【Bパート アライさんとフェネック in こうざん】
4話まではCパートに挿入されていたアライさんとフェネックの行動が描かれるシーンです。今回は3話でかばんちゃんとサーバルが登った「こうざん」の山頂に向かっていますが・・・。
フェネック:アライさーーーん!(ロープウェイを漕ぎながら崖を登るアライさんに呼びかける)
アライグマ(アライさん):うえーーっ!!(崖を登りながら、フェネックがより簡単そうなロープウェイに乗っているのに驚く)
(ジャパリカフェにたどり着き、休息する)
アライさん:目標が下山していたのだ・・・。
フェネック:だからゆっくり行こうって・・・。
アルパカ・スリ:じゃあじゃあ、一杯どう?
トキ:一曲どうかしら?
(トキの歌を聞きながら、アルパカの入れた紅茶を飲む)
アライさん:カフェって・・・。
フェネック:いいねぇ~。
アライさん:・・・じゃないのだ!お宝が呼んでいるのだ!
アルパカ&トキ:お宝?
アライさんとフェネックがBパートに移動したワケ?
アライさんとフェネックの(かばんちゃんを追いかける)追走劇は、4話までCパート(エンディングテーマの後)に挿入されていました。今回は初となるBパートへの挿入です。なぜ今回だけこのような形になったかと言えば、それはおそらく5話のラストシーンが6話へと続く印象的なものになっているからでしょう。そのシーンについてはまた次回の解説で取り上げたいと思います。
1秒で「そのシーンまでの展開」が理解できるつくり
アライさんたちのシーンは、本編にはあまり関係しないいわばおまけのようなものです。従って、本編とは違いあまり尺(時間)を割くことができません。その分、可能な限り短い時間で必要な情報が視聴者に伝わるよう工夫されているので、案外面白い演出がたくさん隠されています。
先に、前回のアライさんたちの行動を振り返っておきましょう。4話においてアライさんとフェネックは、じゃんぐるちほーの「橋」にたどり着きジャガー、コツメカワウソと会話しています。ジャガーから、「帽子の子(かばんちゃん)はこうざんにむかった」という情報を聞いたアライさんは「しかし、今はもう下山して先に進んでいる」というジャガーの話を最後まで聞かないうちに山に向かって走り出してしまいました。
今回のアライさん・フェネックパートは、いきなり断崖を登っているアライさんを描くところから始まります。視聴者には何の説明もありませんが、前回のシーンとの関連から「アライさんはサーバルが辿ったのと同じ断崖を登って山頂を目指すルートを通っている」ということがひと目で分かるようになっています。いわば、本編の過去のシーンが布石として使われているわけです。
冷静に考えて動くのが苦手なアライさん
一方のフェネックは、かばんちゃんたちが下山時に使用したロープウェイを使ってより楽に山頂に向かっています。自分は苦しい崖登りを始めてしまっていたアライさんは隣を通り過ぎるフェネックを見て驚きますが、本来ならアライさんにも「ロープウェイを使って登山する」という選択肢が存在していたはずです。
しかし、あまりに先を急いで焦るあまり「冷静に周囲を確認する」、あるいは「落ち着いてフェネックの到着を待つ」といった行動が頭に浮かんでこなかったのでしょう。そもそもアライさんが冷静であれば「目標はすでに下山している」というジャガーの話を最後まで聞いてから行動していたはずなので性格的にはやむを得ない展開だといえるでしょう。
ワンシーンで不必要な説明をカットできる
ジャパリカフェに到着したアライさんは、目標(かばんちゃん)がすでにそこにいないことを知り落ち込みます。「すでにカフェの席に座っている」、「目標が下山済みだと知っている」という描写から、山頂でフェネックと合流した後、アルパカやときとの挨拶を済ませているであろうことが見て取れます。単にカフェの席に座らせて一言つぶやかせるだけで余計な途中のシーンをカットしているのです。
アライさんを注意しつつ、同時に諦めているフェネック
フェネックはアライさんに「だからゆっくり行こうって(いったのに)」と言っていますが、この言葉には2つの意味があります。これまでのシーンでもフェネックはひとりはやるアライさんに何度も「ゆっくり行こう」、「急ぐな」と言ってきています。ですから、文字通り「自分は何度もゆっくり行こうと言っているのに」という「注意の繰り返し」であると解釈できます。
しかし、フェネックは口でこそアライさんを何度も戒めるものの、決して自分が走ってアライさんを追いかけたりすることはありません。理由としては「アライさんとの付き合いが長いから、止めても無駄なのがわかっている」、「元々のんびりした性格である」といったことが考えられますが、どちらにしても「焦っているアライさんを止める方法はない」と考えているのは確かでしょう。
つまり、表面上は焦るアライさんをたしなめているフェネックも、その裏では「毎度毎度焦って失敗するアライさんはしょうがないな」と半ば諦めながらついていっているとかんがえられるのです。
アライさんの欠点を受け入れるフェネックの感情
「注意」と「諦め」、この2つがフェネックからアライさんに向けられる感情だとしたら、一つの疑問が生じます。それは「なぜそんな人にわざわざ付き合っているのか?」ということです。実は、アライさんとフェネックがコンビを組んでいる理由は「アニメ けものフレンズ」を全編見ても明確な形で語られることはありません。しかし、ここまでの描写からも2人が今回たまたま行動をともにしているわけではなく、「いつも一緒に行動している」ということは伝わってきます。
「ひとりで突っ走って、注意しても直らない」、そんな人と行動をともにしているからには、フェネックはそうしたアライさんの欠点とも言える部分を含めてその人柄に好意を持っているのは間違いないでしょう。そうした点から、けものフレンズの二次創作ではアライさんとフェネックをカップルとして取り扱っているものも珍しくありません。
「自らの本来の生息域を越えて、広くパーク中で活動する」、「異なる種類のフレンズとペアを組んで行動する」・・・。アライさんとフェネックの2人にはこうした珍しい特徴があります。同じような条件を満たすフレンズは、パークの中で特別な役割を持つ存在を除けば、ほかにはかばんちゃんとサーバルくらいしかおらず、極めて珍しい例だといえるでしょう。
ジャパリカフェの効果は十分だが、集客には相変わらず難あり?
アルパカの紅茶とトキの歌は、疲れたアライさんとフェネックの心を癒やしました。ジャパリカフェは「(空を飛べるフレンズ以外には)見つかりにく場所にある」という欠点を抱えているものの、かばんちゃんやサーバル以外のフレンズにとってもくつろげる場所として機能することが確かめられたと言えそうです。しかし、以前登場したショウジョウトキの姿はなく、どれだけのお客さんが定着してくれるかはまだ未知数と考えたほうがいいかもしれません。
ラッキービーストが反応する帽子=お宝か?
アライさんは最後に「お宝が呼んでいる」という気になる言葉を口にしています。このお宝とはおそらくアライさんが追いかけている「かばんちゃんの帽子」のことだと推測できます。ですが、あの帽子がなぜお宝なのか?という新たな疑問も同時に生じてしまいます。
5話のこの時点までで、かばんちゃんの帽子が重要な役割を果たしたシーンとしては2話の冒頭が挙げられます。ラッキービーストと出会ったとき、帽子をみたラッキービーストの目が光り、普段とは違う声で喋り始めたシーンです。
従って、もしお宝=帽子であれば、この「ラッキービーストを反応させる機能」が何らかの重要な役割を持っていると想像できます。「ここまでの描写とセリフから、ちゃんと視聴者に必要な情報が伝わるようになっている」というのがけものフレンズのストーリーの素晴らしいところです。