けものフレンズ6話感想その16:「ヘラジカ、やべえよぉ!!」の謎

諸注意

けものフレンズ6話感想その15:カメレオンとニホンツキノワグマの一騎打ち
【Bパート カメレオン対ニホンツキノワグマ】 ライオン対ヘラジカの合戦が続く中、カメレオンの案内で城内...

【Bパート ヘラジカ(?)を狙うライオンの部下たち】

かばんちゃんとヘラジカがライオンの部屋へと進んでいるとき、場外で戦うライオンの部下たちもまた、茂みに隠れる「ヘラジカ(?)」に迫りつつありました。

アラビアオリックス:よし、すぐそこだ。

オーロックス:覚悟しろ、ヘラジカァァァ!!!

サーバル:ううう、重いなこれ・・・。(鎧兜を頭の上に乗せてバランスをとる)ここで囮になれって言われたけど・・・。

アラビアオリックス:スキだらけだぞ!ここから仕留める!(棒を頭に投げつける)

サーバル:おっ!(アラビアオリックスが投げた棒が当たり、兜が鎧から取れそうになる)

オーロックス:えっ!

アラビアオリックス:えっ!!!ご、ごめんよ・・・!そこまでやるつもりじゃ・・・!

サーバル:ああ、やばいよやばいよ!頭ひっつけなきゃ!(兜を鎧の上に戻す)

アラビアオリックス:あ!あわわわわわわ・・・・。

オーロックス:あ!よよよよややや、やべえよ!ヘラジカ、やべえよぉ!!

草むらに隠れていたのはヘラジカ?

ライオンの城から場面が移って、再び屋外で行われているライオンとヘラジカ、それぞれの部下たちの戦いが描かれます。

ライオンの部下たちはこれまで全戦全勝、しかも大将たるライオンの手をわずらわせることなく(それどころか、城内の見張りであるニホンツキノワグマのちからすら借りずに)、アラビアオリックスとオーロックスの2人だけで勝ち続けてきました。

ところが、以前の考察でご紹介してきたように今回は防御に徹するオオアルマジロとシロサイが突破できず、思わぬ時間稼ぎを食うことになります。そこでほかのターゲットを先に仕留めようと考えたところで、草むらの陰で動く大きな角を発見した、というのがこれまでの戦いの推移でした。

けものフレンズ6話感想その13:アルマジロとシロサイ、鉄壁の守り
【Bパート 合戦の始まり】 いよいよヘラジカとライオンの合戦が始まります。城に至る道筋でヘラジカの部下とライオ...
けものフレンズ6話感想その14:部下の力を引き出したかばんちゃんの作戦
【Bパート 城への潜入】 かばんちゃんの作戦により、防御に徹するオオアルマジロとシロサイを、ライオンの...

鎧兜でヘラジカ役を演じ、囮になるサーバル

大きな角を持つ人影=ヘラジカと判断したライオンの部下たちは、オオアルマジロとシロサイを無視して先にそちらを攻撃することにします。オオアルマジロとシロサイは、防御力にこそ優れるものの素早い動きは苦手なので、ヘラジカを狙う部下たちを止めるのは簡単ではありません。

気勢を上げながらヘラジカにせまるライオンの部下たちでしたが、実は草むらの人影はヘラジカではありませんでした。鹿の角を模した飾りをつけた兜と、鎧を頭の上に乗せたサーバルの変装だったのです。

合戦に勝つためのかばんちゃんの戦術

最初にへいげんに姿を現したヘラジカの部下4人のうち、アフリカタテガミヤマアラシとハシビロコウがいつの間にか姿を消していましたが、サーバルの手伝い(頭のの上に乗った鎧のバランスをとるため)をするために草むらの影に隠れていたことがわかります。

これは明らかにかばんちゃんの考えた作戦でしょう。これにてかばんちゃんの作戦の全容がほぼ判明下ので、簡単にまとめておきましょう。

1.味方を3チームに分ける。①ライオンの部下の足止め、②城の偵察、③ライオンのもとへ向かう

2.①チームは、サーバル、アルマジロ、シロサイ、ハシビロコウ、ヤマアラシ。防御力に優れるアルマジロとシロサイがアラビアオリックス、オーロックスを足止めする。サーバルはヘラジカになりすまして囮になる。ハシビロコウとヤマアラシはサーバルのサポート。

3.②チームはパンサーカメレオン。城に潜入して見張り(ニホンツキノワグマ)の場所を確認する。

4.③チームはヘラジカとかばんちゃん。可能な限り戦闘を回避してライオンのもとへ向かう。

基本的な狙いは、ヘラジカをライオンのもとに連れていき、一騎打ちをさせることです。現在のところ、カメレオンがツキノワグマと相打ちになるというハプニングは起こったものの、概ねかばんちゃんの狙い通りに自体が展開していると見ていいでしょう。

しかし、ヘラジカとライオンの戦いが決着する前にライオンの部下が城に戻ってしまっては作戦は失敗してしまいます。

投擲によりヘラジカの頭(兜)が取れてしまった

囮役を務めるサーバルの役割は極めて重要ですが、ここでひとつのトラブルが起きました。頭の上に重い鎧を乗せながらバランスを取り続けるのは簡単ではありません。バランスをとるのに四苦八苦している間に、ライオンの部下が攻撃を仕掛けてきたのです。

サーバルたちにとって幸運だったのは、サーバルがスキだらけ(バランス調整に気を取られており、正体がバレないよう背中を向けていたため)だと見たアラビアオリックスが、遠距離から棒を投げつけて攻撃してきたことでしょう。もし、近づかれていたとしたら偽者だとバレてしまっていたはずです。

オリックスが投げた棒はヘラジカ(偽)の頭に命中。これは実際には「サーバルの頭の上に乗っかっている兜」なので、衝撃でバランスが崩れ、頭の部分が取れかかってしまいました。当然サーバルは慌てて元に戻そうとしますが、これを見たライオンの部下たちのリアクションは意外なものでした。

なぜオリックスはヘラジカの首が折れたのに動揺したか?

棒を投げつけた本人であるオリックスは「そこまでやるつもりじゃ・・・」と己のやり過ぎをわびたのです。

一見「自分が投げた棒でヘラジカの首が曲がってしまい、びっくりしているから」と考えがちですが、それだけではこのリアクションの説明はつきません。なぜなら、ヘラジカは彼女たちにとって「敵の大将」であり、そもそもそれを倒すために戦っているはずだからです。いくら合戦がルール変更で「風船を割るゲーム」になったからといって、このうろたえようは奇妙です。

これに対して、「ヤマアラシが言うように、この合戦は元々遊びのつもりだったはず。それなのに相手に怪我をさせてしまったと思ってうろたえていたのでは?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、だとしたらライオンの部下があれほど合戦前に気が立っているのが不自然です。遊びの合戦、しかも今まで全戦全勝しているのなら、たまたまあったかばんちゃんやサーバルをスパイと疑って食って掛かってくるほどの緊張感を持たないはずだからです。

合戦はライオンたちにとっては「自衛戦争」

この謎を解く鍵は、ライオンの部下とヘラジカの部下、それぞれの合戦に対するモチベーションの差にあります。すでに述べたとおり、ライオンの部下たちは合戦の「前の週」からピリピリしていて、緊張感を持っています。それに対して、ヘラジカの部下たちはやる気こそ高いものの、どちらかと言うと「お祭り的な盛り上がり」に近い印象で、いまいち緊張感は薄いように見えます。

この違いはおそらく、攻める側か守る側かの違いによって生じるものでしょう。ライオンの部下たちにとって、この戦いは「自衛戦争」です。自分たちの大将と城を守るために戦うのであり、必然的に緊張感は高くなります。

一方、ヘラジカの部下たちにとっては「大将の夢を応援するようなもの」と例えたほうが適切でしょう。負けたところで失うものは何もないので、「勝つぞ!」という気持ちは強くても「絶対に負けたくない!」という気持ちはあまり生じないのです。

ライオンの部下も本音では合戦を望んでいない

このように捉えると、ライオンの部下たちに対する捉え方も変わってくるのではないでしょうか。Aパート、城に連れて行かれたかばんちゃんとサーバルがライオンと話している時点では、ライオンの部下たちは「リーダーがやめたがっている戦いに躍起になっている困った部下」に見えます。

しかし、この合戦がそもそも「ヘラジカの思いつきで始まった」という点に注目すると、ライオンの部下たちは、「一方的な『侵略戦争』からリーダーを守る頼もしい部下」だということがわかります。

これは極めて重要なポイントです。なぜなら、ライオンの部下たちも、リーダー同様「本音では戦いを望んでいないが、相手が攻めてくるから仕方なく戦っている」ことを意味するからです。

今までは軽くあしらっていれば勝てていたはずなので、ライオンの部下はヘラジカたちを完全に見くびっていたことでしょう。ヘラジカの首が曲がってしまったときの反応は、「軽く勝てる相手につい本気を出してしまい怪我をさせてしまった。やりすぎた!」というリアクションだと理解するとしっくりきます。

付け加えるのであれば、「ヘラジカが満足しさえすれば合戦を完全に集結させることも可能」ということになります。いわば「2つの国の間で長年続いてきた戦争を終らせる方法が見つかった」といえるわけですが、果たしてこの点が今後どのように描かれていくのでしょうか?