けものフレンズ1話感想その1:けものフレンズから考察する、魅力的なストーリーの作り方

以前、マーケティングの題材として当ブログでも紹介したアニメ「けものフレンズ」。今回は魅力的なストーリーの作り方を学ぶ教材として取り上げてみたいと思います。第1話から順番に考察していきます。

【第1話 考察 その1】

※全編視聴したあとの考察なので、未視聴の方にとってはネタバレになります。ご注意ください※

アニメとストーリーはそれぞれ3つの要素の組み合わせからなる

作品ジャンルのアニメーションは、映像・セリフ・音(BGM・SE)という3つの要素から成り立ちます。そして、「ストーリー」もまた同じように、作者の演出・キャラクターの演技・世界観という3つの要素から成り立っています。作中でこれらの要素がどのように組み合わせられ、ストーリーが展開していくか見ていきましょう。

【第1話Aパート サーバルとかばんちゃんの登場】

木の上で眠るサーバル。何者かが近くを歩いていることに気づき、「狩りごっこ(追いかけっこ)」を始めるシーン。

このシーンはストーリーの始まりであると同時に、主要登場人物であるサーバルとかばんちゃんの初登場シーンです。よって、作者の主張と世界観を説明しなければいけませんが、「狩りごっこ」が始まるまで、2人に台詞はありません。つまり、映像と音だけで以上の情報を視聴者に可能な限り伝える必要があります。

サーバルが寝ている木のそばを歩く人物(かばんちゃん)の周りでは、キラキラ輝く謎の物体とそれを表すSEが鳴ります。これは後に「サンドスター」というものだとわかりますが、この時点ではまだよくわかっていません。

なんとなく見ても、深読みしても通用する演出

サーバルは、突如跳ね起き、ジャンプで木から飛び降りて謎の人物(かばんちゃん)を追いかけ始めます。サーバルはまず耳が周囲の物音に反応し、続けて尻尾が反応(地面の振動を感知)するという順番で目を覚ましています。これは「聴力に優れている」というサーバルキャットの特長を表現する演出であると後にわかりますが、コミカルなSEがなっており、「なんとなくキャラの可愛さを表現したんだろう」と解釈しても辻褄があります。

このように、けものフレンズの演出は「特に意識しなくても自然と理解できる」のと同時に「深読みしても違和感なく理解できる」というふうに、「2通りの解釈が可能」なように設計されています。

たとえば、この直後「狩りごっこ=2人の追いかけっこ」が始まります。2人はしばらく追いかけあったあと、身を隠したかばんちゃんの位置を、サーバルが音で察知し、ジャンプして捕まえるという終わり方をしています。このシーンはゆるいアニメによくありがちなコミカルなシーンのひとつ、としても解釈できますが、別の解釈も可能です。

サーバルがかばんちゃんの居場所に気がつくときの演出は、

1.隠れているかばんちゃんの足元が映り、後ずさりする
2.サーバルの耳が映り、居場所を察知する
3.サーバルがかばんちゃんの場所までジャンプし、捕まえる

という流れになっています。これは、聴力に優れている・ジャンプして獲物を捉えるというサーバルキャットの特長を紹介するシーンである、という見方もできるのです。

なんとなく見ていても、深い考察をしても楽しめるような演出を組み込むと、ストーリーに深みが生まれます。けものフレンズには、こういったシーンがたくさんあるので、今後も順番に解説していきたいと思います。

けものフレンズ1話感想その2:サーバルとかばんちゃん初会話の意味
前回記事 【1話 その1】けものフレンズから考察する、魅力的なストーリーの作り方 ※本シリーズでは、主に下記の観点...