けものフレンズ6話感想その7:ライオンとヘラジカ、群れで比べる組織論

諸注意

けものフレンズ6話感想その6:ヘラジカとその部下たちの特徴まとめ
【Aパート ヘラジカとその部下たち】 城でライオンに、合戦のルール変更を提案したかばんちゃん。場面は切...

【Aパート かばんちゃんがヘラジカの元へ来た理由】

ライオンとの対決に向け、気炎を上げるヘラジカたち。その傍らにはなぜかかばんちゃんとサーバルの姿が・・・。

かばんちゃん:うぃぃ・・・。

サーバル:なんでこんなことに・・・。

ヘラジカ:さて、そんな大変良いタイミングで我々に仲間が加わったぞ。二人共、自己紹介をよろしく。

サーバル:サーバルキャットのサーバルだよ。よろしくね。

(ヘラジカの部下たちが歓声を上げる)

かばんちゃん:何の動物かわからないんですが、かばんです。よろしくお願いします。

(ヘラジカの部下たちが歓声を上げる)

ヘラジカ:期待しているぞ。一緒にライオンを倒そう!

サーバル:よ、よろしく・・・。

かばんちゃん:よろしくお願いします。

かばんちゃん&サーバル:(どうしてこんなことに・・・)

(場面は変わって、ライオンの城)

ライオン:そうだー!君ら、ヘラジカを勝たせてくれよ!

かばんちゃん&サーバル:???

ライオン:いっそヘラジカにアドバイスできたら~と思ってたんだよ。それがいい!ぴったりだ!うちの部下は顔がバレてるからさぁ。

かばんちゃん:え~それはちょっと・・・。

サーバル:どうやって勝たせるの?

ライオン:ん~、勝たせ方は~君なら見ればすぐに分かるよ。

かばんちゃん:え?

ライオン:頼むよ~。フレンズ助けだと思って~ひとつ~。

けものフレンズでは珍しいセリフ入りの回想シーン

妥当ライオンに向けて団結するヘラジカとその部下の傍らに、ライオンの城にいたはずのサーバルとかばんちゃんの姿がありました。2人が言うように「どうしてこんなことに」なってしまったのでしょうか?

私がけものフレンズを好きな理由のひとつに、回想シーンが少ないことが挙げられます。回想シーンは登場人物への感情移入を促すなどの効果がありますが、「複雑な設定を説明するためだけのシーン」になってしまうことも少なくないからです。

しかし、今回は珍しく、かばんちゃんたちがヘラジカの元にやってきた理由は、直後の回想シーンで明らかになります。

かばんちゃんをスパイとして送り込んだライオンの優秀さ

かばんちゃんたちがヘラジカの元にやってきたのは、対戦相手であるライオンから「ヘラジカに助言して勝たせてほしい」と頼まれたからでした。ライオンとしては、「ヘラジカが戦いをやめないのは何度やっても勝てないからだ。勝ちさえすれば戦いをやめる口実になるのではないか」という読みがあるのでしょう。元々ライオンは群れのリーダー役やけが人が出る可能性のある危険な合戦には飽き飽きしており、一刻も早くヘラジカを満足させてやめたいと考えていたはずです。

6話に入ってから私はずっと「ライオンの優秀さ(主に頭の切れっぷり)」を褒め続けていますが、このアイデアも非常に素晴らしいものです。かばんちゃんの頭の良さを瞬時に見抜いただけでなく、「スパイとして敵地に送り込む」という別のアイデアをも同時に思いつくとは大したものだといえるでしょう。

それに対して、ヘラジカやその部下はルール変更の提案にも、タイミングよく現れて加勢してくれたかばんちゃんたちも一切怪しむ様子がありません。はっきり言って合戦のような勝負ごとに限れば、リーダーとしての資質はヘラジカよりもライオンのほうが大きく勝っていると言わざるを得ません。

ライオンはかばんちゃんの知恵を楽しみにしていた?

「どうやってヘラジカを勝たせるのか」とサーバルから問われたライオンは、「君(かばんちゃん)なら見ればすぐに分かる」と語っています。これはかばんちゃんの知力を信頼しているのはもちろんのこと、「自分でもある程度検討はついている」と思わせるような演出です。

つまり、「長い間戦ってきた自分なら当然ある程度勝たせ方の検討はつく。でも君ほど頭が良ければ、ヘラジカたちの様子を見ればすぐに勝たせ方がわかるはずだ」と考えていたのではないでしょうか。これもライオンのリーダーとしての優秀さを示す演出であるほか、「かばんちゃんがどんな勝たせ方を思いつくのか見てみたい」と考える遊び心を表しているシーンであるともいえます。

ヘラジカの群れは上下関係のないフラットな組織

一方、ライオンのライバル関係にあるヘラジカとその部下たちですが、ライオンたちに比べてすべての面で劣っているというわけではありません。まず、非常に気さくで分け隔てない、接しやすいグループであるという特徴が挙げられます。初対面のかばんちゃんたちにいきなり武器を突き立ててきたオーロックス、アラビアオリックスとは異なり、ヘラジカたちは彼らを暖かく受け入れてくれました。

また、ライオンとその部下たちの間に厳格な上下関係が存在していたのに対して、ヘラジカの群れは非常にフラットな上下関係のない組織です。リーダーであるヘラジカには皆敬意を払っているのがわかりますが、それでも上司と部下というよりは「仲間」といったほうが適切な関係性だといえるでしょう。

ライオンとヘラジカ、どちらの群れのほうが優れているか?

ライオンとヘラジカ、それぞれの群れを比較すると、まずライオンの群れは「優秀なリーダーと強い部下による厳格な組織」と表現できます。戦いには強いものの部下も上司も常に緊張感が漂っており、リラックスして過ごしにくい組織です。

それに対してヘラジカの群れは「あまり優秀とはいえないリーダーと普通の部下によるおおらかな組織」と表現できます。戦いには弱いですが、いくら負けてもメンバーからやる気や闘志が失われることはありません。常にリラックスして和やかな一体感が漂っています。

このように、それぞれの群れを「組織」として比較すると6話は「性質の異なる組織同士の対決」と見ることもできるわけです。人間社会においてもライオンの群れのような組織とヘラジカの群れのような組織は両方あると思います。果たしてどちらの群れのほうが優れているのか、自分が所属するとしたらどちらの群れのほうが好みか?といったことを考えながら見ていくと楽しいかもしれませんね。