機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)考察-第二話「白いガンダム」

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)- 第二話「白いガンダム」の考察です。

※第二話放送終了後~第三話放送開始前までに視聴した感想・考察です。

第一話の考察はこちら

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)考察-第一話「赤いガンダム」
機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)- 第一話「赤いガンダム」の考察です。 ※第一話放送終了後~第二話放送開始前...

初めてのOP「Plazma」考察

第一話はOPがありませんでしたので、この第二話で初めて「Plazma」に合わせたアニメーションが公開されました。このOPアニメからもなにか読み取れることがないか考えてみました。

イントロは、コロニーの町並みを背景にキラキラを感じ取りながら振り返るマチュが登場します。注目すべきは、マチュの背景の建物がすべて逆さまになっていることでしょう。コロニーの暮らしを「偽物」と考えるマチュの内面が投影されていると考えます。

次に登場するニャアンは、交差点の途中で立ち止まりつつ振り返ります。続くシーンでは街頭ディスプレイに映し出される赤いガンダムとシュウジが登場。これらのシーンに共通するのは「カラフルなライトアップされた町並み」「濡れた路面」といったサイバーパンク特有のモチーフです。

サイバーパンク: cyberpunk)は、近未来ディストピアを舞台としたサイエンス・フィクション(SF)のサブジャンルである。人工知能サイバーウェア英語版)などのテクノロジーが高度に発達した社会で、抑圧的な支配や腐敗した体制などのディストピアに反抗する姿勢が描かれる[1][2]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%AF

「ブレードランナー」などに代表されるサイバーパンクには、次のような特徴があります。

サイバーパンクの物語には人工知能ハッカー巨大企業との対立が含まれることが多く、遠い未来や宇宙よりも、近未来の地球を舞台とする傾向がある[22]。さらに、脱工業化社会ディストピアで大規模な文化的混乱が起こったり、開発者が予想もしなかったような方法で技術が使用されたりすることが多い[25]ブルース・スターリングは、自身が編集した『ミラーシェイズ英語版)』の中で、「サイバーパンクでは、特定の中心的なテーマが繰り返し登場する。義肢、埋め込まれた回路、整形手術、遺伝子変化などの身体への侵略というテーマや、脳コンピュータ・インターフェース、人工知能、神経化学、そして人間の本質や自己の本質を根本的に再定義する技術などの、さらに強力な精神への侵略というテーマがある」と説明した[14]。また、物語の展開の多くがサイバースペース上で行われ、現実と仮想現実の境界線が曖昧になっているものもある[26]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%AF

ジークアクスは、ガンダムの舞台である宇宙世紀を「スペースノイドが虐げられるディストピア」というサイバーパンクの世界観で解釈し直した作品と捉えることもできます。個人的には「脳コンピュータ・インターフェース」、「人工知能」といったモチーフが今後登場するのかが気になるところです。

コモリはシャリア・ブルの監視役?

カネバン有限公司の面々は、ワンカットに全員がまとめて登場するのみで、それ以外の登場はありません。シャリア、エグザべ、コモリ以外のソドンクルーについても同様で、彼らの物語上の役割はあくまで限定的なものだと予想できます。

シュウジの次に表れるのはエグザべとコモリです。どちらも1話に登場していますが、劇場版の内容を含め、エグザべはともかくコモリはまだ描写が少なく、ストーリー上どういった役割を果たすのかが明確ではありません。これを予想してみましょう。

私は第一話と第二話の内容は、それぞれ対になっているのではないかと考えました。シャアとマチュ、それぞれが「ガンダムを奪い、乗り込む」という展開も似ていますし、タイトルも「赤いガンダム」「白いガンダム」でほとんど同じです。他の登場人物についても、共通点や似た部分を持つ人物がいるのではないかと考えました。

そこで「コモリは2話の登場人物(シャアの周囲にいた人)の中では、誰に相当するのか?」と考えてみたところ、浮かんできたのはマリガンでした。マリガン自身の本作での役割もまだ明確ではありませんが、端的に言えば「キシリアの意を受けて、シャアの監視をする役割」と言っていいでしょう。

公式サイトのキャラクター紹介を見ると、他のソドンクルーについてはどのキャラクターも「オペレーター」「操舵士」など役割が明確ですが、コモリだけは何のためにソドンに載っているのかが明確に記載されていません。おそらく、シャアの捜索を命じながらも、シャリアを監視する目的でキシリアから配属されたのがコモリではないかと考えます。

最後に登場するキャラクターはシャリア・ブルです。宇宙と赤い彗星を背景に後ろ向きに倒れたところで、水中に飛び込むマチュとスイッチします。これは、1年戦争におけるシャリアの役割=ニュータイプの次代をつくるための、シャアのパートナーが、0085年においてはマチュに受け継がれる、という暗喩ではないでしょうか。

ただ、マチュの目的(コロニーというディストピアからの脱出)は、シャアの目的(ニュータイプによる新しい時代を作る)とはイコールではありません。このことが後々何らかの伏線(マチュがシャアの同士となることを拒否する)といった展開につながっていくのではないか、と予想します。特にマチュの目的には「ニュータイプであること」は必須ではないので、そこが鍵になるのではないでしょうか。

マチュ・ニャアン・シュウジの3人は地球へ降り立つ?

ジークアクスが起動するとともに開眼。マチュが逆さまのコロニーから、草が生えた大地に降り立つと、ニャアン・シュウジも周りにいる、という構図が描かれます。すでに劇場版の特別映像で「地球に行くこと」が一つの目的として明示されていますので、3人がそれぞれ地球にたどり着くことを表しているのでしょう。

そこからはサビとともにバトルパートです。ジークアクスはソドンから出撃。パイロットはマチュであることがわかるので、後にソドンに合流するのであろうことがわかります。戦う相手は軍警の黒いザク。赤いガンダムとマヴを組んで戦いますが、パイロットがシュウジである、とは明言されません。1話が丸ごと、マチュとニャアンの出会いとして描かれていること、OPの登場順でもマチュ→ニャアン→シュウジという順番になっていることや、劇場版の特別映像でシュウジがゼクノヴァを起こすことが示唆されていますので、途中で赤いガンダムのパイロットはシュウジ→ニャアンと変更されるのかもしれません。赤いガンダムが盾で攻撃を防ぐシーンはZガンダムのOPにおけるガンダムmkⅡのオマージュになっています。

ジークアクスは無人で動ける?

最後はマチュに加えてニャアン・シュウジ・エグザべ・コモリ・シャリアの順に、6人が並んで走るシーンで終了です。背後にはジークアクスに加えて、赤いガンダムも増えています。ストーリーはこの6人+2機の視点を通じて語られることになるのでしょう。

私はこれまでの考察でも「ジークアクスは教育型コンピュータによって自動的に動く」という可能性について言及してきましたが、このOPでの描かれ方を見ると「ジークアクスはパイロットが載っていなくても動く」「自律的な意思がある」という可能性も高くなったのではないかと考えています。

ジークアクスの目には、SDガンダム(自分の意志がある)のような瞳が描かれていますし、ジークアクスも、赤いガンダムもパイロットであるマチュやシュウジが乗っていない状態でそれとシンクロしながら走っています。

私は劇中でも、これと同じようなシーン(ジークアクスや赤いガンダムが無人で動く)が描かれるのではないかと考えています。その理由については、後半の赤いガンダムにアルファサイコミュが組み込まれるシーンに触れるところで、もう少し詳しくご説明します。

もうひとつ気になるのは、最初マチュとジークアクスだけで走っていたシーンにはいた、ハロがいなくなっていることです。コンチはシュウジの頭に乗って登場していますので、ハロだけがいなくなっていることになります。

劇中で初めて「Plazma」がかかったのは、マチュがジークアクスに向けて走り出すシーンです。このときも、マチュの後ろにはハロがいました。最終話では、マチュたち6人と2機のガンダムが走るシーンが描かれるものの、そこにハロがいない、という伏線になっているのかもしれません。

ジオン独立戦争(U.C 0079)の世界

第二話は第一話の6年前、宇宙世紀0079からスタートします。「機動戦士ガンダム」の第一話をオマージュした、3機のザクがサイド7のコロニーに侵入するシーンが描かれます。

厳密には劇場版ではこれに先立ち「人類が、増えすぎた人口を~」で始まるナレーションのシーンも含まれますが、そこはTV版ではカットされていました。

「機動戦士ガンダム」との違いは、ジーンのザクが故障により出撃できず、代わりにシャアがコロニーに侵入した、という点です。このジーンのザクの故障は「何らかの人為的な原因によるものではないか」との予想は劇場版の際にしたとおりです。

シャアとデニムの会話から、以下のことがわかります。

  • シャアの舞台は、連邦のペガサス級を追跡してきた
  • ペガサス級は中立地帯のサイド7に逃げ込んだ
  • 実はそこで連邦のMS開発計画(V作戦)が進行していた

シャアは状況から以上に事を推理し「新型MSがペガサス級に運び込まれる前に破壊する」として、攻撃を開始します。展開としてはファーストガンダムでジーンが攻撃を開始したのと似ていますが、シャアは自分たちの任務と、敵の動きから現状を推理し「サイド7は中立を保たず、連邦に協力している」「ここで連邦のMSを破壊しないと敵に戦力を与えることになる」という結論に至った上で攻撃をおこなっているので、ちゃんと対局を見ながら動いていることがわかります。ジーンのようにただただ功を焦っていたわけではありません。

シャアとデニムは、組立中のガンタンクと、ガンキャノンを撃破します。この後のシーンでデニムがもう1機、組立中のガンタンクを撃破しているシーンが描かれるとともに、シャアがガンダムに搭乗した後でガンキャノンを1機撃破していますから、合計でガンタンク×2、ガンキャノン×2が撃破されていることになります。パンフレットなどによると、もう1機残っていたガンキャノンを元に連邦のMS量産は進められ、のちの軽キャノンなどの開発につながっていくことが記載されています。

「V作戦」の中身はファーストと同じ?

いよいよ問題のシャアがガンダムに登場するシーンです。このあたりはオマージュのオンパレードで、一つ一つ拾っていてもきりがないので、そのまま進みたいと思います。シャアはドックにも侵入しペガサス級も確保。この後の戦闘中に映し出される識別番号などから、ホワイトベースではなく「ペガサス」であるということがわかります。

「私の運が良かったのか?あのときのひらめきがすべてを変えた気がする」と自問するシャアの様子が描かれますが、まるで「自分が出撃しなかった歴史」が別にあることを知っているような口ぶりです。

このあたりで気になるのは、戦闘後にガンダムのコックピットでV作戦のコアデータにアクセスしようとしているが、「少佐がブリッジを焼いたので時間がかかりますよ」と部下がぼやくシーンです。

ファーストガンダムにおけるV作戦は、時期によっても設定に変遷がありますが「シャアがサイド7を襲撃した時点ですでにMS量産計画はほぼ完了していた」という説もあります。

上述の通り、V作戦の研究成果であるガンダムらの回収作戦が行われる時期には、もうすでにV作戦はほぼ終わっている状態である。当然、MS開発のフィードバックも一定の水準で行われている模様。これは、キャノンとタンクの後継機が非常に少ない=連携作戦があまり効果的でないことがフィードバックできていることが物語っている。

https://dic.pixiv.net/a/V%E4%BD%9C%E6%88%A6

ただ、それだと「シャアがガンダムを奪取したことで連邦のMS量産計画が狂った」というジークアクスの話の流れに持っていくことができません。なので、ジークアクスにおいては「シャアがガンダムを奪取した時点では、まだ連邦のMS量産計画はそれほど進んでいなかった」という設定が採用されたのでしょう。コアデータにアクセスするのに時間がかかった、という描写は、このあたりをごまかすために追加された可能性はあります。

ただ、それとは別に「ジークアクスにおけるV作戦は、我々が知るそれとはまったく異なるものだった」という第3の可能性もあります。このあたりはほかに証拠も少ないため、現時点で確定させるのは難しいでしょう。

01ガンダムとの死闘

サイド7を出航したシャアたちは、サラミス級とMS2機による攻撃を受けます。シャアは部下のザクをペガサスの護衛に、ムサイにはサラミス級との戦闘を命じ、自らはMSの迎撃に向かいます。

最初に乗っていたシャア専用ザクは、サイド7の出港前に回収したはずですが(高価な軍事物資であるMSを放置していったとは考えにくいため)、まだ鹵獲したばかりのガンダムで出撃したのはなぜでしょうか。

シャア自身が後で語っていたように「ガンダムの性能を試したかった」または「敵も同型機である可能性を考慮した」かのどちらかでしょう。

01ガンダムとの戦闘シーンでは、シャアの卓越した戦闘テクニックが描かれます。ビームライフルを初めて使用したシーンでは、鹵獲ザクを一撃で撃破していますが、後のフラナガンのセリフからもわかるように、通常のパイロットは亜光速で飛んでくるビームの直撃を避けることはできません。この後の01ガンダムのパイロットはビームライフルによる攻撃を避けており、彼もまたニュータイプの素質を持つう優れたパイロットであることが示唆されています。

01ガンダムはライフルではなくバズーカを装備し、シャアを攻撃してきます。結果的に言えば、ビームライフルを装備していなかったことは、後々仇になってしまいます。01ガンダムはまず、シャアに向かってバズーカ3発発射。その後、シャアを狙ったと見せかけて、その背後にあるペガサスを狙ってさらに3発を打ち込みます。

この後、バズーカをシャアに向かって投げつけていますので、6発で残弾は打ち尽くしたのでしょう。シャアは、打たれたバズーカの弾のいくつかは、ビームライフルで撃ち落としています。このように、撃ち落としが一方的にできる、という時点で、ビームライフルのほうがバズーカに対して、性能面での優位性があります。

そのため、1対1のMS戦においては、01ガンダムは遠距離からの打ち合いでは優位性を示すことはできません。だからこそ、最初の牽制とペガサス狙いに割り切ってバズーカを使ってしまい、シャアとは白兵戦でビームサーベルの勝負に持ち込もうとしたのでしょう。そしてシャアも、それが理解できたからこそ「やるな!01ガンダム」と言ったのではないでしょうか。

ペガサスを守るために、振り向いてバズーカの弾を撃ち落とした後、再び体を反転させるための時間稼ぎとして、シャアはバルカンを使います。第一話での赤いガンダムVSジークアクスのシーンに続いて、バルカンの使い方が印象的なアニメです。ガンダムの武器の中では決して強い兵器ではないのですが、内蔵武器でもあり、牽制としての役割に適している、という点をアピールしたかったのではないでしょうか。

「赤い彗星」の強さの秘密

ビームライフルの攻撃や、空になったバズーカの投げつけを経て、いよいよ白兵戦に至ります。01ガンダムも、白いガンダムも同型で本来性能差はないはずですが、2機が衝突した際にシャアは「甘いな!」といい、01ガンダムを吹き飛ばしています。なぜこんなことができたのでしょうか。

シャアは「赤い彗星」という異名がありますが、これは「通常のザクに比べて、敵への相対的な接近速度が3倍速いこと」から来ています。

なお、実際に3倍だったのが逃走する敵艦への相対的な接近速度だったことから、この性能向上は実際には+30%程度とみるのが妥当とか。

https://dic.pixiv.net/a/%E9%80%9A%E5%B8%B8%E3%81%AE3%E5%80%8D

おそらくシャアは「ほとんど減速せずに、トップスピードで移動しながら戦闘ができる」という特徴をもっているのではないでしょうか。性能と重量が互角のMSでも、一方がトップスピード、もう一方がそれよりも遅い速度なのであれば、ぶつかりあったときは当然、スピードが遅いほうが吹き飛ばされることになります。シャアが狙っていたのも、こうした効果ではないでしょうか。

さらに付け加えるのであれば「判断・決断が早い」「常に戦いの主導権を握る」といった特徴もシャアの強さの根源になっています。戦闘ではもちろん、部隊の指揮官としても卓越したスキルをもっていることがわかります。

今回の戦闘でも01ガンダムとぶつかるまで、映像を見る限りではほとんど減速していません。だからぶつかりあったときに同重量・同性能の01ガンダムを吹き飛ばせたのではないでしょうか。

普通、トップスピードを維持したまま戦闘をおこなうのは簡単ではないはずです。しかし、シャアにはそれができるスキルがあります。それが「赤い彗星」と呼ばれる由縁となる「シャアの力」なのでしょう。

勝負を分けたビームサーベルの切り合い

体当たりの威力で、01ガンダムは盾を吹き飛ばされます。なんとかバーニアをかけて体制を整えますが、そのときにはすでにシャアに肉薄されたところでした。シャアは「吹き飛ばした側」ですので、相手側に向かってまだ加速度がついている状態です。01ガンダムはサーベルを抜こうとするも、間に合わずシャアのキックを食らってしまうことになりました。

このあたりは、オマージュ元になっているファーストガンダムのほうが、シャアの意図がわかりやすいのではないでしょうか。ファーストガンダムでは、シャア専用ザクからキックを受けたガンダムのコックピット内で、アムロは大きく前後に揺らされていました。キックをしても、それだけでMSを撃破できるわけではありませんが、中に乗っているパイロットに衝撃を与えることはできます。まともに操縦できない状態で格闘戦となれば、シャアのほうが優位に立てます。

しかし、01ガンダムのパイロットも負けてはいません。ビームサーベルを両手持ちにして反撃しようとします。MSの速度・加速度で負けているなら、両手持ちにすることで腕のパワーで対抗しようと考えたのでしょう。

シャアのガンダムは、加速度がついているためか、両手持ちのサーベルにも片手で対応できていました。そうなると、今度は両手が塞がっていることがマイナスに働いてしまいます。シャアはビームサーベルを二刀流にし、01ガンダムを撃破します。

01ガンダムのパイロットも卓越した操縦技術をもっていましたが、シャアのほうがそれをさらに上回っていました。

注目されるニュータイプ、シャアの力

舞台は変わって、宇宙要塞ソロモンに向かう途中のシャアとマリガンの会話が描かれます。このあたりは劇場版とも同じ流れです。シャアの提案が通り、ガンダムのリバースエンジニアリングによる量産計画がスタートしたこと、反対していたドズルをキシリアが説得したことなどが会話からわかります。

また、マリガンはキシリアの配下であるものの、シャアへ便宜を図っている、という説明もあります。

シャアが鹵獲したガンダムは「赤いガンダム」に変貌し、同じくソドンと改名されたペガサスとともに、グラナダへ向かう任務が与えられました。シャアは「連邦のソロモン攻略が近いのに、なぜグラナダへ?」と疑問に思いますが、マリガンは「キシリア様には遠大な計画がお有りだから」と回答します。

キシリアは、ニュータイプを研究するフラナガン機関を傘下に、戦局を覆す決定打としてニュータイプに注目している、という点が示唆されます。ファーストガンダムでも、こうしたニュータイプへのキシリアの傾倒は描かれていますが、ジークアクスにおけるそれはさらに加速しているように思われます。

「シャアが左遷されたり、ガンダムに敗北して失敗し続けたりといったことがなく、順調に成果を上げている」「ガンダム、ペガサスといったテクノロジーを手に入れて研究が進んだ」といった、ファーストとは違う展開が下敷きになっているのでしょう。

これに続く、フラナガン博士とシャアの会合では、さらにそうした描かれ方が顕著になっています。もはや焦点はガンダムにあるのではなく「戦局を覆すポイントとして、シャア本人が注目されている」という点が如実に描かれます。

フラナガン博士が率いるフラナガン機関は、「機動戦士Zガンダム」以降の強化人間研究など非人道的研究でも知られることから「フラナガン博士の笑顔にはなにか裏があるのではないか」「フラナガンスクールを首席で卒業したエグザべは、なにか非人道的な研究をされたのではないか」といった予想をする人もいます。

フラナガン博士の真意

私はそれよりも、彼の上司であるキシリアのニュータイプに対する関心・期待値がファーストよりも高まっていることが原因だと考えています。

フラナガン博士がシャアに見せたレポート「シャア・アズナブルにおけるニュータイプの発生形態」は、ファーストガンダムでは「シャリア・ブルにおける~」となっていました。ファーストガンダムにおけるシャリア・ブルは、「ニュータイプの理想形」とも言われ、早く退場したことが悔やまれるキャクターです。ジークアクスでは「アムロがガンダムに出会わなかったことで、変な挫折を経験することなく、ニュータイプとしての能力を伸ばせたシャアは「ファーストにおけるシャリア・ブル」の立場とおなじになっている、という表現なのだと思います。

フラナガン博士は、シャアをニュータイプだと判断した理由について、次の3点を挙げています。

  • 初めて登場したMSをいとも簡単に操ってみせたセンス
  • 他を圧倒する攻撃期待値と撃墜成功率の不均衡
  • 亜光速で進む粒子ビームを回避する反応速度

シャアはフラナガンに「自分に何をさせたいのか?」と問いかけますが、フラナガンは「技術者として人の革新を見届けたいだけ」と返します。これは文字通りに受け取ってもいいのでしょうか。

私はマリガン→フラナガン→シャリア・ブルという流れで、シャアと登場人物の流れが描かれたことに意味があると考えています。マリガンはおそらくはニュータイプを重視するキシリアの命を受けて、シャアをキシリアの配下に囲い込もうとしています。その過程でシャアの出自についても調べたはずで、それはソロモン落としの際のキシリアのセリフ=「頼むぞ、キャスバル坊や」や、劇場特典の初期構想プロットからも見て取れます。

キシリアがファーストガンダムよりも、さらにニュータイプへ強く期待しているのは初めてニュータイプ論を提唱した「ジオン・ダイクンの息子」にニュータイプの素養がある、という事実が調査から判明したからではないでしょうか。フラナガン博士が、キシリアに見せる報告書のコピーをシャアに見せたのは、フラナガン博士もまたシャアの正体に気づいているものの、キシリアのようにニュータイプを政治的に利用したい、というのではなく「ジオン・ダイクンの息子」であるシャアが、本当に新しい時代を作るのではないか、という期待を持っているということではないでしょうか。

シャリア・ブルとシャアの出会い

いよいよ、U.C0085につながるキャラクター、シャリアとシャアの出会いのシーンです。

シャリアは、戦局を覆す方法として「ギレンが唱える重MAの量産やソーラレイ」を挙げますが、シャアはそれを退け、自身のガンダムに装備されたアルファサイコミュとビットこそが逆転のカギである、と応えます。

サイコミュとビットは「計画中の専用MAに搭載予定だったものを、無理を言って詰め込んでもらった」と語られています。もし、ファーストガンダムと同じであれば、これは本来、エルメスに搭載される予定だったものなのでしょう。

この「エルメス(ララァ)の不在」は、シャアとシャリア・ブルの関係にファーストとは大きな違いを及ぼしています。ファーストガンダムにおけるシャアは、シャリアに対して次のような接し方をしています。

  • シャリア・ブルと出会ったとき、すでにララァと出会っていた
  • キシリアに近づくためにララァをエルメスに乗せる必要があった
  • そのためには競争相手になるシャリア・ブルが邪魔になる
  • 協力者になってくれるかもしれないシャリアを出撃させ見殺しにするしかなかった

このあたりの演出は、岡田斗司夫氏のガンダム講座で詳しく語られています。

シャアとシャリアの不幸な関係性は、ジークアクスにおいてはまったく異なります。

ファーストガンダムではニュータイプとして未覚醒だったシャアの能力も、ジークアクスでは、シャリアのそれを上回っています。ギレンとキシリアの間で板挟みになっているシャリアに対して、自分と組むように誘い、握手を求めます。ファーストガンダムでは表面的なやり取りに過ぎなかったこのシーンが、ジークアクスにおいては真の同志を得るシーンに変わっています。

シャリアはしきりに目を細め、シャアの真意を読み取ろうとしていることがわかります。TV版では省略されているソロモン落としの阻止の過程では「戦争の後はザビ家が相手」と、シャアがシャリアに明言していますし、2人の間で「ニュータイプのため、人類全体のために新しい時代を作る」という目的が共有されたのでしょう。

OP映像からも分かる通り、シャリアはシャアの唯一人の同士です。シャアの真の目的を知っているのも彼だけなので、これがストーリー上も、シャリアのキャラクターを語るうえでも重要な意味合いを持つことは間違いありません。

ニュータイプの力で逆転するジオン

ニュータイプが戦局を覆すというシャアの言葉が実践される「ソロモン泊地攻撃」のシーンです。ファーストガンダムではエルメスとララァが担っていた役割ですが、今回その役割を担っているのは彼ら撃墜することになるはずだった「ガンダム」です。つまり、ビットによる攻撃を防ぐ手段はなく、連邦軍艦隊は一方的に攻撃を受け続けることになります。

ファーストガンダムでは、ガンダムがエルメスを撃墜し、ア・バオア・クー攻防戦に移りますが、ジークアクスではジオンによるルナツー攻防戦となっています。ソロモン泊地攻撃までは、戦局はファーストガンダムと同じ推移を辿っており、文字通り「ニュータイプが戦局を覆す」ことになりました。

TV版では描かれていませんが、マ・クベ司令がシャアをルナツー攻防戦から外したのは、ギレンが進める重MA量産=ビグ・ザムにも手柄を立てさせ、ギレン・キシリアの派閥間のバランスを取るためではなかったでしょうか。ルナツー攻防戦までニュータイプの力で勝ったとなっては、キシリアの手柄が大きくなりすぎ、戦後の派閥争いが激化する恐れもあるからです。

第二話での重要シーン

劇場版では描かれた、ルナツー攻防戦とソロモン落とし、ゼクノヴァはカットされることになりました。これによって第二話は、前半はシャアの視点、後半はシャリア・ブルの視点で描かれたシーンで終わる、という作りになっています。

カットされず、残ったシーンからもストーリー上、以下の要素が重要だったということがわかります。

  • シャアがガンダムを奪取したこと
  • シャアがニュータイプとして覚醒したこと
  • ニュータイプが戦局を覆したこと
  • シャリアがシャアの同士となったこと

また、戦後のシャリアの目的=シャアと赤いガンダムを探し続けること、についても明確にラストで語られました。シャリア自身の意向や、キシリアの目的もあるのでしょうが、それ以外にも「戦闘能力が高く、危険性もあるニュータイプ」を閑職に回しておく、という政治的な意図もあるのではないか、と予想します。戦後は旧式になっているであろうソドンが、未だに現役でシャリアの舞台に与えられていることからもそれが伺えます。