ポプテピピック第10話「#10 銀座ホステス探偵」を考察

ポプテピピックの10話は、名探偵コナンのパロディが注目され話題になりました。基本的にパロディ色が強いほうが話題になりやすい本作ですが、全体的にどんな見どころや狙いがあるのか検証してみたいと思います。

ポプテピピック第10話「#10 銀座ホステス探偵」の内容まとめ

キャラクターボイス

Aパート:徳井青空(ポプ子)、三森すずこ(ピピ美)

両者の共演作品:

http://lain.gr.jp/voicedb/individual/costar/2696/cowork/2741/page/1

Bパート: 小山力也(ポプ子)、高木渉(ピピ美)

http://lain.gr.jp/voicedb/individual/costar/695/cowork/836/page/1

竹書房彦麻呂

貴族の竹書房彦麻呂は、お供を引き連れ馬に乗って道を進んでいた。彦麻呂は突如馬の脚を止める。供のものは不審がるが、彦麻呂は周囲に潜むポプ子の気配に気がついていた。

「出ておじゃれポプテピピック。姿は隠しても、クソ漫画は臭いでわかりまするぞ」

彦摩呂の呼びかけに応じ、ポプ子が姿を現す。その手には釘バットが握られていた。

サボ神

脚でぬいぐるみをはさみながらチョコガムを食べ、ストローでプリンをすするボブ子。そんな彼女のもとに「サボ神」が現れる。「自分の跡継ぎにならないか」というサボ神の誘いを、「めんどくせぇ!」とボブ子は断る。ボブ子はそのまま背景に溶け込み「サボテン」になった。

ポプテピクッキング「超節約レシピ」

ピピ美とお姉さんが、超節約レシピに挑戦する。ピピ美が用意した食材は「A5ランク黒毛和牛のロース」。節約レシピにそぐわない高級食材の登場に、お姉さんは「もちろん普通の安いお肉でも大丈夫なんですよね?」とフォローするが、ピピ美は「これしか認めない。私は50円で買った」と応える。ありえない答えに「どこで売ってるんですか?」と食い下がるお姉さんに対して、ピピ美は「オメェはよ、自分で探すってことできねぇのか!?あぁん?」と冷たく言い放った。

POP TEAM 8BIT(パズルゲー・音ゲーのパロディ)

ポプ子とピピ美をモチーフにしたブロックを組み合わせて消すパズルゲームで対決するポプ子とピピ美。勝負はまったく互角で、お互いすべてのブロックを消し合う。そこからはリズムゲームに移行。画面下に向かって落下してくるパネルに合わせて、タイミングよくボタンを押し合う。最後は同時にゲームオーバー。

オーラキャノン

サッカーをプレイするポプ子とピピ美。ボールをキープしたピピ美はポプ子にオーラキャノン(Bパートではサテライトキャノン)でパスを出す。パスを受けたポプ子もオーラキャノンでシュートを放った。

ボブネミミッミ「トラップ」

飲食店に入ったボブ子は、失礼な店員に水をかけられる。一泡吹かせようと、トラバサミ・鉄球・仕込み槍を用意し、満を持して店員を呼び出す。ところが、何度ベルを鳴らしても店員は現れない。しびれを切らしたボブ子は店員を呼びに行こうとして、誤って自ら仕掛けたトラップに引っかかってしまう。その後、ようやく店員が到着、ボブ子は再び水をかけられ、改めて復讐を誓った。

#10 銀座ホステス探偵

部屋の一室で男が撲殺されるところから物語は始まる。

銀座ホステス探偵⑩
湯けむり旅情編
~若女将が犯した罪と罰~

銀座で働く新人ホステスのポプ子と、彼女が務める店のオーナーであるピピ美ママは、温泉で日頃の疲れを癒やしていた。2人が湯から上がると、宿泊客ら、宿の関係者が一箇所に集められている光景を目の当たりにする。警視庁捜査一課・日暮警部の話によると、宿で殺人事件が発生したため、操作に協力してほしいとのことであった。重要参考人を含め、以下のようなメンバーが登場する。

鈴木一郎:事件の被害者

日暮警部:警視庁捜査一課の刑事。事件捜査の指揮を執る。

吉川博美:宿の若女将。右手に包帯を巻いている。(一部のカットでは右手)

勅使河原清史:メガネをかけた壮年の男性。神経質そうな表情を見せる。

田中:顔に覆面をかぶったスーツ姿の男。

金子郷蔵:バーコード頭の中年男性。

カミール:外国人風の女性。金子と行動をともにする。

ここでピピ美ママが日暮を遮り、勝手に事情聴取を始めようとする。ピピ美ママの手法は、銀座のクラブのように接客しながら相手をリラックスさせ、誘導尋問によって捜査に必要な情報を聞き出すというものだった。ところが、捜査のじゃまになるとして日暮から厳重に注意されてしまう。

それでもピピ美ママとポプ子は諦めない。現場検証を行っていた鑑識班にも酒を勧めて接客し、捜査情報を聞き出そうとする。しかし、途中で日暮によって殺人現場から閉め出されてしまう。一度は捜査を諦めかけたピピ美ママだったが、ポプ子の励ましもあり、聞き込みによって真相を探ろうと決意する。

懸命な聞き込みの結果、ピピ美ママはついに真実にたどり着く。ピピ美ママから耳打ちされたポプ子も「完全に理解した」を大きくうなずいた。

ピピ美ママとポプ子は、一堂に会した関係者の前でマイクを片手に、自身の身の上話を始める。バブル時代から銀座のホステスとして働いてきたピピ美は、やがて自身の店を持つに至った。25周年の記念に温泉旅行をプレゼントされ、店の新人売上記録を更新したポプ子とともに温泉旅行に来ていたのだった。

ここまで語ったところで、急に若女将の吉川が泣き崩れ、事件の真相を語り始める。犯人は吉川であり、15年前、自身の父親を吉川によって奪われたことが動機だった。吉川は「私は最低の人間。すぐに父の元へ行く」と自殺をほのめかすも、ピピ美ママが平手打ちを食らわす。

ピピ美ママは「あんたみたいなのを、銀座では大馬鹿者っていうのよ!」と、吉川を一喝。続けて、「罪を償ったらいつか飲みにいらっしゃい」と優しい言葉をかけた。吉川はそのまま顔を抑え、大声で泣き崩れる。

こうして事件も無事に解決。ピピ美ママはだんごを食べるポプ子とともに、銀座への帰路についた。

特殊OP

BパートはSE入りの特殊オープニング。

全体の流れを詳しく確認したい方は本編をご覧になるか、こちらのリンク先が参考になります。

http://anicobin.ldblog.jp/archives/53110526.html

劇中に登場するパロディの元ネタは、以下のサイトが参考になります。

http://mr-bluesky.hatenablog.jp/entry/2018/03/11/034346

http://matomame.jp/user/FrenchToast/3ea214cdfd5b84eb8c93

ポプテピピック10話のポイント

10話のテーマは、「駆け引き・騙し合い」

今回は、アニメオリジナルパートが探偵・推理ものになっていることからもわかるとおり、駆け引き・騙し合いがテーマになっています。これにはキャラクター同士の駆け引きはもちろんのこと、作品の作り手と視聴者の間の「騙し合い」という構図も含まれています。

今回の声優は、Aパートが「探偵オペラミルキィホームズ」、Bパートが「名探偵コナン」と、それぞれ探偵・ミステリーをテーマにした作品で共演しているペアが選ばれています。「日暮警部」に代表されるように、特に「#10 銀座ホステス探偵」では探偵もの・推理もののパロディがふんだんに盛り込まれています。視聴者がそうした「あるある」を楽しみながら、視聴するのを前提に作られているわけです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%AE%E6%9A%AE%E5%8D%81%E4%B8%89

「銀座ホステス探偵」では、探偵役のポプ子・ピピ美はほとんどこれといった推理を行いません。会話で容疑者の失言を誘ったり、情に訴えて自白を誘うような行動ばかりとります。これはパロディ元となっている推理ものでも同じように、論理的な推論ではなく容疑者との駆け引きによって謎解きを行う探偵役が多いことを風刺したものでしょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E7%95%91%E4%BB%BB%E4%B8%89%E9%83%8E

ポプテピピック10話の演出意図を考察

置いてきぼりの視聴者が出ないようシュールさは控えめに

ポプテピピックには、「シュールギャグ」と「パロディ」という2つの大きな笑いの柱があります。今回はそのうち、パロディの比重が強い回だと言えるでしょう。

今回のテーマになっている「騙し合い」は、すでに述べたように「視聴者と作り手の駆け引き」という観点を含んでいます。そのため、シュールさを強め過ぎるとネタの意図を理解できず、置いてきぼりになってしまう視聴者が出てしまって駆け引きが不可能になってしまう恐れがあります。だからこそ、意図的にシュールさを抑えたのではないかと考えられます。

個別のネタに注目すると、さほど深い意味があるわけでもなければ、突拍子もないほど奇抜な意味合いが込められているわけでもありません。たとえば、「サボ神」では、最後ボブ子は唐突に背景と一体化して消え去ってしまいます。しかしこれも「画面に出ることすら面倒になった」と解釈すれば納得がいきます。

それ以外のネタは比較的どれも意図が理解しやすい作りになっています。「竹書房彦麻呂」と「ポプテピクッキング」はどちらも、キャラクター同士の見たままの駆け引きを楽しむものですし、いつもはシュールさが強い「ボブネミミッミ」ですら今回はこれらのパートと同じパターンです。このことからもシュールさを抑え、理解しやすい構成にする意図が明確に読み取れます。

また、今回に限ってBパートのOPにはSE付きのものが採用されています。これも、「なぜ10話が選ばれたのか」と考えると制作陣の意図がわかりやすいでしょう。SEの追加は「音響効果の変更」ですから、実質的には「キャラクターボイスの交代」と変わりません。Bパートで声優が交代し、「銀座ホステス探偵」は「名探偵コナン」のパロディ色が強まったことで面白みが増加しました。OPへのSE追加も、これと同じ効果があるということを暗示していると言えるでしょう。