「NHKバーチャルのど自慢2019」の感想

2019年1月2日、NHK総合テレビにて「バーチャルのど自慢2019」が放送されました。人気のバーチャルYoutuberたちを集め、その歌唱力を競うという内容でしたが、2018年の流行語にも選出されたバーチャルYoutuberがついにNHKに進出を果たしたとしても話題を集めました。この記事では、本番組の内容を私の感想とともに振り返りたいと思います。... 続きを読む

ユニバーサルデザインの商品例:進化したボンカレーのパッケージ

日本初のレトルト食品である「ボンカレー」は、日本人ならまず知らない人はいないおなじみの商品です。しかし、そのパッケージは現在進化し、電子レンジ調理可能なユニバーサルデザインの作りに進化しています。身近なユニバーサルデザイン商品の例としてボンカレーのパッケージをご紹介しましょう。  

ユニバーサルデザインとは?

先に、ユニバーサルデザインとはなにか確認しておきたいと思います。ユニバーサルデザインとは、簡単に言うと「誰にとっても使いやすいデザイン」のことです。   https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3  

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い

ユニバーサルデザインと似た意味の言葉に、「バリアフリー」があります。バリアフリーとは、「障害者などの社会的弱者にとって障害となる要素を取り除いたもの」を指す言葉です。バリアフリーがあくまでも、「対象者にとっての障害の有無」を問題にしているのに対して、ユニバーサルデザインは「すべての人にとっての使いやすさ」を問うものであるという点に違いがあります。  

ユニバーサルデザインの7原則

ユニバーサルデザインは、1980年ごろ、アメリカの学者ロナルド・メイス氏によって提唱されました。メイス氏は車椅子を必要とする障害者でしたが、障害者を特別扱いしかねないバリアフリーに替えるため、ユニバーサルデザインの考えを生み出したと言われています。   http://www.city.fukutsu.lg.jp/ud/about/top.html   また、ユニバーサルデザインには、メイス氏を中心とする複数の学者によってまとめられた次の7つの原則があります。   1.誰でも公平に使用できること。(EQUITABLE USE) 2.使用法に柔軟性があること。(FLEXIBILITY IN USE) 3.直感的に使用法が理解できること(SIMPLE AND INTUITIVE USE) 4.必要な情報がわかりやすいこと(PERCEPTIBLE INFORMATION) 5.使用法が失敗しづらく、大きな事故に繋がりにくいこと(TOLERANCE FOR ERROR) 6.大きな力や体への過度な負担を必要としないこと(LOW PHYSICAL EFFORT) 7.使用するために十分な大きさ・広さが確保されること(SIZE AND SPACE FOR APPROACH AND USE)   このように、ユニバーサルデザインは国籍・年齢・性別といった属性の違いによらず、使いやすいものを作ろうという考え方に基づいて生まれた概念です。従って、属性が異なる多くの人が利用する可能性がある公共物や、広く大衆向けに作られている消費財などによく用いられます。   一般的な例は次のリンク先でいくつか紹介されているので、気になる方は見てみてください。   https://www.city.koriyama.fukushima.jp/150300/shisaku/minomawari.html   以上の知識を前提とした上で、現在のボンカレーのパッケージがどのようになっているのか見ていきましょう。  

ユニバーサルデザインに進化したボンカレーの入れ物

  私は今日、たまたま久しぶりにボンカレーを買いました。   http://boncurry.jp/lineup/   引用元:Wikipedia ボンカレー  
ボンカレー(Bon Curry)は、大塚食品が発売するレトルトカレーの商品名で、同社の登録商標(日本第961090号)である。日本初のレトルト食品。甘口、中辛、辛口の三種類がある。現在の主流はフルーツベースのボンカレーゴールド、温色で描かれた同心円のパッケージで知られる。
  手にとったときは気が付かなかったのですが、ボンカレーのパッケージは以前のものからは大きく様変わりしていました。最も大きな違いは「電子レンジ調理に対応した」という点でしょう。   ボンカレーの公式サイトでは、電子レンジ調理に対応した新型パウチの開発を手がけた芹沢一郎氏へのインタビュー記事が紹介されています。単純に電子レンジでの調理を可能にしただけでなく、使用者への安全性などを考えて苦心した過程が見て取れます。   http://boncurry.jp/brand07/  

画像で紹介:現在のボンカレーのパッケージ

実際に、どのようなパッケージになっているのか画像つきでご紹介したいと思います。私が購入したのは、「ボンカレー ネオ」の辛口です。下記画像をご覧いただければわかる通り、正面から紙の箱を開封する方式になっており、開けるとそのままの状態で箱ごとレンジに入れられるようになっています。     食べる方は、紙のフタを開けてそのままレンジで2分加熱すれば美味しいカレーを味わうことができます。ユニバーサルデザインの観点から見ると、この容器には次のようなメリットがあります。   ①温める際にレトルトパウチの開封は不要 ②開封面を上にすると、自動的に蒸気孔も上になるので上下を間違う心配がない ③箱ごとレンジに入れられるので、取り出す際にやけどの心配がない   このように、調理する人の属性によらず、食べやすく安全性の高い調理法を自然に選択できるよう作られているのです。まさに大衆向け商品としてはこれ以上ない見事なユニバーサルデザイン商品だと言えるでしょう。  

消費者を思う心が使いやすく、安全なデザインを生み出す

私はしばらくボンカレーを食べていませんでしたが、今回パッケージの進化に感動したことで、先にご紹介した芹沢氏の開発者インタビューを見る機会を得ました。その中で、芹沢氏がいかに食べる人のことを考えていたのか、想いの深さを知ることができました。   こうした、使う人のことを考える開発者の想いが、使いやすく安全なデザイン生み出す原動力なのかもしれません。   今回私が食べた「ボンカレー ネオ」の辛口はこちらです。記事中では肝心の味についてまったく触れていませんでしたが、自家製のルーと大きめの野菜がとても美味しかったです。レトルトカレーと言うと具材が小さい商品が多い中、人参は1~2cm角、じゃがいもに至っては2~3cmほどの大きさがあり、具だくさんなカレーをお手軽に食べたい方におすすめです。   [amazonjs asin="B01KLLAPQG" locale="JP" title="ボンカレーネオ 濃厚スパイシーオリジナル 辛口 230g×3個"]... 続きを読む

NURO 光 G2V(マンションミニ)を2年間利用している感想

私が使っているネット回線はNURO光です。プランはG2V(マンションミニ)で利用期間はもうすぐ2年を迎えます(2018年3月現在)。NURO光は「下り最大2Gbpsの超高速光回線」を謳っており、「速い」という評判から気になっている方も多いのではないかと思います。   そこで今回は、実際にNURO光を利用している私が、回線速度や安定性などについての感想をお伝えしていきたいと思います。  

NURO光とは?

まずは、NURO光について簡単にご説明しましょう。NURO光はSo-netが提供しているFTTH(光回線インターネット)サービスのブランドです。2013年からサービスの受付を開始しており、一般的にはその回線速度の速さや多様なキャッシュバックキャンペーンなどがよく知られています。   https://ja.wikipedia.org/wiki/NURO%E5%85%89  

回線速度はどのくらいか?

ネット回線を選ぶとき、回線速度は非常に重要なポイントになります。特に今日のように、ネットユーザーの多くが日常的に高画質・大容量の動画を見る時代には安定した速い回線が求められます。   回線速度は、地域や環境によって大きく異なるので、明確な値を示すのは難しいのですが、あくまで一例として私の実測値をご紹介しましょう。  
  • 計測環境:東京都23区外、賃貸アパート、LANケーブル接続
  以上のような結果になりました。ネットゲームなどの即応性に関係が深いping値は10ms未満に、下り・上りともに回線速度は900Mbpsという値が出ています。一般的な基準としては十分高速な回線であると言っていいでしょう。   ちなみにWi-fi接続の場合は、ping値は4~6ms、下り・上りともに100Mbps前後という結果になりました。  

回線の安定性は?

実は、NURO光の利用者の中には「月に1度くらい回線が切れてしまい、ONU(光回線終端装置)の再起動が必要になる」という不具合を報告している方が少なくありません。私も利用中、似たような症状に悩まされたことがあるので、これはNURO光のデメリットのひとつだといえるでしょう。   しかし、これは簡単な設定によって解決可能です。下記のリンク先では、詳しい対処法を解説している方の記事があります。私もこの方法に従って設定したところ、回線は安定し接続が途切れる不具合は起こらなくなりました。   http://www.salaryuma.com/entry/zakki/nuro-antei   ですから、この点に関してはそれほど大きな問題ではありません。  

NURO光の利用料金は?月額いくらくらいかかるのか?

G2V(マンションミニ)プランの場合

実際に私が毎月いくらくらいの利用料金を支払っているのかご紹介しましょう。G2V(マンションミニ)プランでは、月々の利用料金は以下のようになります。   NURO 光 G2V(マンションミニ)   4734円 NURO 光 月額基本料金割引    -1334 = 1ヶ月の利用料金          3409円 消費税               273円 + 基本工事費(分割払)        1440円   合計金額              5122円   回線プランの料金に割引が適用され、そこに消費税が課せられた金額に基本工事費の分割費用がプラスされる、という計算になります。   ちなみに、NURO光の基本工事費は40000円(税別)で、30ヶ月に渡って分割請求されるため、1ヶ月あたりの支払額は1440円です。  

NURO光のデメリット:引っ越しの引き継ぎができない

NURO光を利用していて、回線自体については特に不満はありません。しかし、サービス面でのデメリットといえるのが、「引っ越しの際、回線の住居移転ができない」という点です。つまり、一度NURO光を解約して再度契約し直す必要があるのです。この際、  
  • 2年縛りの違約金(9500円)を支払う必要がある
  • 基本工事費の残存分を一括で支払う必要がある
  • 回線の引き直しに時間がかかる
  といったデメリットがあるので注意してください。ちなみに私は利用中、1度引っ越しを経験したのですが、基本工事費を一括で支払っただけで引っ越しの前後で利用料金に変化はありませんでした。  

対策:キャッシュバックキャンペーンを利用する

「引っ越しのためのプランが用意されておらず、解約と再契約が必要になる」というのがNURO光のデメリットでした。この点をカバーするのに良い対策として、「キャッシュバックキャンペーンを利用して契約する」という方法があります。   ネット回線業者は、契約者を増やすため盛んにキャッシュバックキャンペーンを実施しています。NURO光はほかの事業者と比べて回線を引くのに時間がかかるということもあってか、特に多種多様なキャッシュバックキャンペーンを実施しています。   前述の通り、NURO光の引っ越しは新規契約の扱いになるので、このキャンペーンを利用することができます。2年縛りの違約金や基本工事費による金銭的な負担をキャッシュバックで取り戻せば、マイナスがなくなるどころか逆に得をすることもできるでしょう。   また、これはあくまで「ネット上のウワサ」レベルの話ですが、「キャッシュバックキャンペーンを利用した人のほうが、回線開通が早くなる」という話があります。実は、私は自分が引っ越しをする段階ではこうした話を知らず、キャッシュバックキャンペーンを利用せず普通に回線利用の手続きを進めてしまいました。関係があるかは不明ですが、その結果申込から開通までに1ヶ月程度の時間がかかってしまっています。   たとえこれがウワサにすぎないとしても、せっかく利用できるお得なキャンペーンを利用しない手はないでしょう。これからNURO光を利用する方や、現在利用していて引っ越しを控えている方は、キャンペーンを利用して契約するのをおすすめします。  

特にお得なキャッシュバックキャンペーンをご紹介

NURO光の代理手は非常に多く、会社によってキャンペーンの内容やキャッシュバック金額が異なっています。今回はその中でも特にお得なものを厳選してご紹介したいと思います。  

キャッシュバック金額が多い:株式会社フルマークス

随一のキャッシュバック金額を誇るNURO光の正規代理店です。キャッシュバック満足度第1位、スタッフ対応満足度第1位、NURO有料代理店第1位の評価を獲得しています。最大5.8万円の無償キャッシュバック、有料サービスへの加入が条件となる最大8.3万円のキャッシュバックがあります。合わせると最大12万円以上、業界最高水準のキャッシュバック金額です。   開通から6ヶ月後にSo-netから、8ヶ月後にフルマークスからキャッシュバック受け取りのための通知が届きます。それから1ヶ月以内に手続きを行わないとキャッシュバックを受けとれないので忘れないよう注意してください。   ご利用はこちらから

キャッシュバックまでの期間が短い:株式会社アウンカンパニー

キャッシュバックキャンペーンというと、一般的には実際に手元にお金が返ってくるまで4ヶ月~半年以上かかってしまうことも少なくありません。こちらの会社は「最短1ヶ月での現金振込」を売りにしており、金額も3万円前後とNURO公式と同等です。キャッシュバックの代わりにPlaystation4、もしくはNintendo Switchを受け取ることもできるので、ゲーム好きなとってもうってつけなキャンペーンだといえるでしょう。   申込時の電話でキャッシュバックの申請が完了するため、もらい忘れの心配がないのが利点です。   ご利用はこちらから

 ソフトバンクユーザーはスマホ代がお得に:株式会社LifeBank

こちらも最大8万円と、キャッシュバック金額の大きなキャンペーンを提供している代理店です。さらに、ソフトバンクのスマートフォン・携帯電話を使っている方は、1ヶ月につき最大1080円の携帯月額利用料割引が受けられます。これは1台ごとの割引額なので、家族でソフトバンクのスマホを使っている方は台数×1080円の割引を受け取れるため、さらに多くのメリットがあります。   キャッシュバックを受けるためには、申請した月から10ヶ月後にメールで申請手続きを行わなければなりません。キャッシュバックを受け取れるのは開通月の12ヶ月後になるので注意してください。   ごりようはこちらから  

申請を忘れないよう、契約時にアラートをかけておこう

このように、NURO光のキャッシュバックキャンペーンは、得られる利益こそ非常に大きいものの申請を忘れないようにする工夫が必要です。私がおすすめするやり方はスマートフォンのアプリやGoogleカレンダーなどで、対象期間が始まるころにアラートを設定しておく方法です。   誰でも簡単にできますし、複数アラートを設定すればほぼ忘れる心配もありません。世間では「せっかくキャンペーンを利用して利用開始していたのに申請を忘れてしまって受け取れなかった」という方も少なくありませんが、このようなちょっとした工夫で回避できるので過度に心配する必要はないでしょう。   私は実際にこの方法を使って、引越し前の最初契約時のキャッシュバックを受け取ることができました。当時のキャッシュバック金額は現金3万円程度だったので、現在のようにより高金額のキャンペーンが出ている状況は羨ましい限りです。   全般的に言って、私はNURO光のネット回線サービスには大きく満足しています。今、ネット回線選びに悩んでいる方にはぜひおすすめしたいブランドです。... 続きを読む

「若者のみそ汁離れが進んでいる」は本当か?

Yahoo!ニュース(産経新聞)で、「若者のみそ汁離れが進んでいる」とのニュースが報じられました。「全国的に味噌の年間購入量が減っている」など、裏付けのあるデータも紹介されています。一見、したところ説得力があるようにも思えるこのニュースが、どのような意図を持って報じられたのか考察してみました。   「若者のみそ汁離れが進んでいる」と報じたのは、2017年6月29日にYahoo!ニュースで公開された下記の記事です。(出典は産経新聞)   https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170628-00000528-san-soci   内容を要約すると、   大阪ミナミの繁華街で若者にみそ汁に関するインタビューを行った結果、「1、2ヶ月飲んでいない」と答える人もいるなど「若者のみそ汁離れ」が進んでいる実態が明らかになった。   とのことです。また、裏付けとして次のようなデータが記載されています。  
総務省の家計調査によると、1世帯あたりのみその年間購入量(2人以上、農林業・漁業世帯を除く)は昭和54年には12・667キロだったが、徐々に減少。平成元年に10キロ、21年に7キロをそれぞれ下回り、28年には5・255キロと54年の半分以下にまで落ちている。
  これだけを見ると、「確かに若者はみそ汁を飲まなくなっている」というふうにも見えます。果たしてこの記事の内容はどの程度真実に近いといえるのでしょうか?  

「若者のみそ汁離れ」は本当か?

この記事の内容に対しては異論を挟む声もあります。たとえば、料理研究家の土井善晴先生はこの記事についてTwitterで次のように語っています。  

けものフレンズとヘパリーゼのコラボ効果をマーケティングの観点から考察

ファミマとサークルKサンクスが行った「けものフレンズ キラキラチャームプレゼント」キャンペーンについて、マーケティングとしての狙いと効果を考察します。けものフレンズとのコラボはヘパリーゼの売上にどのように寄与するのでしょうか?  

けものフレンズのチャームプレゼントキャンペーン

コンビニエンスストア大手のファミリーマート、サークルKサンクスが「けものフレンズ キラキラチャームプレゼント」キャンペーンを2017年6月から開始しました。対象商品(ゼリア新薬 ヘパリーゼ類)を購入すると、購入商品2点につき、けものフレンズのキャラクターをかたどったチャームがひとつもらえるというキャンペーンです。   キャンペーンの詳細はこちら http://www.family.co.jp/campaign/spot/201706kemono-friends.html http://www.circleksunkus.jp/cs/campaign/201706kemono-friends/index.html   今回は、マーケティングの観点から「ヘパリーゼ」を販売するゼリア新薬がなぜこのようなキャンペーンを行っているのか考察してみましょう。  

過去に「ガルパン」でも行っていたアニメとのコラボ

実は、ゼリア新薬がアニメ作品とヘパリーゼをコラボレーションさせるのは今回が初めてではありません。過去にはガールズアンドパンツァーとコラボレーションした類似の企画があります。   2017年3月21日から、対象商品購入者にガールズアンドパンツァーのチャームをプレゼントするキャンペーン http://girls-und-panzer.jp/pro_campaign.html   けものフレンズのキャンペーン内容は、ほぼこのガールズアンドパンツァーのときのものと一緒です。ヘパリーゼ2つにつきチャームを1つプレゼントというマーケティング施策のフォーマットを単に作品を差し替えて繰り返しを行っていると考えられます。  

対象商品「ヘパリーゼ」の概要

まず、今回のキャンペーンの対象商品である「ヘパリーゼ」について簡単に確認しておきましょう。

対象商品の分類は「清涼飲料水」がメイン

「ヘパリーゼ」と名のつく商品にはいろいろと種類があり、なかには第二類・第三類医薬品に分類されているものもあります。しかし、今回の対象商品は主に清涼飲料水なっており、第二類・第三類医薬品に分類されているものは含まれていません。(炭酸飲料と指定医薬部外品のものがそれぞれ1種類ずつ対象になっていますが)   わかりやすく言い換えると、今回のキャンペーン対象商品に限れば「ヘパリーゼ=エナジードリンク」だと考えてOKだということです。オロナミンCやレッドブルなどと同じく、「気分をリフレッシュ」するために飲むものだと考えていいでしょう。対象商品の中で唯一の指定医薬部外品である「ヘパリーゼアミノ」を除き、肝臓の働きを促す効能があるとされる「タウリン」は含まれていません。  

価格は200~500円前後

対象商品の価格はおおよそ200円台から500円台までです。チャームを目当てに商品を購入する場合、多くの方は200円台の商品を中心に購入すると考えられます。

競合商品の代表は「ウコンの力」

ヘパリーゼは同じくエナジードリンクに分類される、ウコンの力と比較されることが多いです。ウコンの力はコンビニでも200円台で売られていることが多く、その他の小売店では値引き販売されていることも多いので、ヘパリーゼは価格面でやや不利な立場に置かれていると言っていいでしょう。  

データを元に、ヘパリーゼの売れ方を分析

通常、企業のマーケティング戦略は外部に明らかにされることはありませんので、ここからは客観的なデータを元にしてゼリア新薬が何故アニメーションとのコラボキャンペーンを行うのか、その意図を考えてみたいと思います。   下記のリンクに、株式会社プラネットが公表している「栄養ドリンク・エナジードリンクに関する意識調査」(2015年3月29日)のデータがあります。   http://chosa.itmedia.co.jp/categories/lifestyle/71550   このデータを元にして今回のけものフレンズキャンペーンの意図するところを考察してみたいと思います。   以上の調査から重要なポイントをピックアップすると以下のようになります。  

ヘパリーゼの知名度は5.5%、ウコンの力は23.9%

競合製品であるウコンの力に、ヘパリーゼは価格面で不利に立たされていると表現しましたが、データからもそれが裏付けられた形です。  

エナジードリンク類のコアユーザーは20~30代男性

ヘパリーゼ単体のコアユーザー層はわかりませんが、年齢・性別はおおよそ同じように分布しているものと考えられらます。「疲れたときや空腹時に飲む」と答えた方が多かったようです。  

4割の人が100~150円台、2割の人が200円台でエナジードリンクを購入している

68.8%の人が、エナジードリンクを「ドラッグストアで購入する」と答えており、定価からの値引き販売で購入している人が多いことがわかりました。コンビニで購入している人の割合は37.7%で、商品の価格帯とあわせて考えてもヘパリーゼにやや不利な情勢が見て取れます。  

けものフレンズとのコラボキャンペーンの狙い

以上のことから、ゼリア新薬(と、コンビニエンスストア)の立場に立ってヘパリーゼの有効なマーケティング施策を考えてみましょう。   まず、競合製品であるウコンの力に知名度で完全に負けていることから「販売数量を増やす=認知度を挙げる」という目的が設定できます。   売上を増やすためには、コアユーザーに働きかけるのが最も有効でしょう。メインの客層である20~30代の男性に訴えかける手段のひとつとして、アニメ作品とのコラボという方法が考えられます。ガールズアンドパンツァーもけものフレンズも若い男性ファンが多いアニメという点ではまさにうってつけだと言えるでしょう。   ヘパリーゼがウコンの力に対して不利になっている大きなポイントが「価格差」です。この点については、販売を受け持つコンビニエンスストアも無関係ではありません。割引販売を行うドラッグストアに対して、同様に価格面で不利に立たされているからです。   コンビニは定価販売が基本なので商品価格を下げることはできません。となると、何か付加価値をつけて商品を買ってもらう方がいいという結論になるでしょう。「アニメ作品とコラボしたチャームをプレゼントする」という施策の具体的な手段がそこから導き出されます。  

知名度アップに加え、固定客を増やす効果も?

今回の「けものフレンズ キラキラチャームプレゼント」キャンペーンは、ゼリア新薬とファミリーマート、サークルKサンクスに次のような効果をもたらすと考えられます。  
  • 「ヘパリーゼ」の売上増加=認知度アップ
  • 固定客=ヘパリーゼのファンの増加
  売上増加による認知度アップは、効果がわかりやすいと思いますが、私はどちらかと言うと「固定客(商品のファン)の増加」のほうに注目しています。   今回のキャンペーンについて、SNSなどで反応を見ていると「普段はウコンの力を買っていたけど、今回ヘパリーゼを買って飲んでみて美味しいのに驚いた」という声がところどころから聞かれました。このように、価格面ではウコンの力に不利に立たされているヘパリーゼですが、「味」という面で言うと優位性を持っている可能性が判明したのです。   味というものは、実際にその商品を買って試してみるまでわかりません。しかし、過去の記事の中で紹介したように「商品を試食(試飲)した人は、8割がその商品を購入に至る」というデータがあります。  
スーパーの試食コーナーに見るマーケティング
  同じように、今回のキャンペーンをきっかけにその後もヘパリーゼを購入する固定客が増える効果が期待できるのではないか?と考えられるのです。私はむしろ、こちらの効果のほうが長期的に見た場合重要なのではないかと考えています。... 続きを読む

マツコ有吉のかりそめ天国、「ネイティブ英語が話す子どもが増えている」は本当か

「マツコ有吉のかりそめ天国」(2017年6月7日放送)で、「先生よりも英語の発音が良い生徒が増えて、先生がなめられる」というテーマが取り上げられていました。番組内で取り上げられたデータを再検証し、早期の英語学習の意義について考えてみました。マツコと有吉の意見も紹介します。  

先生より英語が得意な子どもが増えている」は本当か?

子どもの英語学習は、かつては中学校から始められていました。2011年からは小学校5年生から必修となり、2020年には「小学3年生から必修」になると言われています。こうした状況を受けて、海外留学や塾など学校外で英語を学ぶ子どもの数が増えています。   「マツコ有吉のかりそめ天国」の番組内では、「学校外で英語を学ぶ子どもが増えている」とする根拠としてベネッセとリクルート、2つのデータを取り上げていました。厳密な出典が紹介されていなかったので、ネットで調べてみました。  

中学校入学前の英語学習(学校外での英語学習)

こちらはおそらく、ベネッセ教育総合研究所による「中高生の英語学習に関する実態調査 2014」が出典と思われます。  

子どもの習い事ランキング

こちらはリクルートマーケティングパートナーズが運営するサイト「ケイコとマナブ.net」のランキングが出典と思われます。     「かりそめ天国」の番組内では、ベネッセの調査とリクルートのランキングから「英語を外で習う、は常識になりつつある」と紹介されていました。果たしてこの捉え方は正しいのでしょうか?  

ネイティブな発音ができる中学生はそんなに多いのか?

まず、ベネッセの調査報告書を見ると、たしかに番組内で紹介されていたようなデータがあることは事実です。しかし、一方では次のような報告も同時に記載されていました。  
「海外旅行やホームステイに行ったことがある」は1割前後。
  また、中学校入学前に行った「学校外での英語学習の種類」では学習塾と英会話教室が合わせておおよそ8割前後を占めているものの、具体的にどのような教室・環境で勉強をしているかは明らかにされておらず、番組内で言われていたように「ネイティブな教師から英語を習った中学生が、先生に冷や汗をかかせている」という場面がどれほど一般的かについては疑問が残ります。  

保護者やデータ発信元の思惑

続いて、リクルートの方のランキングを見ていきましょう。こちらは、リンク先のページを見てもらえばわかる通り、厳密には「ママ900人に聞いた 習っているお稽古ランキング」です。つまりどちらかと言えば子ども本人の意志より、「子どもにどういう習い事を習わせたいか?」というランキングだと捉えたほうが実態に近いでしょう。   そして、もっとも重要なことはベネッセは教育事業、リクルートは就職・転職事業を営む会社だということです。つまり、彼らには「子どもの英語教育が流行っていますよ(だから皆さんやりましょう)」という理由があるということです。  

「早期の英語学習」に懐疑的なマツコと有吉

ちなみに、番組中でマツコと有吉は「機械翻訳などの技術も発達しているし、近い将来英語の勉強も不要になるかもしれない」、「英語の勉強は好きにしたらいいが、それだけで幸せになれるとは限らない」といった感想を述べていました。     マツコ・デラックスは、社会の変化によって価値が変化した職業の例として「システムエンジニア」を挙げました。「自分がまだ若いころ、システムエンジニアといえば大変重宝された。しかし今ではかなりありふれた職業になっている」と述べて、英語のスキルについても同じような道をたどるのではないか、と危惧していました。   有吉は、海外ケーブルテレビの日本進出やネットテレビ局の発展などで、テレビ業界事態が社会の変化に取り残されないか、と心配する様子を見せました。最後、「将来はみんなVRゴーグルを付けて、ヴァーチャルな世界で生きていけばいいんだ」と話にオチをつけて締めくくっています。   現代社会はとかく変化が多く、将来を予測するのは簡単ではありません。長年時間をかけて取り組んでいたことが、明日には技術革新によって無駄になっていることも十分にありえます。「これをやっておけばOK」と安直に捉えて思考停止してしまうのではなく、どんな不測の事態にも対応できる柔軟な姿勢を持つことが重要なのかもしれません。  ... 続きを読む

多摩センターにいったらヤギがいた~動物を活用したマーケティング

2017年6月7日、所要で京王線・小田急多摩センター駅周辺まで行ってきました。何気なく辺りを歩いていると、近くの土手に2頭のヤギがいるのを発見しました。「なぜこんなところにヤギが?」と気になり思わず写真を取ってしまいました。   調べてみると、多摩市ではヤギを活用した除草を2016年から行っているようです。   【ヤギさん除草】チーム名決定!その名も『ヤギレンジャー』 多摩センターでも雑草はヤギが食べてきれいにします   以上のサイトで詳しく詳細が書かれていますが、多摩市が「ヤギ除草」を行う目的は、  
  • 草刈機などの騒音がなく静か
  • 草の処分が不要なので環境に優しい
  • 急斜面など人が除草しにくい部分の除草に適している
  • ヤギがいることで周囲の人に癒やしを与える
  といった効果を期待しているようです。せっかくですから、「ヤギ除草」に学んで「ヤギをマーケティングに活用する方法」を考えてみましょう。  

ヤギを活用したマーケティング

  実は、ヤギ除草もその一部においてはヤギをマーケティング的に活用しています。実際、多摩センターにも  
多摩センターまで、ヤギたちに会いに行ってみませんか?
  とあり、あわよくばヤギを集客に活用したい意図が見て取れます。   ヤギを見て癒やされるのは、近隣住民ばかりとは限りません。それこそ、動物園などと同じように「ヤギを目当てに多摩センターを訪れる人」も期待できるはずです。もちろん、そう仕向けるためには相応の準備を行う必要はありますが。  

動物を使ったマーケティングは珍しくない

動物をマーケティングに活用している事例は決して珍しくありません。「女性・子ども・動物」は「広告の三要素」とも呼ばれており、「これらを使った広告は必ずヒットする』と言われることもあります。   近年メディアなどで取り上げられた事例としては以下の様なものがあります。   宇都宮に外国人殺到!猿のおもてなしが熱い居酒屋「かやぶき」   こちらは栃木県にある居酒屋ですが、「料理をサルが運んでくれる」という点が外国人観光客を中心に人気となり、SNSで知名度がアップしテレビなどで何度も紹介されました。   人気「看板猫」がいる日本全国の温泉宿・ホテル10選   旅館の中には、「看板猫」を使って集客に活用しているところもあります。今では温泉に浸かるのではなく「看板猫に会う」ことを目的に宿を訪れるお客のほうが多くなってしまったところもあるとか。  

動物を使ったマーケティングのポイント

 
  • 「動物に会いたい」という新たな訪問の動機を生み出せる
  • 動物を映した画像や動画などが、SNSで拡散することが期待できる
  • 動物を通じて今までは気づけなかった潜在的な需要に気づける場合がある
  ヤギを始め、動物をマーケティングに活用すると以上のような利点があります。多摩センターの場合はあくまでも「除草」がヤギの仕事であり、マーケティングには積極的に活用していないようでしたが、私はとてももったいないことだと思います。  

動物によるマーケティングは、意図せず始まる場合も多い

このヤギたちが除草しているのは急な斜面であり、注意していないと見落としてしまうことも十分に考えられます。仮にマーケティングとしての意図を全く考えないとしても、「市民に対して行政の取り組みをプレゼンする」という観点から言えば、もっと「ここにヤギがいる」という点を積極的にPRしてもいいでしょう。   先にご紹介した「猿がいる居酒屋」や「看板猫がいる旅館」も、最初からマーケティングを目的に動物を負いていたわけではありません。最初からいた動物をたまたま一部の人が見つけ、SNSで拡散した結果人気に火がついたのです。   知名度アップの種は、一体どこにひそんでいるかわかりません。もし魅力的なコンテンツを持っているのなら、その存在をPRして多くの人に「存在を知ってもらう」ことが何より大事なのです。... 続きを読む

「マツコの知らない世界」から学ぶ、テレビ番組の演出方法

以前公開した記事=「マツコの知らない世界」から学ぶ水族館のマーケティング と、タイトルが似ていますが中身は全く違います。以前の記事は、水族館について紹介する番組内容を元に、「水族館がどのようなマーケティングを行っているのか?」を紹介した記事でした。今回は全く見方を変えて「水族館について語る専門家の声を、テレビ番組はどのような形で放送したのか?」を考えてみましょう。     「マツコの知らない世界」は、ドラァグクイーンのマツコ・デラックスが、さまざまな業界に詳しい人をゲストに招き、普通の人は知らないようなディープな世界についてトークを繰り広げる番組です。いろんな業界の裏話のような話が聞ける上に、マツコの巧みな素人いじりが見られるので、私のお気に入りの番組です。   今回取り上げるのは、放送105回めとなった「水族館&インスタントカメラの世界」です。ただし、対象とするのは前半の「水族館」部分だけなので注意してください。番組内容そのものがどのようなものであったかについては過去の記事で紹介しているので、番組本編をご覧になっていない方はそちらを見てから本記事を読んでもらうほうが理解しやすいかもしれません。   「マツコの知らない世界」から学ぶ水族館のマーケティング   上記の記事では、番組本来の流れに沿って「最新の水族館の動向」をご紹介してきました。今回は切り口を変えて「『知らない世界』という番組は、「水族館」というテーマをどのように視聴者に紹介したかったのか?」という、メディア側の意図を探っていきたいと思います。  

ゲストの中村さんには一貫した主張があった

今回の放送で、水族館を紹介してくれた専門家は中村元さん。全国の水族館を渡り歩き、運営にもかかわる水族館プロデューサーです。番組内における中村さんの主張は、下記のようなもので終始一貫していました。  
  • 水族館のお客さんは、誰も魚なんて見ていない・・・・起
  • では、何をしに来ているかというと「水中にいる気持ち」を味わうためである・・・承
  • 「水中にいる気持ち」を作り出すために重要なのは「水塊(巨大な水槽)」である・・・転
  • だから、今日は「水塊」に力を入れている、面白い水族館を皆さんにご紹介する・・・結
  それぞれ、話の内容に「起承転結」という意味合いを割り振ってみました。このように見ていくと、中村さんの話には「お客さんは魚を見てない→本当は『水中にいる体験』がしたい→そのために重要なのは『水塊』だ!→だから、水塊のある水族館を紹介する」というふうに、一貫した因果関係で結ばれた「主張のストーリー」があることがわかります。   更に細かく言えば、「しかし、水塊を造るには莫大な費用がかかる→水塊に頼らず集客に成功している水族館も紹介する」というサブテーマもありました。  

中村さんのストーリーは、番組内でどう表現されたか?

このように、中村さんは数々の水族館のプロデュースを成功させてきた方らしく、極めてユニークで、かつ価値のあるストーリーを多くの人に届けようとして番組に出演していたことがわかります。   しかし、「知らない世界」の番組スタッフはこの中村さんの主張を、中村さんがいうそのままの形で視聴者に伝えようとしていたわけではありません。番組スタッフとしては、「こうした方が視聴者の興味引きやすいだろう」という編成があり、そちらに合わせて少し中村さんのストーリーを軌道修正させていったと私は考えています。   このようにいうと、「マスメディアが出演者の声を歪めた」と誤解する方もいるかもしれません。私がいいたいのはそこまで大げさなことではなく、「テレビ的にはこうした方がウケが良いだろう」と考えた番組スタッフの編集意図が、番組の中で現れていた、ということです。「知らない世界」は私も好きな番組なので、中村さんの主張を番組が歪めて伝えたわけではない、ということだけは念のためお断りを入れておきます。  

本題に入るための導入トーク

番組スタッフの編集意図は、まず冒頭から現れます。中村さんはスタジオに現れるなり、次のような話をマツコに紹介しました。   中村さん:今回の出演で、水族館に関してようやく言いたいことがいえそうです。テレビでは普段、わりと普通のことしか聞かれません。たとえば、「親子で水族館に行ったらどんなふうにみればいいですか?」とか。私に言わせれば「好きに見ればええやん」と思うんです。本当は、水族館についてそんなことが語りたいわけじゃないんですよ。   ここから、先に書いた「水の中にいる体験」や「水塊」に関する話につながっていくわけですが、ここで番組は一旦中村さんのトークを遮り「毒舌プロデューサー」というテロップを入れました。中村さんとしては、冒頭のトークは「水族館は水の中にいる体験をする場所だ!」という、本題に入るための導入トークだったはずです。しかし、番組スタッフは編集でその意図を薄め、導入トークを「毒舌」という中村さん個人へのキャラクター付けに持っていったわけです。  

テレビ番組にも、演者とは違う「伝えたいストーリー」がある

番組スタッフがなぜこのような編集を行ったかは、続きを見ていけば明らかになります。冒頭トークに続くシーンでは、ナレーションによって次のような紹介がなされました。   ナレーション:   今日水族館について教えてくれるのは、こんな「毒舌プロデューサー」の中村さんです・・・起 普段あまりテレビに出ることのなかった水族館で、マツコを驚愕させます・・・承 皆さんは日本が世界にある水族館の1/5が集中する、「水族館大国」だということをご存じでしょうか?・・・転 今夜は、「この夏行くべき水族館」をご紹介します・・・結   なぜ、「知らない世界」の編集が、中村さんの「本題に入るための導入トーク」を「中村さんのキャラクター紹介」に置き換えたのか。それはこのような「番組側が考えるストーリー」に内容を当てはめるためだったと考えられます。   「水族館は水の中にいる体験をする場所、重要なのは水塊だ」という中村さんのストーリーは、ユニークで面白い反面、最初から番組を見ていないと理解しづらいものです。たとえば、途中から番組をつけて、冒頭の「水族館では誰も魚なんて見ていない」という部分を見ていない途中からの視聴者は、「なんで水槽の紹介ばかりで、どんな魚がいるか紹介しないんだろう?」と不思議に思うかもしれません。   しかし、「毒舌キャラのプロデューサーが、『この夏行くべき水族館を紹介します』」というストーリーであれば、毎回CMの前後に一瞬だけ説明を挿入すれば誰でも簡単に理解できます。こうした「直感的な理解のしやすさ」こそ、「テレビ的にウケが良い」と考えられる部分なのです。  

テレビは「多くの人にひと目で伝わるストーリー」でなければならない

番組を続けてみていけば、中村さんの主張は十分に理解できます。しかし、そうでなくても「一瞬だけチャンネルを変えた人」であってもそれぞれの部分で楽しめるように番組が編集されているのです。   テレビは不特定多数の人々に、一方的に情報を提供できるメディアです。それだけに、できるだけ多くの人に伝わりやすく、理解しやすい内容になっていなければいけません。「知らない世界」の演出・編集の方法は、演者の主張を曲げること無く「わかりやすさ」との両立を目指したバランスの良いもの仕上がっているといえるでしょう。... 続きを読む

「マツコの知らない世界」から学ぶ水族館のマーケティング

2017年5月30日放送の「マツコの知らない世界#105 水族館&インスタントカメラの世界」から、水族館のマーケティング戦略を学んでいきたいと思います。     ドラァグクイーンのマツコ・デラックスが、様々な業界に詳しい専門家をゲストに迎え、業界の最新動向や普通は聞けない裏話を聞く「マツコの知らない世界」。105回めに当たるこの放送では「水族館プロデューサー 中村元」さんがゲストです。   中村さんはかつて、三重県の鳥羽水族館に勤めていました。当時、水族館としては初めての「広報室」を設立。イルカの出産シーンなどを動画に取ってテレビに送り、それを見た視聴者に水族館を訪れてもらうという斬新なマーケティング施策を行っていました。   この方法は、現在デジタルマーケティングにおいてよく用いられる「コンテンツマーケティング」の手法と全く同じです。   初心者でもわかる!コンテンツマーケティングとは?   現在は経験活かして、全国の水族館をプロデュースしているという中村さん。彼が番組中で紹介した「この夏行きたい水族館」の情報から、使えるマーケティングテクニックをご紹介しましょう。  

誰も水族館に魚なんて見に来てない

中村さんは、「水族館に来るお客さんは、誰も魚なんて見ていない」と語ります。魚の特徴を紹介する学術的な展示はもちろん、ジンベエザメのような目玉展示ですら、実際にはほとんどのお客さんに見られていないという点を明らかにしました。水族館に魚を見に来る人はほんの一握りという中村さんの主張には、マツコも大いに同意していました。   その後、放送ではカットされてしまいましたが、「水族館での会話は『キレイ』『カワイイ』『誰々に似ている』ばかり」というテロップがあり、水族館のお客さんは「魚以外のことを求めている」という重要なポイントが示されます。   中村さん:入場から5分が興奮度MAXです。お金を払ったばかりだから「元を取らなくちゃ」と誰もが思うわけです。でも、古いタイプの水族館だと入場直後にはしょうもない展示があったりする。そうするとそのしょうもない展示の前で大混雑がおこってしまうんです。 マツコ:世界中の人を少しづつディスってるわね。  

人気の水族館に共通するポイントは「水中にいる気持ちになれる」こと

  魚を見ていないのだとしたら、人々はなぜ水族館に足を運ぶのでしょうか?中村さんはその理由を「水中にいる気持ち」を体験したいからだと話します。そのために必要なものである、「巨大な水のかたまりのような水槽=水塊」がある水族館は人気になる、とのことでした。水塊とは、以下のような条件を満たす水槽のことです。  
  • 水の流れを感じられる
  • 海の広さを感じられる
  • 巨大である
  中村さんが厳選し、番組内で紹介された「水塊が美しすぎる水族館」の特徴を続けてご紹介しましょう。  

「水中にいる気持ちになれる」水族館

マリンワールド海の中道(福岡)

こちらの水族館には、四方を水槽に覆われ、中央にも柱上の水槽が佇む「うみなかCUBU」があります。この中に入ると、完全に水の中に入ったような気持ちが体験できます。自分の真横をアザラシが通り過ぎていくこともあります。     このほか、太陽の光が差し込む巨大水槽に、人工的に波を起こすことで九州の玄界灘の荒波を再現した「玄界灘水槽」も必見です。     こうした「水中を体験させる仕掛け」によって、訪問客はまさに「水中にいる気持ち」を体験できます。どんな魚がいるか、といったことは一切関係ありません。   中村さん:水族館はデートに最適な施設なんです。動物園やほかのテーマパークは、夏の暑い時期などには「いきたくない」と女性から断られてしまうこともあるでしょう。でも、水族館はちょっと知的で健全、薄暗いしこんでいるから自然な流れで手をつなぐこともできます。  

加茂水族館(山形)

1960年台に建てられた水族館ですが、長らく売上が低迷、廃業の危機を迎えていました。しかし、2014年に「クラゲ」を展示の中心としたリニューアルを敢行し、見事復活を果たします。展示している50種類3万匹以上のクラゲはギネス世界記録も達成しています。  

クラゲドリームシアター

    クラゲ自体を見るのではなく、クラゲを通じて「浮遊感」を楽しめる水槽。クラゲに特化したお陰で最低年間9万人にまで落ち込んでいた入場者数が70万人にまで回復しました。   中村さん:実は、クラゲの数でギネス世界記録をとっても入場者数は回復しませんでした。入場者数を回復させた鍵は「メディアへの露出」です。館長が「クラゲを食べる会」というものをつくり、クラゲアイスやクラゲラーメンといった名物をメディアで宣伝したんです。それらがニュースになって入場者数が増えていったんです。   私も当初は、「クラゲ世界一」という形でこの水族館をメディアに宣伝しましたが、全く取り上げてくれませんでした。ところが、「クラゲラーメンというものがある」という言い方で伝えたら、すぐに取り上げてくれました。   マツコ:ダメだな・・・メディアって・・・。  

名古屋港水族館(愛知)

400億以上かけてつくられた、日本最大級の水族館です。     シャチが見られる巨大水槽。日本ではシャチが見られる水族館はここと鴨川シーワールドだけです。       イルカパフォーマンスショーの水中部分を鑑賞できる、水中観覧席。本来であれば水中に潜らないと見られない体験を楽しめます。巨大な水塊ですが、実はこれ以上の超巨大水塊があります。         多数の魚達が泳ぐ「黒潮大水槽」。イワシの群れに餌を投入することで、イワシが集団で餌を食べる「イワシトルネード」を見学できます。イワシの群れを通じて水の大きさや躍動感を体験できる水槽です。  

水塊がなくとも集客に成功している水族館

水塊があれば、巨大な水の質量によって「水中にいる気持ち」を再現できます。しかし、巨大な水塊をつくるにはかかる費用も膨大なものになってしまいます。番組で中村さんが続けて紹介したのは、水塊のように大きなコストをかけず、集客に成功している水族館の事例でした。  

竹島水族館(愛知)

竹島水族館には、巨大な水塊はひとつもありません。では、どうやって集客しているのかというと、ポイントのひとつが「オリジナリティの高いユニークな解説」です。深海魚の一種であるツボダイが展示されている水槽には「ツボダイはうまいのか?」という解説文があります。学術的な紹介とは違い、思わず見たくなってしまう解説文ですね。   こうしたユニークな解説は、館長の手によって書かれています。学者さんを雇って専門的な紹介文を書いてもらう資金的な余裕がなく、仕方なく自分で書いた所、お客さんに興味を持ってもらうことができたのだとか。最低12万人にまで落ち込んでいた来場者も、こうした施策が功を奏し現在は39万人にまで回復を果たしました。グロテスクといったイメージのある深海生物を「食べてみる」といったユニークな見方が、独自の集客の成功につながっているのです。  

サンシャイン水族館(東京 池袋)

限られた空間をうまく利用して、「小さな水塊を大きく見せている」水族館です。     中村さん自身がプロデュースした「ラグーン水槽」。本当は狭い水槽を「奥に行くほど暗くする」ことによって広く見せています。   また、2017年には「天空のペンギン」を始めとした新しい展示もスタートします。天空のペンギンは、屋上に水槽を造ることで、ビルの間を泳いでいくペンギンが、まるで空を飛んでいるようにみえる展示。「ビルの中にあり、広さが限られている」という点は、本来サンシャイン水族館特有の弱点でした。しかし、その点を「屋上を利用する」という方法でカバーし、逆にメリットにつなげることに成功したのです。  

まとめ:成功している水族館から学ぶマーケティング

 
  • 魚ではなく、「水中にいる気持ち」を体験できる「水塊」をつくる
  • 水塊がつくれなければ、ユニークな展示で持ち味を活かす
  • 「資金がない」、「場所が限られる」といったデメリットを独自性に変える
興味を持たれた方は、ぜひ今度水族館に足を運んでみてはいかがでしょうか?... 続きを読む

集客を促し、自社のファン化してリピートさせるカルディコーヒーファームの戦略

「カルディーコーヒーファーム」といえば、珈琲と輸入食品の店として広く知られています。普段はあまり立ち寄らない場所なのですが、先日ふとしたきっかけから入店し、買い物をしました。なぜ私が普段利用しない店に入店してしまったのか、そのきっかけをお話したいと思います。   率直にネタばらしをしてしまうと、私がカルディーコーヒーファームに入店したきっかけは「試飲のコーヒーを飲みたかったから」です。「なんだそんなことか」とがっかりした人もいると思いますがあわてないでください。カルディーコーヒーファームは、普段から客寄せのために試飲用の珈琲を店頭で無料配布しています。私も、利用はしないとはいえ普段から店舗自体はよく目にしていたので、当然そのことは知っていました。   現在(2017年5月末)はまだ5月とはいえ、気温は30℃近くもはや夏と言っても差し支えないくらいの暑さになっていました。当然、試飲用として振る舞われていたのはアイスコーヒーです。私はのどが渇いていたという理由もあり、冷たいコーヒーに興味を惹かれて思わず入店してしまったのです。   実は、カルディーコーヒーファームの試飲用コーヒーにはある秘密が隠されています。それは、店頭で購入できる商品で味を再現できるということ。具体的には、同店人気No.1のコーヒー「マイルドカルディ」に、ミルクと砂糖をひとさじで同時に加えられる「クリーミーシュガーパウダー」を加えることで再現できます。ただし、アイスコーヒーの場合はマイルドカルディではなく「イタリアンロースト(アイスブレンド)」が使われるらしいので、私が口にしたのはこちらだったと思います。   このように、「試飲の味を店舗で購入できる品物で再現できる」というやり方には大きな利点があります。以前の記事の中で「スーパーの試食コーナーでは、試食した人の8割が同じ商品を購入する」とお伝えしましたが、それと同じように商品購入を促す効果が期待できるからです。   スーパーの試食コーナーに見るマーケティング   しかも、カルディーコーヒーファームのやり方が優れているのは、スーパーのようにメーカーの新商品や旬の食べ物を紹介するのではなく、自社ブランドの製品を紹介しているところにあります。カルディーコーヒーファームの試飲コーヒーの味が気に入ったとしたら、カルディの商品を買う以外味を再現する方法がありません。必然的にお客様が再び店舗を訪れてくれる可能性が高くなるのです。  

結局、クリーミーシュガーパウダーを買ってしまった

私自身、8割の中から逃れることはできず、クリーミーシュガーパウダーを買ってしまいました。私自身の自覚としては、試飲で飲んだ珈琲の味を再現したかった、というわけではないのですが、結局購入に至ったことに変わりはありません。   私がクリーミーシュガーパウダーを買った理由は、夏になると普段飲むコーヒーがアイスコーヒーになるので、「早く溶けるミルクと砂糖が欲しかった」というのが本音です。クリーミーシュガーパウダーはミルクと砂糖がセットになっているパウダーなので、いちいちミルクと砂糖を別々に用意する必要がありません。実際に使ってみましたが、細かい粉状になっていてスプーンで混ぜればアイスコーヒーでも簡単に溶けます。   購入時に確認したところ、クリーミーシュガーパウダーが売っているところのそばには「試飲のコーヒーの味が再現できますよ」と書いてありました。このあたり、さすがカルディの店員は抜け目がありません。しかし、コーヒー自体には特別こだわりがなかったので、「イタリアンロースト(アイスブレンド)」以外のものを買いました。   カルディコーヒーファームの試飲コーヒーからは、以下のことを学ぶことができます。  
  • 試した人の8割が購入に至るという「試飲・試食の法則」の強さ
  • 自社ブランドの商品を試してもらい、継続購入を促す
  「いいものは、一度試してもらえば良さに気づいて買ってもらえる」という、至極当たり前のことかもしれませんね。   クリーミーシュガーパウダーはなぜか楽天からも購入できます。私のような面倒くさがりにはおすすめです。  ... 続きを読む
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