ポプテピピック第9話「#9 奇跡とダンスを」を考察

多くのアニメファンから注目を集め、SNSなどでも盛んに話題に上っているポプテピピックも、残すところあと僅かとなりました。今回は9話の内容を取り上げ、演出上の意図を考えてみたいと思います。

ポプテピピック第9話「#9 奇跡とダンスを」の内容まとめ

キャラクターボイス

Aパート: 中村繪里子(ポプ子)、今井麻美 (ピピ美)

両者の共演作品:

http://lain.gr.jp/voicedb/individual/costar/1829/cowork/316/page/1

 

Bパート: 斉藤壮馬(ポプ子)、石川界人 (ピピ美)

両者の共演作品:

http://lain.gr.jp/voicedb/individual/costar/2911/cowork/3139/page/5

 

バラバラタイちゃん

タイちゃん(手)とタイちゃん(心)が登場。タイちゃん(手)は、「この前家を見に行った」とタイちゃん(心)に語る。「買ったのか」と聞く(心)に、(手)は「手が出なかったさ」と応えた。

 

#9 奇跡とダンスを

家出をしてひとりニューヨークにやってきた少年のジョセフは、自分のそばで暴れる男たちに迷惑していたが、何もできずにいた。そんなとき、突如現れたポプ子とピピ美の活躍で、男たちは退散。見ず知らずの人に助けられたことに感動したジョセフは2人を追いかけ、その後の行動をともにすることになる。

 

極度の引っ込み思案だったジョセフも、なぜか2人とは打ち解けることができた。さらに2人は、ジョセフが抱えていた悩みを親身に聞いただけでなく、彼に夜のニューヨークを案内する。それはジョセフが今まで経験してきたことの中でも最高にクールな体験であった。

 

そして、ポプ子とピピ美がマグロを捌こうとしたとき、ジョセフはある事実に気がつく。それは、うまくいかないことを他人のせいにして、自ら行動するのを恐れている自分自身の気持ちへの気づきだった。「そうした姿勢は結局、逃げでしかない」と考えたジョセフは、2人と別れ家への帰途につく。

 

2人の言動から「まだ何者でもない自分が、大人になるまでに何をするべきか」をじっくり考えるべきだと悟ったジョセフは、その後大きく成長。現在はニューヨークの市長を務めるまでに至る。壇上から聴衆に向けてスピーチを行うジョセフは、若き日に出会った友人たちの思い出を語り、2人への感謝の言葉を述べるのだった。

 

POP TEAM 8BIT(格闘ゲームのパロディ)

前回に引き続き、「GUILTY GEAR XX」のような2D格闘ゲームの世界で戦うポプ子とピピ美。互いに技を出し合うが、ポプ子が体力を10割奪う技を発動。そのまま勝利する。

 

ボブネミミッミ「不思議の国のアリス」

5話にあった「不思議の国のアリス」のパートのセルフパロディ。秘密のお茶会へ出席しようと先を急ぐウサギを見つけたボブ子は、進路を妨害する。ウサギもポプ子に対抗するべく、すばやく動いて分身しボブ子の周りを取り囲む。そのころ、ミミ美を始めとしたお茶会の参加者は、時間になっても一向に現れないウサギを待ち続けていた。

 

ラテアート

カフェでラテアートを楽しむ女子を見たポプ子は、自分もラテアートを注文する。10分後、ポプ子は完成したラテアートが届くなり、見るよりも早く飲み干してしまう。ピピ美から何が描いてあったのか尋ねられても「さぁ、興味ないから」とつぶやく。

 

ボタン

ピピ美から謎のボタンを示され、押すように勧められるポプ子。ボタンを1度押すと、ピピ美が優しくポプ子を抱きしめてくれた。ポプ子は続けてボタンを何度も連打するが、今度はピピ美から強烈なビンタを食らってしまう。

 

もし~だとしたら?

河川敷に佇むポプ子は、隣のピピ美から「もし、10人中1000人がポプちんのこと嫌いだとしたら?」と質問を投げかけられる。ポプ子はその光景を想像して「save with me(Bパートでは代わりにイングヴェイマルムスティーン)」と泣きじゃくる。ピピ美は続けて「そしてたったひとり、私がポプちんの味方だとしたら?」と問いかける。ポプ子はみるみる笑顔になり「Center of Universe(Bパートでは、加えて『And the Earth』」とつぶやく。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B9_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

 

面白いこと言います

面白いことを言うと宣言したミミ美。まだ何も言っていないのに、そばにいたボブ子はドラムを叩いて囃し立てる。「まだ言ってない!」とミミ美に指摘され、自分の過ちに気がついたボブ子はドラムスティックを折り涙を流す。つられてミミ美も泣く。

 

JAPON MiGNON

ティボ・トレスカ氏「僕自身 フランス料理は大好きだけど 中には 旅行者にとってはびっくりするくらい ニオイがキツい料理もあるんだ ここでは 2人が知らずに ニオイがキツいことで有名な料理を注文するんだ」

 

フランスでのはじめての食事、ピピ美はアンドゥイエット・コルセーを、ポプ子はサラダ ドゥ マルワル ショを注文する。どちらもニオイがキツいことで有名な料理だった。2人はフランス料理を諦め、ラーメンショップで食事を摂る。

 

バラバラタイちゃん その2

最後に観客にお礼を言うタイちゃん(心)と、タイちゃん(手)。タイちゃん(心)は心臓であるがゆえに、緊張で動悸が高まる。

 

全体の流れを詳しく確認したい場合は、本編を視聴するか、以下のリンク先が参考になります。

 

http://anicobin.ldblog.jp/archives/53070456.html

 

作中に出てきたパロディの元ネタは、以下のリンク先を参考にしてください。

 

https://matomedane.jp/page/4922

 

ポプテピピック9話のポイント

9話のテーマは「ボケとツッコミの交代」

ボケとツッコミは、そもそも漫才の役割を示す言葉でしたが、現在では漫才以外のお笑い要素の中でも一般的に使われるようになりました。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%AB%E6%89%8D#%E3%83%9C%E3%82%B1%E3%81%A8%E3%83%84%E3%83%83%E3%82%B3%E3%83%9F

 

ボケは話題の中で面白い事を言うことが期待される役割である。話題の中に明らかな間違いや勘違いなどを織り込んで笑いを誘う所作を行ったり、冗談などを主に言う。

一方、その相方は、ボケの間違いを素早く指摘し、笑いどころを観客に提示する役割を担う。ボケの頭を平手や軽い道具で叩いたり胸の辺りを手の甲で叩いて指摘する事が多い。この役割はツッコミと呼ばれる。

 

ボケとツッコミ、2者がそれぞれ決められた役割を互いにこなすことでお笑い生み出すのが漫才です。しかし、近年ではサンドウィッチマンや笑い飯に代表されるように、ネタの間にボケとツッコミが役割を交代するグループも見られるようになりました。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%9E%E3%83%B3_(%E3%81%8A%E7%AC%91%E3%81%84%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%93)

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%91%E3%81%84%E9%A3%AF

 

今回、ポプテピピックはアニメの中でこの「ボケとツッコミの交代」を試みたといえます。

 

アニメオリジナルパートに見るボケとツッコミの交代

具体的な例を挙げて説明しましょう。「#9 奇跡とダンスを」は悩みを抱える少年ジョセフが、ポプ子・ピピ美と出会うことで立派な大人へと成長する、というストーリーです。ジョセフと2人が初めて出会うシーンでは、明らかにポプ子・ピピ美は「ボケ」であり、ジョセフはツッコミ役でした。

 

シーンの進行によって、徐々にこの役割は揺らいでいくことになります。ジョセフは回想の中で「2人は自分の話を親身に聞いてくれた」、「夜のニューヨークを案内してくれた」と語っていますが、劇中の様子を見る限り2人につきまとうジョセフを無視し続けているようにしか見えません。もちろんこの間、ポプ子とピピ美はさまざまなパロディなど「ボケ」もこなしているのですが、より大きな視点で見ると今度はジョセフのほうが「ボケ」になっているわけです。

 

そして、マグロをさばくシーンにおいてジョセフが何かを悟ることで、「ボケとツッコミの交代」は完全に終了します。本来何の意味もないはずのポプ子とピピ美の悪ふざけを深読みしたジョセフは、勝手に納得して自宅に帰り、そのまま壮大な勘違いを継続したまま立派なマイク・ハガーへと成長を遂げるわけです。

 

Bパートでは、こうした一連のストーリーはすでに視聴者にバレています。そのため、前半では英語だったナレーションを沖縄弁に変えることで、最初からジョセフに「ボケ」の役割をもたせるとともに、ネタとしての強化を図っていると言えるでしょう。

 

ポプテピピック9話の演出意図を考察

観客が気づくことを前提にした笑いの仕込み

「ボケとツッコミの交代」は、観客がボケとツッコミの役割を明確に認識していなければ成立しません。従って、必然的にメタ的な視点を含んだものになります。「#9 奇跡とダンスを」以外でこれがわかりやすい部分としては、「バラバラタイちゃん」と、ボブネミミッミ「不思議の国のアリス」が挙げられるでしょう。

 

バラバラタイちゃんは、それ自体は一般的によくあるアメリカンジョークですが、冒頭とED直前ではボケ役が交代しています。(最初はタイちゃん(手)が、「手が出ない」とボケて、2回めはタイちゃん(心)が「動悸がすごい」とボケる)

 

ボブネミミッミ「不思議の国のアリス」は、お茶会へ行こうとするウサギをボブ子が妨害していたはずが、なぜか途中からウサギがボブ子を妨害する、という構図にすり替わっています。これらはどちらも、視聴者が「ボケ役の交代」に気が付かなかければ面白さが半減してしまうでしょう。

 

また、単体で見れば単なるパロディネタに過ぎない「POP TEAM 8BIT」も、8話で同じ格闘ゲームパロディが挿入され、そのときと今回とでは攻守が交代しているという点も合わせて考えると、「(ボケとツッコミの)役割交代」という今回のテーマを暗示する内容になっているといえます。

 

ツッコミが新たなボケに転じる構造

「ラテアート」、「ボタン」、「もし~だとしたら」のネタは、どれも基本的な流れは大きく変わりません。

 

①ボケ役が何らかの行動を起こす

②ツッコミ役がツッコむ

③実は②のツッコみは、筋違いなツッコミ=新たなボケになっている

 

短いネタではありますが、どの時点でどのキャラがボケで、どのキャラが突っ込んでいるのか考えながら見てみると、最初に見たときとは違う発見があるかもしれません。

投稿者:

コンテンツの魅どころ

Webライター・マーケティングコンサルタントとして活動しています。実務を通じて学んだマーケティングに関するノウハウや最新情報をわかりやすく提供していきたいと思っています。 また、時事に関わるニューズをマーケティング・ライティングといった切り口から解説してみたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

モバイルバージョンを終了