けものフレンズ12話感想その9:かばんちゃん復活に秘められた謎

諸注意

【Aパート かばんちゃんの復活】

サーバルが作った紙飛行機でセルリアンの注意をそらし、そのスキにフレンズたちはかばんちゃんを安全な場所まで運ぶことができました。
一方、セルリアンは船の明かりを見つけ、そちらに向かって進んでいきます。

ジャガー:船の方に行ったぞ!

サーバル:かばんちゃん?かばんちゃんは!?

(かばんちゃんが変化した七色の球、徐々にサンドスターを放出していく)

ヒグマ:ダメか・・・。

ワシミミズク(助手):自然に還り始めているのです。

(サーバル、涙を流しながら七色の球に話しかける)

サーバル:かばんちゃん!やだよかばんちゃん!もっと・・・だって、まだ・・・。

アフリカオオコノハズク(博士):サーバル、離すのです。元の姿に戻るのです。

サーバル:うう・・・うう・・・。

(サーバル、七色の球から手を離す。七色の球からサンドスターが完全に放出され、かばんちゃんが「元の姿」に戻る)

(周囲のフレンズたち、かばんちゃんの「元の姿」に驚く)

かばんちゃん:あれ?サーバルちゃん?

サーバル:か、かばんちゃんだよね?わかる?一番最初に会ったときしたお話覚えてる?

かばんちゃん:・・・ああ、「食べないでください」

サーバル:食べないよ!!!

(サーバルとかばんちゃん、抱き合って再開を喜ぶ)

ヒグマ:なんで?セルリアンに食われたら、動物に戻るんじゃ?

博士:いや、たしかに戻ったのです。この形がヒトなのです。

助手:動物がヒトの特性を得たのがフレンズ。なら、ヒトのフレンズが動物に戻っても、ということですか?

博士:(助手に頷く)本当に不思議な動物なのです。

かばんちゃんの「元の姿」とは?

船に向かったセルリアンについては次回考察するとして、今回は助け出したかばんちゃんがどうなったのか、その顛末を見ていくことにしましょう。サーバルは助け出したかばんちゃんに駆け寄りますが、すでにフレンズの姿を失い、七色の球と化していたかばんちゃんは、セルリアンから助け出してもフレンズの姿に戻ることはありませんでした。

サンドスターが徐々に周囲に放出されている描写から、すでに体内に自力でサンドスターを保持することもできなくなっている様子が伺えます。サーバルは涙を流しながらかばんちゃんに呼びかけますが、それも虚しく、かばんちゃんは「元の姿」に戻ってしまいました。

サンドスターはヒトや動物を進化させる物質か?

ところが、かばんちゃんは「ヒトのフレンズ」だったので、その元の姿とは動物である「ヒト」にほかなりません。姿形が元々と変わらなかったせいか、サーバルのことやその他の過去の記憶も忘れずに済んだのです。

博士と助手は、フレンズを「動物がヒトの特性を得たもの」というふうに表現しています。この捉え方に従うのならば、サンドスターとは「動物にヒトの特性を与える物質」だと表現できます。フィクションの世界には、これと似た存在がいくつかあるので、ご紹介しましょう。

「2001年宇宙の旅」シリーズに登場した「モノリス」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%83%AA%E3%82%B9_(2001%E5%B9%B4%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AE%E6%97%85)

SFの古典的名作として知られる「2001年宇宙の旅」シリーズには、モノリスと呼ばれる石柱上の謎の物体が登場します。この物体は、進んだ科学文明を持つ知的生命体によって作られ、最初に登場したものは、「猿人をヒトに進化させる」という効果を発揮しました。

「ゲッターロボ」シリーズに登場した「ゲッター線」

https://www49.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1567.html

変形・合体ロボットアニメの先駆けともいえる作品「ゲッターロボ」には、その動力源となる「ゲッター線」が登場します。ゲッター線は宇宙から降り注ぐ放射線ですが、どのようにして生まれるのかはまったくわかっていません。ロボットの動力源となるほか、やはりヒトを進化させる効果があります。ヒト以外の生き物(恐竜)には逆に害となる作用があり、「ゲッター線により地上を追われた恐竜の末裔と、ゲッター線によって進化し地上を支配した人類が戦う」というのが物語の大まかな展開です。

サンドスターは、劇中でこのモノリスやゲッター線と同じような役割を果たしていると捉えることもできます。さらに創造力を働かせれば、サンドスターは人類が誕生する以前に地球内部から吹き出しており、動物がヒトへと進化してきたことそのものがサンドスターの効力によるものである、という可能性すらあるでしょう。

このように捉えるのなら、サンドスターは「ヒトという動物を地上に誕生させ、ヒトでない動物にはヒトの特性を与える物質」と考えることもできます。実際には、そこまで細かくサンドスターの効果は紹介されていないので、今後のけものフレンズシリーズで謎が明らかになるのを待つしかありません。

復活したかばんちゃんは今までのかばんちゃんとは違う?

「元の姿」に戻ったかばんちゃんには、以前とは決定的に違う部分があります。まず、外見的には、手袋と脚のタイツが消失しています。後のシーンの描写から、これは「ヒトのフレンズ」であったかばんちゃんが「ヒト」になったということをビジュアルの変化で示す演出であることがわかります。

11話のラストで、かばんちゃんがセルリアンに食べられたとき、「かばんちゃんはすでに旅の目的を達成しているので、キャラクターとしての役割は終えている」と説明しました。しかし、今回そのかばんちゃんは復活し、さらにわかりやすい描写まで挿入して「ヒトのフレンズ」から「ヒト」へと変化したことが示されています。そうである以上、再登場したかばんちゃんには「以前とは異なる何らかの役割が与えられている」と見るべきです。

これまでのかばんちゃんは、フレンズたちから見れば「ヒトの代表」ではあったものの、視聴者から見ればあくまでも主人公である「かばんちゃん」という個別のキャラクターとして描かれています。

しかし、復活したかばんちゃんはおそらく「ヒト」の象徴として描かれているのだと思います。つまり、ここからのかばんちゃんの言動や行動は、「かばんちゃんという個人がどのように考え、行動したか」というふうに見るのではなく、かばんちゃんを「ヒトという動物の代表」、それ以外のフレンズたちを「動物の代表」として解釈するべきだ、ということです。

実際、個別のキャラとしての「かばんちゃん」の相方である「サーバル」も、かばんちゃん救出を図るときにそれまで胸に秘めていた思いをすべて言葉にして現し、その時点でキャラクターとしての役割を終えています。この後のサーバルは、準主人公としてではなく「数あるフレンズたちのひとり」として解釈しても、問題なく各シーンの意味を理解することができるはずです。「かばんちゃんとサーバルの旅の物語」はこれにて終了し、この後はエピローグとして「ヒトと動物との関係」が描かれることになります。

ですが、物語をエピローグにつなげるためには、まだ描ききれていない部分が2つ残っています。ひとつは、「超巨大セルリアンの行く末」。もうひとつは「ラッキービーストの結末」です。次回の考察ではこれらについて考えることにしましょう。