すでに本編の各シーンは全て取り上げましたが、まだ考察していなかった点が2つほどあるので、今回はそれらを取り上げたいと思います。考察したい2点は次の通りです。
- サーバル以外のフレンズは、なぜかばんちゃんについていったのか?
- かばんちゃんの手足が黒くなっていることについて
それでは、具体的に考えてみましょう。
サーバル以外のフレンズはなぜかばんちゃんについていったのか?
今までの考察で明らかにしてきたように、かばんちゃんとサーバルには特別な関係があります。かばんちゃんと出会うまで、サーバルは周囲からバカにされる頼りない存在でしたが、かばんちゃんと旅を続ける中で、「かばんちゃんのパートナー」という自分にしかできない役割を見つけることができたのです。詳しくは、過去の考察の中で説明しているのでそちらをご覧ください。
ですから、サーバルがかばんちゃんの旅についていくのは単純にかばんちゃんのことが好きで、一緒にいたいからだけではありません。かばんちゃんの隣こそが自分の「なわばり」だと自覚したからこそ、サーバルはかばんちゃんについていこうとしているのです。
このように、サーバルにはかばんちゃんについていく理由が存在するわけですが、サーバル以外のフレンズについてはどうでしょうか?誰がついていったのか、明確なメンツが明らかにされていないということは、「劇中に登場したどのフレンズであっても、ついていく可能性もあった」と解釈していいでしょう。どうとでもとれるように描写されていることには、どう解釈しても問題ないように描かれているはずだからです。
色々なことが考えられますが、最もシンプルな解釈は「サーバルと同じように、かばんちゃんについていきたくなった」というものでしょう。ただし、ここでいう「サーバルと同じように」という意味は、「12話の時点でのサーバルと同じように」ではなく「1話ラストの時点でのサーバルと同じように」という意味です。
フレンズたちは、「1話終了時点のサーバル」と同じ気持ち
過去の考察では、1話終了のラストでサーバルがかばんちゃんと一度別れた後、再び追いかけて後をついていったのは、それまでの「守るものと守られるもの(親子)という関係から、友達という関係になった」という象徴的な意味があると説明してきました。
サーバルにしてみれば、おそらく初めて自分を頼りにしてくれた存在がかばんちゃんだったため、かばんちゃんが成長し「親子」の関係が解消しても「友達として一緒にいたい」と考えたことが旅についていった最初のきっかけだったと思います。私の考えでは、12話のラストにおけるサーバル以外のフレンズも、同じように「友達としてかばんちゃんと一緒にいたい」と考えたからついていったのではないかと思います。私も最初に12話を見たときは「フレンズたちはかばんちゃんを慕ってついていこうとしたのだろう」と考え、これといった疑問はもちませんでした。
しかし、このアニメのタイトルは「けもの『フレンズ』」です。「友達」についていくというシーンにどういった象徴的な意味が隠されているのか、そういったストーリーの裏側を解釈することには大きな意味があると思います。この部分についてより深く考えるためには、先にもう一つの疑問を解決しなければなりません。
かばんちゃんの手足が黒くなっていることについて
最後の木登りを終えたシーンや、島が見つかった後、運転席の中で身を乗り出すシーンがわかりやすいのですが、パークの外へ向かって旅立つ段階のかばんちゃんは手足の先端が黒くなっています。なぜこのような現象が起きたのか、リアルタイムの放送時には様々な憶測がなされました。
なかには、「セルリアンにサンドスターを奪われたから手足の先が壊死しているのではないか」といった恐ろしい説もありましたが、最も説得力があった解釈は「手袋とストッキング(タイツ)が再生してきている」というものでしょう。
かばんちゃんは1話~11話までの時点では、手袋とストッキング(タイツ)をしています。それが、セルリアンの体内から救出され、復活したあとになると何故か消失してしまっています。おそらく手袋とストッキング(タイツ)部分はサンドスター由来の衣服であり、セルリアンにサンドスターを奪われ、動物としてのヒトの状態に戻ったために、失われてしまったのでしょう。
フレンズの服については、9話「ゆきやまちほー」の感想でも取り上げましたが、過去公式にもゲーム版やガイドブックなどでどういう仕組みになっているのか提供された情報がいくつかあるようです。今回はピクシブ大百科の記述を参照してみましょう。
https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BA%28%E3%81%91%E3%82%82%E3%81%AE%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BA%29
上記リンク先によれば、
フレンズの身体はヒトをベースに再構成されており、元の生物の特徴はケモミミや尻尾、衣服などの形で再構成される。ヒトの部分は純粋な肉体だが、けもの部分については「けものプラズム」が形を成したものである。けものプラズムは身体のけもの部分を構成するだけでなく、フレンズとしての力を使う時に放出される。
衣服を一度失っても自然に再生して行く。つまり毛皮の生え替わりのように扱われる。尚、衣服と意識した後も再生する様であり、この事から衣服として認識した場合、毛皮が衣服になるのではなく、毛皮兼衣服になると考えられる。
こうした記述が存在するため、かばんちゃんの手袋やストッキング(タイツ)も、救出されてからパーティまでの1ヶ月の間に徐々に再生していったものだと考えられます。もう少しすれば完全に再生し、元の状態に戻るでしょう。
ただし、こうした点については、ゲーム版からけものフレンズを知っていた方などが、放映当時から多く指摘しており、取り立てて真新しい解釈というわけではありません。ではなぜ、あえて今回取り上げたのかというと、最初に解説した1点目と同じく、本作がストーリー全体を通じて伝えようとしている主張を読み解くにあたっていい材料になると考えたからです。
かばんちゃんの手足にサンドスター由来の衣服が再生してきているということは、一旦動物に戻ったかばんちゃんが「再びフレンズに戻りつつある」ということを意味しています。
けものフレンズが伝えたかったこととは?
つまり、けものフレンズの最終話は、
- かばんちゃんが動物の友達(フレンズ)から「ヒト」になる
- 旅の途中で出会った動物たちがヒトの友達(フレンズ)になり、ついていこうとする
- かばんちゃんが「ヒト」から動物の友達(フレンズ)に戻りつつある
というところまでを描いてエンディングに至ったことになります。これらのストーリーの裏に一体どのような意味が隠されているのか、その答えはまた次回の記事で考えていきたいと思います。