前回記事 【1話 その5】アニメ感想「けものフレンズの謎」:かばんちゃんが「頑張り屋」と言われた理由
※本シリーズでは、主に下記の観点からストーリーを読み解きます。
- アニメーションを構成する3つの要素:映像・セリフ・音(BGM・SE)
- ストーリーを構成する3つの要素:作者の演出・キャラクターの演技・世界観
これらが「効果的に組み合わされているか」によって作品の魅力は変わります。
【第1話Aパート セルリアン撃退後の会話シーン】
サーバル:かばんちゃんはすっごい頑張り屋だからきっとすぐ何が得意かわかるよ
前回の記事では、「サーバルがなぜ出会って間もないかばんちゃんを『頑張り屋』だと考えたのか、その理由は直前のシーンの中にある」ということを明らかにしました。しかし、実はこのセリフの謎はまだ完全に解明されたとはいえません。今回はかばんちゃんではなく、「サーバル」に注目してこのセリフについての考察を続けていきましょう。
サーバルはなぜかばんちゃんの人柄をすぐ理解できたのか?
私がもう一つ、このセリフで疑問に思ったのは、セリフを発した本人、つまりサーバルについてです。サーバルというキャラクターは、今後のストーリーの中でも随所で描かれるとおり、あまり頭がいいキャラクターとはいえません。「ほかのフレンズからよく『ドジー』と言われる」という本人のセリフの通り、ほかのフレンズと比較しても「頭が悪い」キャラクターとして描写されています。
そこで疑問なのは、「なぜ、頭が悪いはずのサーバルが、出会って間もないかばんちゃんを『頑張り屋』だと見抜けたのか?」という点です。今までご説明してきた通り、今までのシーンの中には「かばんちゃんが頑張り屋である根拠」は含まれています。しかし、それはあくまで視聴者の目線から見た場合に過ぎません。確かに、サーバルもここまでのシーンの中でずっとかばんちゃんと一緒にいるので、かばんちゃんが「頑張っているところ」は見ているはずです。ですが、だからといって「頭が悪い」はずのサーバルがあの短期間でかばんちゃんの人柄を正確に見抜けるのか?という疑問は残ります。
サーバルはコミュケーション能力がとても高い
事実として、かばんちゃんを頑張り屋と評したのはサーバルなのですから、「サーバルは短期間の間にかばんちゃんの人柄を見抜いた」のは間違いありません。ではなぜ、馬鹿なはずのサーバルにそんなことができたのでしょうか?
考えられる理由は、サーバルは「知力は低いが、コミュケーション能力は高い」という可能性です。実際、世の中には「難しいことを考えるのは苦手だけど、出会ってすぐに人の本質を見抜く能力には長けている」という人は少なくありません。サーバルもこのタイプだと考えれば辻褄は合います。
凹んだ人を励ますために話題を変える気づかい
実は、サーバルがコミュニケーション能力に優れていることを示唆する描写は、この後全編を通して無数に出てきます。たとえば、セルリアン撃退後、木陰で休憩を取るシーンがあります。その際、かばんちゃんが自力でセルリアンを撃退する力がないことを嘆くのですが、そのとき、サーバルは唐突に話題を切り替えています。しかも、「長距離を歩いて来たのにあまり疲れていない(長距離移動に優れる)」、「すぐに体力が回復する(発汗による体温調節機能に優れている)」といった、かばんちゃんの「得意なところ」に触れる話を始めたのです。
このシーンは、「得意なことを描写することによって、かばんちゃんの正体を示唆するシーン」と受けとることもできますが、「自分の短所に目が向いて、自信をなくしている人を勇気づけるために、長所を教えてあげるシーン」と解釈することもできます。つまり、かばんちゃんが自信をなくしていることに気づいたサーバルが元気づけてあげた、というわけですね。
単にこのシーンだけに限れば、「サーバルはコミュケーション能力が高い」という前提にたって、無理やり解釈をこじつけただけのようにも思われるかもしれません。しかし、今後もサーバルのコミュ力の高さを示唆するシーンはたくさん出てくるので、その都度お伝えしていきたいと思います。
このように考えると、第一話のAパートだけで、「主要登場人物の特長と内面をうまく視聴者に伝えている」ということがわかります。ただし、ほかのアニメほどわかりやすく、かつ見た目が派手に見える過剰な演出やセリフを抑えているので、一見しただけでは伝わりにくいというのも事実でしょう。しかし、一度作品の魅力に気がつくと、次々にこうした細かい演出の意図に気づくことができるようになります。「見れば見るほど面白くなる」というのも、けものフレンズの魅力のひとつだと思います。
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