前回記事:
【Bパート アルパカ・スリ、トキとの別れ】
ラッキービーストからロープウェイを見せられたかばんちゃんとサーバル。サーバルはロープウェイに大いに興味を示し、「自分が漕ぎたい!」と主張します。
「バスが動くといいね」、「私の歌が聞きたくなったらいつでも呼んで」と語るアルパカ・スリ、トキと別れを済ませ、かばんちゃんとサーバルはロープウェイで下山することになりました。
実際にもある「人力で動かすロープウェイ」
2人が乗ることになったロープウェイは、人力(足こぎ)で動くタイプのものです。日本にも「野猿」という人力で動くロープウェイがありますが、手で引っ張って動かすタイプのものです。
https://matome.naver.jp/odai/2141042844971059601
ジャパリパークと同じタイプのものは確認できませんでしたが、何かモデルがあるのでしょうか?
サーバルが自らロープウェイを漕ぎたがった理由はいつもと同じ「未知の課題に挑戦することに燃えるタイプ」だからです。当ブログのアニメ感想「けものフレンズの謎」では繰り返しお伝えしてきているので今回はあえて触れません。
トキ、アルパカとの別れを全然惜しんでいない2人
アルパカ・スリ:じゃあ気をつけてね。バス?が動くといいね
かばんちゃん:はい、ありがとうございました。
トキ:私の歌が聞きたくなったらいつでも呼んで。
サーバル:うん、トキも元気でね。
アルパカ:またおいでー。
かばんちゃん:はい!
以上がアルパカ、トキとの別れのシーンのセリフですが、今までの劇中のシーンと比較すると特徴的な部分がいくつもあります。
かばんちゃんが今までに経験してきた「別れ」といえば、1話のラストにおけるサーバルとの(一時的な)別れが印象的でしょう。サーバルはかばんちゃんに何度も手を振り続け、かばんちゃんは涙をこらえて名残を惜しむように何度も振り返っていました。
今回のアルパカ、トキは、(1話で登場したカバを除けば)、2人が比較的長い時間を一緒に過ごし、その後別れる最初のフレンズたちです。それなのにかばんちゃんはそれほど寂しそうな様子を見せておらず、サーバルに至ってはロープウェイに夢中で振り返ることもありません。
仲間がいれば、別れがあっても寂しくはない
1話における「サーバルとの別れ」と「アルパカ、トキとの別れ」にはどんな違いがあるのでしょうか?
すぐに思いつくのは過ごした時間の違いです。1話のサーバルとかばんちゃんがおそらく日が出ている間はずっと一緒に過ごしていたのに対して、2話のトキ、アルパカと過ごした時間はせいぜい数時間程度でしょう。「一緒に過ごした時間が短かったから名残惜しくなかった」と考えるのは自然な解釈です。
もう一つ考えられる理由は、かばんちゃんが成長していたからでしょう。1話のかばんちゃんはまさに「生まれたての子ども」と言ってもいい右も左も分からない状態でした。サーバルはそんなかばんちゃんの「母親代わり」であり、だからこそほかのフレンズとは違う強い思い入れがあったのだと考えられます。
サーバルの立場から見ると、トキともアルパカともそれほど長い時間を一緒に過ごしていたわけではありません。サーバルは3話中、ほとんどひとりで崖を登り続けており、かばんちゃんとは別行動をとっていたので彼らと過ごした時間は少なく、それゆえにあまり名残惜しさを感じなかったのではないでしょうか?
では、トキ・アルパカの立場から「かばんちゃんとの別れ」はどのように捉えられるでしょうか。トキもアルパカも「仲間を探しているフレンズ」です。自分たちの仲間になってくれるかもしれなかった人たちが離れていくのは寂しいのでは?と考えることもできるでしょう。
しかし、先ほどの紅茶を飲むシーンにおいて、トキには「カフェに通う理由=喉に良い紅茶を飲むため」ができました。それによって、アルパカも「カフェのお客さん」を獲得することに成功したわけです。つまり、2人の「仲間を探す」という目的はすでに達成されたことになります。
これからは、かばんちゃんのそばにサーバルがいるように、アルパカのそばにはトキ、トキのそばにはアルパカがいます。2人があまり別れを惜しんでいないのは「すでに自分にも仲間ができて、寂しくなくなったから」だと考えれば辻褄が合います。
帰り際、かばんちゃんとサーバルは「素敵なところだったね」、「また飲みに来ようね」とカフェでのひとときを楽しそうに振り返りました。
新しいフレンズ、ショウジョウトキの登場
2人を見送ったトキとアルパカは、カフェに戻りながら再び紅茶でも飲もうかと相談していました。そんな2人のもとに、新たなフレンズ「ショウジョウトキ」が降り立ちます。かばんちゃんが作った「カフェの目印」と、トキの歌声を聞いてやってきたというショウジョウトキに、トキとアルパカは顔を見合わせて嬉しそうな表情を浮かべました。
新しく登場したショウジョウトキは、今まで登場していたトキ(Crested ibis)の仲間で、全身赤い羽根に覆われた鳥です。鳥のフレンズですから、当然空を飛ぶこともできます。
かばんちゃんがカフェの目印を作った理由は、トキによる説明から「こうざんには普通のフレンズはあまり通らないが、鳥のフレンズなら上空を飛ぶ可能性がある」と聞いていたからです。いわば、鳥のフレンズを狙い撃ちにした目印を作ったわけですが、それがすぐに効果を発揮したといえるでしょう。
ショウジョウトキがカフェにやってきた理由は、かばんちゃんの目印だけではありませんでした。「歌も聞こえた」と言っていたので「目印が気になりそばに寄ってきたら、歌声が聞こえたため気になって降りてみた」と考えられます。かばんちゃんの目印によって「視覚」に訴えるだけでなく、トキの歌によって「聴覚」にも訴えかけたことで新しいお客さんの集客に成功したわけです。
実際には飲食店が「聴覚」に訴えて集客するという例はあまりないと思いますが、セール品や期間限定の商品などを宣伝するために店員さんが呼び込みをするのと同じようなものだと考えればいいでしょう。
カフェのその後はまだまだ前途多難だった
ショウジョウトキの来訪を見たアルパカとトキは、幸せそうに笑い合います。2人の共通の目的であった「仲間探し」がうまくいきつつあるということが確かめられ、これからももっと仲間が増えていってくれるのではないか、と期待したからでしょう。
トキにしてみれば、自分の歌が初めて「仲間探し」に役立った瞬間でもあります。今までも「仲間を探している」と歌っていたにもかかわらず、一向に仲間は現れませんでした。今回現れたのは同じ鳥のフレンズ、しかもトキ科の仲間です。まさにターゲットにしていた層がドンピシャとやってきたといえるでしょう。
このように、劇中ではジャパリカフェの幸せな今後を想像させるような締めくくりになっていますが、実際にはアルパカとトキの「仲間づくり」はそううまくいっているわけではないようです。dアニメストアの「けものフレンズ特集」の中で紹介されたキャラクターインタビューで語られる「カフェのその後」では、カフェのお客さんが順調に増えているわけではないことが伝えられているからです。
トキに関して言えば、「喉にいい紅茶を飲む」という「カフェに通う明確な理由」があります。しかし、今回来訪したショウジョウトキにはそれがありません。一度や二度はよってくれても、それだけで定期的に通ってくれるようになるかと言われると、はっきりした確証はもてないでしょう。
さらに、根本的な問題として「こうざんを通るフレンズは少ない」という点が解消されたわけではありません。かばんちゃんの作った目印は鳥のフレンズ向けのものなので、空を飛べないフレンズは今まで通り、山頂へ近づくことはないでしょう。
アニメ本編では幸せそうな今後を予想させながら、あとできっちり現実的な展開に落としてくるところがなかなかおもしろいところです。