前回記事:
【Bパート ジャパリカフェにお客が来ない理由】
ジャパリカフェにお客がこないことを嘆くアルパカに、トキは「場所がわからないのでは」というアドバイスを送ります。一方、2人の話を注意深く聞いていたかばんちゃんは何かを思いついた様子を見せますが・・・。
前回はこのシーンの会話について考察しましたが、今回はこのシーンから読み取れるトキとアルパカ・スリの共通点を考察していきたいと思います。
フレンズになってまもなく、ファンを増やしたいトキ
トキのキャラクター性については、以前この記事の中で考察を行いました。
簡単にまとめると、
- トキはフレンズ化してまだ間もない(体の変化に戸惑っている)
- 歌を歌う理由1:歌が好きだから
- 歌を歌う理由2:自分のファンを増やすため
トキには以上のような3つの特徴があります。
アルパカがカフェをやりたいと思った動機は謎
では続いて、アルパカ・スリのキャラクター性について考えてみましょう。アルパカはかばんちゃんとトキの来訪を非常に喜び(その後お客さんじゃないとわかってツバをはいたとは言え)、2人に対して親切に接してくれています。このことから、優しく親切な性格をしているということが伺えます。
アルパカに関するひとつの謎は、「なぜカフェをやりたいと思ったのか?」という部分でしょう。この直後、3人で外に出て除草を始めるシーンがあり、詳細な理由はそこで語られるのですが、どちらかというと「カフェができた経緯の説明」とでもいえる内容で、「なぜアルパカがカフェにそこまで拘るのか?」という根本的な理由が明らかにされていないのです。
つまり、アルパカには何か心に秘めた目的があり、その実現のためにカフェをやっているはずなのですが、その「真の理由」が劇中でセリフとして語られていない、ということです。
アルパカがカフェを始めたのは仲間を増やしたかったから
アルパカがカフェをやりたいと思った「真の理由」は、トキとアルパカを対比させて考えるとわかりやすくなります。
前回の考察では「移動が大変、かつサンドスターがあまり来ないため、こうざんの周辺で暮らしているフレンズは少ないのではないか」という仮説を立てました。言い換えると、アルカパはこのこうざんでただひとり、孤独な生活を送っているということになります。
一方、トキはというと歌を歌う理由のひとつは自分のファンを増やすことです。ジャパリパークでは基本的に、同じ種類のフレンズが同時に生まれることはありません。従って、歌詞の中では「仲間を探している」と歌っているものの、実質的には同じトキの同種の仲間を探しているというよりは「(フレンズの)仲間を探している」と解釈できます。実際、彼女は出会うフレンズに見境なく歌を聞かせています。
ここからは私の想像ですが、アルパカもトキが歌を歌うのと同じように「仲間(フレンズ)を探すため」にカフェをやりたいと思ったのではないでしょうか?「カフェをやる→お客さんが来てくれる→お客さんと仲間になる」という流れで、一緒に過ごしてくれる仲間を増やそうと考えていたのかもしれません。
フレンズ化すると動物は孤独になる
考えてみると、フレンズは極めて孤独な存在です。基本的に同じ種類のフレンズは同時に存在しないので、自分からほかのフレンズと友達になろうとしない限りひとりで生きていかなければなりません。
後にはライオンのように群れを作って暮らしているフレンズも登場しますが、群れの構成員は同種ではなく別の種類の動物になるので、それぞれ個性や考え方が違い組織に問題を抱えていることも少なくありませんでした。
トキもアルパカも本来は群れで暮らす動物でした(トキは繁殖期のみ群れを離れペアで過ごす)。フレンズのトキにもアルパカにも、動物であったころは一緒に過ごす仲間がいたはずですがフレンズ化したことにより動物だったころの仲間と一緒に過ごすことはできなくなってしまったのでしょう。
これは彼女らに限らず、群れで暮らしていたすべてのフレンズに共通する問題です。トキがそうしていたようにフレンズ化に伴う体の変化にも適応しなければいけませんし、一緒に過ごせる「フレンズの仲間」を探さなければいけません。
アルパカもフレンズ化して間もない状態だった?
このように考えると、アルパカもトキ同様「フレンズ化してまだ間もないのではないか」と想像できます。「フレンズ化に伴い、仲間がいなくなってしまった」という環境的な変化に戸惑っているのではないかと考えられるのです。
トキは主に「フレンズ化に伴う体の変化」に戸惑う様子を見せていました。一方、アルパカは体の変化にはほとんど関心を示していません。「荷物を持ったままでも山登りは楽勝」と述べているように、ヒトの体になっても日常生活で特に不便を感じることはないのでしょう。
トキが「この体(フレンズの肉体)は以前より便利に飛べる」と言っているように、フレンズ化すると動物の身体能力は全体的に向上すると考えられます(サーバルが最もわかり易い例)。トキの場合は「歌う」という純粋な身体能力よりも技術が問題になることを日頃から行っているため「以前の体との違い」を強く意識するようになったのではないかと思います。
なぜアルパカには「客観的な視点」が欠如しているのか?
ここまでの考察で明らかにしてきたようにトキとアルパカに「フレンズ化してまだ間もない」、「仲間を探している」という共通点があるとしましょう。2人には決定的に違っている部分があります。それは、トキのほうがアルパカよりも「客観的な視点」を持っている点です。
アルパカは、カフェがわかりにくい場所にあること、こうざんはほかのフレンズにとって決して来やすい場所ではないということに全く気がついていませんでした。一方、トキは自分が空を飛べるにも関わらず「ほかの多くのフレンズにとって、カフェの場所はわかりにくいだろう」という客観的な思考をすることができました。
私はこの違いこそ、2人の「フレンズ化する前の環境の違い」を表しているのではないかと思います。先に述べたとおり、トキもアルパカも群れをなす動物ですが、トキは元々数が少なく、特に日本では絶滅してしまい再繁殖が進められているほど希少な動物です。
つまり、動物だったころアルパカにはたくさんの仲間がいたが、トキはすでに仲間はなく一人ぼっちの状態だったのではないか、ということです。そうであれば、トキがアルパカよりも「客観的な視点」を持っていることに説明がつきます。
トキにしてみれば、動物だったころからすでに周囲の生き物はすべて自分とは異なる種類の動物だったわけです。フレンズ化に伴い知能が向上したことで「客観的な視点」を身につけるのに十分な環境で暮らしていたといえるでしょう。
一方、アルパカが同じアルパカの仲間と群れで暮らしていたということは「他人(異種族)は自分とは違う」という点を強く意識するシーンはなかったことでしょう。それでも、フレンズ化してからしばらく時間が経っていれば周囲とのふれあいの中で「他社との違い」を学ぶことができたかもしれませんが、アルパカを見る限りそういった経験はまだ未熟だといえます。私が「アルパカはトキ同様、フレンズ化してからまだ日が浅いはずだ」と考える根拠は、こうした部分からも感じられます。
今回の考察でフレンズたちは「過去に動物の仲間と離れ離れになった経験がある」という悲しい可能性が示唆されました。しかし、別れがあれば出会いがあるものです。新しい「フレンズの仲間たち」と彼らがどのように協力していくのか、今後も考察していきたいと思います。