けものフレンズ2話感想その5:「ジャパリまん」の描写が少ない理由

諸注意

前回記事:【2話 その4】アニメ感想「けものフレンズの謎」:ラッキービーストに感情はあるのか?

前回の考察で、ラッキービースト(ボス)が、おそらくかばんちゃんが何の動物であるか知っているにも関わらず、あえて教えなかった理由を考察しました。その結果、ラッキービーストというキャラクターは「思考力は高いが推論は苦手で、確証がないことを自ら伝えようとはしない」という声質を持っているのではないかと推察しました。ただし、現時点ではまだそれを裏付ける証拠は少ない、といった段階です。

【Aパート 3人の図書館への旅立ち】

「図書館へ行きたい」というかばんちゃんの言葉を受け、ラッキービーストは図書館への道のりを検索、ディスプレイに表示します。

ラッキービースト:ジャパリ図書館は、しんりんちほーにあるよ。途中3つのちほーを通るね。ただ、とっても距離があるから、歩いていくのはおすすめできないよ。ジャパリバスに乗って移動しよう。ここから一番近いのは、アンイン橋のそばだね。

ラッキービーストからの提案により、移動手段としてバスを使うことになります。これはとても重要なポイントだということを以前の考察の中で説明してきました。また、一番近い位置にあるバスに乗るため、アンイン橋に向かうことになります。これが2話の基本的なストーリーです。

2話の目的=アンイン橋を渡ること

まず長期的な目的(図書館へ行くこと)が示され、続いて短期的な目的(アンイン橋でバスに乗ること)が示される・・・。このストーリー展開は今後も続いていくことになります。登場キャラクターがそれぞれの場面で何を目的にしているか視聴者にわかりやすくなるというメリットがあります。かばんちゃんとサーバルの2人は、バスがどのようなものか知りません。このことから、バスは少なくとも現在のパークではほぼ使われていないということが予想できます。

再びラッキービーストからの提案により、じゃんぐるちほーの見学ルートを通ってアンイン橋に向かうことになりました。ここでラッキービーストは「案内時間は2時間ほどだよ」と告げています。これは作中で初めて具体的な時間についての言及があったシーンです。ただし、かばんちゃんもサーバルもこの点について特に反応していないため、時間という概念(24時間=1日といった定義)を理解しているかどうかはわかりません。

かばんちゃんとサーバル、2人の興味対象の違い

かばんちゃん:さばんなとは、だいぶ違うんですね。

ラッキービースト:じゃんぐるちほーは、熱帯雨林気候になってるよ。動物の数もとっても多いんだ。

サーバル:いろんな音が聞こえるよ。今日はフレンズと会えるかもしれないね。

見学ルートを通る間は、ラッキービーストによる解説が行われます。かばんちゃんは周囲を見渡し、生育している植物がさばんなちほーとは大きく異なる点に気が付きます。冒頭におけるラッキービーストのセリフからジャパリパークには「5つの気候帯」が存在することがわかっています。そして、このシーンのラッキービーストの回答から、「じゃんぐるちほーは熱帯雨林気候に属する」ことが裏付けられました。

かばんちゃんが「植物の種類がさばんなと違う」という、視覚を元にした差異に気がついたのに対して、サーバルは周囲の「音」に注目しています。このことは、かばんちゃんが主に視覚を頼りにしているのに対して、サーバルは聴覚を頼りにしていることを表現しているセリフです。こういった細かい部分でもフレンズの特長を表現しようとしているのが、いかにこの作品が丁寧に作られているかを示す証拠だといえるでしょう。

2人は重んじている感覚器官だけでなく、「関心を持つ対象」も異なります。かばんちゃんが「さばんなとじゃんぐるの差異」に関心を向けたのに対し、サーバルは「フレンズと会えるかもしれない」という可能性に関心を払っています。このことから、かばんちゃんは物事の差異から特長を見抜く力に優れ、サーバルは人間(フレンズ)関係に興味がある、ということがわかります。

オセロットとマレーバクとの出会い

このシーンの直後、サーバルが木の上で寝ているネコ科のフレンズ「オセロット」を発見します。このフレンズはじゃんぐるちほーで遭遇する初のフレンズですが、寝ているということもあって特に会話をすることもなく通り過ぎていきます。

続いて、今度はラッキービーストがそばにいる別のフレンズ「マレーバク」を発見します。マレーバクは何かを口に加えたまま歩いています。これはその後の劇中描写からフレンズたち共通の食料である「ジャパリまん」であることがわかっています。ただし、このシーンでは特に説明がないので、初見のときは何なのかわからないでしょう。

マレーバクが食べているもの=ジャパリまんの表面をよく見ると、何らかの印字(ジャパリパークのマーク)があります。このことから、ジャパリまんは明らかに人工物だと推理できるはずです。となれば、それを作ってフレンズたちに供給している「何者か」がいるはずだ、という推理も同時に成り立つと思います。後のストーリーを見ていけば、ジャパリまんを作り、フレンズに与えているのはラッキービーストたち(かばんちゃんとサーバルと旅をしているのとは別の個体群)であることがわかりますが、この時点ではまだわかりません。

なぜフレンズの食料に関する描写が少ないのか?

フレンズの食料(エネルギー源)について、1~2話のマレーバク登場シーンまででわかっていることは以下のとおりです。

  • かばんちゃんとサーバルが水を飲んでいることから、普通の生物と同様食料を経口摂取する必要があると考えられる
  • どの程度の頻度で、何を摂取すればいいのかはわかっていない
  • マレーバクの登場で初めて「人工の食料(ジャパリまん)」があることがわかった

フレンズの食糧事情については、まだまだわかっていないことが多いです。たとえば、ここまでのシーンではかばんちゃんとサーバルが何かを食べた描写はありません。すでに1日以上の時間が経過し、水を飲むシーンが描かれているにもかかわらず、これは極めて奇妙なことです。

また、「食べる」という行為と対になることとして、フレンズの「排泄」はどうやっているのかについても、特に描写がありません。この点に関しては、意図的にぼかしているものと考えるのが自然でしょう。劇中にトイレがある描写はありませんが、まさか可憐な少女の姿をしたフレンズたちが屋外で用を足す光景を描くわけにも行かないでしょう。

従って、劇中でフレンズの食べ物に関する描写がぼかされているのは、「食べたものは出さなければならない」という必然的な思考を視聴者に想起させ、「そういえば、フレンズはどうやって用を足しているんだろう?」といった余計な想像を掻き立てないようにするためだと考えられます。

「描きたくないことは、できるだけ描かずに済むように仕向ける」

これも素晴らしいストーリーを描くためのひとつの方法だといえるでしょう。

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