けものフレンズ3話感想その15:フレンズ化すると仲間を失い孤独になる

諸注意

前回記事:

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【Bパート 4人で行うカフェの除草】

カフェにお客さんが来ないことについて話し合うトキとアルパカ・スリの会話を聞いていたかばんちゃんが「試してみたいことがある」と言い出します。

一同を外に連れ出したかばんちゃんは、カフェの前に生えている草を除草し始めます。ただし、場所を指定して一部だけを除草するという変わったやり方でした。かばんちゃんの指示に従いながら、トキとアルパカ、そしてラッキービーストが除草を進めていきました。

飛べるフレンズにカフェの場所をPRする方法

トキとアルパカの会話を黙って聞いていたかばんちゃんですが、突如ハッと何かに気がついたような表情を見せます。直前にあったセリフはトキの「飛べる子以外(カフェの近くを)通らないんじゃない?」というものでした。

この後の行動から、おそらくかばんちゃんはこの時点で「飛べる子以外通らないのなら、飛べる子にカフェがあることを気づいてもらえるような仕掛けがあればいい」と考えたはずです。それがその後の「草むしり」につながっていきます。

鳥のフレンズに見える目印を作れば良い

カフェの外に2人を連れ出したかばんちゃんは、あたりの草を見て「抜いても大丈夫か?」とアルパカに尋ねました。問題ないとの答えが返ってきたため、かばんちゃんは2人に指示して草の一部だけを意図的に除草し始めます。この時点で視聴者は「ああ、草のあるところとないところで地面に何か目印を作ろうとしているんだな」ということが伝わるはずです。

3話の時点では、劇中ではまだ「文字」は登場していません。しかし、かばんちゃんが描こうとしているものが文字であろうと何らかの絵であろうと、そこは重要ではありません。目印を作って、カフェの存在に気がついてもらえばいいわけですから、「見て明らかに人工物だとわかるような形」であれば問題ないはずだからです。

除草はフレンズたちだけでなく、ラッキービースト(ボス)も手伝いました。「除草、除草」としゃべりながらモーター音らしき音を出して草を刈り取っているため、ラッキービーストには草刈り機の機能が備わっていると考えられます。ちほーによらず、ジャパリパークにはそこら中に植物が生い茂っていますから、草刈り機の機能があると何かと都合がいいのでしょう。

たとえば、2話でツルに絡まれたシーンがありましたが、周囲に助けてくれる人がいない場合は草刈り機能を使って自力で脱出できたのかもしれません。

アルパカはカフェを始めた「真の理由」を語っていない?

トキ:アルパカはなんでここでカフェをやろうと思ったの?

アルパカ:ここって、隣のちほーに行くときによく通るじゃない?

トキ:鳥系の子はね。

アルパカ:このあたりで一休みできたらとても素敵だなーって。で、ある日、隣のちほーにこの山を見つけたんだ。そういうところで紅茶を出すと「カフェ」になるって聞いて、図書館で作り方を教えてもらったの。

あとはみんなに来てもらうだけだって思ってたんだけど、そのみんなが全然来ないんだよね。

3人(とラッキービースト)が除草をしながら雑談するシーンの会話ですが、注意してみているとおかしな点があることに気が付きます。

トキから「カフェをやろうと思った理由」を尋ねられたアルパカは、「この場所は隣のちほーに行くときよく通る場所だ」といいますが、すかさずトキから「鳥系の子はね」と突っ込まれています。

トキは「鳥のフレンズ以外は通らない」と言っているわけで、以前の考察の中で示した、「トキは客観的な視点を持っているが、アルパカにはそれがない」という仮説の根拠の一つとなっています。

けものフレンズ3話感想その13:アルパカ・スリとトキの意外な共通点
前回記事: 【Bパート ジャパリカフェにお客が来ない理由】 ジャパリカフェにお客がこないことを嘆くアルパカに...

トキのツッコミにも、アルパカは構わず話を続けます。しかし、続くセリフを素直に解釈すると「自分がこの山をよく通るから、休憩するためにカフェを作った」という意味にとれるはずです。ですが、それでは本来意味が通りません。カフェというのは「他人に飲み物を振る舞う場所」であって、「自分自身が休憩するための場所」ではないからです。

アルパカは明らかに「カフェ」という場所の正しい意味を理解しています。その上でトキから「カフェを始めた理由」を尋ねられたのに対して「自分がよく通る場所に休憩所が欲しかったからだ」と答えているのです。これは極めて奇妙なことです。

仲間づくりのためにカフェを始めたアルパカ

ですが、アニメを視聴していた人はおそらくこの部分のセリフに不自然な印象は持たなかったはずです。それは脳内で無意識のうちにアルパカのセリフを次のように解釈していたからです。

この山は自分が隣のちほーに行くときによく通る場所だ。(だから、ほかのフレンズも同じようによく通るだろう)

こういう交通の要衝に休憩所があれば便利なはずだ。(自分も使うし、同じようにほかのフレンズも使うだろう)

休憩所で紅茶を出すと「カフェ」になる。(自分がカフェを始めれば、ここを通るほかのフレンズが利用してくれるだろう)

()内の文言を付け足すと、その後の「あとはみんな(ほかのフレンズ)が来てくれればいいんだけど~」というセリフに自然に意味がつながっていくはずです。

3話のテーマは「孤独なフレンズたちの仲間探し」

アルパカが()内の文言をまったく自分で語らない理由は2つあります。ひとつ目はすでに説明したように「客観的な視点」に欠けていたため、トキの話を聞くまで「自分以外のフレンズはほとんどここを通らない(鳥系フレンズは除く)」という事実に気が付かなかったことです。

もう一つの理由は、「アルパカも実は孤独で、トキと同様に『仲間を探している』ということをそれとなくボカして視聴者に伝えるため」です。

トキが「孤独で、仲間を探しているフレンズである」ということは視聴者にとって明白な事実です。元動物のトキは絶滅種ですし、「仲間を探している」という物悲しい歌詞の歌も劇中で歌っているからです。

しかし、アルパカも実は孤独なフレンズであるという事実は、今回のように慎重に文脈を読めばわかるものの、わかりにくいように巧妙に隠されています。その理由は、おそらくその点をわかりやすくしてしまうと「物語のテーマが暗くなり過ぎてしまうから」でしょう。

前々回(3話 その13)の考察において、「アルパカもフレンズ化にともなって、動物の仲間と別れざるを得なかった」と説明してきました。

(上にも同じリンクを張りましたが、念のためもう一度張っておきます)

けものフレンズ3話感想その13:アルパカ・スリとトキの意外な共通点
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しかし、「フレンズ化すると動物の頃の仲間と一緒に暮らせなくなる」というのは、何もアルパカに限って起こることではありません。何しろ元がどんな動物であろうとことごとくヒトの体になってしまうわけですから、動物の体を持つ仲間と共同生活を続けるのは不可能です。

そのように考えると、ジャパリパークの動物たちは皆「フレンズ化すると孤独になる」ということがわかります。3話までに登場してきたフレンズの中には、ほかにも群れで暮らすフレンズがいましたが、彼女らも全員が「ひとりで暮らして」いました。一見可愛らしく見えるフレンズたちですが、実際はとても孤独で寂しい存在だということがわかります。

ですが、この点を全面に出してしまうと話のテーマが重くなってしまい、けものフレンズのゆるく明るい雰囲気が損なわれてしまいます。ですから、こうした事実が表面に現れないように「アルパカがカフェを作りたいと思った理由=仲間が欲しかった」をぼかす必要があったのでしょう。

明るさの裏に深いテーマが潜んでいる

けものフレンズというアニメは、つくづく重要な情報が巧妙に隠されているアニメです。1話においては、ゲートに巣食うセルリアンを退治した段階で「襲われていたフレンズを救うことができなかった」という悲しい事実が巧妙に隠されています。

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2話においては、「怪力」を発揮してジャパリバスを運ぶサーバルの活躍によって、フレンズ化した翌日に「橋をかける」という発想を思いつくほど成長した「かばんちゃんの異常な知力の高さ」がカモフラージュされています。

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こうした、表面上のゆるさや明るさと、裏に潜んだ重いテーマの二重性がけものフレンズという作品を非常に味わい深いものにしていると思います。