けものフレンズ11話感想その12:フェネックの活躍とかばんちゃん・アライさんの和解

諸注意

けものフレンズ11話感想その11:かばんちゃんとアライさん・フェネックの出会い
【Bパート アライさん、「帽子泥棒」を捕まえる】 山頂にたどり着いたかばんちゃんとサーバルは、 2種類のサンドスターが...

【Bパート フェネックはアライさんのブレーキ役】

「帽子泥棒」だと思いこんでいたかばんちゃんを捕まえたアライさんは、被っていた帽子を奪い取ります。サーバルが「その子はかばんちゃんで、帽子泥棒ではない」と説明しますが、アライさんはまったく信用しようとしません。黙って2人のやり取りを聞いていたフェネックがそのとき口を開きました。

フェネック:ははーん。アライさんまたやってしまったねぇ。

アライさん:ふぁ?

フェネック:この子がかばんさんだよ。やけに帽子の子と同じ場所で話が出ると思ったよ。

アライさん:で、でも、これはアライさんが最初に見つけたのだ。アライさんがとられたのだ!

フェネック:でも、かばんさんってそんなことする子かなぁ?

アライさん:うぬ・・・。

フェネック:アライさんもべた褒めで、恩人だって言ってたじゃないか。きっと何か事情があるんだよ。

アライさん:うぬぬぬ・・・。はい・・・、一旦返すのだ。

(アライさん、かばんちゃんに帽子を返す)

かばんちゃん:ありがとうございます。

アライさん:と、飛びついたりして・・・ご、ごめんなさいなのだ・・・。

(帽子を見たラッキービースト、ミライさんのメッセージを再生し始める)

アライさん:あっ、これなのだ!これが聞きたかったのだ!

かばんちゃん:ミライさんのお話を?じゃあ、一緒に聞きましょう。

アライさんを説得するのはフェネックの仕事

アライさんは現在、ずっと追い続けてきた帽子泥棒にようやく追いつくことができた状況です。有り体に言えば、目的を達成した直後なので気が立っているわけです。そんな状態ではサーバルの説得に耳を貸さなかったのも無理はありません。

ここはやはり、アライさんの性格をよく知るブレーキ役が必要です。というわけで、今回はアライさんとコンビを組むもう一人のフレンズ、フェネックの出番をご紹介します。

フェネックはアライさんが山頂についたあと、ゆっくり遅れて登場し、アライさんとかばんちゃん、サーバルたちの掛け合いをずっと静かに眺めていました。元々そのようなのんびりとした性格をしているのか、アライさんと付き合ううちにそういう傾向が身についたのかはわかりませんが、今までの登場シーンでも基本的に「アライさんが先に行き、それを後からフェネックが追いかける」という流れがパターンになっていました。

正確かつ丁寧なフェネックの説得

サーバルとアライさんの会話をある程度聞いた後、フェネックはおもむろにアライさんに対して「またやってしまったねぇ」と話しかけています。「また」といっているということは、いつもアライさんが「やってしまった」ときにフェネックがこのようにして説得しているということなのでしょう。

フェネックはまず「サーバルが言うとおり、帽子の子=かばんさんであり、その証拠に自分たちも帽子の子の情報を聞いたのと同じ場所でかばんさんの情報を聞いたではないか」とアライさんを説得しました。

アライさんはこのフェネックの意見には一切反論できません。出会ったばかりのサーバルの言うことは信用できないかもしれませんが、「帽子の子とかばんさんは同じ場所を通っている」という事実は、他ならぬ自分たちで確認してきたことなので否定できないからです。

しかし、諦めきれないアライさんは「帽子の子は確かにかばんさんかもしれないが、帽子を先に見つけたのは自分であり、あくまで所有権は自分にある」と主張します。この主張には一見筋が通っているように見えますが、フェネックはここも上手にかわして説得を続けました。

フェネックは、「かばんさんはパークに残した実績を見ても、人の帽子を奪うような子ではない。帽子がアライさんの手からかばんさんの手に渡った経緯はともかくとして、今は事情を聞いてみよう」と提案します。

確かにフェネックの言うとおり、アライさんがこの場でかばんちゃんから帽子を取り返すことにこだわらない限り、この方法でとりあえずは話を丸く収めることができます。最終的にアライさんもいきなり飛びついて帽子を奪い取った非を認め、かばんちゃんに謝罪して事態は事なきを得ました。

今回の会話は、話にしてしまうと何の事はないやり取りですが、このようにひとつひとつのセリフを丁寧に見ていくと、フェネックは単純に情理に訴えてアライさんを説得したわけではなく、極めて論理的に、かつアライさんの主張も認めた上で説得しているということがわかります。

けものフレンズは一見ゆるいアニメのように見えますが、動物の持つ素直さや純粋さといった面がストレートに視聴者に伝わるよう、セリフ選びや話の流れなども丁寧に作られていることがわかります。わかりやすくいえば、大人が子どもを説得する際、ついつい使ってしまうようなその場しのぎの理屈など、見ている側が登場人物の純粋さに疑問を持ってしまうような不純物は入れないようになっている、ということです。

長い旅の果てに、同じゴールに辿りついた4人

アライさんがかばんちゃんに謝った直後、ラッキービーストが都合よく帽子に反応したため、4人は揃ってミライさんのメッセージを聞くことになりました。

かばんちゃんとサーバルは、山頂にくるまでの道中でわかったとおり、「黒いセルリアンへのサンドスター・ロウの供給を止めるため、フィルターを貼りなおす方法」を知ろうとしています。一方、アライさんとフェネックは「パークやフレンズにとってのお宝の位置を確かめること」がメッセージを聞く目的です。

かばんちゃんとアライさん、どちらの目的も「四神の位置」という共通の情報が得られれば解決されるというのが面白いところでしょう。ふたりともまったく違う目的で旅を続けてきたものの、最終的に同じアイテム(帽子)を使って、同じ場所にたどりつき、同じメッセージを聞こうとしているのが印象的です。奇妙な一致を見せる2組のペアが出会ったことで、今後ストーリーにどのような影響があるのか、次回以降注目していくことにしましょう。