【Aパート ロッジの謎の現場検証】
アリツカゲラが見たという、「変な影」の正体を突き詰めるため、ロッジの一同はアリツカゲラが影を見たという現場まで行くことになりました。
アミメキリン:セルリアンにせよフレンズにせよ、原因を突き止めないと。
ここはひとつ、私が頑張るしかないわね。なにかてがかりがあるかもしれないわ。現場に行きましょう!
(ロッジの外、大きな木の正面に集まる)
アリツカゲラ:あそこです。あの枝の上に見えたんです。結構大きかったような気が・・・。
それが一瞬で、あそこの木まで移動してですね・・・。
サーバル:やっぱり、セルリアンじゃない?
アリツカゲラ:うーん、あんまり臭いがしなかったんですよね・・・。
タイリクオオカミ:やはり赤いセルリアン・・・!
アミメキリン&かばんちゃん:うわぁぁぁぁ・・・!!
アリツカゲラ:私、念のため見て回りますね。すみませんお騒がせして。
サーバル:あっ、私たちはそろそろ出発かな・・・あっ!
かばんちゃん:あれっ?
(雨が降り始める)
ラッキービースト(ボス):今日からちょっと天気が荒れそうだよ。この先は道が不安定だから、念のため雨が止んでから出よう。
サーバル:そう?
かばんちゃん:じゃあ、もう少しお世話になります。
アリツカゲラ:はいはい!よろこんで!
枝から枝へ一瞬で移動した「謎の影」
アリツカゲラが一同を連れて行った現場は、なんとロッジの外でした。そうはいっても、アリツカゲラ自身、外に出ているときに影を見たわけではないでしょう。あくまでも自身はロッジの中にいるときに、木の枝のところにいる謎の影を目撃したということだと思われます。
気になるのは、「枝から別の木の枝への一瞬で移動した」というアリツカゲラの証言です。もし影の正体がフレンズなのだとしたら、フレンズの技を使って移動した可能性が高いと言えるでしょう。逆にセルリアンであるなら、それほど速く移動できる種類のものは劇中に登場していないので、新しいタイプのセルリアンである可能性が高くなります。
実際、サーバルもその話を聞いて影の正体はセルリアンなのではないかと推測しました、しかし、セルリアンだとするならひとつ不自然な点があります。それはアリツカゲラに発見されたのち、逃げてしまったということです。少なくともこれまでに登場したセルリアンは、皆フレンズを前にして「逃げる」という行動は取っていません。従って、セルリアンだとするとなぜ逃げたのか、新たな謎が生まれてしまうことになります。この時点で、影の正体がセルリアンである可能性は低いといえるでしょう。
タイリクオオカミは「ミスリード役」
ここで、タイリクオオカミが前回に引き続き、影の正体がセルリアンである可能性を示唆してかばんちゃんたちを怖がらせようとしました。前回はあえて触れませんでしたが、10話におけるタイリクオオカミの役割は、「推理を真実とは違う方向へミスリードする役」だと考えられます。
たとえば、ミステリー作品の中で、過去に何らかの恐ろしい言い伝えがあるような土地で殺人事件が起きたとき、盛んに「これは●●様の祟りのせいだ」などと人々に告げて回るキャラクターが登場すると思います。タイリクオオカミはこうしたキャラクターと同じ「ミスリード役」だと考えるべきでしょう。
そもそも、タイリクオオカミは初登場の時点から嘘をついており、「嘘をつくキャラクター」だとはっきり視聴者にもわかるような演出がなされています。ですから、基本的にはタイリクオオカミが影の正体について語っている部分の話はすべてミスリードであると捉えて差し支えないはずです。
突然降り出した雨は、視聴者に対する合図
結局、影の正体はわからず、アリツカゲラが再びロッジ内を見て回るという話で決着がつきました。ここで、サーバルはかばんちゃんとともにロッジを出発しようとします。そもそも、かばんちゃんたちがロッジに立ち寄ったのは港へ行くための峠の途中で休憩するためでした。一泊して休憩し、用がすんだわけですから、出発するのは当たり前の行動だといえるでしょう。
しかし、ここでタイミング悪く、雨が振り始めてしまいました。ラッキービーストはこの先の道路状態がよくないことから、天候が回復してから出発を提案します。かばんちゃんもそれを受け入れ、もうしばらくロッジに滞在することになりました。
前回の考察で、10話はクローズドサークルで発生したミステリーのような謎解き推理モノである、と説明しました。同時に、ロッジは別に外界と隔離されているわけではないので、クローズドサークルの条件を満たしているとはいえない、という点にも触れていたと思います。
ところが、今回雨が降ったことによって、ロッジは擬似的にクローズドサークルの条件をみたすことになりました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AB
ちなみに、クローズドサークルとは、以下のような条件を満たすミステリーものの舞台のことをいいます。(詳細は上記リンクを参考にしてください)
- 登場人物の限定
- 連絡手段の限定
- 交通手段の限定
- 犯行時間の限定
まず、「登場人物の限定」についてですが、ロッジは外界から隔絶されていないので、新たなお客が訪れるなど登場人物が増えていく可能性はあります。しかし、今回雨が振り始めたことによって、新たなフレンズがロッジを訪れる可能性は少なくなったといえるでしょう。
次に、「連絡手段の限定」についても同様です。ジャパリパークでは、無線や携帯電話のような通信手段がないため、基本的にはフレンズ同士が直接会う以外に連絡手段はありません。そして、雨によって周辺への移動がしにくくなったことから、この点においてもロッジには制限が加えられることになります。
3番目に挙げられた「交通手段の限定」については言うまでもないでしょう。4番目の「犯行時間の限定」については、アリツカゲラによる証言で昨夜の消灯前とはっきりわかっています。
このように、雨が振り始めたことによって、ロッジは本当の意味でのクローズドサークルになってしまったのです。
以上の点について、「たとえ雨が降っても、移動できないことはないのではないか」という反論があるかもしれません。しかし、けものフレンズがそもそも本格的なミステリー作品だというわけではない、という点にも留意する必要があります。
たとえば、普段はギャグメインの漫画でありながら、ときどきシリアスな回を含んでいるという作品は珍しくありません。このような場合、視聴者に対して現在がギャグ回なのか、シリアス回なのかはっきり区別できるような「フラグ」が作中に設けられるのが通例です。わかり易い例としては、「シリアス回限定の敵役が登場する=そのキャラが登場したことが『シリアス回』に入った証拠である」といった「フラグ」はよく見受けられます。
つまり、私の考えは「ここで雨が降ってきたことは、今回がミステリー回であるということを読者に示すためのフラグなのではないか」というものです。そのように考えれば、実際雨の中での外界との移動や連絡が可能なのかどうかという点が重要ではないと理解できるでしょう。今回の雨は、あくまでも視聴者に対する合図であって、ストーリーの中における科学的・論理的な整合性を求められる証拠ではないからです。