」という可能性ですが、これはおそらくそれほど高くはないと思います。これ以降のラッキービーストの言動を見る限り、ラッキービーストは必ずしも単純、機械的な反応だけでなく、ある程度抽象度の高い思考を伴う行動を取ることも可能です。ですから、「自分がかばんに、何の動物か教えてあげることもできる」と考える可能性は十分にあったはずです。となれば、「ほかに何らかの理由があって言わなかった」と考えるのが自然でしょう。
ラッキービーストは、思考力は高いが推論は苦手?
次に「かばんちゃんがヒトだとわかっていなかった」という可能性です。つまり、ラッキービーストに「自分はヒトに反応するよう作られている→自分はかばんに反応している→従って、かばん=ヒトである」という推論ができないのではないか、という可能性です。
私は、この可能性が非常に高いと思っています。今後、ラッキービーストは様々な場面で「フリーズ」を起こしますが、その理由がほぼこうした「難しい推論を伴う思考ができない」という理由に起因していると考えられるからです。たとえば、「本来橋があるべき場所に橋がない」という状況でフリーズを起こした理由は「あるべき橋がない→設備の整備が万全でなく、橋が流されたから」という「難しい推論」ができなかったからだと考えられます。このように考えると、ラッキービーストは思考力そのものは高いものの「推論」を苦手にしているという特徴があるキャラクターだといえるでしょう。
ラッキービーストの「人間性」を考察してみる
最後の「ヒトである可能性は理解していたが、確証はなかった」という理由はどうでしょうか?ラッキービーストが「自分はヒトに反応するよう作られている。従って、自分が会話できるこのかばんという存在は、おそらくヒトだろう。しかし、それを確認する有効な手段がない」と考え、その結果かばんちゃんに何も伝えなかった、という考え方です。
最後の理由からは「ラッキービーストは基本的に、確証のない情報は自ら伝えようとはしない」という解釈ができます。ここまでの考察から、ラッキービーストは、
- 思考力は高い(人間レベル)
- 推論は苦手
- 確証のない情報を自ら伝えようとはしない
といった「人間性」を持っていると考えられます。(とはいえ、まだ証拠が少ないので確証は持てませんが)
もうひとつ忘れてはいけないのは、このラッキービーストは「一部の機能が故障している」という点です。今後、それを示す証拠はいろいろと出てきますし、現時点でも「帽子の羽に反応して録音音声を流す」といった誤作動を思わせる反応を見せています。なので、故障の影響があった可能性もないとはいえません。
このシーンの考察から、ラッキービーストの「人間性」がある程度明らかになりました。キャラクターの人間性・性格がわかると、それ以降の考察の確度が高くなります。現時点ではまだわかっていないことのほうが多いですが、今後どのように今回の考察が活かされるのか、注目していきたいと思います。