けものフレンズ9話感想その15:「ヒトに近いフレンズ」の能力を超えた脅威

諸注意

けものフレンズ9話感想その14:サンドスターの出る山=神聖な山の謎
【Bパート サンドスターが吹き出す山の謎】 かばんちゃんとサーバルがラッキービーストからのメッセージを聞いていた間...

【Bパート ゆきやまからセルリアンの出現】

ギンギツネとともに、サンドスターが出る山について語り合っていたかばんちゃん。

そのとき、キタキツネが何らかの異変に気が付きました。

キタキツネ:あっ・・・。

かばんちゃん:キタキツネさん、どうしましたか?

(大きな地響きとともに大量のセルリアンが出現)

キタキツネ:あれは・・・。

サーバル:あれ・・・セルリアンじゃない?

(大量のセルリアン、雪原を転がりかばんちゃんたちの元へ)

かばんちゃん:こ、こっちに来てませんか?

サーバル:た、戦える量じゃないよ!逃げよう!

ギンギツネ:あのスピードじゃ、走っても追いつかれるわ!どこか隠れるか、高い場所・・・。

サーバル:えっ、どこ?隠れるところなんてないよ!

ギンギツネ:どうしよう、どうしたらいいのかしら・・・。

キタキツネ:もう僕ゲームできないのか、がっくり。

小さな異変を感じ取るキタキツネの感覚

最初に異変に気がついたのは、キタキツネでした。思い返してみるとキタキツネはギンギツネからもその感覚の鋭敏さを評価されていたことが分かります。最初にキタキツネの感覚が役に立ったのは、かばんちゃんたちとの出会いのシーンでした。かばんちゃんたちがかまくらの中で隠れていたとき、そこから声を聞き取ってギンギツネに居場所を教えたのは他ならぬキタキツネです。

キタキツネがその優れた能力を発揮したシーンはもうひとつあります。登山コースを通り、源泉のそばにある機器の近くまでやってきたとき、どの機器に異常が見られるのか判断したのはキタキツネでした。どちらのケースにおいても同じアカギツネの仲間であるギンギツネはキタキツネの感覚を頼りにしています。この点においてはギンギツネよりもキタキツネのほうが優れていると彼女も考えていたのでしょう。

劇中初、セルリアンが出現する瞬間

過去の考察で取り上げたシーンにおいて、キタキツネは気になる発言をしています。それは「湯の花が多いときはセルリアンの出現も多い」というものでした。セルリアンと湯の花、おそらくは火山活動もしくは地殻変動には何らかの関連性があることが示唆されているわけです。

今回は、彼女のこの発言が悪いフラグとして機能してしまいました。突如大きな地響きがしたと同時に、ゆきやまから大量のセルリアンが出現したのです。これが、セルリアンが出現する瞬間が明確に描かれた劇中最初のシーンとなりました。

とはいえ、セルリアンがどのように出現するのか、そのメカニズムがはっきりわかっているわけではありません。従って、山の中腹から突如、大量のセルリアンが湧き水が染み出すかのように出現する光景だけが描かれています。

セルリアンは「ヒトに近いフレンズ」の能力を超えた脅威

突如として出現した大量のセルリアンに、かばんちゃんたちもさすがに戸惑いを隠せません。しかし、突然のことですから対処できる方法は限られています。

最初に危険を知らせたのはサーバルでした。過去の考察で取り上げたように、サーバルは「未知の課題を解決することにやる気を出すタイプ」です。今までもセルリアンに対しては、基本的に「自分の実力で戦って倒す」ことを望んでいました。もちろん、望みどおりそのように対処できたケースは少ないのですが、「セルリアンを倒すことによって自身の能力を示したい」というのがサーバルの基本的なスタンスです。

しかし、そんなサーバルであっても今回は一見して戦って倒せる数ではないということを悟っています。この点から、今回のセルリアンの脅威度の高さと、かばんちゃんたちの追い詰められた状況が伝わってきます。

サーバルはセルリアンの大群に対して逃げることを提案しますが、より具体的な対処法を提案したのはギンギツネでした。ギンギツネは、過去の解説でも取り上げたとおり、「ヒトに近いフレンズ」です。温泉に使われている設備や、自分たちキツネの特性についてもよく理解しています。

しかし、セルリアンに対してはそんなギンギツネすらもよい対処法は浮かびません。セルリアンはフレンズたちにとって、いわば自然災害のようなものです。たとえヒトがパークに残した文化や設備に関する知識があっても、それだけではセルリアンに対して適切な対策が取れるようになるわけではありません。

ギンギツネが示したのは、「隠れる」、「(高所に)逃げる」というごく普通の対処法でした。もし環境さえ許すのであれば、これらの対処法でもセルリアンから逃れることができたはずですが、今回はそうは行きません。セルリアンの数が異常に多く、かつ山の傾斜を利用して非常に早いスピードでかばんちゃんたちの元へ迫ってきているからです。

セルリアンに対して、「ヒト」はどのように対処するか?

ここに至って、サーバル、ギンギツネ、キタキツネは有効な策を思いつくことができなくなってしまいました。サーバルとギンギツネは狼狽し、キタキツネに至ってはすでにセルリアンに対する対処を諦め、覚悟を決めている様子です。

このシーンで浮き彫りになったのは、ギンギツネやキタキツネのように「ヒトに近いフレンズ」であっても、セルリアンという脅威に対してできることは限られてしまう、ということです。

前回の8話「ぺぱぷらいぶ」において、主人公であるかばんちゃんは完全に脇役に追いやられていました。PPP(ペパプ)内部の人間(フレンズ)関係の問題を解決したのは、PPPメンバー同士と、マーゲイといった「ヒトに近いフレンズ」たちの自助努力の結果であり、かばんちゃんは彼女たちの求めに応じてサポートを行ったに過ぎません。「ヒトに近いフレンズ」たちは、自力で自分たちの抱える問題を解決する能力を持っていたわけです。

ところが、9話において登場した「セルリアン」という脅威は、「ヒトに近いフレンズ」たちのとっても己の能力を超える脅威として描かれています。つまり、この脅威に対してヒト=かばんちゃんがどのように対処していくことができるかが、今問われているテーマなのです。