機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)考察-第七話「マチュのリベリオン」の考察です。
※第六話放送終了後~第七話放送開始前までに視聴した感想・考察です。
第六話の考察はこちら
最後のクランバトルへ
ランキング1位を巡る、ポメラニアンズVSトゥエルブオリンピアンズのクランバトルは、最初から不穏な立ち上がりです。「直前にスポーン(出撃地点)が変更された」「軍警の裏をかくために、コロニー内からスタートする、と運営が」というジェジーとケーンの会話があります。
これまでクランバトルは実態は違法なギャンブルでありつつも、できる限り周囲には被害を及ぼさないような形でおこなわれてきました。それがいきなりコロニー内で行われるということになり、運営側への疑問を投げかけています。
とはいえ、マチュにとってもはやそれらはどうでもいいことです。シュウジの隠れ家が見つかり、アンキーがクランバトルの開幕とともにそれを通報する予定であることを知ってしまった以上、彼女にとっては「シュウジと逃げること」が最優先になっています。
問題は、マチュが心理的に追い詰められてしまっていることです。マチュは偽物のように感じていた学校・塾・自宅といった場所から脱して、カネバン・シュウジの隠れ家・ジークアクスのコックピットといった居場所を得ました。
しかし、それらの居場所は第六話の時点ですべて失われてしまうことが決まってしまい、彼女の精神は非常に不安定な状態にあります。ここで縋ったのが「友達」であるニャアンですが、彼女もまた別の理由で追い詰められていました。
イオヌマグッソとは?シャロンの薔薇との関係は?
「クランバトルの情報を掴んだ」という軍警のMSがしきりに飛び回る様子を、職場の窓から眺めるタマキ。先日口論したばかりの娘が、クラバに参加していることは当然、知る由もありません。彼女が眺める先にある高層ビルでは、キシリアとペルガミノ大統領との会談が開かれていました。
彼らの議題は「イオマグヌッソ建設事業計画」というプロジェクトでした。資料の表紙とカムランの言葉から「地球環境改善のための太陽光増幅装置」をサイド6とジオンの共同で作ろう、という計画であることがわかります。
監査局のカムランは、計画の趣旨に賛同しつつも「建設工程の査察チームには我々も加えていただきたい」と付け加えます。「ソーラ・レイ」という単語が出てきていますが、少なくとも名目上はファーストガンダムで知られる兵器とは別物として建設される予定のようです。
サイド3領内の密閉型スペースコロニー「マハル」を利用して建造された、出力8,500GWにも及ぶ巨大レーザー砲。
南極条約で核兵器や毒ガス、コロニー落としといった、人類そのものを滅ぼしかねない大規模破壊兵器の使用が禁止された事から、それに代わる戦略級兵器としてジオン軍が開発した。
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%AC%E3%82%A4
また、イオマグヌッソの由来がクトゥルフ神話に登場する神性であることから不穏なものであると予想する人もいるようです。
ヤマンソ(Yomagn’tho)とは、E・P・バーグランドがクトゥルー神話の古き者の一柱として創造した神性である。
https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%BD
会談中はひたすら、キシリアに対して低姿勢だったペルガミノですが、彼女がいなくなるなり「ザビ家の女が頭を下げるさまは見ものだったろう」とカムランに誇ります。計画自体はキシリアの発案であるものの、サイド6にやってきた理由は共同出資=金の無心のためであったことから、サイド6のほうが立場が上であることがわかります。
とはいえ、軍事的・政治的にはジオンが優位なはずですから、見かけ上は低姿勢でいざるを得なかったのでしょう。ペルガミノは徹底して金・経済的な利益にしか興味がない商人あがりの政治家として描かれており「国が傾くほどの予算をかけて何のためにやるのか」とジオンの意図を訝しがっていました。
私はイオヌマグッソ計画は、シャロンの薔薇と関連していると推測します。計画書の表紙に描かれているイラストもシャロンの薔薇を表すものではないでしょうか。
クランバトルはサイド6政府が運営に関与
ペルガミノとカムランの会話から、やはりクランバトルの運営にはサイド6政府が関わっていることが明らかになりました。第六話のサイコ・ガンダムがコロニー内に持ち込まれるくだりで「コロニー公社が発注した空調機」という体裁を取っていましたから、政府が絡んでいることは匂わされていましたがこれで確定しました。
ただし、後の描写からペルガミノはキシリア暗殺計画は知らない様子だったので、あくまで非合法のガス抜き興行として、利益のためだけにおこなっていたものが、バスク・オム率いる連邦軍情報局に利用された、というのが顛末でしょう。
スポーン位置の変更を指示したの誰か?
控室で休んでいたキシリアも、同様に軍警の慌ただしさに気がついていました。不穏な様子を感じ取り、同行していた側近のアサーブは「エグザべの護衛を急がせる」と伝えています。このとき、アサーブは「不穏な空気です」と伝え、キシリアは「ここの匂いは好かん」と応えていますが、これは後のドゥーのセリフと対になる表現です。
ソドンの艦橋が映され、そしてゲーツとドゥーが登場します。ソドンでは、軍警の動きはもちろんのこと、コモリがミノフスキー粒子が散布されていることに気が付きます。一方、ゲーツは「なぜスポーンが変更されたのか、リーク情報で軍警をコロニー外に誘い出し、中に残るのは俺達だけのはずだったのに」と不思議がります。
ここで、バスクらが当日、どのようにキシリアを襲撃しようとしていたのかが伺えます。
①ゲーツ、ドゥーのクランはコロニー内で待機
②軍警を嘘のリーク情報(おそらく、クランバトルのスポーン位置)で誘い出す
この流れであれば、ポメラニアンズの2機も当初予定通りに宇宙にスポーンしていたはずです。そうすればそもそも彼らと戦う必要はないので、最初からキシリア暗殺に専念できることになります。
しかし、実際にはそうはなりませんでした。そこで「誰がスポーン位置の変更を指示したのか」が問題になります。バスクら連邦側は、スポーン位置の変更で不利益を被る側ですからありえません。そのためここから、サイド6・連邦以外の第三者がクランバトル運営に関わっている可能性が示唆されます。
実際、このあとサイコ・ガンダムの攻撃で、ペルガミノのいる建物も偶発的とはいえ被害を受けています。キシリアとの会談を成功させたいサイド6政府が、スポーン地点をコロニー内に変更する理由はありませんから、何らかの別の勢力の力が働いていると考えられます。
コロニー内にミノフスキー粒子を散布したのは誰なのか?
コロニー内にミノフスキー粒子が散布されていることも、謎を呼ぶ演出です。キシリアを護衛したいジオン、会談を無事成功させたいサイド6、クラバの摘発に動いている軍警のいずれにも動機はなく、当然文句を言っていたゲーツ(連邦)にもありません。
心配するゲーツとは対象的にドゥーは「僕はこの匂いが大好き」と嬉しそうな様子です。この「ミノフスキー粒子粒子の匂いが好き」という発言は、先程のキシリアの発言と対になっています。ミノフスキー粒子は戦闘の際に使われるものですから、いわば「戦いの匂い」です。この点から、ドゥーは好戦的であり、キシリアは穏健派ではないかと考える人もいるようです。第五話でニャアンが黒い三連星について言った「嫌な匂い」というのも「戦場に戻りたがっている元兵士」という意味では、同じでしょう。
当然、ミノフスキー粒子はガンダムの根幹となるSF設定であり、ニュータイプの能力とも密接に関係しています。「ララ音」などと同じく、3人のニュータイプ能力をそれぞれ示唆する演出だと思われます。
ニャアンもまた居場所がなくなった
マチュから操縦を代わったニャアンは、シュウジの赤いガンダムとともに、ジークアクスでスポーン地点に向かいます。彼女の回想から、インストーラーデバイス密輸の元締め、マーコが当日の朝に逮捕されてしまい、彼女にも操作の手が伸びてきていることがわかりました。
心理的に追い詰められているマチュと同じように、ニャアンもまた物理的に追い詰められていたのです。ここで、軍警の動きが活性化していた理由は「インストーラーデバイス密輸の一斉操作のため」であったことが判明しました。時系列でいうと、
①マーコの逮捕 同日7時(ニュース記事は13:18配信)
②ニャアンの逮捕状提出のニュース 同日18:52
③ニャアン宅の家宅捜索のニュース 同日20:23
となっています。そして③のニュースで「並行して工業地帯にある難民街の一斉ローラー作戦を行う」と報じられています。軍警の操作がここまで進んでいたからこそ、ゲーツらが準備していた「偽のリーク情報」は意味をなさなかったのでしょう。コロニー外の警備よりもコロニー内で密輸組織を一網打尽にするほうを優先したわけです。もしかしたら、シャリアが行ったワードとチャイチの殺害も影響していたかもしれません。とはいえ実際には、コロニー外にもザクは配備されていたようであり、あとで呼び戻すように指示する通信があります。
マチュの「大人たち」へのリベリオン
ニャアンにはもはや戻る家はなく、一刻も早くコロニーを脱出する必要がありました。「今日はバトルが終わっても一緒にいて」と、シュウジに伝えたところでクランバトルがスタート。サイコ・ガンダムとハンブラビが姿を現しました。
突然の事態に憤るケーンとジェジーに対して、ナブは予定通りカネバンの事務所を引き払う準備を指示します。そのころ、ニャアンと入れ替わりでカネバンの事務所に戻っていたマチュは、金庫を開けて中の現金を盗み、脱出のためのスペースグライダー購入資金に当てようと目論みます。
しかし、逃げる前にアンキーに見つかってしまい、アンキーはシャリアの過去のセリフから「ニャアンとマチュの入れ替わり」に気が付きます。
街を破壊する「サイコ・ガンダム」
クランバトルでは、わざわざ人が多い地域に移動しようとするサイコ・ガンダムの様子をニャアンが怪しみます。ポメラニアンズも敵クランも、それぞれの母体である企業に至るまで、クランバトルにはもはや関心がなく、それぞれ別の目的を果たそうとしているのが奇妙なところです。
加えて「お互いがそのことに気がついていない」という誤解も生じています。お互いに「バトルをするつもりがない」ということがわかっていたら素通りもできるのですが、当然そんなことは知る由もないゲーツは、ドゥーにポメラニアンズの排除を命じます。
サイコ・ガンダムはフォートレス形態からMS形態に変形。市街地に向けて容赦なくビームを撃つ光景に「本当にクランバトルなの?」とニャアンも事態の異常さに気が付きます。
事態に気づいたソドンでは、ラシットが第一種戦闘配置を指示します。若いクルーが主体のソドンですが、この緊張感と即応性はさすがシャリア・ブルの特殊部隊というべきでしょう。唯一、窓に手をついて外を眺めるコモリは緊張感がありませんが。
アンキーはどんなプランを立てていたか?
「アンキーのこと、ちょっとかっこいいって思ってたのに」
そう恨み言を言いつつ、マチュは金庫に入っていた銃をアンキーに向けました。これは彼女が「日常に戻れるかもしれない」という可能性を自ら断つシーンです。アンキーは動じず、マチュに「もっと賢い女になりな」と諭します。お金を置いて家に戻るよう伝えるアンキーに、マチュは「シュウジは私が守る」と伝えます。
マチュがカネバンを裏切ろうとしたのは、アンキーが赤いガンダムの居場所を通報しようとしたためでした。アンキーとしては「ジオンが自分たちを特定した以上、身の安全のためには速やかに逃げるしかない」「そのための最善の方法は、赤いガンダムの居場所を通報して懸賞金を得つつ、事務所を引き払うこと」と考えての行動でしょう。
ひとつのポイントは、アンキーが「マチュのことも考えて行動したかどうか」です。これにはいくつかの意見があり「マチュのためを思って、わざと計画を聞かせた」「マチュのことは気にせず、自分たちの安全を第一に考えていた」「自分たちの安全が第一で、マチュには選択肢を与えた」といった説があります。
私はこの後の展開から、アンキーは、
- 自分たちの安全が第一だが、マチュのことも想っていた
- マチュにとって最善の選択は、自分たちやクランバトルを忘れて日常に戻ることだと想っていた
- そのためにわざとマチュに計画を聞かせた
と考えています。
加えて言えば、計画をマチュに「聞かせた」時点で、マチュがそれをシュウジに伝え、クランバトル当日前に赤いガンダムが逃げ出している、という状態がアンキーにとっては最良だったでしょう。(マチュはそのことを警戒しシュウジには伝えませんでしたが)
アンキーは重ねて「お前には撃てっこない」「MSで戦うのと、直接自分の手を汚すのは全然別のこと」「男で身を滅ぼすなんてダサすぎる」と、マチュから銃を奪おうとします。
しかし、マチュはさんざんためらった上でついに引き金を引きました。これによってついにマチュは完全に一般人としての日常生活を失ってしまうわけですが、マチュがこうした行動をとってしまったのは、やっと得られた「自分の居場所」を失ったしまうという危機感だけでなく、元々の性格も関係していると思います。
マチュは第一話でニャアンと遭遇したときから、インストーラーデバイスをザクに取り付けるとき、ジークアクスに乗り込んだときまで「やろうと思ったことは必ずやる」という性格をしています。「やるか、やらないか」の2択を迫られたときに「やらない」という選択肢を選んだことは、これまでのエピソードの中で一度もありません。
この「リベリオン」の計画を思いついたときに、すでにこうなることは決まっていたと言えます。
キラキラとシュウジを結びつけたアンキーの誤解
「アンキーが『頭空っぽにして追いかけろ』って言ったんじゃないか」
「大人はみんな嫌いだ」
さり際に放ったマチュのこれらのセリフは、彼女の理解を深めるうえで非常に重要なポイントです。
そもそもアンキーの視点から見れば、マチュは「違法取引について来て、クランバトルに興味を持っているよくわからないお嬢ちゃん」です。ザクに乗り込んだかと思えば、たまたまあったジークアクスに乗り込みそれを操縦。次に現れたときには「自分のマヴ」としてお尋ね者の「赤いガンダム」を紹介し、パイロットは自分たちには紹介しないという態度でした。
アンキーはニュータイプではありませんから、マチュが体験した「キラキラ」を知りません。それ以外の情報で合理的にマチュの思考を解釈しようとすると「赤いガンダムのパイロットに惚れていて、一緒にいるためにクランバトルに出たいのだろう」と結論づけるのも、無理からぬことです。
「頭空っぽにして追いかけろ」というセリフは、第五話の冒頭でシイコの死を目の当たりにしてショックを受けているマチュを励ますために、アンキーが言ったセリフです。第五話の考察時から触れているように、このときアンキーは「マチュは赤いガンダムのパイロットに惚れていて、そのことで悩んでいるのだ」と考えてこのようなアドバイスを送りました。
しかし、実際にはマチュの悩みはそうではなく死闘の最中のキラキラで、シュウジ・シイコの精神と感応した結果、「彼らがいる領域に(キラキラ)まで至るには、己や他人の死を許容するだけの覚悟が必要」だと感じ取ってしまったためでした。
つまり、アンキーはマチュの悩みに対して誤ったアドバイスを送ってしまったことになります。その結果、マチュは元々ある程度は意識していたシュウジへの恋心をますます自覚するようになり、それを自由(キラキラ)への憧れと結びつけて考えるようになってしまいました。
本来、マチュが自由でいられるかという問題と「シュウジのそばにいられるか」という問題は別々のことのはずですが、彼女の中で区別ができなくなってしまったわけです。だからこそ「シュウジに会えなくなってしまう(キラキラが体験できなくなる)」という危機感が彼女を追い詰め、それを防ぐために今回のような事態を招いてしまうことになりました。
マチュはなぜ大人が嫌いなのか?
2つ目の「大人はみんな嫌いだ」というセリフも別の意味で様々な示唆を与えてくれます。これまで、マチュは大人に対して基本的に懐疑的に接していました。母親のタマキや最初に訪れた際のポメラニアンズの面々にも、やりづらそう接し、彼らから子ども扱いされると露骨に不満げな態度を取っていました。
彼女が憧れの感情を抱いていた、アンキーやシイコだけが例外的な存在だったと言えます。それ以外はちょっとしたきっかけで軍警にも暴力をふるい、助けてもらったエグザべに対しても心を許さない態度を取っています。しかし、彼女がどうしてこういう行動を取るのかその理由はこれまで描かれてきませんでした。
今回の「大人はみんな嫌いだ」というセリフで、その背景をうかがい知ることができます。おそらく彼女はこれまで、大人から様々な方法で「自由」を奪われてきたのでしょう。母親であるタマキはもちろん、未だに登場していない父親が、もしかしたら彼女が「大人嫌い」になる最大の原因だったかもしれません。
アンキーは「男で身を滅ぼした」経験がある?
続いて、アンキーについても考えてみましょう。第六話のシャリアとの会話に続き、第七話のこのマチュの会話でも、彼女の背景がうかがえる情報が色々と出てきました。
まず気になるのは、彼女が「男で身を滅ぼすなんてダサすぎる」と捉えていることです。マチュが言う通り、彼女が本気でそう考えているのなら、先にマチュにした「頭空っぽにして追いかけろ」というアドバイスと矛盾します。
この点を合理的に解釈しようとすると「アンキーもまた男を頭空っぽにして追いかけたことがあった」「しかし、結局それは失敗し、男で身を滅ぼすことになった」と推測できます。おそらくマチュにアドバイスした時点では「若いうちに一度くらい男で痛い目を見ておいたほうが、将来いい女になれるよ」くらいの意味合いだったのでしょうが、状況が切迫した結果、マチュを追い詰める事になってしまったのは皮肉です。
アンキーがひたすら友好的に接してきたシャリアを決して信用せず、今回のような決断に至ったことも「過去、男を信用して馬鹿を見た」という経験からくるものであった、と考えれば説明がつきます。
去っていくマチュへのアンキーの「馬鹿な女、もう後戻りできないよ」というセリフは、第四話で「過去の男(マヴ)に対する未練を断ち切れず、身を滅ぼすことになった女」であるシイコに向けた「馬鹿な魔女」というセリフと対応しています。
さらに「馬鹿な女」とつぶやくときのアンキーは唇を噛み締めて悔しさを顕にしています。かつての自分のように「男で身を滅ぼす道を選んだ娘」を止めることができなかった自分自身に向けられた言葉、という二重の意味が込められていると解釈できます。
軍警に追い詰められるニャアンとシュウジ
「4機いるぞ、全機確保だ」
「外に行った連中を呼び戻せ」
「ジャンク屋どもからコロニーを守るぞ」
クランバトルに介入する軍警たちのセリフから、彼らの覚悟が伺えます。直前にマーコを逮捕してそこから様々な情報が得られているであろうこともありますが、描写こそないもののシャリアからワードとチャイチの死の後始末を依頼されたギレンのシークレットサービスが、クランバトル関係者の仕業に見せかけるような工作をおこなったのではないか、と予想します。
「仲間の敵討ち」ということで士気が上がっている、と解釈できます。
必死にマチュとの待ち合わせ場所を目指すニャアンですが、ジークアクスは転落、陸橋の下に滑り込み、そのショックでコックピットから排出されてしまいました。そんな彼女を受け止めたのが、いつの間にかやってきたシュウジでした。
「私もシュウちゃんも、もう逃げられない」
感極まったニャアンは、マチュとの最後の会話を思い出していました。
「マチュって、シュウちゃんのこと好きなの?」
「ニャアンこそあいつのこと、どう思ってる?」
ここでニャアンがなんと答えたのかは劇中では明らかにされていませんが、推測することはできます。
ニャアンはシュウジのことを好きなのか?
すでに説明したように、マチュがシュウジのことを好きになったのは「自分に自由を実感させてくれるキラキラを体験できる相手である」という根本的な理由と、それを「恋愛感情」として意識させたアンキーの言葉がきっかけでした。
問題は、ニャアンにそれに相当するような描写があるのかという点です。
まず、ニャアンはインストーラーデバイスを通じてマチュと知り合い、次にシュウジとも知り合います。第三話で3人は「クランバトルに勝つ」という共通の目的を掲げて協力し、絆を深めます。
このとき、マチュとニャアンで決定的に違っていたのは、ニャアンは「ガンダムが言っている」というセリフを文字通り解釈していたのに対して、マチュは「単なるシュウジの口癖」だと解釈していたことです。
だからこそ第五話で、シュウジがガンダムの上で寝そべった際に「自分も同じことをすれば、ガンダムの声が聞こえるかも」と考え、下着姿になってシュウジのマネをしたわけです。マチュはそれを「シュウジの気を引こうとしている」と誤解して対抗しています。
その後、マチュと入れ替わって黒い三連星と戦ったクランバトルでも、動機は「友達(マチュ・シュウジ)のため」でした。これは後のハロのセリフからも明らかです。シュウジを「シュウちゃん」と呼ぶ理由も、おそらくは「友達であるマチュを愛称で呼んでいる以上、もう一人の友達であるシュウジもニックネームで呼ぶのがフェアだ」と考えているからでしょう。
さらに、クランバトルの後、マチュと気まずい雰囲気になってしまったときも、シュウジの隠れ家でマチュが来るのを待つ、という態度を取っています。その際、キラキラのときに性格が豹変したことを悔やんでいますが、「どちらのニャアンも好きだ、とガンダムがいっている」とシュウジに慰められています。
このときの様子は、ちょうどやってきていたマチュも盗み見ています。ニャアンが顔を赤らめているので「これでシュウジを好きになったのか」と解釈することもできなくはありませんが、それ以前のシーンと合わせて考えると「友達にいつもの自分と違う自分を見られて、気を使われた」ことに対する照れでしょう。
しかし、マチュにとっては「と、ガンダムがいっている」という部分は「シュウジの気持ち」だと解釈できます。先に「キラキラ」もニャアンに取られたと思っていることもあって、マチュが2人の関係を疑う下地は十分に整っているわけです。
餃子パーティーができず、自宅に返った後も「3人で食べたかったな」と回想していますから、この時点でニャアンにとってはシュウジもマチュも、友達という意味で同格であることがわかります。
もし「ニャアンがシュウジへの恋愛感情」を自覚していたとしたら、それ以降の出来事によってでしょう。マチュと神社で出会い、計画を打ち明けられて「ニャアンこそ、シュウジのことどう思ってる?」と聞かれたタイミングで、意識するようになったのではないでしょうか。ちょうど、マチュがアンキーに指摘されてシュウジへの恋心を自覚するようになったのと同じ流れです。
ニャアンがシュウジに「恋した」理由
こうなると、ニャアンにとってのシュウジとマチュへの認識が「友達」という平等なものから変わってきます。シュウジは「キラキラ」状態になった自分も、普段の自分もどちらも受け入れてくれ、逃避行をしている今でさえ、自分を守ってくれている存在です。生き残るためにずっとひとりだった彼女にとって、こうした「自分を認め、庇護してくれる存在」は初めてだったのではないでしょうか。
そんな状態で、マチュからの質問がきっかけで「もしかして、この感情が恋?」と意識してしまったとしたら、彼女が急にマチュを見捨てて逃げようとした理由も推測できます。すでに「シュウジへの恋愛」を自覚しているマチュは、関係がギクシャクしているニャアンよりも明らかにシュウジの方を「優先」しています。ニャアンにもマチュ同様、精神的な余裕はありませんから、そんな友達の様子を見て、「自分も同じように、友達よりも好きな人を優先する」という発想が生まれても不思議はありません。
シュウジはこうした女子二人の様子は一切意に介さず「様子が変だ、薔薇が目を覚ます、とガンダムがいっている」とニャアンを引き剥がそうとします。ニャアンにしてみれば「マチュとの集合場所にはもう行けない」「ニャアンもシュウジも、もうこのコロニーにはいられない」と思っている場面で、唯一すがりついたシュウジが自分をどけてガンダムの方へ行こうとしているわけで、そうなれば完全に一人ぼっちになってしまいます。
ニャアンは振りほどこうとするシュウジに強くしがみつき「マチュもガンダムもすべて捨てて、ここから2人で逃げよう」と叫びます。シュウジは至って冷静に「どこへ?」と尋ね返しますが、ニャアンは「わかんないよ、わかんないけど、どこか自由になれるところへ逃げよう」と返します。
5年ぶりの「ゼクノヴァ」
ここで、赤いガンダムのコックピットが光だし、ソドンでも「ゼクノヴァ」と同じミノフスキー粒子の相反転現象が確認されています。
その影響で、ドゥーは精神が錯乱。無差別に攻撃を開始し、周辺地域やキシリアがいる建物まで被害が及びます。キシリアは、屋上へ避難する際、ララ音と遠くに見えるゼクノヴァの光を目の当たりにします。(ちょうど、ファーストガンダムのレビル将軍に酷似しています)
ゼクノヴァに引き寄せられるシュウジは「向こう側が見える」という言葉を残して、ニャアンの前から赤いガンダムとともに消失してしまいました。
ゼクノヴァの現象そのものは収束しても、ドゥーの様子は相変わらず。「キラキラが消えちゃう」と叫びつつ、サイコ・ガンダムの装甲を展開。回転させつつそれらを直接ぶつけることで、軍警のMSを撃破していきます。ソドンはサイコ・ガンダムへメガ粒子砲を発射しますが、Iフィールドに阻まれ有効打にはなりえません。
ドゥーの「キラキラが消えちゃう」とはどういう意味でしょうか?ドゥーは誰か他の人とニュータイプ(強化人間)同士で感応しているようには見えないので、シュウジと同じくひとりで「向こう側」が見られる能力を持っているのだと思われます。
ゼクノヴァによってそれが「消える」ということは「キラキラを発生させるために必要な因子が、ゼクノヴァが起きることによって失われる」のではないでしょうか。その因子である可能性が高いのがミノフスキー粒子です。
ミノフスキー粒子の振動伝達を応用した「ミノフスキー通信」を介することで、通信が妨害されるミノフスキー粒子散布下でもサイコミュを使えばニュータイプの精神波(緊張状態にあるニュータイプが意思伝達する際に発する特殊な脳波で感応波とも)による遠隔操作が可能になる。
https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E7%B2%92%E5%AD%90
ゼクノヴァが起きると「ミノフスキー粒子の相転移」が起きるとされているので、ミノフスキー粒子を媒介に感応波を伝達し合っているニュータイプ(強化人間)は、キラキラをうまく感じ取れなくなっってしまうのではないでしょうか。
無人で動くジークアクス
ニャアンらとの集合場所へと走るマチュですが、携帯も通じず、市街の異常な光景に「何かが起きている」ことを実感します。たまたまゼクノヴァによって空いた道路の穴と、ジークアクスを発見したところで、テロリストと誤解され軍警から銃を向けられてしまいます。
すでにニャアンはどこかへ去ったあとでしたが、ジークアクスは無人のまま起動。お金は失ったものの、マチュはコックピットへと避難します。
劇場版視聴後・TV版放送開始前の考察で私は「ジークアクスは無人でも動くのでは」と考えていましたが、実際に今回それが確かめられたことになります(無人でゼクノヴァを起こした、赤いガンダムも同様です)
シャリア・エグザべ VS ゲーツ・ドゥー
建物の屋上へと避難したキシリアの元へ、サイコ・ガンダムが迫ります。ソドンは体当たりを試みますが、周囲を浮遊する装甲に阻まれ近づけません。ここで、満を持して上空からエグザべが登場。乗機のギャンで身を挺してキシリアを守ろうとします。彼らを狙うサイコ・ガンダムの右腕は、シャリアが乗るキケロガの攻撃を受けて破壊されます。
1年戦争でも「灰色の幽霊」として有名だったキケロガの登場に、焦ったゲーツは応戦するものの、有線式メガ粒子砲を駆使したオールレンジ攻撃により撃墜されます。苦しみ続けるドゥーは「キラキラを返せ」と、反撃するものの攻撃は当たらず。シャリアは自身の敵が「ヒトの造ったニュータイプ=強化人間」であることを感じ取ります。
「自らの意思で進化した僕らこそニュータイプにふさわしい」と、天然のニュータイプであるシャリアに対抗心を燃やすドゥーでしたが、実力の差は大きく、まもなくゲーツの後を追うことになります。
ゲーツのハンブラビは、公式サイトで「変形には時間を要する」と記述されるなど、Zガンダムに登場したものよりも技術的には後退している様子が伺えます。Zで開発に関わっていたパプテマス・シロッコがいないこともありますが、何より連邦が1年戦争で負けてサイコミュの技術的にはジオンが有利になっているのではないでしょうか。
サイコ・ガンダムも50mと過去のものより大型になっており、リフレクタービットに相当するような装甲の遠隔操作など、強力な武器もありましたが、相手が「ジオン最強のニュータイプ」では分が悪かったと言わなければなりません。
エグザべは「ひとりでM.A.V.をやっているのか?」と驚いていますが、これこそ「M.A.V.戦術」が流行した本当の理由でしょう。M.A.V.戦術は「常に相手の死角から先制攻撃する」というのが原則です。もしひとりでこれができるのなら、なにも2人に拘る必要はありません。「ニュータイプが、サイコミュ兵器を使えばひとりでできること」を「オールドタイプでも2人一組の組み合わせで対抗できるようにしたもの」がM.A.V.戦術の本質ではないでしょうか。
エグザべ「キシリア様を頼みます」と言い残し、シャリアは戦場を離れていきました。シャリアの一連の行動は、キシリア暗殺の自らの働きで防ぐことで「ギレン派のスパイではない」と、キシリアに印象付けることが目的でした。このとき、シャリアとエグザべは「MS同士で会話」しており「機械を挟んでコミュニケーションを取ると本音が伝わる」という、私が考えた「ジークアクスの演出法則」を満たしています。シャリアは実際「(この時点では)キシリアを殺す意図はない」ので、その本音がエグザべに正しく伝わったことになります。
ジークアクスはマチュの「怒り」に反応
軍警のMSに追われながら、懸命に逃げるマチュでしたが、これは第一話以来、初めてのひとりでの戦いです。元々「赤いガンダム(シュウジ)がいれば怖くないのに」とクランバトルをはじめたマチュでしたが、初めてのひとりでの戦い、それもクランバトルではない実戦です。すでに身分もバレており元の生活への退路は完全に絶たれた状態でした。
追い詰められたマチュに反応するように、ジークアクスの「目」が紫色に変化したとき、シャリアがジークアクスを狙撃。そのまま機体を回収していきました。「怒りを静めろ」というシャリアのセリフから、このときのマチュの感情は「怒り」に支配されていたことがわかります。「あなたにはまだやるべきことがある」とシャリアは語りました。
第五話でニャアンがジークアクスに乗ったときもジークアクスの目の色は紫でした。そのときのニャアンも自分をいたぶる黒い三連星に対して激昂していましたから「怒り」の感情に反応したときは目が紫色に光る、ということがわかります。
また「シュウジがいないとキラキラになんないよ」というセリフからも、やはりマチュの根源的な欲求はキラキラ=自由に向けられたものであることがわかります。シュウジはあくまでも彼女にとって「キラキラを体験するための手段」であり、それを喪失してしまうことで不安定になっていたことがセリフからも確かめられました。
これは直前で(おそらくはゼクノヴァによる影響で)「キラキラを返せ!」と叫んで錯乱していたドゥーの様子とも通じます。ゼクノヴァは「ミノフスキー粒子の相転移現象」とされていますから、ゼクノヴァによってミノフスキー粒子が影響を受け、それによってキラキラが体験できなくなる、という描写でしょう。鶴巻監督は「キラキラ(ハルシネーション)を物理現象として描きたい」と明言していますので、ミノフスキー粒子がキラキラの媒介となっている、という演出でしょう。
気持ちが通じ合うエグザべとニャアン
軍警は、連邦軍情報局が起こしたテロにクランバトル運営も協力したと推測。すでにメンバーが去った後のカネバンの事務所も家宅捜索を受けました。ファストフード店に集まった同級生は、テロ容疑で報道されるマチュの姿を目にします。クランバトルの存在すら知らなかった母・タマキもまた、職場で娘の報道を見ることになりました。
ただひとり、コンチとともに逃げ回っていたニャアンの元へ、エグザべが降り立ちます。「君は自分では気づいていない才能がある」と語るエグザべは、ニャアンをジオンに招きます。このシーンで、ニャアンの前にギャンの手を差し出すシーンは、ガンダムF91のオマージュなどとも言われています。
しかし、私はその点よりも「機械を挟んでコミュニケーションを取っている」という点を強調するシーンに見えます。過去の考察で述べたように、ジークアクスでは「機械を挟むと正しい気持ちが伝わる」という演出がなされています。これまでに描かれてきた、真面目で誠実なエグザべの性格、そして何より「同じく難民出身であり、ジオンの士官にまで出世した」という自分の生い立ちと重ね合わせて、こころからジオンに歓迎する気持ちに嘘はないことを、視聴者にも伝えようとしているのでしょう。
ニャアンもそれに答えるように「私にジオンへ来い、と?」と、エグザべがいうよりも先に相手の意図を読み取っています。ニャアンの直感に、エグザべも嬉しそうな表情を見せました。
キシリア・シャリアの思惑
キシリアはソドンに乗艦、ブリッジのクルーを集めて労をねぎらいます。サイド6での任務は終了、と伝えられ、彼らは次の任地に向かうこととなりました。
シャリアやキシリアはもちろん、ここに至るまでマチュやシュウジを除いては誰も、赤いガンダムの話をしていません。シャリアが赤いガンダムを追っているのは間違いありませんが、それはあくまでも表向きの理由であり、今回の「サイド6への長期滞在」は「キシリアの護衛が完了するまで」の予定だったのでしょう。
もともとは「コロニーの外部で待機・調査」を行う予定だったものが、ジークアクスの盗難をきっかけに「イズマコロニー内部への駐留」という形になり、その間に赤いガンダム・ジークアクスが出場しているクランバトルを調査。連邦がクランバトルを利用してテロを仕掛けてくる可能性を考えてキケロガも招集した、という流れではないでしょうか。
キシリアの訪問も終わり、赤いガンダムも消失した今、サイド6に滞在し続ける理由はありません。シャリアが次の任地に向かうのも当然の流れですが、おそらくは「赤いガンダムが向かった先」、もしくは「シャロンの薔薇」があると思われる場所の調査ではないでしょうか。
キシリアも優れたニュータイプを欲していた
ソドンで整列したクルーの中にエグザべはいませんでしたから、おそらく直接キシリアのチベに帰還したのでしょう。キシリアもソドンからチベに移乗。そのまま月へ帰ることになります。チベから遠ざかっていくソドンを確認できますので、少なくともソドンの新しい任地は月ではないとわかります。
シャリアの監視を明示されていたエグザべは、自分がソドンを離れてよかったのか、とキシリアに尋ねますが、キシリアは今回の働きでシャリアを完全に信用した様子。ジークアクスのパイロット=ニャアンをエグザべに命じてジオンに招いたのは、キシリアであったことがわかりました。
第六話で「キシリア直々の密命がある」とアセットから伝えられていましたが、その密命とは「ジークアクスのパイロットを確保せよ」ということだったのでしょう。キシリアは「戦力としてのニュータイプ」を重視する姿勢を見せていますし、イオヌマグッソ計画とも何らかの関係があって、ニャアンの力を欲しているのかもしれません。
「ジークアクスが盗まれる」という大事件に対して、「イズマコロニー内部への駐留」という、割と強引な手段をとっていたシャリアですが、おそらくは「ジークアクスを動かせる=オメガサイコミュを動かせる適性を持ったパイロットがいる」という情報をキシリアに伝え、その調査をおこなう名目で許可を得ていたのでしょう。
親しい人を失ったニャアン
「家族や親しい友人がいるなら、一緒にジオンに招いても良い」というキシリアの問いかけに「いえ、誰も」と短く答えるニャアン。このシーンで、彼女の今回の心情やここに至るまでの人生でどういった経験をしてきたかをある程度うかがい知ることができます。
ニャアンは今回、マチュとのわだかまりを抱えたまま計画に乗りました。彼女自身、捜査の手が及んでいてもうイズマコロニーにはいられなかったので、選択肢はなかったのでしょうが「友達と好きになった男を同時に失った」という喪失感は、彼女の心に暗い影を落としているはずです。
イズマコロニーにニャアンがやってきたのは、戦禍によって故郷のコロニーが破壊され、プチモビルスーツで脱出してきたためでした。おそらく、その過程では家族や友人も大勢見捨てて逃げざるを得なかったはずです。戦後5年も経っているのに、マチュやシュウジに出会うまで友達らしい友達もいなかった、ということからも、彼女は「親しい人を失う」ということを強く恐れているということが伺えます。
彼女にしてみれば、そうした経験をまたするのが嫌で友人を作らないでいたところ、思いがけず得た新しい友人と、好きになった男を同時に失ってしまったことになります。当然、深いショックを受けているでしょう。
ザビ家排除を狙う、シャアの意思を継いだシャリア
自室でワインを飲みながら、シムス大尉と語り合うシャリア。第二話で描かれたように「ワインを酌み交わす=同士である」という演出です。ここで初めて「ゼクノヴァによる赤いガンダムの消失」について語られます。同時に「平和を維持するためには、ギレンとキシリアを同時に排除しなければならない」と、ついにシャリアが自身の「真の目的」について語りました。
劇場版ではすでに描かれていましたが、シャリアは「ザビ家を排除して、ニュータイプによる新しい時代を作ろう」としているシャアの同士になっています。シャアがいなくなった今でも、その志をついで同じように動いていることがわかります。
シャリアの背後にいるのはフラナガン?
シムス大尉は、サイコミュ兵器(キケロガなど)の開発に関わる軍人です。その彼女がシャリアの「同士」になっているということは、彼ら「シャア派」の勢力は他にもいる、と見るべきです。私は現在のシャア派は「フラナガン博士」を中心としたメンバーなのではないか、と予想します。
第二話では「ヒトの革新が本当にあるならそれを見届けたい」と語るフラナガンとシャアの会話が描かれていました。シャアは、そのフラナガンからの紹介でシャリアに出会い、同士に誘っています。また、フラナガンが「キシリアに見せる報告書のコピー」を、先に自分に見せたことをシャアも怪しんでいました。
ここから私は「フラナガンはシャアに、ザビ家打倒とニュータイプによる新しい時代づくり」を期待しているのではないか、と解釈していました。まだシャリアとフラナガンの直接のつながりは描かれていませんが、今後彼らの背景がより明確になることを期待します。
シャリアに捕らえられたマチュは、ソドンの独房に捕らえられていました。ニャアン同様、すべてを失った絶望感からか、目に光のない表情をしています。イズマコロニーでは、マチュがテロの容疑者として公開捜査が始まったことが報道されます。
故郷も、好きだと思っていた男も、友達も失いただジークアクスだけが残ったマチュに、今後どのような展開が待ち受けているのでしょうか。
残された謎
最後に、第七話を通じて残った疑問点を確認していきます。
- クランバトルのスポーン位置変更は行ったのは誰か
- コロニー内にミノフスキー粒子を散布したのは誰か
- 赤いガンダムに懸賞金をかけたのは誰か
これらは間違いなく「おこなった誰か」がいるはずですが、それに対する描写はまったくといっていいほどありません。比較的「シャリア・ブルにはまだ隠された目的があり、そのために彼が行ったのだ」と考察している人もいますが、私の考えは異なります。
ヒントになるのは、クランバトルの開始・終了時に周囲の空間に出る「X」時の光です。あれも誰が出しているのかまったく名言がありませんが、ゼクノヴァが終わる瞬間にも同じ光を見ることができます。
ゼクノヴァを起こすために必要な要因として「ニュータイプ+サイコミュ+ミノフスキー粒子」があるのであれば、クランバトルは「主催者が人為的にゼクノヴァを起こすためにおこなっている」という解釈もできます。
ただ、私はここになにか人為的な意図を感じません。むしろ、スター・ウォーズでいうところのフォース(ミディクロリアン)のように「ミノフスキー粒子自体が何らかの意思を持って、ゼクノヴァを起こそうとしている」かのように感じられるのです。「ヒトを導こうとしている」という意味で、ゲッター線のようにも感じさせます。
石川賢の著作『ゲッターロボ・サーガ』にて物語の根幹を成す架空のエネルギー。
宇宙から降り注ぐ放射線の一種で、集合、融合しまた分離も促すという特徴を持つがその本質は生命の進化を促す性質……というより促そうとする意志を持つ。
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B2%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%B7%9A
さらに、ここまで振り返っても「赤いガンダムに懸賞金をかけたのは誰か」も明らかになっていません。軍警やジオンであれば、その旨劇中で明言があるはずです。ジオン(シャリア)であれば、あれだけシャリアを疑っていたアンキーが「懸賞金の支払い」を当てにして通報に踏み切ったことの説明がつきません。軍警であれば、なおさらクランバトルの当事者であるアンキーが自ら通報して「賞金がもらえる」と信じるのはありえません。
私はこうした、物語の中で残された謎はすべて一本につながっていると考えています。そしてそれは「クランバトルの運営」に収束されていくでしょう。