(3/3)ポプテピピック最終話に蒼井翔太が登場した理由を考察

ポプテピピックの12話「#12 THE AGE OF POP TEAM EPIC」には、なぜか声優の蒼井翔太が実写で登場し大きな話題になりました。しかし、なぜ突如として実在の人物がアニメに登場したのか、理由がわからず困惑した方も多いのではないでしょうか。

3記事に渡って行ってきたポプテピピック12話の考察ですが、最後はその蒼井翔太にまつわる謎について解説したいと思います。本記事は3記事からなる一連の解説の3つ目なので、前の記事をまだ見ていない方は下記のリンクより先に1、2記事目を見てから続きをご覧ください。

(1/3)ポプテピピック第12話「#12 THE AGE OF POP TEAM EPIC」を考察
アニメファンの間で大いに物議を醸した「ポプテピピック」も、いよいよ最後となるのが今回の12話です。制作陣が最終回にどんなネタ・演出を仕込んで...
(2/3)ポプテピピック1話~12話に秘められた伏線の考察まとめ
ポプテピピックの12話「#12 THE AGE OF POP TEAM EPIC」について考察します。この記事は合計3記事からなる考察なので...

物語中の蒼井翔太の役割

アカシックレコードとの戦いに勝利したものの、ピピ美が力尽き真っ白になってしまったのを見てポプ子は大いに悲しみます。そんなタイミングで登場したのが蒼井翔太でした。彼は「時を自由に行き来できる」と告げ、ポプ子を連れて過去へと向かっていきます。つまり、物語上の蒼井翔太が持つ役割は、「ポプ子を過去の世界に戻すこと」だったと言えるしょう。

ポプ子は過去のどの時点まで戻ったのか?

では、ポプ子は過去のどの時点まで戻ったのでしょうか?その答えを探るためには、ポプ子とピピ美の最終決戦時のパロディ元を紹介しなくてはなりません。

https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3

ポプ子とピピ美は、最終決戦の際、合身して金色の姿に变化しました。これは、SDガンダム外伝シリーズに登場する「スペリオルドラゴン」のパロディです。SDガンダムもまた「機動戦士ガンダムシリーズ」を元とするディフォルメ作品ですが、スペリオルドラゴンが登場した「騎士ガンダム(スダ・ドアカワールド)」の世界観だけでなく、「武者ガンダム」という戦国時代をイメージさせるものもあります。

https://dic.pixiv.net/a/%E6%AD%A6%E8%80%85%E9%A0%91%E9%A7%84%E7%84%A1

「武者ガンダム」シリーズのひとつに、「SD戦国伝 天下統一編」という作品が存在します。「SD戦国伝」は、光と闇、2つの勢力が繰り広げる戦いを描くものなのですが、この「天下統一編」には大きな特徴があります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/SD%E6%88%A6%E5%9B%BD%E4%BC%9D_%E5%A4%A9%E4%B8%8B%E7%B5%B1%E4%B8%80%E7%B7%A8

物語は未来の人物が、結果として過去を変える物語である。タイムパラドックスの作用により、過去が変わった為後の未来がどのように変貌したのかは詳しくは書かれていない。

「SD戦国伝」では、主人公が属する光の勢力が闇の勢力に何度も敗北を喫してきました。天下統一編はそうした歴史を変えるため、「主人公が過去にタイムスリップしてれ基礎を塗り替える」というストーリーになっているのです。

今回、ポプテピピック最終話のパロディ元として「SDガンダム」が選ばれたのは決して偶然ではないでしょう。12話冒頭のアイキャッチにも描かれている黄金に輝くポプ子とピピ美のパロディ元に「騎士ガンダム」を選んだのは、「SD戦国伝」と対になるようにしたのだと思います。途中で挿入されるアイキャッチも同じガンダムである「機動武闘伝Gガンダム」のパロディになっています。

SDガンダムのストーリーからポプ子の動向を推測

ここで最初の疑問である「ポプ子はどの時点の過去まで戻ったのか?」について考えてみましょう。仮に「SD戦国伝」のストーリーがこれらのシーンの元になっているとすれば、「SD戦国伝で主人公がどの時点まで時をさかのぼったか」を考えれば、ポプ子が戻った時点も想像できるはずです。

「SD戦国伝」において主人公は歴史を変えるため、自分が生まれるはるか昔、「光と闇の戦いが始まった最初の時代」までタイムトラベルしました。このことと対応させて考えると、ポプ子は「キングレコードとの戦いが最初に始まった時点」、つまりは「自分がマクベスの箱庭に捕らえられる前」まで戻ったと考えられます。

しかし、未来から帰還したポプ子は、自分がマクベスの箱庭に捉えられることも、その後の展開も全て知っています。ですから、キングレコードに捕らえられても焦ることはなかったでしょうし、ピピ美が助けに来てくれた後の最後の戦いも問題なくこなすことができたはずです。

Bパートの戦いで、ピピ美が真っ白にならず無事に2人で勝利をおさめることができたのは、このタイムトラベルがあったからこそでしょう。

1~12話のBパートは「未来から帰ったポプ子が体験した2週目の世界」?

私はアニメのストーリーについて考察するとき、基本的に「劇中で描写されたことを材料に考える」という方針で臨んでいます。ですから、「蒼井翔太の導きによりポプ子は過去に戻り、その結果ピピ美を犠牲にせずキングレコードに勝利することができた」という説も、劇中にそれを示す描写が存在するということです。

タイムトラベルを行うシーンや、「SDガンダム」のパロディはもちろん証拠となりますが、それ以上により大きな証拠があります。それは1~12話までの「声優を交代して描かれるBパート」の存在です。

Aパートとほぼ同一の映像を、ポプ子とピピ実の声優を交代して繰り返すBパートの存在は、単なるパロディ演出のひとつだと考えられてきました。しかし、12話のAパートラストで「声優に連れられたポプ子が、過去に帰る」という印象的な演出によって、ストーリー上も重要な意味があったことが明らかになったと言えるでしょう。

私はこれまでの考察の中で、「ポプテピピックの中で直接ストーリーのつながりが存在する=伏線が仕込まれているのは、1~12話のアニメオリジナルパートのみ」と主張してきました。それ以外のパートにも「エイサイハラマスコイおどり」に代表されるように、ほかのパートと関連したネタがありますが、これらは伏線や暗喩と言うよりもセルフパロディとして捉えるべきだろうと考えています。

しかし、ひとつだけ例外だと考えているのが、この「Aパートと同じ内容が繰り返されるBパート」の存在です。前述のように、これは蒼井翔太が引き起こしたタイムトラベルによってポプ子が#1~#12の世界をもう一度繰り返したことを示すものだったのでしょう。

「蒼井翔太」とはどんな人物か?

ここで一度「蒼井翔太」という声優について説明しなければなりません。

蒼井翔太は2011年に声優としてのデビューを果たした、キング・アミューズメント・クリエイティブ本部(キングレコードのレーベル)所属の声優です。彼はポプテピピップの12話で唐突に登場したため、多くの視聴者が何のために登場したのか理解できなかったはずです。

先程は、「蒼井翔太が登場した理由」について考察し、「Aパート・Bパートの繰り返し(ポプ子のタイムトラベル)を説明するため」という結論に至りました。ここからは、「ではなぜタイムトラベルの案内役に蒼井翔太が選ばれたのか」、その理由を考えてみたいと思います。

蒼井翔太は2018年現在、「新人声優」と呼んでよいキャリアです。私もこの人物についてはほぼ何も知らなかったのですが、ポプテピピックでその存在を知ってから彼について調べ、興味深い記述を見つけました。

https://dic.pixiv.net/a/%E8%92%BC%E4%BA%95%E7%BF%94%E5%A4%AA

声優という職業を意識するきっかけとなったのは「美少女戦士セーラームーン」で石田彰が演じていたフィッシュ・アイとのことである。男性声優が女性の声で演じていたことに衝撃を受けたそうだが、蒼井も現在は女性の声で女性キャラを演じている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%BC%E4%BA%95%E7%BF%94%E5%A4%AA

所属当初からアニメやゲームの仕事をしたいと伝えていたが、経験もないのでなかなか認めてもらえなかった。3年程活動するうちに、人生は一度きりだし、自分のやってみたいことを諦めずに一歩踏み出したいと思い、アニメやゲームに携わる道に進みたいと自ら辞意を申し入れ[4]、2010年1月14日にアワーソングスとのマネージメント契約が終了し[5]、フリーとなる[6]。

人魚という存在に特別な思いを持っている。舞台『スマイルマーメイド』で人魚の娘「マリナ」の役を演じた時には「声優が?」「男性が?」と賛否両論の声があったが、本人はインタビューで「今の自分にしか表現できないものがあると考えた時、もっと物語の姫君たちを、そして人魚姫を演じてみたいと思ったんです」と語っている。

このように、WikipediaやPixiv百科事典の記述を見る限り、蒼井翔太は「声優という職業に並々ならぬあこがれをもっていること」、「男性が女性の役を演じるという部分に強い想いを抱いていること」がわかります。

ポプテピピックで声優が果たした役割

アニメ「ポプテピピック」は、「声優」の存在抜きに語ることはできません。本作における声優の存在は、次のように要約することができます。

Aパート・Bパートで同じキャラクターを別の声優が演じ、個々の演じ方の違いを表現した。

通常のアニメーションでは、ひとりのキャラクターは同一の声優が演じ続けるのが普通です。しかし、ポプテピピックにおいてはあえて毎回、主役2人の声優を交代するという手法が取られました。

さらに、各話のA・Bパートという、ほとんど同じ映像を繰り返し、声優だけを変えるという手法も用いられています。同じキャラクター、同じ映像を異なる声優に演じさせることによって、個々の声優が持つ魅力・演じる技術の違いを浮き彫りにし、それを視聴者に楽しませたといえます。

女性キャラであるポプ子・ピピ美を女性だけでなく男性が演じ、声優の演技力の高さを示した。

女性の役を男性が演じることは、実写の表現の世界では稀です。アニメにおいても決してよくあるパターンではありませんが、異なる性別のキャラクターを演じるというのは本来非常に高度な技量を必要とすることです。

蒼井翔太が声優を目指すきっかけとなった「セーラームーンSupers」における石田彰の演技のように、見る人に感動を与えるような演技ができる声優はまさに日本のアニメ会における宝だと言っていいでしょう(正確には石田氏が演じたキャラクターは女性らしい男性ですが)。

このように、「同じキャラ・映像を異なる声優に演じさせる」、「本来の性別とは別の性別のキャラクターを演じさせる」という2つの方法によって、ポプテピピックは声優がもつ技術の高さと、その個性に秘められた魅力を広く伝えることに成功したといえます。

なぜ蒼井翔太が登場したのか?

ここで最初の疑問であった「なぜ、タイムトラベルの案内役に蒼井翔太が選ばれたのか?」という疑問に立ち返ってみましょう。今回のタイムトラベルが「伏線」となっているBパートの存在(および、そこで行われる声優交代)は、「声優の素晴らしさ」を視聴者に伝えるために仕込まれたものです。

そして蒼井翔太は、「声優という職業に対する強い想い」と「自分の性と別の性を演じることへの想い」を持った声優でした。これらのことを合わせて考えると、むしろ蒼井翔太以上にこの役割がぴったりな存在はいないと言っていいでしょう。

ベテラン声優から新人に贈られた激励の言葉

以上でポプテピピック12話の内容についての解説は終わりですが、最後に私が12話の中で最も印象に残った演技について少しお話ししたいと思います。

個別のシーンでいえば、私はSDガンダムが好きなのでラストのスペリオルドラゴンのパロディも印象に残っているのですが、「演技」という観点からあげられるのは、Aパートのラスト、蒼井翔太の導きによってポプ子(小山茉美)がタイムトラベルをするシーンです。2人の会話内容は次のとおりです。

ポプ子(小山茉美):あんた誰や?

蒼井翔太:あっ。蒼井翔太です。

ポプ子(小山茉美):そう!頑張ってね!

ポプ子を演じる小山茉美の名前を括弧書きでいちいち書いたのには理由があります。この一連の会話は、セリフのようでもあり、同時にアドリブのようでもあるのですが、その理由は、最初の「あんた誰や?」という問いかけの際は明らかに「ポプ子」の声で演じられているにもかかわらず、最後の「そう!頑張ってね!」はポプ子というキャラクターではなく、「小山茉美」の声で演じているように聞こえるからです。

つまり、これらの会話は「Dr.スランプアラレちゃん」の則巻アラレや、「名探偵コナン」のベルモット役などで知られるベテラン声優「小山茉美」が、駆け出しの新人声優である蒼井翔太にエールを送ったシーンだと解釈できます。

ここまででご説明してきたように、ポプテピピックがこれほど多くの人を楽しませる作品に仕上がったのは、声優たちの力が非常に大きく寄与したといえます。小山氏に限らず、有名声優も多数登場しました。そういう「声優」の代表として小山氏が、本作の締めくくりとして蒼井氏に激励の言葉を送った、と言えるでしょう。

蒼井翔太はポプテピピックでの声優の活躍を称える象徴的存在だった?

考えてみると、蒼井翔太が劇中で語った「僕は時間を自由に行き来できる」というセリフも意味深いものです。この言葉は「僕(声優)は、過去に演じられたキャラクターを再び演じて新しい感動を生むことも、全く新しいキャラクターを演じて未知の感動を生み出すこともできる、そんな素晴らしい職業だ」と主張しているようにも感じられるからです。

ポプテピピックの原作は4コマ漫画でした。漫画とアニメの違いはいろいろありますが、「一連の動きがある(コマとコマの間の動きも描かれる)」という点と、「音響(SE・声優)の存在」が挙げられます。

ポプテピピックは、1~12話までの「一連の流れ」を伏線を用いて象徴的にまとめ、音響のうち、SEを主にパロディとして用い、また声優の演技を最大限に引き立てる演出方法によって素晴らしいギャグアニメを創り出しました。

BパートのEDは、最後に重要な役割を果たした蒼井翔太のダンスで締めくくられます。この人物は、本作を大いに盛り上げ、視聴者を楽しませてくれた「声優」の象徴だったのかもしれません。

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