情報社会となった現在、ほとんどの人は何らかのメールアカウントを持っていると思います。メールを使用すれば、数多くの個人に直接、メッセージを送ることができる・・・。この状況をマーケティングのために利用したものが「メールマーケティング」です。
メールマーケティングは、デジタルマーケティングの中でも基本的な手法でありながら、手を付けていない企業・団体も多くあります。Web広告などの方法に比べて、どのような手順で行えばいいのか、一般的なやり方がイメージできないためでしょう。
そこで今回は、メールマーケティングとはどのようなものか、基本的な概念をわかりやすく解説したいと思います。
メールマーケティングとは?
メールマーケティングとは、その名の通りメールを使ったマーケティングのことです。具体的には、自社の既存顧客や、これから商品・サービスを購入してくれそうな見込み客に対して、メールを使った情報提供や購買の訴求を行うものです。
上記のような条件を満たす方法であれば、それらはすべてメールマーケティングの範疇に入ると考えていいのですが、マーケティング業界ではあえて「メールマーケティング」という場合、「従来の一斉送信型のメルマガとは違う、個々のユーザーに最適化されたメール配信」を意味します。
メールマーケティングとメルマガの違い
この部分は、マーケティングに馴染みのない方にはわかりにくいと思うので具体的に説明しましょう。全社会規模でインターネットの利用が拡大しつつあった2000年台、それをマーケティングに利用しようと「メールマガジン(メルマガ)」を発行する企業や団体が数多くありました。ここでいう「メルマガ」とは「登録者に対して、同じ内容のメールを一斉に配信するもの」を指します。
当時はまだネットというインフラが社会的に導入されていく過程にあったので、「メール配信で定期的に情報が届けられる」ということ事態に真新しさがありました。そのため、メルマガはそれなりに効果的だったのですが、ネットが社会に定着するに連れてこの状況にも変化が生じます。
ネットを通じて世界中がつながり、多数の商品やサービスに消費者が容易にアクセスできる環境が生まれたことで、消費者のニーズが以前よりも多様化・細分化していったのです。結果的に、ユーザー全員に同じ内容を一括送信するメルマガの手法は有効性を失ってしまいました。
そこで、一人ひとりのユーザーの興味・感心に合わせて内容の異なるメールを配信する「メールマーケティング」という手法が生まれたのです。メールマーケティングでは、ユーザーのごとの情報を管理し、最適なメールを配信する仕組みが必要なため、専用のツールを使用して配信が行われます。
メールマーケティングのメリット
メールマーケティングは「既存のメルマガの弱点を改良したマーケティング手法」であるということは理解していただけたと思います。ここではより視点を広げて、Webマーケティング全般で見た場合のメールマーケティングのメリットを解説しましょう。
相手とタイミングを選んで情報発信ができる
メールマーケティングで行うメール配信の送り先とタイミングは、すべて配信元の自由に指定できます。それに対して、Web広告などは基本的にどんな人がいつ見るのかをコントロールすることはできません。
戦略的なメール配信が可能
配信する相手によってメールの内容を変えられるということは、単にメールを一通送って終わりにするのではなく、複数のメールを段階的に送るような、戦略的なメール配信も可能だということです。「メールを開封したかどうか」、「メール内のリンクをクリックしたかどうか」など、リアクションに合わせて送るメールを変えることも可能です。
新規顧客の獲得、休眠顧客の掘り起こしに効果的
「メールを読む」というアクションは、商品購入に比べて負荷が少ないため対象者の負荷が少ないというメリットがあります。「商品に興味はあるが、まだ購入の検討中である」というような新規見込み客の獲得や、「かつて商品を購入したことがあるが、次回の購入は未定」といいうような既存の「休眠顧客」を掘り起こし、再び購入につながるアクションに導くのに適しています。
メールマーケティングのやり方
「これからメールマーケティングを始めたい!」という方のために、ゼロからメールマーケティングを始める際のやり方をご紹介しましょう。
Webマーケティング会社に相談する際の注意点
「メールマーケティングを始めたいが、やり方がわからない」という方の多くは、Webマーケティング会社に相談し、導入のサポートを受けることになるでしょう。その際は以下のような点に注意しなければなりません。
「使用するツール」は実は重要ではない
Webマーケティング会社に相談すると、ほぼ間違いなく「どのツールを利用するつもりですか?」と確認されることになります。利用するツールによって、利用料金や機能が異なるため、導入を検討中の方にとってもどのツールを使うかは主要な関心事のひとつだと思います。「メールマーケティングの成否は、利用するツールによって決まる」と考えている方も多いことでしょう。
しかし、実際には利用するツールはそれほど重要ではありません。今回ご紹介したようなメールマーケティングの基本的な機能であれば、主要なツールはどれでもそのほとんどをカバーしているからです。「それでも機能の優劣はあるのではないか?」と思われる方もいるかもしれませんが、私がメールマーケティングの実務に関わった経験からすると、多機能なツールを使っていたとしても実際に使用するのは、ほんの一部の機能だけというケースがほとんどです。
ただし、これは「ツールにはお金をかけなくて良い。シンプルな機能だけのものでよい」ということを意味するわけではありません。「ある程度の利用実績と市場シェアがあるツールであれば、どれを選んでも問題はない」という程度の意味だと理解してください。
シナリオ設計はほとんどの場合「絵に描いた餅」に終わる
「利用するツール」と並んで、一般的にメールマーケティングの成否をわけるポイントだと思われがちなのが「マーケティングシナリオ(戦略)」です。「仮想的なターゲットや、それを商品購入につなげるための具体的な道筋を詳細に設計すれば成果が上がる」とイメージしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、メールマーケティングでは綿密にシナリオを設計しても、実際の施策がそれに追いつかず、徒労に終わってしまうことが少なくありません。従って「弊社はマーケティング戦略の策定でメールマーケティングの成功をサポートします」と謳っているようなWebマーケティング会社のセールストークも、話半分程度に聞いておいた方がいいでしょう。
本当に大事なのは、マーケティング施策の運用体制
ツールもマーケティングシナリオもメールマーケティング成功の決め手にならないとしたら、一体何が成功のカギを握っているのでしょうか?それは「マーケティング戦略の運用体制」です。
たとえば、メール配信を行うためには、メールの文面を書き、レイアウトを決めて、画像やイラストなど文中に挿入する素材を用意しなければなりません。そうした、運用の中で必要になる個々の作業を「誰が、いつまでに、どのように行うのか?」といった運用体制がしっかり確立されていれば、メールマーケティングはうまくいきます。
従って、メールマーケティングをこれから始める方は、利用するツールやマーケティング戦略だけでなく、運用体制をどのように構築するか考えるのを忘れないようにしてください。