けものフレンズとヘパリーゼのコラボ効果をマーケティングの観点から考察

ファミマとサークルKサンクスが行った「けものフレンズ キラキラチャームプレゼント」キャンペーンについて、マーケティングとしての狙いと効果を考察します。けものフレンズとのコラボはヘパリーゼの売上にどのように寄与するのでしょうか?

けものフレンズのチャームプレゼントキャンペーン

コンビニエンスストア大手のファミリーマート、サークルKサンクスが「けものフレンズ キラキラチャームプレゼント」キャンペーンを2017年6月から開始しました。対象商品(ゼリア新薬 ヘパリーゼ類)を購入すると、購入商品2点につき、けものフレンズのキャラクターをかたどったチャームがひとつもらえるというキャンペーンです。

キャンペーンの詳細はこちら

http://www.family.co.jp/campaign/spot/201706kemono-friends.html

http://www.circleksunkus.jp/cs/campaign/201706kemono-friends/index.html

今回は、マーケティングの観点から「ヘパリーゼ」を販売するゼリア新薬がなぜこのようなキャンペーンを行っているのか考察してみましょう。

過去に「ガルパン」でも行っていたアニメとのコラボ

実は、ゼリア新薬がアニメ作品とヘパリーゼをコラボレーションさせるのは今回が初めてではありません。過去にはガールズアンドパンツァーとコラボレーションした類似の企画があります。

2017年3月21日から、対象商品購入者にガールズアンドパンツァーのチャームをプレゼントするキャンペーン

http://girls-und-panzer.jp/pro_campaign.html

けものフレンズのキャンペーン内容は、ほぼこのガールズアンドパンツァーのときのものと一緒です。ヘパリーゼ2つにつきチャームを1つプレゼントというマーケティング施策のフォーマットを単に作品を差し替えて繰り返しを行っていると考えられます。

対象商品「ヘパリーゼ」の概要

まず、今回のキャンペーンの対象商品である「ヘパリーゼ」について簡単に確認しておきましょう。

対象商品の分類は「清涼飲料水」がメイン

「ヘパリーゼ」と名のつく商品にはいろいろと種類があり、なかには第二類・第三類医薬品に分類されているものもあります。しかし、今回の対象商品は主に清涼飲料水なっており、第二類・第三類医薬品に分類されているものは含まれていません。(炭酸飲料と指定医薬部外品のものがそれぞれ1種類ずつ対象になっていますが)

わかりやすく言い換えると、今回のキャンペーン対象商品に限れば「ヘパリーゼ=エナジードリンク」だと考えてOKだということです。オロナミンCやレッドブルなどと同じく、「気分をリフレッシュ」するために飲むものだと考えていいでしょう。対象商品の中で唯一の指定医薬部外品である「ヘパリーゼアミノ」を除き、肝臓の働きを促す効能があるとされる「タウリン」は含まれていません。

価格は200~500円前後

対象商品の価格はおおよそ200円台から500円台までです。チャームを目当てに商品を購入する場合、多くの方は200円台の商品を中心に購入すると考えられます。

競合商品の代表は「ウコンの力」

ヘパリーゼは同じくエナジードリンクに分類される、ウコンの力と比較されることが多いです。ウコンの力はコンビニでも200円台で売られていることが多く、その他の小売店では値引き販売されていることも多いので、ヘパリーゼは価格面でやや不利な立場に置かれていると言っていいでしょう。

データを元に、ヘパリーゼの売れ方を分析

通常、企業のマーケティング戦略は外部に明らかにされることはありませんので、ここからは客観的なデータを元にしてゼリア新薬が何故アニメーションとのコラボキャンペーンを行うのか、その意図を考えてみたいと思います。

下記のリンクに、株式会社プラネットが公表している「栄養ドリンク・エナジードリンクに関する意識調査」(2015年3月29日)のデータがあります。

http://chosa.itmedia.co.jp/categories/lifestyle/71550

このデータを元にして今回のけものフレンズキャンペーンの意図するところを考察してみたいと思います。

以上の調査から重要なポイントをピックアップすると以下のようになります。

ヘパリーゼの知名度は5.5%、ウコンの力は23.9%

競合製品であるウコンの力に、ヘパリーゼは価格面で不利に立たされていると表現しましたが、データからもそれが裏付けられた形です。

エナジードリンク類のコアユーザーは20~30代男性

ヘパリーゼ単体のコアユーザー層はわかりませんが、年齢・性別はおおよそ同じように分布しているものと考えられらます。「疲れたときや空腹時に飲む」と答えた方が多かったようです。

4割の人が100~150円台、2割の人が200円台でエナジードリンクを購入している

68.8%の人が、エナジードリンクを「ドラッグストアで購入する」と答えており、定価からの値引き販売で購入している人が多いことがわかりました。コンビニで購入している人の割合は37.7%で、商品の価格帯とあわせて考えてもヘパリーゼにやや不利な情勢が見て取れます。

けものフレンズとのコラボキャンペーンの狙い

以上のことから、ゼリア新薬(と、コンビニエンスストア)の立場に立ってヘパリーゼの有効なマーケティング施策を考えてみましょう。

まず、競合製品であるウコンの力に知名度で完全に負けていることから「販売数量を増やす=認知度を挙げる」という目的が設定できます。

売上を増やすためには、コアユーザーに働きかけるのが最も有効でしょう。メインの客層である20~30代の男性に訴えかける手段のひとつとして、アニメ作品とのコラボという方法が考えられます。ガールズアンドパンツァーもけものフレンズも若い男性ファンが多いアニメという点ではまさにうってつけだと言えるでしょう。

ヘパリーゼがウコンの力に対して不利になっている大きなポイントが「価格差」です。この点については、販売を受け持つコンビニエンスストアも無関係ではありません。割引販売を行うドラッグストアに対して、同様に価格面で不利に立たされているからです。

コンビニは定価販売が基本なので商品価格を下げることはできません。となると、何か付加価値をつけて商品を買ってもらう方がいいという結論になるでしょう。「アニメ作品とコラボしたチャームをプレゼントする」という施策の具体的な手段がそこから導き出されます。

知名度アップに加え、固定客を増やす効果も?

今回の「けものフレンズ キラキラチャームプレゼント」キャンペーンは、ゼリア新薬とファミリーマート、サークルKサンクスに次のような効果をもたらすと考えられます。

  • 「ヘパリーゼ」の売上増加=認知度アップ
  • 固定客=ヘパリーゼのファンの増加

売上増加による認知度アップは、効果がわかりやすいと思いますが、私はどちらかと言うと「固定客(商品のファン)の増加」のほうに注目しています。

今回のキャンペーンについて、SNSなどで反応を見ていると「普段はウコンの力を買っていたけど、今回ヘパリーゼを買って飲んでみて美味しいのに驚いた」という声がところどころから聞かれました。このように、価格面ではウコンの力に不利に立たされているヘパリーゼですが、「味」という面で言うと優位性を持っている可能性が判明したのです。

味というものは、実際にその商品を買って試してみるまでわかりません。しかし、過去の記事の中で紹介したように「商品を試食(試飲)した人は、8割がその商品を購入に至る」というデータがあります。

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同じように、今回のキャンペーンをきっかけにその後もヘパリーゼを購入する固定客が増える効果が期待できるのではないか?と考えられるのです。私はむしろ、こちらの効果のほうが長期的に見た場合重要なのではないかと考えています。