クラウドソーシングとは、不特定多数の人々に同時に仕事を発注・依頼できる仕組みのことです。これによって仕事を依頼したい人と、働きたい人を効率よく結びつけることが可能になり、「多様な働き方」が実現できると言われていました。果たしてこうした見方は正しいのでしょうか?
私はWebライターとしての活動を始めたばかりのころ、クラウドソーシングサイトを良く利用していました。しかし、ライターとしてある程度経験と実績を積んで以来、あまり利用することがなくなりました。
なぜ私がクラウドソーシングサイトを利用しなくなったかというと、「自分がやりたいと思えるような仕事」がクラウドソーシングサイト上で見つからなくなったからです。以来、私は自力で広告代理店に営業をかけるなどしてライターの仕事探しを行うようになりました。
クラウドソーシングが多様な働き方を可能にする根拠
一般的には、クラウドソーシングは「多様な働き方を可能にするもの」であると言われています。クラウドソーシングの利点として一般には次のような点が注目されています。
- 多くの発注者・受注者を結びつける中継拠点の役割を果たす
- クラウドソーシングサイト上で実績を重ねることで、個人のブランド化が実現する
- リモートワークを実現し、仕事の時間と場所の制約をなくす
しかし、私が実際にクラウドソーシングサイトを利用してきた経験からすると、これらをそのまま「利点」と考えるのは適当ではないと思います。
「中継拠点」を利用するには手数料がかかる
確かに、クラウドソーシングサイトには多くの発注者と受注者が集まります。よって、仕事の受発注において中継拠点の役割を果たしているのは間違いない事実でしょう。
しかし、多くのクラウドソーシングサイトは、そうしたメリットの見返りとして受注者から「報酬の2割」に相当する手数料を取っています。この手数料負担は、多くの受注者にとって無視できる金額ではありません。多くのクラウドソーシングサイトは、手数料収入が減るのを防ぐために、クラウドソーシングサイトを介さない「直接取引」を禁止しています。そのため、クラウドソーシングサイトを利用して仕事を探し、受注する限り、受注者はこの費用を負い続けるはめになるのです。
実績がブランドになるのはあくまでも「サイト上」でだけ
クラウドソーシングサイトで、発注者が依頼する相手を選ぶひとつの基準となるのが、「過去の実績」です。クラウドソーシングサイトでは、過去の実績がプロフィール上に記録されていくため、多くの実績を上げた受注者は個人の実績を自身の「ウリ」として仕事受注に活かすことができます。
「手数料負担」と「実績」。これら2点はクラウドソーシングサイトのシステムと一体不可分のものです。逆にいえば、「クラウドソーシングサイトを一歩でも離れたら、使えなくなるもの」であるといえます。このように考えると、クラウドソーシングサイトは「実績と利便性で受注者を縛っている」と捉えることもできるのです。
クラウドソーシングは「実力がある人ほど使わなくなるサービス」
クラウドソーシングサイトの利用者は、ざっくり分けると「クラウドソーシングでしか仕事ができない人」と、「クラウドソーシング以外でも仕事ができる人」の2種類に分けられます。
「クラウドソーシングでしか仕事ができない人」にとって、クラウドソーシングサイトは必需品です。たとえ手数料に不満があっても、サイトのシステムを利用する以上払わない訳にはいきません。原則的にサイトを通じてしか仕事を探せないからです。
「クラウドソーシング以外でも仕事ができる人」にとって、クラウドソーシングサイト上での仕事は「報酬を2割引で計算しないといけない仕事」になります。当然、自力営業などで見つけてきた仕事があれば、そちらのほうが割がいいと考えられるので、基本的に「仕事が見つからないとき、仕方なくクラウドソーシングを行う」という使い方になるでしょう。
もちろん、「最初はクラウドソーシングサイトでしか仕事ができなかったが、その後経験を積んで自力営業で仕事が取れるようになった」という人もいます。このように考えると、クラウドソーシングサイトは、
「クラウドソーシングでしか仕事ができない人」がメインで、一部「クラウドソーシング以外でも仕事ができる人」がいる。最初はクラウドソーシングでしか仕事ができなくても、腕を上げて自力営業ができるようになったら、徐々に使わなくなっていくサービス
であるといえるでしょう。「実力がつくほど使わなくなっていくサービスであること」、これがクラウドソーシングの第一の問題です。