【12話 ゆうえんち 考察まとめ】
【12話 ゆうえんち 総合的な解説】
いよいよ最終回となった12話では、「サーバルを助け出したかばんちゃんがセルリアンに食べられる」という衝撃的な終わり方を迎えた、11話の後編のような位置づけになっています。その内容を振り返るにあたって、まず全体のストーリーを確認しておきましょう。
けものフレンズは、大きく3つの内容にわけることができます。この3つを仮に「章」と呼ぶことにしましょう。1章は1話~7話まで。かばんちゃんが「自分は何者なのか?」を知るストーリーです。2章は8話から11話まで。自分がヒトだと知ったかばんちゃんが、「自分はどう生きるべきか?」を考えるストーリーです。そして、12話はそれらに続く3章に相当します。
12話は「かばんちゃん以外のフレンズたち」が主役
かばんちゃんは11話において、自分自身の生き方を「パークとフレンズを守ること」に定め、そのために自分の身を犠牲にしてサーバルを助けました。しかし、物語はそこでは終わりません。旅の途中で出会った様々なフレンズたちの活躍によって、かばんちゃんは無事救出されたのです。
1章・2章が「かばんちゃんの物語」であったのに対して、3章となる12話で主に描かれたのは、かばんちゃんを取り巻く「フレンズたちの気持ち」でした。彼女たちは「友達」であるかばんちゃんを助けるために力を尽くしました。旅の中で「フレンズたちに助けられた」と語ったかばんちゃんでしたが、フレンズたちも皆、「かばんちゃんに助けられた」と感じていたことが確かめられたわけです。
かばんちゃんがフレンズとの出会いから己の生き様を知ったように、フレンズたちの多くもかばんちゃんと出会ったことで大きな影響を受けました。なかにはかばんちゃんのように、その後の生き方が大きく変わってしまうほどの影響を受けたものもいます。
けものフレンズのテーマは「ヒトと動物の関係」
フレンズたちは、かばんちゃんを通して「ヒトとはどのような存在か」を学びました。そして、おそらくはサーバルから、「かばんちゃんがパークの外へ行くことを望んでいる」ことを知り、彼女の夢をかなえるためにジャパリバスを改造した「船」をプレゼントすることになります。
かばんちゃんはひとり、パークの外へ旅立つことになりましたが、物語はそこで終わりませんでした。ジャパリバスの座席を改造した「船」に乗り、フレンズたちもかばんちゃんを追いかけてパークの外へとついていったのです。かばんちゃんと最も長い時間を過ごし、最も仲良くなったサーバルのように、ほかのフレンズたちもまたかばんちゃんを慕い、ついていこうと考えたわけです。
12話で描かれた「かばんちゃんとフレンズたちの関係」は、単に個別のキャラクター同士の関係性を表すだけのものではありません。かばんちゃんを「動物としてのヒト」の象徴、フレンズたちを「ヒト以外の動物」と解釈すると、「ヒトと動物との関係」を示すメッセージを読み取ることができるのです。そのメッセージとは、「ヒトと動物とは、互いに望めば友達になれる」というものでした。
見る人の心に「幸せ」を与えてくれる作品
このブログでは「けものフレンズの謎」と題してストーリーの考察を続けてきました。作中最大の謎とは何か、と問われれば「フレンズとは何か?」だと私は思います。そして、その謎の答えは、この3章(12話)の内容から読み取ることができるはずです。
ヒトを含めた動物にとって「フレンズ」とは、「自分以外の動物」にほかなりません。もし、種の異なる動物が相手だったとしても友達になることは不可能ではないはずです。しかし、現実社会には、ヒトと会話ができたり、同じ姿をしたりしている「フレンズ」は存在しません。また、不幸な出会い方をしたり、お互いの生活環境が相容れないなどの理由から、実際には友達になるのが難しい種類の動物もいるでしょう。
ですが、我々はけものフレンズを見ていると、かばんちゃんとフレンズたちのように「どんな動物同士でも仲良しになれる」ような気分を味わうことができます。可愛い女の子の姿で描かれた動物の姿を見ることによって、実際にはヒトと仲良くするのが難しい動物であっても、「ひょっとしたら友だちになれるのではないか」、「友達になれたらいいな」といった親しみが胸の中に湧き上がってくるはずです。
見る人の心の中に生じるこうした気持ちは、劇中でかばんちゃんがほかのフレンズたちに対して抱いた気持ちや、フレンズたちがかばんちゃんに対して抱いた親しみの感情と同じものではないでしょうか。そして、私たちはその気持ちを抱いたとき、心のなかに小さな「幸せ」を感じることができるはずです。私はそれこそが、けものフレンズという作品の大きな魅力なのではないかと思います。