けものフレンズ2話感想その16:サーバルがジャパリバスの仕組みをすんなり理解できた理由

諸注意

前回記事:【2話 その15】アニメ感想「けものフレンズの謎」:ジャパリバスへのリアクションの違いと、バスがそこにあった理由

【Bパート 運転席を発見し、向こう岸への運搬を目指すかばんちゃんたち】

ジャパリバスを発見したかばんちゃんとサーバルでしたが、ラッキービーストが運転席がないことに気づきます。ジャガーから「向こう岸で似たものを見たことある」との説明を受け、向こう岸へ渡る一行。想像通り、ジャガーが言っていたものはジャパリバスの運転席でしたが、「どうやって向こう岸へ運ぶか?」という新たな問題が浮上します。

アイキャッチを挟んで、一瞬だけ「川の向こう岸」へ一行が移動するシーンが描かれます。ほんの1秒あるかないかというシーンですが、このワンカットがあることで視聴者はそれぞれの場所の位置関係をイメージすることができます。

運転席を確認したラッキービーストは「やった!これだよ!これだよ!」とテンションが上った様子で報告しています。これも本来ロボットキャラであれば淡々と事務的に報告すればいいはずです。しかし、「やった!」という感嘆を示す言葉を入れたり、「これだよ!」を2回繰り返すなど、感情が高ぶっていることを外に伝わるように表現しています。このシーンからもラッキービーストが実際には感情豊かなキャラクターであることが確かめられます。

ジャパリバスの運転席は、ネコ科の頭部を模したと思しき形をしており、サーバルは「面白い形」と感想を述べています。サーバルは「普通の形のバス」を見たことはないはずなので、単純に自分たちネコ科のフレンズと似たような形をしているのを見て面白いと思ったのでしょう。

バスの構造を瞬時に理解するサーバル

その直後、サーバルは「これがさっきのにひっつくんだね」と発言していますが、これは非常に重要な発言です。繰り返しますが、サーバルは今までの人生で一度もバスを見たこともなければ、「乗り物」さえほとんど見たことはなかったはずです。にもかかわらず、ラッキービーストによる断片的な説明と、ジャパリバスの車体を見て得られる情報から「運転席と後部車両がくっつくと想像できた」ことを示しているからです。

ラッキービーストの説明を、サーバルはどの程度理解していたのか確認してみましょう。後部車両を発見したとき、ラッキービーストは「運転席がないよ。本当はここにも車体があるはずなんだ」と発言しています。それを受けてサーバルは「それがないとバスじゃないの?」と応えています。「運転席というのが何なのかは知らないが、『本来あるべきバスの一部がなくなっている』んだな」と理解していたということです。

では、「乗り物」に対する知識はどうでしょうか?サーバルが劇中で「間違いなく知っていて」、かつ「よく覚えている乗り物」と言えば、この場所にくるまでに乗ってきた「ジャガーのいかだ」です。ジャガーのいかだは、(ヒトが過去に作ったものを除けば)おそらくジャパリパーク内でも珍しい、場合によっては「唯一の乗り物」だと言えるでしょう。それは、ジャガーが橋の破片を加工したと思われる「いかだ」を引っ張ることで動きます。この「ジャガー(動力・操縦系統)が、いかだ(乗客席)を引っ張る」という構造を事前に知っていたからこそ、サーバルは「運転席が座席のある後部車両を引っ張る」というバスの構造をすんなり理解できた、と考えられるのです。

もし「ジャガーのいかだに乗るシーン」がなかったら?

このシーンの重要なポイントは、「運転席と後部車両がくっつくことでバスが完成する」ということに気がついたのが「サーバルだった」という点です。このあと一行は実際に運転席と後部車両をくっつけるために奮闘することになりますが、そもそも彼らがそうし始めたきっかけが、サーバルの「これがさっきのにひっつくんだね」というセリフだったからです。そして、サーバルがそう発言することができたのは、「ジャガーのいかだを直前に見ていて、『乗り物』とはどういうものか知っていたから」です。

では、もし「ジャガーのいかだに乗せてもらうシーン」がなかったとしたら、サーバルが「乗り物とはどんなものか」を知らなかったとしたら、ストーリーの展開はどうなっていたでしょうか?

まず、本編と同じように「運転席と後部車両に分かれたジャパリバスをくっつけなければいけない場面」まで進行したとしましょう。そこでラッキービーストが「バスを動かすには運転席が必要」と一行に伝えただけでは意味がありません。かばんちゃんもサーバルもその時点で「乗り物に乗った経験」がないことになるので、「バスの利便性」を想像できないからです。「なぜわざわざそんな手間をかけてバスに乗らなければいけないの?」という疑問を持つことになってしまうでしょう。

その時点で、「運転席と座席がくっつくことで、初めて乗り物は機能する」ということを誰かのセリフで説明しなければならないことになってしまいます。おそらく、最初にラッキービーストが説明役になると思いますが、ストーリーの本筋とは関係ない「乗り物の仕組みを説明するシーン」がいくらか挿入されなければいけないことになります。そうなると、話が脇道にそれますし、複雑で余計なセリフを増やさなければいけません。

先に「ジャガーのいかだに乗るシーン」があると、それがサーバルのセリフの伏線になるため、こうした心配はいらなくなります。運転席を見た時点で、サーバルが口には出さないものの、「ああ、ジャガーのいかだと同じ理屈だね」と直感的に理解していることが視聴者にも伝わるからです。

そのように考えると、「ジャガーにいかだで運んでもらうシーン」は、次のように複雑な意味が付与されていることがわかります。

1.「困っている人を放っておけない」というジャガーの性格を示す

2.「過去に周囲の地形が変化した」という伏線を示す

3.「川の両岸にジャパリバスの一部がある」という位置関係を、視聴者に自然な形で理解させる

4.かばんちゃんとサーバルに「乗り物」を体験させ、ジャパリバス発見時の余計な説明を省く

このように、けものフレンズは前後のシーンの因果関係が極めて精巧に作られていることがわかります。こうした丁寧な作りが魅力的なストーリーを生み出す原動力になっているのです。

けものフレンズ2話感想その17:ジャパリバスの運転席を向こう岸まで運ぶ方法(失敗)
前回記事:【2話 その16】アニメ感想「けものフレンズの謎」:サーバルがジャパリバスの仕組みをすんなり理解できた理由 ...