「コンテンツは資産になる」論の嘘

オウンドメディアなど、コンテンツマーケティングのメリットのひとつとして、「一度作ったコンテンツが資産として手元に残る」というものがあります。しかし、実はこの点、文字通りに解釈してしまうと問題になる場合があるので注意しましょう。

「コンテンツは資産になる」論の根拠

コンテンツマーケティングは、しばしばリスティング広告などほかのWebマーケティング手法と比較されます。その際、コンテンツマーケティングのメリットとしてあげられるのが「コンテンツが資産として残る」という点です。

たとえば、リスティング広告であれば、広告を表示するためには毎月コストをかけ続けなければいけません。しかし、コンテンツマーケティングであれば、一度コンテンツを作ってしまえば、そのあとは基本的に手を加える必要がなくなります。これが「コンテンツは資産になる」という根拠なのです。

しかし、こうした根拠が見落としている、あるいはあえて触れていないポイントがあります。それは、「メディアのクオリティを保つためには、一定の投資が必要」という点です。ここで、資産となるコンテンツを記事、その記事が掲載されるメディアをブログと考えてみましょう。当たり前ですが、ブログは1記事だけではできません。一定のアクセスを集めたいのであれば、最低でも100、できれば300~600以上の記事が必要です。

これらの記事は、ただ数を揃えればいいというものではありません。すべての記事が有効なアクセスを集めてくれるとは限らないからです。なかにはあまり閲覧されない記事もあるでしょう。そうした記事はメディア全体のクオリティの平均値を引き下げてしまうので、別の記事と差し替えなければいけません。そうなると、結局はメディアを運営していくためには、「定常的にある程度の記事を常時増やし続けていく」必要があるとわかります。

個別の記事が資産として残ろうが、それを掲載するメディアを維持するためにはある程度のコストが必要になる、ということです。しかし、「たしかに差し替えが必要な記事も出るだろうが、そうでない記事は残るんだから、繰り返していけば次第にメディア全体の評価は高まっていくはずだ」と考える人もいるでしょう。たしかに、そうした考えは間違ってはいません。

質が高く、定常的なアクセスを産んでくれる記事が資産として残ることは事実です。問題は、そうした記事を戦略的につくるのは極めて難しい、ということです。たとえば、ある広告代理店は競合サイトを詳しく分析し、競合のさらに上に行くコンテンツを作ろうとしました。その結果、コンテンツに求められる仕様は極めて厳密になり、制作の手間とコストが大きく増加してしまったのです。

もちろん、それだけのコストをかけて作ったコンテンツなのですから、質が高いことは事実です。問題は、コンテンツが資産化したあと、「コストをどれ位で回収できるか?」という部分でしょう。質の高いコンテンツばかりでできたメディアをつくるには、膨大なコストと手間がかかかります。では、そんなメディアを作って制作費用が回収できるようになるのを待つのと、リスティング広告などの掛け捨て型施策を用いるので、どちらのほうが費用対効果が高いと思われるでしょうか?

このように、コンテンツが「資産になる」のは事実です。しかし、資産は運用しなければ意味がありません。そして、資産は高価であればあるほど運用は難しくなります。コンテンツマーケティングを行いたいのであれば、あらかじめ運用を視野に入れた作り方をしなければ施策として有効に活用するのは難しいでしょう。