ノイエ銀英伝1話感想・考察その2「映像で見る心理描写とラインハルトの智謀」

ひとつ前の記事:

ノイエ銀英伝1話感想・考察その1「新アニメ版の作品テーマ」
田中芳樹氏原作の小説「銀河英雄伝説」が、2018年4月から再アニメ化されました。今回は第1話である「永遠の夜の中で」の冒頭のシーンを取り上げ...

第1話「永遠の夜の中で」より、今回取り上げるシーン

銀河帝国軍を率いる上級大将ラインハルト・フォン・ローエングラムは、自軍の2倍の兵力である自由惑星同盟の艦隊と対峙していた。シュターデン中将を始めとする幕僚たちは自軍の不利を指摘、撤退を具申するものの、ラインハルトはその進言を却下する。

シュターデン中将、フォーゲル中将、エルラッハ少将は、影でラインハルトへの不満を口にするが、ひとりファーレンハイト少将だけはその奇策を評価し、メルカッツ大将にたしなめられる。

Binary Star/Cage(期間生産限定盤A)(『銀河英雄伝説 Die Neue These』盤)(DVD付)

 テロップでわかる主人公の立ち位置

銀河英雄伝説では、登場人物が非常に多く登場するため、主要な人物は登場した時点で字幕が表示されます。その演出が初めて現れるのが今回のシーンです。

最初に字幕で紹介されるのは、当然ながら主人公でもある「ラインハルト・フォン・ローエングラム」です。「銀河帝国軍 上級大将」と所属・階級が表示されることから、主人公が銀河にある3つの勢力のうち、「ローエングラム朝銀河帝国」の軍人であるということがわかります。

この後の登場人物が全員、彼よりも階級がしたであること、会議のシーンでの会話の内容から、彼が今回登場する艦隊の司令官であることが説明なしでもわかるようになっています。

キャラクターの配置で描かれる心理描写

ラインハルトは冒頭のシーンで、「老いぼれども」をバカにしていました。この老いぼれどもというのが、彼の部下たちのことであったことがこのシーンでわかります。彼らは明らかにラインハルトよりも年長であり、「年少の上司と年長の部下」という構図になっています。

この時点で、ラインハルトと若くして高い地位に上ったことと、そんな彼に従わなければならない年長の部下たちは、内心ラインハルトのことを快く思っていないことがある程度推測できるはずです。

実際、会議の後のシーンでは、彼らは本音を吐露し、ラインハルトを「小僧」と罵っています。ただし、このときの態度には人によって差が見られます。

シュターデン、フォーゲル、エルラッハはラインハルトへの敵意を剥き出しにしていますが、ファーレンハイトは逆に好意を表しています。部下の中で最も階級が高く、見た目から年齢も上であろうと考えられるメルカッツは、ファーレンハイトをたしなめているため、態度にこそ表さないものの内心はラインハルトを信頼していないであろうことが伺えます。

この部下たちの会話シーンでは、ラインハルトを支持しない3人が右側に、好意・中立的立場の2人が左側に位置し、画面上の配置からも5人のスタンスがわかるような作りになっています。

部下の反対を完璧に予想して抑え込んだラインハルト

ここで一度、ラインハルトと部下たちの会議シーンに戻ってみましょう。部下たちの代表として、シュターデンがラインハルトに撤退の意見具申を行いました。シュターデンは撤退を具申する理由として以下の3つを挙げています。

  • かつて帝国が同盟に敗北した「ダゴンの殲滅戦」に今回の状況が似ていること
  • 敵軍の兵力が自軍の2倍であること
  • 敵軍が3方向から自軍を包囲しようとしていること

シュターデンが挙げたポイントそのものは、客観的な事実であり、ラインハルトも「卿の雄弁は認める」とあえて否定していません。ラインハルトはこのシーンで、事前に部下たちが自分の作戦に反対するであろうことを予期し、「我が軍が不利だといいたいのだろう」と話を促しています。最初から、シュターデンの指摘を予想し、それに対する反論を用意していたのでしょう。

ラインハルトに話を促されると、最初シュターデンは勇んだように前に出て自軍がいかに不利な状況にあるか語りだしました。おそらく、ラインハルトの口から「我が軍が不利」という言葉が出たので、「ラインハルトも自軍の不利を悟っている。もしかしたら、撤退する口実をほしがっているのかもしれない」と考えたのかもしれません。

しかし、ラインハルトはシュターデンの予想を裏切り、撤退の具申を却下。次のように反論しました。

  • 敵は数こそ多いものの兵力を分散している
  • 自軍は兵力を集中しており、敵を各個撃破する好機である
  • 皇帝からの命令を果たさずに撤退するのは名誉ある行為ではない

シュターデンの主張同様、ラインハルトが指摘した点もまた客観的な事実です。ただし、シュターデンが主張する内容を別の側面から捉え直したような内容になっており、どちらを正しいととるかは捉え方によって異なります。

そのため、シュターデンは「実績」というポイント持ち出して反論しようとしました。「自分の意見のほうが用兵の常識にかなっている。あなたには意見を信じさせるほどの実績がない」と指摘したのです。丁寧な文言を選んではいますが、ようは「階級は下でも自分たちのほうが実績は上だ」と言っているわけで、ある意味ではラインハルトを脅しているとも言えるでしょう。

この後、シュターデンはさらに声を荒げて「勝算があるのか?」と畳み掛けていますが、これは「非常識な方法をあえて選ぶなら、その失敗の責任を取る覚悟があるのか」という意味だと解釈できます。ただし、ここでラインハルトが力強く「ある(負けたら責任を取る)」と答えてしまったので、話はそこで終わってしまいました。

一連のシーンで、シュターデンは「用兵の常識」という理を解いてラインハルトを説得しようとしたわけですが、ラインハルトはそれに対して「自分が責任を取るから指示に従え」と応えたわけです。軍隊は下のものが上のものの指示に従うのがルールですから、上官にそう言われてしまったら部下にもう反論の術はありません。

ラインハルトが終始冷静、かつ余裕な態度を見せていたのは、こうした一連の展開を予想していたからでしょう。

ノイエ銀英伝1話感想・考察その3「映像で伝えるSFとキルヒアイスの大手柄」
ひとつ前の記事: 第1話「永遠の夜の中で」より、今回取り上げるシーン 敵軍との接触まで、ラインハルトは部下のキル...