【Bパート かばんちゃんの旅立ち】
船に改造されたジャパリバスをプレゼントされたかばんちゃんは、フレンズたちと別れの挨拶を交わしていました。カバから「本当に辛いときは、誰かを頼ったっていいのよ?」と言葉をかけられたかばんちゃんは、微笑んだあと何故か近くの木に向かって走り出しました。
サーバル:えっ?
かばんちゃん:みゃっ、みゃっ、みゃっ、みゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃ・・・。
(かばんちゃん、木を登りてっぺんまで到達)
かばんちゃん:見てー!みんなー!・・・ふっ、ふっ。
(かばんちゃん、ジャンプして枝を飛び移り、木をつたって地面に降りる)
フレンズたち:おーっ!
かばんちゃん:ご飯の探し方も教えてもらったし、安全な眠り方も聞いたし、木登りだってできるようになったから・・・だから大丈夫。
サーバル:・・・。
かばんちゃん、じゃあ、行ってくるね。
(かばんちゃん、サーバルに手を振り、ジャパリバスに向かって走り出す)
かばんちゃん:えっ、よっと・・・。
(かばんちゃん、運転席に乗りハンドルを握る)
ラッキービースト(ボス):バスのときと、ほとんど変わらないよ。・・・じゃあ、行こうか。
かばんちゃん:うん!
(かばんちゃん、バスのエンジンを始動)
ジャガー:おーい!平気かー!
ツチノコ:大丈夫そうかー?
(スナネコとコツメカワウソもかばんちゃんに手を振る)
かばんちゃん:あはは、あは!
(かばんちゃん、クラクションを鳴らしバスを始動。大海原へと繰り出す)
木登りで、自身の成長を披露するかばんちゃん
今回は、かばんちゃんの木登りと、フレンズたちとの最後の別れを取り上げます。まず、木登りについてですが、あえてかばんちゃんがこの技を披露したのは、カバの言葉を受けてのことだったのでしょう。
かばんちゃんとカバは、1話「さばんなちほー」で出会いました。その時点でまだ生まれたばかりだったかばんちゃんは「泳げず、飛べず、速く走ることもできない」、何の取り柄もない状態でした。その様子を見たカバは「気にすることはないが、ジャパリパークでは自分の力で生きなければならない」と「ジャパリパークの掟」を教えました。
すぐにはカバの言葉に応えられなかったかばんちゃんでしたが、その後旅を続け、現在では見違えるほど頼もしい存在に成長しました。そのことが、最も見た目でわかりやすいのが木登りの上達です。
今回のシーンも含めて、かばんちゃんは合計4回劇中で木登りを披露しており、そのたびにだんだん上手くなっていっています。
最後となる今回の木登りでは、サーバルを真似た「みゃみゃ」という掛け声に合わせてサクサクと木を登り、降りるときは木をつたって降りるのではなく、サーバルのように枝から枝へと飛び降りています。
カバを始め、かばんちゃんを心配するアメリカビーバーや、別れに涙を流したオグロプレーリードッグは、比較的序盤で出会ったフレンズたちでした。彼女たちに自分の成長を見せるために、かばんちゃんはこうした技を披露したのでしょう。
もはやタブーではなくなったフレンズの肉食
かばんちゃんは木登りができるようになったことと合わせて「食料を調達する方法」と「安全な寝床の探し方」も教えてもらったと語っています。まず、食料についてですが、かばんちゃんが向かうパークの外には、今まで通りラッキービーストがいるとは限りません。従って、ジャパリまんが手に入る保証はないので、食料調達の方法を知っておくことはとても重要です。
具体的にどんな方法をかばんちゃんが学んだのかは不明ですが、おそらくは動物を狩る方法も伝授してもらったことでしょう。肉食動物がフレンズ化しても、フレンズ同士で襲い合うことはありませんが、彼女たちは別に他の動物を食べることを禁忌としている様子もありません。
過去の考察では「物語上都合が悪いから、フレンズが動物の肉を食べる描写はかかないのだろう」と説明していましたが、今回が最終話なわけですから、「かばんちゃんがパークの外で動物を食べる描写」を描く必要もなくなるわけです。食料調達の話が急に出てきたのはおそらくそのためでしょう。
水陸両用ジャパリバスは「タイヤで進む」?
フレンズたちとの別れを済ませたかばんちゃんは、振り返ることなくバスに向かって走り出しました。サーバルと手を降ってから別れていることからもわかる通り、これは1話におけるサーバルと別れるシーンのオマージュです。1話ではサーバルの方を何度も振り返ってきたかばんちゃんでしたが、今回は一度も振り返らず、そのまま出発しています。この様子を見てかばんちゃんの成長を感じ取った方も多かったことでしょう。
かばんちゃんがバスに乗ると、ラッキービーストが運転方法の説明をはじめました。「バスのときとほとんど変わらない」と語っているので、操縦系統については動力にまで影響が及ぶほどの改造は施されなかったのでしょう。おそらく下記の動画のように、タイヤのままでも水をかいて海上を走行できるような改造が施されたのだと考えられます。
以前のようにラッキービーストが自動操縦せず、かばんちゃんがハンドルを握っているので、ラッキービーストが体を失ってしまったことで自動操縦の機能が失われてしまった可能性もあります。ラッキービーストはバスとリンクする際、目を緑色に輝かせていたため、体がなくなったことでこのリンク機能が失われてしまったのかもしれません。
もちろん、単に陸上ではないところを走行するため、ラッキービーストには操縦のためのプログラムが存在せず、かばんちゃんが動かすしかなくなったのだという可能性もあります。
バスのエンジンを始動したかばんちゃんが背後を振り返るシーンでは、運転席の後方に装着されたタライと、それに乗せられた大量の水や食料と思われる荷物の存在が確認できます。これで新天地に向かってもしばらくは生活していけるということなのでしょう。水はペットボトルらしき容器に入っていますが、パークにはかつてヒトがいたわけですから存在していても不思議はありません。
けものフレンズの表と裏を象徴する2話と4話のフレンズ
前回の考察では、「1話から11話までに登場したフレンズたちがかばんちゃんを見送った」といいましたが、厳密にはまだ登場していないフレンズたちがいました。それが最後にかばんちゃんに手を降った、2話と4話に登場したフレンズたちです。
2話に登場したコツメカワウソとジャガーは、ジャパリバスを手に入れるのを手伝ってくれました。ジャパリバスは、「かばんちゃん・サーバル・ラッキービーストが3人で旅をする」という点と、「アライさん、フェネックに追いつかれないためのストーリー上の都合(移動速度の差)」という2つの点でストーリー上重要なアイテムだったと過去の考察で明らかにしました。
また、2話に登場したフレンズたちは視聴者に対しても無視できない影響を与えています。主要キャラクターであるサーバルとラッキービースト、ちょっと登場しただけのカバを除けば初めて長時間登場した「脇役のフレンズ」だったため、「視聴者のフレンズと、この作品自体に対する見方を決定づける」という重要な役割を果たしたのです。
リアルタイムで視聴した方は強く印象に残っていると思いますが、コツメカワウソが登場し、滑り台や石ころお手玉で無邪気に遊ぶ様子を見て、見る人は「フレンズというのはこんなに純真で無垢な存在なんだ」と強く印象づけられたはずです。今までの考察で明らかにしてきたように、それは明らかに言い過ぎ、もしくはミスリードなのですが、あえてそう感じられるよう意図的に演出されています。
一方、ジャガーはコツメカワウソよりは「大人のお姉さん」といった感じのキャラクターですが、「頼まれると断れない性格」からもわかる通り、やはり「フレンズはほかのフレンズに優しく、助けてくれる存在である」と視聴者に印象づける働きを示しました。やはり、こうした印象は一方では正しく、一方ではミスリードになっている側面があるのですが、視聴者のけものフレンズという作品に対する「見方」を決定づけるという重要な役割を果たしたのは事実でしょう。
2話に登場するフレンズたちが示した部分を、けものフレンズの「表面」とするなら、4話に登場したスナネコ・ツチノコが示したのは「裏面」だといえるでしょう。4話「さばくちほー」は、ヒトのために作られたアトラクション「地下迷宮」が登場し、パークの過去に隠された謎を色濃く示唆する内容になっています。
「一方では、困っているかばんちゃんを助けてくれる純真で優しいフレンズが登場するものの、また一方では、そのフレンズたちの背後には計り知れない奥深い謎が存在している・・・」。2話と4話に登場したフレンズたちはこうしたけものフレンズのストーリー構造を象徴する存在だったといえるでしょう。