「マツコ有吉のかりそめ天国」(2017年6月7日放送)で、「先生よりも英語の発音が良い生徒が増えて、先生がなめられる」というテーマが取り上げられていました。番組内で取り上げられたデータを再検証し、早期の英語学習の意義について考えてみました。マツコと有吉の意見も紹介します。
先生より英語が得意な子どもが増えている」は本当か?
子どもの英語学習は、かつては中学校から始められていました。2011年からは小学校5年生から必修となり、2020年には「小学3年生から必修」になると言われています。こうした状況を受けて、海外留学や塾など学校外で英語を学ぶ子どもの数が増えています。
「マツコ有吉のかりそめ天国」の番組内では、「学校外で英語を学ぶ子どもが増えている」とする根拠としてベネッセとリクルート、2つのデータを取り上げていました。厳密な出典が紹介されていなかったので、ネットで調べてみました。
中学校入学前の英語学習(学校外での英語学習)
こちらはおそらく、ベネッセ教育総合研究所による「中高生の英語学習に関する実態調査 2014」が出典と思われます。
子どもの習い事ランキング
こちらはリクルートマーケティングパートナーズが運営するサイト「ケイコとマナブ.net」のランキングが出典と思われます。
「かりそめ天国」の番組内では、ベネッセの調査とリクルートのランキングから「英語を外で習う、は常識になりつつある」と紹介されていました。果たしてこの捉え方は正しいのでしょうか?
ネイティブな発音ができる中学生はそんなに多いのか?
まず、ベネッセの調査報告書を見ると、たしかに番組内で紹介されていたようなデータがあることは事実です。しかし、一方では次のような報告も同時に記載されていました。
「海外旅行やホームステイに行ったことがある」は1割前後。
また、中学校入学前に行った「学校外での英語学習の種類」では学習塾と英会話教室が合わせておおよそ8割前後を占めているものの、具体的にどのような教室・環境で勉強をしているかは明らかにされておらず、番組内で言われていたように「ネイティブな教師から英語を習った中学生が、先生に冷や汗をかかせている」という場面がどれほど一般的かについては疑問が残ります。
保護者やデータ発信元の思惑
続いて、リクルートの方のランキングを見ていきましょう。こちらは、リンク先のページを見てもらえばわかる通り、厳密には「ママ900人に聞いた 習っているお稽古ランキング」です。つまりどちらかと言えば子ども本人の意志より、「子どもにどういう習い事を習わせたいか?」というランキングだと捉えたほうが実態に近いでしょう。
そして、もっとも重要なことはベネッセは教育事業、リクルートは就職・転職事業を営む会社だということです。つまり、彼らには「子どもの英語教育が流行っていますよ(だから皆さんやりましょう)」という理由があるということです。
「早期の英語学習」に懐疑的なマツコと有吉
ちなみに、番組中でマツコと有吉は「機械翻訳などの技術も発達しているし、近い将来英語の勉強も不要になるかもしれない」、「英語の勉強は好きにしたらいいが、それだけで幸せになれるとは限らない」といった感想を述べていました。
マツコ・デラックスは、社会の変化によって価値が変化した職業の例として「システムエンジニア」を挙げました。「自分がまだ若いころ、システムエンジニアといえば大変重宝された。しかし今ではかなりありふれた職業になっている」と述べて、英語のスキルについても同じような道をたどるのではないか、と危惧していました。
有吉は、海外ケーブルテレビの日本進出やネットテレビ局の発展などで、テレビ業界事態が社会の変化に取り残されないか、と心配する様子を見せました。最後、「将来はみんなVRゴーグルを付けて、ヴァーチャルな世界で生きていけばいいんだ」と話にオチをつけて締めくくっています。
現代社会はとかく変化が多く、将来を予測するのは簡単ではありません。長年時間をかけて取り組んでいたことが、明日には技術革新によって無駄になっていることも十分にありえます。「これをやっておけばOK」と安直に捉えて思考停止してしまうのではなく、どんな不測の事態にも対応できる柔軟な姿勢を持つことが重要なのかもしれません。