前回記事
※本シリーズでは、主に下記の観点からストーリーを読み解きます。
- アニメーションを構成する3つの要素:映像・セリフ・音(BGM・SE)
- ストーリーを構成する3つの要素:作者の演出・キャラクターの演技・世界観
これらが「効果的に組み合わされているか」によって作品の魅力は変わります。
【第1話Aパート サーバルのさばんなガイドからセルリアン撃退まで】
サーバルから、さばんなちほ-の出口まで案内してもらうことになったかばんちゃん。ここから木陰に入って休憩するまでに、下記の3つのシーンがあります。
- ほかのフレンズの発見(シマウマ・トムソンガゼル)
- 崖を下るシーン & 川を渡るシーン
- セルリアンとの初遭遇と撃退
今回は、これらのシーンの気になるところを考察していきたいと思います。
なぜほかのフレンズとの会話がなかったのか?
まずシマウマ、トムソンガゼルとの遭遇シーンについてです。このシーンで不自然なのは、「なぜせっかく新しいフレンズが出てきたのに、会話をしなかったのか?」という点でしょう。このあと、カバが登場するまでの間、サーバルとかばんちゃん以外の登場人物は(セルリアンを除いて)現れません。これは極めて不自然な展開です。
もし、「まだ最序盤だから、主要人物だけに注目させたかった」というのなら、「さばんなちほ-は広いからほかのフレンズがいっぱいいる」なんて言うセリフは必要ないはずです。あるいは、このあとのカバのシーンで見られるように「今日はセルリアンが多いから、みんな実は隠れていた」という話にしてしまえばよかっただけです。にも関わらず、「ほかのフレンズはいる。しかし遠くにいるから、会話はせずに通り過ぎる」という極めて不自然な描写がなされています。初見時にここまで見続けただけでは解答はわかりませんが、今後のストーリーを見ていくと、ある時点でなぜそのような演出にしたのか謎が明らかになります。
「フレンズによって得意なことが違う」ことを描写
続いて、崖を下るシーンと川を渡るシーンについて考えてみましょう。これらのシーンは、比較的伝えたいことが明らかです。崖や川を難なく移動するサーバルと、四苦八苦しながら進むかばんちゃんとの対比を描くことで、二人の間の能力の差=得意なことの違いを描いているわけです。
サーバルのセリフから生まれるある疑問
では、最後のセルリアンとの遭遇シーンについてはどうでしょうか?かばんちゃんはセルリアンに追いかけられてもどうすることもできず、サーバルがツメで撃退します。その後、二人の間で次のような会話が交わされます。
かばんちゃん:すごいですねサーバルさん!ぼくにはそんな力・・・。普通に案内してもらうだけでこんな感じだし・・・。ぼくって相当ダメな動物だったんですね・・・。
サーバル:大丈夫だよ!私だってみんなからよく「ドジー!」とか「全然弱いー!」とか言われるもん。それに、かばんちゃんはすっごい頑張り屋だからきっとすぐ何が得意かわかるよ
この会話は、ファンの中でも名シーンとして捉えられていると思いますが、ひとつ不自然な点があることに気がつくでしょうか?それは、サーバルがかばんちゃんを「頑張り屋」と評している部分です。
私は、第1話を初めてみたときこのセリフを聞いて「出会ってまだ数時間くらいしか経ってないだろうに、なんで『頑張り屋』だってわかるの?」という感想を持ちました。ここで疑問なのは、
- サーバルが、かばんちゃんを「頑張り屋」と評した理由
- なぜその理由から「頑張り屋」だと考えたのか?
という2つです。この2つの疑問については、次の考察記事で明らかにしていきたいと思います。