消費者の目から見た「ニンテンドースイッチ」ヒットの理由

任天堂から発売されたコンシューマーゲーム機「ニンテンドースイッチ」が異例の大ヒットを記録しています。前回は、「任天堂がどのような意図を持ってマーケティングを行ったか」を考察してみました。

今回は、消費者の視点からニンテンドースイッチがなぜヒットしたのかを分析したいと思います。

ポイントは海外でのヒット・人気タイトル「ゼルダ」への期待

こちらの記事によれば、ニンテンドースイッチは、「任天堂の歴史の中で販売後2日で最も売れたゲーム機」であるとのことです。また、本体と同時に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は「任天堂の歴史の中で最も売れたローンチタイトル」だということです。ニンテンドースイッチのヒットについて考えるとき、「ゼルダ」というビッグタイトルの影響力を無視することはできません。また、任天堂は現在海外売上比率が7割を越えており、海外、それも特に欧米での売上が利益に大きな影響を与えています。

「実物」を目の当たりにしたことが本体への評価につながる

ネット上やSNSなどで、購入者の声を調べると主に次のようなポイントが浮かび上がりました。

  • 欧米ではゼルダの人気は凄まじく、特に今作の評価は高い
  • ゼルダ目当てで買ったが、購入してみたら本体のデザインに驚いた
  • 電車の中でゼルダをプレイしている人を見て、やりたくなった

一般にコンシューマーゲームは、発売と同時にリリースされるタイトルの人気が販売に大きな影響を与えるといわれます。本作は同時発売のタイトルの中に欧米で人気の高いゼルダが含まれていたことから、初動で大きく躍進したと考えられるでしょう。特に今回の「ブレス オブ ザ ワイルド」は美麗なグラフィックや自由度の高いストーリーが好評です。

「ゼルダ」を目当てでスイッチを購入した人は、おそらく本体には最初さほどの興味はなかったはずです。しかし、実際に本体を見てみると「思っていたよりかっこよかった」、「想像よりもコンパクトで使いやすい」といった感想を持ったという方が少なからずいます。こうした「期待していたよりも大きい本体への満足」がサプライズとなってヒットを牽引したと考えられます。

最後は、特に日本国内で聞こえてくる声です。ニンテンドースイッチには携帯モードがあるので電車での移動中などに携帯ゲームと同じようにプレイできますが、「人が楽しそうにプレイしている光景」自体がPRとなり、見た人に「自分もやってみたい」という気持ちを盛り上げたと考えられます。これはいわば口コミと同じようなものですが、実際に自分の目で人がプレイしている姿を目の当たりにしているわけですから、「買いたい」という気持ちを引き起こす効果はそれ以上だったことでしょう。

質の高い商品を作ることが最も大事

おそらく、今回分析した「ヒットの理由」のうち、任天堂があらかじめ狙っていたのはせいぜい「ゼルダの人気による販売促進効果」くらいだったのではないでしょうか?「実物を見て本体のデザインに感動した」、「電車で人がやっているのを見てやりたくなった」といった効果は、狙ってやるのはほぼ不可能だと考えられるからです。しかし、「見た人を感動させるデザイン」、「見ていたらやりたくなるようなゲーム」を作ったことは事実なので、あくまでも「質の高い商品を作り、価値に気づいてもらうこと」が重要だといえるでしょう。

ニンテンドースイッチのヒットが我々に教えてくれることは、価値のある商品を作ることの大切さです。マーケティングには「狙ってできること」と「そうでないこと」があります。「うまく売ろう」ということばかりを考えていてもマーケティングは成功しません。世の中に新しい価値を提供することが本当の意味でのマーケティングのスタートなのです。