【Bパート かばんちゃん、暫定パークガイドとなる】
アライさん、フェネックとも協力して、黒いセルリアンの能力を封じるためにフィルターを貼り直すことになったかばんちゃん。3つの四神を探し出しましたが、残るひとつが見つかりません。そんなとき、パーク外のはるか海の向こうに別の陸地を発見することができました。「ヒトが住んでいるかもしれない外の土地」の存在に驚くかばんちゃんでしたが、今は目の前のセルリアンへの対処を優先します。
アライさん:かばんさん、あったのだー!
フェネック:堀り出すよー。
かばんちゃん:わかりました。そしたら、それをここに。
(ラッキービースト、帽子を被せられ、頭部を点滅させながら警報を発している)
ラッキービースト(ボス):大量のサンドスター・ロウが放出されました。超大型セルリアンの出現が予想されます。パークの非常事態につき、お客様は直ちに避難してください。
ここからの最短避難経路は、日の出港になります。非常事態につき、お客様は直ちに避難してください。
かばんちゃん:ラッキーさん、今はそんな場合じゃ!
ラッキービースト:ダメです。お客様の安全を守るのがパークガイドロボットの僕の務めです。直ちに避難してください。ここからの最短・・・
(かばんちゃん、ラッキービーストを優しく抑える)
かばんちゃん:ラッキーさん、僕はお客さんじゃないよ。ここまでみんなに、すごくすごく助けてもらったんです。パークに何か起きてるなら、みんなのためにできることをしたい。
(かばんちゃん、ラッキービーストにかぶせていた帽子を取り、自らかぶる)
(ラッキービースト、警報を停止)
ラッキービースト:わかったよ、かばん。危なくなったら、必ず逃げてね。
かばんを暫定パークガイドに設定。権限を付与。
アライさん:持ってきたのだー!
フェネック:これをどうするの?
サーバル:どうしたのボス?速く進めよう?
様々な謎が確定するラッキービーストとの会話シーン
前回の考察でも少し触れたように、残された最後の四神はなくなっていたわけではありませんでした。ただ、長い年月の間に噴火に巻き込まれるなどして少し場所が移動していただけだったのです。ここで、かばんちゃんの内面的な変化を視聴者に対して示す重要なシーンが描かれることになります。
このシーンがこれまでと明確に違うのは、かなりはっきりした「ネタばらし」が存在するという点でしょう。これまでも、ラッキービーストの口からジャパリパークで過去に起きた出来事や、かばんちゃんの正体に関することなどについての情報提供がなされることはありました。しかし、それよりはミライさんのメッセージを再生することによって間接的に伝えたい事実が示唆されたり、博士と助手など、他のフレンズの発言を通じて伝えるといった方法が取られることのほうが多かったのです。
たとえば、「かばんちゃんはヒトのフレンズである」という情報などは代表的な例といえるでしょう。これは物語前半における旅の主要な目的であったにもかかわらず、博士や助手といういち登場人物の口からかばんちゃんに告げられたにすぎません。しかも、博士たちがそう判断した理由も別にDNA鑑定のような確実な方法ではなく、かばんちゃんの特徴から「それらしき元動物を類推する」という極めて不確実な方法によるものでした。
そのために、本放送時においてはかばんちゃんの正体が判明した後も、「実はかばんちゃんはヒトではないのではないか?」、「自分を人のフレンズだと思いこんでいる『フレンズ型のセルリアン』なのではないか」といった推測がなされていたのです。
「ミライさんのメッセージ」や「博士や助手の判断」は、謎解きのための状況証拠としては十分なものの、さまざまな謎を100%確定させるだけの説得力を持つ証拠とはいえません。ですから、ストーリーがクライマックスに近づき、さまざまな謎が明らかになっていく中においても「もしかしたら違う可能性もあるのではないか」と考える余地を残しながら物語が進行していたのです。
今回のラッキービーストとかばんちゃんの会話は、そうした「別の可能性」の余地を摘み取り、ストーリー上の「真実」の多くを確定させる情報を多分に含んだものでした。そういった意味で最初に「重要なシーン」だと表現したのです。
ラッキービーストのセリフから今までの推測が正しかったと確定できる
では、具体的にかばんちゃんとラッキービーストがどのような会話をしたのか、見ていくことにしましょう。ラッキービーストは、麓で噴火を感知したときと同じように、頭を赤色に点滅させて警報を発していました。ただし、前回よりも危険度が高まったと見えて、「お客様」に対して直ちに避難するよう求めています。
また、合わせて次のような内容もラッキービースト自身の口から語られます。
- サンドスター・ロウが大量に噴出されている
- 超巨大セルリアンの出現が予想される
- ラッキービーストは、「パークガイドロボット」である
- お客様の安全を守ることがパークガイドロボットの務めである
これらの内容は、今までもミライさんのメッセージの中で紹介されてきたものです。今回、ラッキービーストが改めてこれらの言及したことで、ミライさんとラッキービーストという、2人の証言者によってここで語られたことが事実だと証明される結果になりました。
証言者が増えたことで事実の裏付けが確かなものになったのに加えて、これまでミライさんの証言をベースにして展開してきた推理が確かなものだったことも確認できました。
お客様からパークガイドになったかばんちゃん
かばんちゃんは、自分を「お客様」と呼び、避難を勧めるラッキービーストに対して「自分はお客さんじゃない。今まで自分を助けてくれたみんなのためにできることをしたい」と宣言しました。
前回も触れたとおり、かばんちゃんは港にやってきた後、ヒトを探しにパークの外へ向かいたいという意向を示しています。その後、偶然にも現在いる山頂でパーク外の陸地を発見したことから、新たな旅の目的地候補まで目の前にある状態です。
本来なら、かばんちゃんはこのままパークを去り、別の土地に向かったとしても何も問題はありません。そもそも、パークにいるフレンズたちでさえ、セルリアンに対しては「逃げる」のが基本的な対処法なのですから、非難される筋合いはまったくないのです。それなのに、かばんちゃんは「自分を守るため」ではなく「ほかのフレンズたちを守るため」にあえてこのままパークに残り、黒いセルリアンに立ち向かうことを選ぶ決断をしました。
ラッキービーストは、そんなかばんちゃんの想いに応えるかのように、かばんちゃんを「暫定パークガイド」に設定します。それに合わせて何らかの権限も付与したようですが、その権限が何なのかはこの時点ではまだわかりません。
ラッキービーストがかばんちゃんに応えたのは偶然か?
このシーンは、かばんちゃんの想いがラッキービーストに通じた「かのように」見えるため、とても感動的なシーンなのですが、本当にそうだったかどうかは疑問が残ります。というのも、ラッキービーストはロボットですから、本来は与えられた役割を忠実にこなすように作られているはずです。
今回のシーンは、そういった原理原則をラッキービーストが自ら破り、かばんちゃんの声に応えたように見えるから感動的なわけですが、実際にはそうではない可能性も十分にあります。
かばんちゃんは、「パークに留まりフレンズを助けたい」という自身の想いをラッキービーストに伝える際、ラッキービーストから帽子を取って自らかぶっています。以前の考察でご紹介したように、帽子についている青い飾りと赤い飾りはそれぞれミライさんのメッセージを再生する際の目印になっている可能性があります。
しかし、それは個別の飾りに関する話で、2つの飾りが揃った状態の帽子がラッキービーストの前でどのような機能を発揮するのかは明らかになっていません。それもそのはずで、2つの飾りが揃った状態で帽子がラッキービーストに正しく認識されたのは、このシーンが初めてだからです。「四神の位置」に関するメッセージが再生されたときは、2つの飾りが帽子に揃っていましたが、ラッキービーストが見たのは片方の側面の赤い飾りだけでした。
2つの飾りが揃った帽子をかぶったかばんちゃんをラッキービーストが認識したとき、ラッキービーストの瞳に写ったかばんちゃんのシルエットがクローズアップされる印象的な演出がなされています。
このシーンは一見すると、帽子をかぶったかばんちゃんの姿に、ラッキービーストがかつての主=ミライさんの姿を思い出し、彼女の思いに応えようとしているかのように見えるシーンです。しかし、実際には単に「2つの飾りが揃った帽子がかぶった人間をパークガイドとして認識するようにあらかじめ設定されていただけ」という可能性もあります。
以前、ラッキービーストが初登場した際、「こうしたロボットキャラが登場するのには演出上の意図がある」として、本作でラッキービーストがどのような役割を課せられるのか考察したことがありました。
そのとき、「一般的なロボットキャラの役割」の1例として、
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感情表現に乏しいことを利用して、逆に感動を生むのに使える
という点をご紹介しました。今回のラッキービーストとかばんちゃんとの会話は、そういったロボットキャラの特性を利用したシーンの良い例です。かばんちゃんの想いにラッキービーストが応えたのか、それともただ偶然が重なり、都合よく暫定パークガイドになれただけか、どちらとも解釈できるように演出されているのだろうと思います。