プレミアムフライデーを失敗させないためには、退社時間を変えよ

個人消費喚起の目的で導入された「プレミアムフライデー」。しかし、今のところその評判は芳しくなく、効果も疑問視されているようです。なぜプレミアムフライデーはうまく行かなかったのか、マーケティングの観点から考えてみました。

プレミアムフライデーとは、政府と政財界が個人消費を増やす目的で導入したキャンペーンです。

  • 毎月月末の金曜日を「プレミアムフライデー」とし、15時での退社を奨励する
  • 2017年2月27日から実施
  • モデルはアメリカのブラックフライデー

早期退社することによって、飲み会やショッピングなどの消費増を狙うのが目的です。また、労働時間を短縮することから、労働環境改善の効果も期待されていました。

ところが、このプレミアムフライデー、実施される前から評判は散々なものでした。

  • 仕事量が減るわけではないので「15時退社」を実現するための残業が必要になる
  • 給与が増えるわけではないので早く退社をしても消費しない

そして実際に実施してみたところ、「15時退社を実施した会社は約4%」とのデータもあり、前評判を覆すような成果をあげているとはいえないようです。

参考:プレジデントオンライン「プレミアムフライデー失敗の理由

上記の記事では、プレミアムフライデーが失敗した理由について前評判以外の理由として

  • ハロウィーンなど、「イベントで消費する」という行為に人々が疲れている
  • 個人消費増に加えて、労働環境改善まで目的に加えられ、多くの企業にとって実行が困難になった

といったポイントをあげています。

以上が、プレミアムフライデーに関する現時点における世の中の評価です。ここからはマーケティングの観点から見た私の個人的な意見をお伝えしたいと思います。

  • そもそもやるべきであったか?
  • 成功か失敗か?
  • 改善すべきところはどこか?

以上3つの論点について順番に考えていきたいと思います。

プレミアムフライデーは、そもそもやるべきであったか?

プレミアムフライデーは、政財界トップ主導で始められたキャンペーンです。おそらく、政府や財界トップの人々が取り巻く環境下では、それぞれの立場や利害が交錯し、あまり斬新かつスマートな施策は生まれてこないと思われます。

そのため、もしこういった環境からなにか新しいことを始めようとするなら、「わかりやすいベタな施策」から始めるしかないでしょう。プレミアムフライデーは、単純にいえば「アメリカのブラックフライデーの猿真似」です。真似するだけですから、言い方は悪いですが「頭のお硬いお偉方」でも簡単に理解できることでしょう。そうした「プレミアムフライデーが生まれた土壌」から考えると、「プレミアムフライデーのように、単純でわかりやすい施策でなければ、そもそも実行に移すことはできなかっただろう」といえると思います。

プレミアムフライデーは成功か、失敗か?

私はプレミアムフライデーについては、「成功とはいえないが、失敗と言うには時期尚早」だと思っています。今回のキャンペーンにおける本分は「月末に早期退社するという文化を日本に根づかせること」に主眼を置くべきであると思います。通常、こういったビジネス慣習を変えるにはある程度長い時間がかかるはずです。なので、現時点においてはこの慣習が定着するか否か判断できる十分な時間が経過していないと思います。

プレミアムフライデーの改善点は?

私はプレミアムフライデーを「消費喚起のために時間をかけて行うマーケティング施策」だと捉えています。マーケティング施策である以上、データに基づいた改善を行うのが自然です。プレミアムフライデーの成果をデータで見ると、早期退社実施企業の割合が少ないなど、芳しい成果をあげているとはいえません。ですから、「月末早期退社の文化を根付かせる」という目的を達成する前に、まずはこうしたわかりやすい数値目標の改善に取り組むべきでしょう。

たとえば、退社時間の基準を15時から18時に伸ばせば、対応できる企業はかなり増えるはずです。そうして、実施する企業がある程度増えてきたあとで、徐々に基準となる時間を引き上げていけばいいのです。

「モテる秘訣は、モテるやつだと思わせることだ」という言葉があります。プレミアムフライデーの最もよくない点をひとつ挙げるとすれば、「うまくいかない」、「うまくいっていない」と世間に思われてしまったことでしょう。最初は小さな成果でも構いません。まずは、「うまくいっている」と思わせてから、徐々に成功の基準をひあげていくことが、成功への早道だと思います。