けものフレンズ5話感想その14:ビーバーの悩みの本質を見抜くサーバル

諸注意

けものフレンズ5話感想その13:ビーバーとプレーリー、家づくりのスタート
【Bパート ビーバー&プレーリーの家づくりスタート】 オグロプレーリードッグの活躍で材料の木材を100...

【Bパート アメリカビーバーの悩み】

アメリカビーバー:木材よし。まず土台から作って・・・後々曲がることも考えてと・・・。

かばんちゃん:手順が全て見えているんだね。

サーバル:すごいねビーバー。

ビーバー:では、・・・ちょっと待つっす。先に長さを調べて・・・。一度切ったらやり直せないっすからね。うーん・・・。しばらくかかりそうっす、プレーリーさんをみてきてあげてほしいっす。

サーバル:うん、・・・ほどほどにね。

ビーバーが作ろうとしていたものは?

追記:2017/8/5に一部内容を修正しました。

ビーバーはひとりでボソボソと木材をどのように加工するかつぶやいています。「まず土台から作って」と語っていますが、実際の建築分野にも「土台」と呼ばれる部分があります。

土台(どだい)は、木造建築で、基礎の上に横にして据える材のこと。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E5%8F%B0

ひとつ問題なのは、ビーバーが「建築分野における土台」のことを指していたのか、それとも一般的な用法として「物事の基礎」を指す土台のことを指していたのか、という点です。

しかし、ビーバーはログハウスの写真を見て「家だと思う」と語っていたことからもわかる通り、建築上の知識を持っているわけではありません。おそらくはログハウスの写真から材料となる木にかかる荷重や建物を安定させる構造などを逆算して「それを支える部分が必要だ」と考えたのでしょう。

構造材の耐久計算を(脳内で)行っていた?

次のセリフにある「後々曲がることも考えて」とは何でしょうか?ログハウスで一般的な丸太組工法では、切り欠きを入れた丸太を交差させながら積み重ねて外壁兼構造材(建物の重みを支える部分)にします。

https://www.bess.jp/loghouse/structure.html

垂直に積み上げた丸太が外壁の役割をはたすことになるので、下にある丸太には多くの荷重がかかります。この後実際にビーバーがつくる家もなかなか複雑な構造になるので、特に強い荷重がかかる部分について将来変形してしまわないよう、十分な強度を持たせる方法を考えていたのでしょう。

ビーバーが戸惑っていたのは「外部記憶装置」がないから?

すでにご説明してきたように、ビーバーは周囲の見た目や見本となる写真から建物の構造を把握し、そこからつくりかたを逆算できるという特技を持っています。しかし、ビーバーにとってマイナスなのは、人間のように筆記用具や図面といった記録する用具を持っていないことでしょう。

モデルを元につくり方を逆算するというのは、極めて複雑な工程です。ある程度考えた時点で、そこまでの工程を記録してから作業を進められれば考えるのは大幅に楽になったことでしょう。さらにビーバーは元々心配症な性格というハンディキャップも抱えています。考えているうちに別のことが気になっていろいろなことを考え始めてしまう、となると自分の脳の処理容量を超えてしまう可能性が高くなります。

ビーバーがなかなか作業に着手できなかったのは、そうした原因があると思います。

ビーバーの悩みを直感的に見抜いたサーバル

作業手順を次々に思いつくビーバーの様子を最初は感心しながら眺めていたかばんちゃんとサーバルですが、徐々に「思考のドツボ」にハマっていくに従って逆に心配するようになります。

このとき印象的なのは「時間がかかりそうだからプレーリーの方を見に行って」といったビーバーに対しサーバルが「ほどほどにね」と応えている点です。

サーバルはビーバーが脳内で直感的に行っているであろう複雑な構造計算など理解できるはずがありません。元々家をつくる動物でもなければそうしたことが得意な動物でもないからです。

ですが、サーバルは明らかにビーバーが「なかなか作業に着手できない理由」を理解した上で発言しています。つまり、ビーバーの悩みの本質が「計算が複雑なこと」ではなく、「心配症な性格」であることを理解しているのです。

先ほどご説明したように、ビーバーは強度・耐久性・経年劣化などさまざまな点を考慮した上で、明らかに自身の処理能力を超えたレベルの構造計算を行おうとしています。もしビーバーに図面がかけるなど、作業を途中まで記録する方法があればそれでもいいのですが、そうでなければもっと簡単な作業で済むように考え直したほうがいいはずです。

たとえば、複雑な構造にするのはさけ、ワンルームなど単純な間取りにするといった方法が考えられます。また、失敗を恐れずとりあえずつくってみるというのも重要でしょう。完璧な計算を行う方法がない以上、実際につくって試してみる以外に方法はないからです。

ビーバーはこうした解決の方向性がわからず、あるいはわかってはいても心配症な性格が災いしてなかなか実行に移せないという状況に置かれています。驚くべきことはサーバルは、以上のようなビーバーの思考をすべて直感的に理解した上で発言しているということです。そうでなければ、「ほどほどにね(心配して考えすぎないでね)」という発言はできません。

サーバルの共感力、感情を読み取る能力の凄さ

仮にこの時点のサーバルの思考をイメージしてみると次のようになります。

ビーバーは家のつくりかたが全部イメージできるんだ。すごい!

でも、全然考えが終わらないよ。ちょっと考えすぎなんじゃないかな?

これはもう考え過ぎっていうより余計なことを心配しすぎてるんじゃ・・・。

「ほどほどにね」

このシーンも、私がこれまでの考察の中で述べている「サーバルのコミュニケーション能力の高さ」を示すシーンです。

サーバルのこの対応がいかに優れているか説明するために、もう一つ例を挙げましょう。現在(2017年)、中学生プロ棋士の藤井聡太四段の活躍がメディアなどで多く取り上げられています。仮に、将棋の素人が対局中の藤井四段が苦しんでいる様子を見たとしましょう。もしその人が(将棋のことをまったくわからないにも関わらず)藤井四段が何に苦しんでいるのか、正しく理解して適切なアドバイスができたとしたらそれはとてもすごいことではないでしょうか。

サーバルも同様に、ビーバーが頭のなかで考えていることはまったくわかっていません。しかし、「考えすぎて心配性なところが出てしまっている」という問題の本質だけを正確に読み取り、適切なアドバイスを行っているわけです。これこそ、サーバルが優れたコミュニケーション能力を持っている証だと思います。