【Bパート ヒトは船を動かし、海に出た?】
かばんちゃんにより、服が脱げることを知ったフレンズたち。みんな服を脱いだ裸の状態で、お湯の感触を楽しみます。
ギンギツネ:そういえば港に、さっきのそりの大きいやつがあるらしいわよ。
サーバル:えっ?ほんとに?
ギンギツネ:海の上を移動できるんだって。
キタキツネ:なんでそんな恐ろしいことを。
サーバル:海ってそりじゃないと入れないの?
ギンギツネ:入れるけど、あなた泳げるの?
サーバル:えっ、海ってそんなに大きいの?
(サーバル、海の大きさを想像する)
ギンギツネ:ヒトは動かせたって話もあるから、かばんなら動かせるかもね。
かばんちゃん:えっ、そうなんですか?
サーバル:ますます港が楽しみだね。
羞恥心は「ヒト」の特徴か?
前回の考察では触れませんでしたが、「服」を巡ってかばんちゃんとほかのフレンズとで明確な違いがあります。かばんちゃんが人前で服を脱ぐのを躊躇していたのに対して、サーバルたちは、服が脱げることを知るや、何の抵抗もなく脱ぎ捨てています。
サーバルから服を脱ぐように促されたかばんちゃんは、具体的な描写こそ省かれているもののおそらくは服を脱ぐことに最初は抵抗していたものと思われます。これはかばんちゃんには「羞恥心」があることを示す兆候です。
羞恥心については、次のようなキリスト教の伝承も知られています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%82%A8%E3%83%90
「最初の人間であるアダムとイブは、善悪の知識の実を食べたことにより、羞恥心が芽生えてイチジクの葉で股間を隠した」
けものフレンズにこうした深遠な宗教的・哲学的なテーマが暗喩されている可能性は、作品の性質からいえばそう高くはありません。しかし、こうした有名な寓話を盛り込むことによって「かばんちゃん=ヒト」と「フレンズ=動物」の違いを際立たせる演出として利用した可能性はあります。
ヒトは船に乗ってジャパリパークに出入りしていた?
続いて、彼女たちの話題は海に関するものに移りました。ギンギツネが言うには、港には「そりの大きいもの」があり、海の上を移動することができるとのことです。港という場所、「そりの大きいもの」という情報から考えるに、ギンギツネのいう乗り物は「船」だと考えてほぼ間違いないでしょう。
港に船があるということは、「ヒトは船に乗ってジャパリパークを訪れ、船に乗って去っていった」という可能性があります。ギンギツネによれば、この船と思われる乗り物は「ヒトだけが動かせた」とのことです。このことから、ヒトがいなくなったパークにフレンズだけが残されている現状にも説明がつきます。
つまり、パークに例の異変(4話におけるツチノコのセリフより)が起き、その後ヒトは船でパークを去った、そしてフレンズだけが取り残された、という可能性が現実味を帯びてきたのです。
ジャパリパークには、現在でも数多くのフレンズが暮らしています。このフレンズたちを残らずパークから連れ出すには、相当の数の船が必要なはずです。しかも、サンドスターによる気候調整効果が及ばないジャパリパークの外部では、フレンズが健康に生きていけるとも限りません。従って、「ヒトがフレンズをジャパリパークに残し、自分たちだけが脱出した」としても無理からぬことだったといえるでしょう。
高まるサーバルの「海へのあこがれ」
話題が海のことに及んだので、前々から海に並々ならぬ関心を寄せているサーバルは、頭のなかで海の光景を想像しました。サバンナの大地の中に、大きな水たまりがあり、その上をそりに乗ったサーバルが浮かんでいる、というコミカルなイラストが描かれますが、この光景は実際の海とはまったく様子がかけ離れています。
サーバルはさばんなちほーで生まれ、かばんちゃんと一緒に旅をしてきたとは言え海の実物を見たことはありません。今まで得られた限られた情報から想像した海の様子が、現実とは違っていたとしても仕方ないでしょう。具体的なイメージはともかく、サーバルの海に対するあこがれはますます強いものになっていきます。この気持ちが、のちにストーリーに大きな影響をおよぼすことになるのです。
かばんちゃんの旅はジャパリパークの外へと続く?
最後にギンギツネが示唆したように、ヒトなら「船」を動かせるということは、かばんちゃんにも船を動かす能力が備わっている可能性がある、ということになります。これは物語の今後の展開を大きく左右する情報です。
けものフレンズのストーリーは、基本的にかばんちゃんとそれについていくサーバル、ラッキービーストの3人の旅を描く物語です。特に名言はされていませんが、彼女たちの旅の範囲は必然的に「ジャパリパークの中」に収まっていました。
しかし、もし船に乗り、海に出られたとしたらどうでしょうか?物語の範囲がジャパリパークにとどまらず、さらにその外側にまで拡大していく可能性があるわけです。そうした可能性がこの時点で示唆されたということは、「かばんちゃんの旅はジャパリパークの外側まで続いていく」という今後のストーリー展開が視聴者に対して暗示された、と捉えることもできます。
船と海がもたらす、さらなる物語の可能性
ここで、7話以降のかばんちゃんの旅の目的をもう一度振り返っておきましょう。7話において、自分の正体が「ヒト」だということが判明したかばんちゃんは、当初の旅の目的を喪失します。しかし、同時に「ヒトが住んでいたちほーを探す」という新たな目的に向かって旅を続けることになりました。
その後、8話においてPPP(ペパプ)から、「ヒトが最後に目撃されたのは港」だという情報を得ました。そこで港に向かっている途中、ゆきやまちほーに立ち寄り、温泉などを見学する途中でセルリアンに遭遇するなどの騒動を巻き起こすことになったのです。
そして今回、ギンギツネから新たに「港には船があり、ヒトは船を動かし海に出ることができた」という情報を得ました。この時点で、かばんちゃんの旅の目的地はまだ「港」のままです。しかし、「船」という新たな移動手段の存在、そして「海」という新たなフロンティアの登場によって、かばんちゃんの旅がさらに広い範囲へと広がっていく可能性が示唆されているのです。