【Bパート 城への潜入】
かばんちゃんの作戦により、防御に徹するオオアルマジロとシロサイを、ライオンの部下たちはなかなか突破することができません。その間にかばんちゃんとヘラジカはライオンの城に迫りつつあります。
オーロックス:くっそー!なんで俺が風船ひとつ割れねぇんだ!
アラビアオリックス:これは長引きそうだぞ。先にほかを・・・。
(草むらの陰で動く角と風船の付いた陰を見つける)
オーロックス:ヘラジカだ!
アラビアオリックス:あれを仕留めれば終わりだ!
(城の入口付近にたどり着いたヘラジカとかばんちゃんの前に、カメレオンが姿を現す)
カメレオン:(体色変化を解除して姿を現す)
ヘラジカ:おっ!
カメレオン:見てきたでござる。場内は見張りひとりだけでござる。
かばんちゃん:ありがとうございます。案内、お願いしますね。
ヘラジカ:それにしても、カメレオンは潜入がうまいな。なぜ今までやらなかったんだ?
カメレオン:えーっ!いつも潜入させてくれと言ってたでござるよ!
ヘラジカ:そうだったか?
草むらに隠れる「ヘラジカ」が新たな標的に
今まで全戦全敗だったヘラジカの部下たちに、オーロックスとアラビアオリックスは思わぬ苦戦を強いられることになりました。今まで51回も勝ち続けてきたわけですから、今回に限ってなかなか相手を倒せないというのは衝撃的だったでしょう。
特に、今回は合戦のルール変更があった直後です。おそらくライオンの部下たちは、大将からルール変更を知らされ「風船を割るだけなんて簡単だ」と考えたことでしょう。なのに思った以上に手こずっていることから、焦りや苛立ちも募っていたはずです。
しかし、オオアルマジロから「自分たちよりもいろいろ考えている」と表されるライオンの部下たちは、簡単には諦めません。防御力に優れたアルマジロとシロサイを後回しにして先に他の敵を倒すことをアラビアオリックスが提案します。いくら時間がかかっても、味方の数が減っていけばそのうち倒せるはずですから正しい方針転換だといえるでしょう。
周囲を見渡したアラビアオリックスの目には、草むらの影に隠れる大きな角と風船が目に入ってきました。彼女らはこれを敵の大将である「ヘラジカ」だと考えたのですが・・・。
防御力はまったくなさそうな「へいげんの城」
場面は変わって、部下たちと別行動をとっていたヘラジカとかばんちゃんが映ります。すでに城は間近に迫り、すぐにも中に入れそうなところまで近づいています。
これまで城の内側は何度か描写されてきましたが、遠巻きに城の全景が映されたのは今回が初めてです。本物の日本の城にもある天守閣と、本物にはまずついていない「滑り台」のようなものが確認できます。
かばんちゃんとヘラジカは最初、城の周囲にある塀の影に隠れて様子を伺っていました。現実の城の場合、敵の侵入を防ぐため周囲はすべてこうした塀で囲われているはずです。しかし、へいげんの城の塀はところどころに隙間が空いており、ほとんど障害物としての役割を果たしていません。
こうした描写からも、これは実際の防御兵器としての城ではなく、あくまでテーマパークのアトラクションとして作られた城だということがわかります。とはいえ、なぜへいげんに「城」という、一見まったく関連性のなさそうなものを作ったのかは不明です。
ヘラジカはカメレオンの能力を引き出せなかった
かばんちゃんとヘラジカの前に、パンサーカメレオンが姿を現しました。カメレオンには、体色を変化して周囲に溶け込む能力があります。この力を利用して城の中に潜入するという、まさしく「忍者」のような仕事をこなしてきたのです。
このあと、移動中にヘラジカとカメレオンが会話するシーンがありますが、カメレオンが潜入に向いているという点に驚くヘラジカと、「いつも潜入させてくれと言っていた」というカメレオンのリアクションの違いが印象的です。
カメレオンの能力は、誰がどう見ても潜入にピッタリの能力ですが、今までこの力が発揮されることがなかったのはどう考えてもヘラジカの判断ミスでしょう。ヘラジカは今までの51回、常に「城まで走って突撃」という単調な作戦を繰り返しており、そのせいで連敗に連敗を重ねてきました。
しかも、ヘラジカは「潜入させてくれ」といっていたカメレオンの提案を自分が却下したことをまったく覚えていません。おそらくは悪意があって却下したわけではなく、単に「敵地に潜入して偵察する」という行動の価値を理解していなかったのでしょうが、このあたりからもライオンと比べて「合戦の大将」としての能力は劣っていると言わざるを得ません。
自主性と判断力に優れるライオンの部下
ライオンの部下たちは「自分の判断で行動できる」という点で優秀です。かばんちゃんたちを「敵のスパイではないか?」と疑って捉えたのも、結果的には行き過ぎでしたが合戦の勝利につながる自主的な行動でした。
また、合戦の最中、「敵が守りを固めて倒すのに時間がかかりそうだ」となると、別の空いてを狙いに行こうとするなど現場での柔軟な判断力も併せ持っています。
これに対して、これまでのシーンでヘラジカの部下たちにはこうした積極性や優れた判断力があまり見られません。合戦に向けて鬨の声をあげるシーンなど、団結力の高さは伺えますが、自らが「率先して何かをやろう」という気概にはかけていたように思います。つまり、「ヘラジカについて行き、従ってさえ入れば大丈夫だ」と皆考えていたのではないでしょうか。
リーダーの資質が部下の姿勢を決定する
ライオンの部下たちが自主性と判断力に優れていた理由は大将であるライオンの性格によるものである可能性もあります。リーダーのライオンは、部下たちの前では毅然とした態度を取っていますが、本当はのんびりとした昼行灯な性格です。
リーダーが自ら部下に指示を出し、率先して何かやろうとすると、部下は「リーダーに従ってさえいればいい。そうするのが正しい」と思うようになります。しかし、逆にリーダーが基本的なことは部下に任せ、極力自分は関与しないようにすると、部下は自ら考え行動するようになっていくものです。
今回のけものフレンズ6話では、ヘラジカたちが前者の組織、ライオンたちが後者の組織に当てはまるのではないかと思います。
役割を与え、強みを引き出したかばんちゃん
かばんちゃんが行ったのは、自主性と判断力に乏しかったライオンの部下たちに自分の優れているところを教え、さらにそれを活かせる役割を与えることです。アルマジロとシロサイには防御力に優れるという強みを教え、「守りに徹して時間を稼ぐ」という役割を与えました。そして今回、潜入に向いている個性を活かし、情報収集の役割を与えられたのがパンサーカメレオンです。
その効果は驚くべき変化をもたらしました。カメレオンは城の内部を歩くヘラジカとかばんちゃんの足を止め「この先には見張りがいるが、動いているからいなくなるのをまとう」と伝えたのです。このとき、カメレオンは明らかにヘラジカの指示を待つことなく自ら判断して最善の方法を提案しています。
もちろん、カメレオンが登場したシーンは少ないので、「カメレオンは元々、ヘラジカの部下たちの中では積極性があったが、ヘラジカに意見を採用してもらえていなかっただけだ」という可能性もあるでしょう。しかし、仮に元々積極性がある人でも、自主性が求められない組織の中では本来の力を発揮するのは難しいはずです。そうした意味で、「カメレオンに活躍の場を与え、自主性を引き出したのはかばんちゃんである」という評価は間違っていないと思います。