けものフレンズ11話感想その20 :サーバルがかばんちゃんとともに旅を続けてきた理由

諸注意

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【Bパート サーバル、かばんちゃんをかばい犠牲になる】

セルリアンを海に沈める作戦中、セルリアンの攻撃によってバスが横転し、使えなくなってしまいました。横転したバスから逃げ出した3人を、セルリアンの攻撃が襲います。

サーバル:かばんちゃん!ボス!

(サーバル、かばんちゃんとボスを近くの茂みに投げ捨てるも、自身はセルリアンの攻撃を受けて取り込まれる)

かばんちゃん:うわぁぁぁ!!サーバルちゃん!

(サーバル、セルリアンの体内を移動していく)

ヒグマ:大丈夫か!

かばんちゃん:サーバルちゃんが・・・サーバルちゃんが・・・。

ヒグマ:くっ!あのサイズ、私だけでは・・・。

かばんちゃん:たべられたら死んじゃうって・・・記憶がどうとかって!(サーバルを助けに行こうとする)

ヒグマ:(かばんちゃんを引き留める)バスがダメなら、火で誘導だろ!失敗したら、更に犠牲が出る。あるいは、お前だけ逃げてもいい。だが、今向かって行っても無駄な犠牲になるだけだ。

かばんちゃん:うう・・・。・・・セルリアンが船に近づく位置まで行ったら、ラッキーさん、船の明かりをつけて動かし始めましょう。

ヒグマ:距離に注意しろ、さっきみたいな変形があるかもしれん。ボスは私が持つ。お前は走れるな?

かばんちゃん:はい。バスがなくなった今、この松明しかありません。夜の間しか使えない手ですから急ぎましょう。

(かばんちゃん、ヒグマが持つ松明に点火)

ヒグマ:確実に沈めるぞ。

(かばんちゃん、ラッキービーストを一瞥する)

ラッキービースト(ボス):あっ・・・。

ヒグマ:行くぞ!

(ヒグマ、船に向かって移動開始)

ヒグマ:とりあえず、追いつかれないように距離を・・・あいつは?

(ラッキービースト、瞳の周りが七色に発光する)

サーバルが「セルリアンに食べられる」

今回のシーンは、サーバルがセルリアンに取り込まれるという衝撃的なカットからスタートします。明確な描写はありませんが、バスが横転したため、おそらく身体能力に劣るかばんちゃんとロボットであるラッキービーストは、とっさに運転席から逃げ出すのが遅れてしまったのでしょう。サーバルは2人を連れてバスの運転席から脱出したものの、そこでセルリアンの攻撃を受けてしまいます。

とっさにかばんちゃんとボスを投げ飛ばし、2人を救ったサーバルでしたが自身は攻撃を避けられずセルリアンの腕から体内に取り込まれてしまいました。

サーバルがなぜ戦いに赴いたか、その心中を推測する

以前の考察で語ったとおり、今回の作戦に参加した7人のフレンズの中で、唯一サーバルだけがなぜこの作戦に参加したのか理由が明確に語られていません。そこで今回はサーバルが最後に取った「かばんちゃんとボスを助けるため、自らが犠牲になる」という行動をヒントに、サーバルの心の中を推測してみましょう。

けものフレンズの劇中でサーバルの内面が描かれたシーンはそれほど多くありません。しかし、数少ないそうしたシーンで描かれるのは、必ずといっていいほど「かばんちゃんとの関係」です。つまり、サーバルの内面は必ず「かばんちゃんとの関係ありき」で描かれていることになります。

代表的な例をいくつか挙げましょう。1話でかばんちゃんと出会ってから、さばんなちほーの出口で別れるまで、サーバルはかばんちゃんに対して「保護者」として接していました。かばんちゃんは自分が何者かもわからない、赤ん坊同然の状態であり、サーバルにとっては庇護するべき対象だったからです。それはサーバル自身にとっても普段は「ドジ、ゼンゼンヨワイ」と言われる自分を「頼ってくれる存在ができた」ということを意味していました。

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その後、かばんちゃんはサーバルと一旦分かれ、「独り立ち」します。ここで保護者としてのサーバルの役割は終わりを告げたわけですが、サーバルはその後も旅について行きました。これは初めて自分のことを必要としてくれたかばんちゃんに、サーバルの方も思い入れを持っていたためだと考えられます。この後、2人の関係は「友達同士」に変化したといえるでしょう。

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つまり、1話でかばんちゃんと一度分かれ、その後再び合流してからのサーバルの旅の目的は、「自分にとって特別な友達であるかばんちゃんと一緒にいる」ということが目的だったということになります。

それ以降も基本的にサーバルの行動原理は、「かばんちゃんありき」で展開して行きます。3話でひとりこうざんの断崖絶壁を登ったときも、「待っててかばんちゃん」と発言していますし、7話で野菜をたくさんカットしたことをかばんちゃんに褒められた際は嬉しそうにしていました。10話のロッジでも、港についた後のかばんちゃんの動向を気にしていましたし、船を犠牲にしてセルリアンを倒そうとかばんちゃんがいい出したときも、かばんちゃんがパークの外に行けなくなることを心配しています。

命をかけてかばんちゃんを守ったサーバル

今回のセルリアン退治は、「パークとそこで暮らすフレンズのために自分の命を危険にさらせるか?」という点が大きなテーマになっていました。ほかの6名はそれぞれ異なる理由でその覚悟をしていたわけですが、サーバルの場合は「パークのためでもほかのフレンズのためでもなく、かばんちゃんのために命をかける覚悟」をしていたことになります。そして彼女の覚悟が本物だったということが、今回の行動によって明らかになったわけです。

けものフレンズという作品は、「フレンズ」という存在をさまざまな側面から描いています。1~7話に登場したフレンズは、基本的に「動物からヒトの姿に変化したことに戸惑っている存在」でした。こうした「中身は動物、外見はヒトのフレンズ」がいる一方で、8~11話に登場したフレンズたちは、皆どこかヒトに近い文化的な側面を持っていました。彼女たちは「人の姿でいた時間が長いために、ヒトの文化的影響を受けてヒトに近づいたフレンズ」だといえるでしょう。

サーバルは最もヒトに感化されたフレンズ

サーバルは、これら2つのいずれにも含まれません。かばんちゃんという自分にとって特別な存在のために全身全霊を捧げる姿は、現実世界で例えるなら飼い主に忠実なペットの犬のような存在として描かれているといえます。サーバルだけがこのような特別な立ち位置になったのは、「ヒト」であるかばんちゃんと最も長く、最も近い位置で過ごしながら旅を続けてきたからでしょう。

つまり、ちょっと語弊のある言い方ですが、サーバルは「ヒト(かばんちゃん)に飼いならされ、家畜化された動物(フレンズ)」と表現できます。もっと穏当な表現にするならば、「ヒトのそばにいたことで、パークで最もヒトに感化されたフレンズ」という言い方のほうが適切かもしれません。

このように解釈すると、けものフレンズという作品は、かばんちゃん=ヒトと、フレンズのとのふれあいを通じて、「ヒトと動物の関係性を描いた作品」として捉えることが可能になります。

そして、物語の中で描かれた「動物(フレンズ)のあり方」こそが、

  • 自然のまま生きる=動物だったころと変わらない生活を送るフレンズ
  • ヒトと接する環境で生きる=ヒトの文化に影響された生活を送るフレンズ
  • ヒトの文化圏に完全に入り込んで生きる=ヒトに感化されたフレンズ(サーバル)

以上の3つであると考えられるわけです。

セルリアンに食べられるシーンを衝撃的にするための布石

ここで再び取り上げたシーンの考察に移りましょう。サーバルを失ったことで、かばんちゃんは目に見えて動揺しますが、「軍人」のヒグマは至って冷静にかばんちゃんを諭します。「逃げるか、作戦を続行するか」の2択を迫られ、冷静さを取り戻したかばんちゃんは火を使ってセルリアンを船まで誘導することを選びます。

このあたり、キンシコウと出会ったときに「セルリアンに食べられたらどうなるか」という話を盛り込んでおくことで狼狽するかばんちゃんに視聴者が共感できるような作りになっているわけです。

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ラッキービーストの瞳が七色に輝いた理由は?

ヒグマが松明を持って囮になり、同時にラッキービーストを抱えて逃げる役を買って出ます。バスがない以上、かばんちゃんの身体能力には期待できないためヒグマに役割が集中してしまうのはやむを得ないことかもしれません。かばんちゃんは一旦、ヒグマとともに船に向かう素振りを見せましたが、ラッキービーストにそっと目配せをすると、ひとりセルリアンのそばに残ることを選びました。

かばんちゃんがこの後どういった行動に及んだのかは、次回の考察で取り上げたいと思いますが、この場面でのラッキービーストの行動にも注目が必要です。かばんちゃんの目配せを受けたラッキービーストは、何かを察したのかわかりませんが、ヒグマに抱えられて移動する際、瞳を七色に輝かせながら音を発しています。

これまでラッキービーストの瞳が輝いたときは、いつも緑色で、かつミライさんのメッセージを再生するときに限定されていました。それが今回、いつもとは異なる色に輝いていたわけで、これはラッキービーストが「今までにない、特別な行動を取っていることを示すシーン」だと考えていいでしょう。