知らないヤンキー同士が顔を合わせた際の常套句といえば、「お前どこ中だよ?」というセリフが有名です。Twitter上において、「実はこれは威嚇の手段ではなかった」というツイートが多くのリツイート・いいねを呼び話題になりました。
私はこのツイートを見たとき、「田舎にもこれとよく似たコミュニケーションの常套句がある」ということを思い出しました。今回は、テレビアニメ「氷菓」のワンシーンを取り上げて、ヤンキーと田舎に住む人のコミュニケーション方法の中に見る共通項を探っていきたいと思います。
「お前どこ中だよ」は相手への威嚇ではなかった?
まずは、「お前どこ中だよ」について説明する必要があります。せっかくですから、Twitterで大きなバズを産んだ方の当該ツイートを確認してみましょう。
ヤンキーの「オメーどこ中だよ」という常套句、あれは実は威嚇ではなく共通の知り合いが居ないか探りを入れ、無用な戦闘行動を避ける為の確認行為であると知る。
つまり「オメーどこ中だよ」は威嚇行為ではなく極めて高度な敵味方識別システム…。— 副赤@撤退的撤退 (@ATOR86) 2018年2月16日
コンタクト
「コラテメー誰に断ってウチのシマ歩いてんだ?」
<<警告。貴機は我の領空に接近しつつある。直ちに変針し領空外へ退避せよ>>
「あ゛?ンだテメーどこ中だよ?」
<<インターセプトを受けた。IFF識別信号発信>>
「3中だコラテメーこそどこ中だよ?」
<<IFF識別信号受信。応答電波発信>>— 副赤@撤退的撤退 (@ATOR86) 2018年2月16日
「4中だよコラ」
「4中?じゃあ3年の碓氷知ってっか?」
<<応答電波受信。フレンドリーの可能性あり。迎撃待て>>
「碓氷は俺のダチだよ」
「マジかよ俺もだよ!」
<<対象をフレンドリーと認定。戦闘態勢解除。繰り返す、アンノウンは友軍機である>>— 副赤@撤退的撤退 (@ATOR86) 2018年2月16日
以上を参考にすると、ヤンキーが行う「お前どこ中だよ」には次の3つのプロセスがあるといえます。
1.相手が初対面の人であることを確認する
2.出身中学を尋ねる
3.共通の知り合いがいないか確認する
そして、これらのプロセスを経て「共通の知り合いがいるかいないか」によって次のいずれかの判断を下します。
a)共通の知り合いがいる場合:味方と判断する
b)共通の知り合いがいない場合:敵と判断する
ヤンキーですから、味方と判断した場合、その後は一緒につるみ、敵と判断した場合は喧嘩を始めることになるでしょう。
ヤンキーは「人間関係のピラミッド」で秩序を保っている
そもそも何のためにいちいちこのような確認を行うのかといえば、「やばい知り合いや先輩とつながっている相手と、喧嘩をしてしまうのを防ぐため」です。ヤンキーがこの常套句を使うのは「自分のシマ(縄張り)だと思っているところに、知らない別のヤンキーがいるのを発見したとき」です。
ヤンキーには、「どちらの立場が上か下か」を表す、彼ら独自の人間関係のピラミッドが地域ごとに存在しています。彼らはそれを基準にして「自分より格上の相手には従う」、「自分より格下の相手には言うことを聞かせられる」というふうに対人関係の行動方針を決定しているわけです。
この「人間関係のピラミッド」が存在していると、無用な争いを避けられるというメリットがあります。基本的にヤンキーは、ファッションなどを通じて周囲に存在感を示そうとする傾向が強い不良少年たちですから、複数人が無秩序に集まると個性がぶつかり合い、争いが発生する可能性が高い人々です。しかし、「AはBより上」、「BとCは同格」というふうにあらかじめお互いの立場を決めておくことによって、そうした争いが起こりにくくなるのです。
従って、初対面のヤンキー同士が遭遇したとき、まずやるべきことはお互いに「どの地域のピラミッドの、どの位置に属しているのか確認すること」になります。もし、「共通する知り合いがいる」というになれば、「同じピラミッドに属する仲間」ということになるので、その知り合いの地位から逆算することでお互いの上下関係がわかります。
逆に「共通する知り合いがいない」のであれば、それは「違うピラミッドに属する敵と遭遇した」ということになります。この場合、その出会った場所を「地元」とするヤンキーのほうが「別の地域から侵略を受けた」と解釈することになるでしょう。(2/3に続く)
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