オウンドメディアの立ち上げ・失敗でよくある事例3パターン

ブログなどのWebメディアを使って新規顧客獲得を図る「オウンドメディア戦略」ですが、なかなかうまくいかず失敗してしまうことも多々あります。今回は、そんなオウンドメディアのよくある失敗を3パターンにわけてご紹介しましょう。よくある失敗とその原因・理由を知っておけば、これからオウンドメディアを立ち上げ、運営していく方にとってよい教訓となるはずです。

失敗パターンその1:企画を練りすぎてスケジュールが遅延する

ここでいう「企画」とは、オウンドメディア全体の方針・戦略という意味でもあり、新しく作成する個別記事の企画という意味でもあります。オウンドメディア全体の企画については、立ち上げ時に検討を行う必要がありますが、ここで少しでも良いメディアを作ろうとするあまり、方針が定まらずなかなかスケジュールが前に進まなくなってしまうことも少なくありません。

同様に、ブログなどに新しい記事を追加する際、企画を練りすぎてしまってスケジュールの遅延を招く場合があります。特に現在は、SNSなどで情報が爆発的に拡散する「バズ」が発生することもあるという点が、状況を複雑にしています。

本来であれば、オウンドメディアは検索エンジンからの流入を増やすのが王道の戦略です。しかし、SNSで記事がバズれば、検索エンジンだけでなくSNSからも大量の読者流入が見込まれます。そのため、「検索エンジンに評価されるだけでなく、SNSで拡散するような面白い記事を作ろう」と考えてしまい、どんどん記事に求める要件が複雑になっていくという事態が発生してしまいがちなのです。

対策:予算やスケジュールをベースに企画を定める

ひとつ覚えておいてもらいたいことは、オウンドメディアを用いたマーケティングには常に不確実性がつきまとう、ということです。たとえば、どれだけSEO(検索エンジンで上位表示を狙う最適化)を行ったとしても、狙ったキーワードで自社の記事を上位表示できるとは限りません。同様に、SNSで何がバズるのか事前に予測することは非常に困難です。

つまり、今目の前にある記事の企画を完璧にしたところで、それに伴う結果が得られるかどうかは未知数だということです。従って、ある程度の完成度まで企画を仕上げたらスケジュールを前に進め、すぐに次の企画に着手していったほうがいいでしょう。

オウンドメディア全体の企画や、個別の記事企画を行う際は、最初に予算とスケジュールを決定し、それをベースにしていつまでに企画を決めるか、期限を設定しておくと工程の遅延を防げます。

マーケティングは基本的にトライアルアンドエラーの繰り返しです。「トライアル」に完璧を求めていたら、いつまで経っても前には進めません。「完璧でなくとも常に前進していくことが大事」だということを覚えておいてください。

失敗パターンその2:記事のディレクション(編集作業)でつまづく

記事のディレクション(編集作業)とは、ライター(書き手)が仕上げた記事を定められた仕様に沿うように編集していく作業です。具体的には誤字脱字などの校正やコピペチェック、記事の主張がメディアの方針に沿っているかといった点を確認していきます。

通常は、あらかじめメディア全体で記事の仕様(アウトラインなどとも言います)を決めておき、それに合わせて「このように執筆してください」という形でライターに指示が出されます。従って、ライターが指示を遵守できている限りに置いては編集作業の手間はそれほど大きくはなりません。

しかし、文章で表現できる内容は非常に多岐にわたるため、ときにはライターに正しく意図した指示が伝わらず、無駄なディレクションの手間が増えてしまう場合もあります。たとえば、若い女性向けに化粧品などの商品を紹介するオウンドメディアを運営していたとしましょう。このとき、想定読者に受け入れてもらいやすいように、「記事の口調はソフトでフレンドリーに」といった仕様を定め、ライターに指示を出していたと仮定します。ディレクションでどんな問題が発生する可能性があるでしょうか?

こうしたケースでは、「仕様の意図するところがライターに正しく伝わらない」という可能性があります。「ソフト」、「フレンドリー」といった言葉は、とり方によっていかようにも解釈できるため、依頼者の側が想定していたよりも遥かに砕けた口調で記事が仕上がってくる可能性もあるからです。たとえば、最近の中高生が使っているような若者言葉が使われた、企業ブログとしては好ましくない文章が作られてしまう恐れもあるでしょう。

対策:仕様は明確に言語化でき、解釈に違いが生じないように決める

先ほどご紹介した例の問題点は、「仕様に解釈の幅が存在する」という点です。たとえば、家やビルなどの建築物や、プログラミングによって作られるソフトウェアなどの仕様は、作り手の解釈によって左右されません。どこをどのような寸法にするのか、どんな材料を使うのかといった点が明確に、誤解の余地なく定められています。オウンドメディアの記事仕様も同じようにして設定するべきです。

では、先ほどの「若い女性向け化粧品メディア」の場合は、どのように記事仕様を設定すればよかったのでしょうか?「若い女性に受け入れられやすいような口調の記事」を作りたいのであれば、たとえば「語尾はですます調にする」、「1記事中に3~4回、末尾に♪や☆などの記号を仕様する」といった仕様にする方法が考えられます。こういった具体的な書き方の指示であれば、人によって解釈に違いは生じません。「若い女性にとってのソフトでフレンドリーな記事」というイメージを、発注者の側が明確に定義した上で指示を出す必要があったわけです。

失敗パターンその3:ライターのマネジメントでつまづく

すでに述べてきたとおり、オウンドメディアの運営では記事の仕様を決めた上で外部のライターに記事作成を発注をするのが一般的なやり方です。このとき、ライターのマネジメント(管理)に失敗して運営が頓挫してしまう場合があります。

たとえば、月に30件・1日に1件のペースで記事を公開していくオウンドメディアを運営しているとしましょう。その場合、毎月30件の新規記事を作成しなければなりません。ではこのとき、何人のライターにそれぞれ何件記事作成を依頼し、いつまでに提出するよう指示を出せばいいでしょうか?

理論上は、30人のライターを雇って1件ずつ記事作成を依頼しても、1人のライターに30件の記事作成を依頼してもスケジュールを守ることは可能です。しかし、実際にやってみるとそううまくことは運びません。「ライター」といっても、そのスキルや得意ジャンルはひとによって千差万別、求める報酬額もそれぞれ異なります。限られた予算の中で最適な人員配置を行うのは簡単ではありません。

「できるだけお金をかけず、安定的に、スケジュールを守って記事作成を進めたい」というのがオウンドメディア運営者の共通する願いだと思いますが、そのレベルまで考える以前にメディア運営が暗礁に乗り上げてしまうこともあります。「ニッチなジャンルなので、書き手が1人も見つからない」、「書き手の人数は確保できたが、仕上がった記事を確認したら全部イメージとはかけ離れた仕上がりだった」という事態は非常によくある話です。広告代理店や編集プロダクションなど、普段からライターのマネジメントを業務にしている方であれば、「あるある」とうなずいていただけるのではないでしょうか。

対策:メディア運営を中断し、ノウハウを持ったプロに相談する

ライターのマネジメントは非常に難しい作業です。一朝一夕に解決する簡単な方法ははっきりいってありませんが、予算とスケジュール、人員に余裕を持って進めれば問題が生じても対応する余力を残しておけるでしょう。

正直にいって、この点で問題を抱えてしまった場合、解決するのは極めて難しいと言えます。ライターのマネジメントノウハウを持った広告代理店や編集プロダクションに相談するか、オウンドメディアの運営自体を一旦休止し、ゆっくりと対策を練ったほうがいいでしょう。ライターのマネジメントに問題を抱えたままメディア運営を続けると、さらに問題が根深くなり、より解決するのが難しくなります。慢性的に予算の不足とスケジュールの遅延に悩まされる、やっかいなメディアが生まれてしまうかもしれません。

 3つの失敗はどれが一番厄介?

今回は、オウンドメディアの立ち上げや運営中によく遭遇する失敗例として、3つのパターンをご紹介してきました。私自身は、お伝えした3パターンそれぞれの解決難易度は次の順番になると思っています。

3.ライターのマネジメントでつまずく

2.記事のディレクション(編集作業)でつまずく

1.企画を練りすぎてスケジュールが遅延する

ちょうど、3→2→1のパターンで、後から紹介した失敗のほうがより解決が困難だと考えています。現在、自力でオウンドメディアの運営に取り組んでいる企業や団体の方は、これらの失敗に直面したら、まずはご紹介した対策を試してみてください。

1はおそらく、やり方を間違えなければ自力で解決することも不可能ではないはずです。2についても、ある程度オウンドメディア運営の経験を積んでいれば自力で解決できるでしょう。3については、どうしてもある程度の知見がないと解決するのが難しいので、無理をせず専門の会社にサポートを依頼したほうがいいでしょう。

私自身は、個人としてコンテンツマーケティングのコンサルティング業を営み、また編集プロダクションにディレクター・ライターとして所属し、クライアントからの依頼を受けてこれらの問題解決に取り組んでいます。もし、この記事を読んで思い当たる部分があり、話を聞いてみたいという方がいたら、気軽にご相談ください。