【Bパート ヒトはもう絶滅している?】
博士と助手から、自分がヒトであること、そしてヒトの特徴を告げられたかばんちゃん。しかし、動物がヒト化した存在であるフレンズがたくさんいるジャパリパークで暮らしていたことや、先にハシビロコウからヒトではないかと言われたことなどから、あまり驚く様子はありませんでした。
ワシミミズク(助手):実感はわきましたか?
かばんちゃん:どうでしょうか・・・。
サーバル:よかったね!これで何の動物かわかったから、あとは人が住んでるところまで行こうよ!ねぇ博士、ヒトってパークのどこによくいるの?
アフリカオオコノハズク(博士):ヒトはもう、いないのです。
助手:ヒトはもう、絶滅したのです。
かばんちゃん:絶滅・・・?
博士:ある日を境にいなくなったのです。
サーバル:どうして?
助手:ここに住めなかった、ということか。
博士:もしくは、私たちの知らないところに今もいるのか・・・。
サーバル:じゃあ、そこを見つけることだね。
助手:何れにせよ、ヒトに適したちほーに行くのが良いのです。
博士:合わないちほーでの暮らしは、寿命を縮めるのです。
同じ種類のフレンズと動物は、同じ場所で暮らしている?
かばんちゃんが自分が何の動物なのかを知ってもいまいち実感がわかないのは、上で述べたように「ヒトに近い、フレンズがたくさんいること」、「ハシビロコウから先にネタバレされていたこと」などが理由だと思われますが、それらに加えてもう一つ考えられる理由があります。
そのヒントが隠れているのは、続くサーバルのセリフです。サーバルは「あとはヒトの住んでいるところを探すだけ、ヒトはどこにいるのか?」と博士に尋ねました。ここでサーバルが言う「ヒト」とはかばんちゃんのように「フレンズ化したヒト」はもちろん、「動物のヒト」も含まれていると考えられます。
けものフレンズの劇中では、シーンこそ少ないもののフレンズ化していない動物が登場する場面も見られます。
従って、描かれこそしないもののフレンズに負けないくらい、普通の動物もパークの中では多数暮らしていると考えられます。そうでなければいかにサンドスターが降り注ごうとも、あれほど多様な種類のフレンズが登場するわけがありません。
ですから、サーバルが尋ねているのは「動物の、もしくはフレンズ化したヒトが暮らしているのはどこか?」ということのはずなのです。なぜこのセリフが重要かというと、「かばんちゃん以外のフレンズにとっても、置かれている状況は同じ」はずだと考えられるからです。
複数の個体から、たまたまフレンズ化した存在
具体的に例を挙げて説明しましょう。たとえば、劇中に登場するサーバルは元々さばんなで暮らしていました。しかし、サーバルは元々は動物だったはずで、サンドスターの影響によってフレンズ化したはずです。ということは、元々ジャパリパークのさばんなちほーには「動物のサーバルが暮らしていた」と考えられます。
ジャパリパークの動物たちが、最初からそこで暮らしていたのか、それとも人の手によって人為的にジャパリパークに持ち込まれたのかはわかりませんが、ジャパリパークに存在するサーバルキャットがかばんちゃんと一緒に旅をしている彼女だけと考えるのは不自然です。むしろ、複数の個体が存在していて、その中でたまたまサンドスターの影響を受けたものがフレンズ化して我々の知る「サーバル」になったと考えたほうが自然でしょう。
つまり、ジャパリパークに存在する動物たちは基本的に「自分たちに適した環境の中で、複数の個体が暮らしている。その中でたまたまサンドスターの影響を受けた個体がフレンズ化するが、通常は同じちほーで暮らし続ける」と考えられるのです。
中には、極端に個体数が減少して動物の個体が見られない種類もいるかもしれません。また、フレンズ化したことでカフェを始めたアルパカ、体に合う家を建てようとしたアメリカビーバーのようにあえて動物のころとは違う環境で暮らそうとしているものもいるでしょう(彼女たちは別のちほーに移ったわけではありませんが)。
「ヒトはもう絶滅した」シーンの演出
サーバルの問いかけに対する博士の答えは、「ヒトはすでに絶滅した」というものでした。このとき、かばんちゃんの顔のアップが映され、徐々に瞳のハイライトが弱くなっていく演出がなされています。
けものフレンズのアニメでは「絶滅種は目にハイライトを描かない」というキャラクターデザインがなされており、劇中ではトキ、オーロックスなどに同じ特徴が見られます。ヒトが絶滅したという可能性を示唆され、かばんちゃんもほかの「絶滅種」と同様にハイライトが消えていく演出はファンの間でも有名です。
とはいえ、正確に言えばヒトは絶滅したわけではなく、「ある日を境にいなくなった」とのことでした。助手が言うように、ほかのフレンズたちが知らない場所で今も変わらず暮らし続けている可能性もあります。
サーバルが会話をリードするのはかばんちゃんへの気づかい
この間、サーバルは積極的に博士と助手に質問して会話をリードしていますが、これは単なる疑問だけに基づく行動ではないでしょう。この場面の前後のサーバルの行動をまとめてみると、以下のようになります。
博士たちからかばんちゃんがヒトだと伝えられる=かばんちゃん驚かず
→じゃあ、ヒトがどんな動物か教えて
博士たちからヒトの特徴を説明される=かばんちゃん実感がわかず
→ヒトの住んでいる場所を教えて
博士、ヒトはすでに絶滅したことを告げる=かばんちゃん「絶滅・・・」とつぶやく
→私たちの知らない場所でまだ暮らしているかも。そこを見つけよう!
このように、会話の前後関係を見ていくとサーバルがかばんちゃんを気遣って話題を振っていることがわかります。今回の件では、かばんちゃんは自身の正体にかかわる問題なのにも関わらず、あまり明確なリアクションをとっていません。おそらくは、衝撃的な事実や実感がわかない情報ばかりを告げられて戸惑っているのでしょう。
しかし、そのままの状態でいたのでは冷静になって考えた後でかばんちゃんは心にさらなる不安を抱えてしまったはずです。
「自分がヒトなら、どう暮らしたらいいのか?」
「ヒトが絶滅したのなら、もう自分に仲間はいないのか?」
「ヒトのいるちほーがわからなければ、どうしたらいいのか?」
こういったことが際限なく頭の中を駆け巡り、かばんちゃんの心は追い詰められてしまっていたかもしれません。
目的があることで、ヒトは不安から解き放たれる
サーバルが行ったのは、「自分の正体を知る」という目的を達成したかばんちゃんに、新たな旅の目的を与えることでした。旅の目的を達成してハッピーエンドと行けばよかったのですが、ヒトが今どこにいるかわからないなど新たな不安要素が現れてしまったため、新たな目的を与えることでかばんちゃんに「自分のやるべきこと」を示したのです。
ヒトは現状に不安があっても、将来に向けた目標さえあれば頑張れるということがあります。サーバルが狙ったのもこのような効果だと考えていいでしょう。