【Aパート 新しい合戦のルール】
かばんちゃんとサーバルはライオンから、ヘラジカとの合戦に関する詳しい話を聞いています。「51回戦い、今までは全勝している」と聞かされ、サーバルは驚きました。
サーバル:そんなに勝っちゃうならそのままでいいんじゃない?
ライオン:いやー、でもあれ危ないよ。そろそろけが人が出そうで嫌だなぁ。
サーバル:・・・あっ、かばんちゃん、なにかある?
かばんちゃん:なにか・・・違う形で勝負してみるとかどうでしょう?
ライオン:ほう?
かばんちゃん:もっと安全そうな決めごとの中で戦うんです。たとえば、こういう危なくないもので(丸めた紙を見せる)
サーバル:楽しそー!
ライオン:勝ち負けは?
かばんちゃん:そうですね・・・。たとえば、これが割れたら負けちゃったーとか。(紙風船を見せる)
ライオン:ほうほうほう!それ面白いなぁ!腕自慢も納得しそうだ。早速それで向こうに提案させよう。君、面白いなぁ。
かばんちゃん:いやぁ、えへへ。
サーバル:かばんちゃんはすっごいんだよ!いっつもこうして楽しいこと思いつくの。
人間や動物の能力を凌駕するフレンズ同士のバトル
「こちらが全勝しているのなら、別に合戦を辞める必要はないのではないか?」というサーバルの疑問はもっともなものです。しかし、ライオンが懸念していたように、フレンズ同士の戦いは下手をすると大怪我につながりかねません。
バスの運転席を持ち上げたままジャンプしたり、断崖絶壁をよじ登ったサーバルを見てもわかるように、フレンズの身体能力は人間や動物のそれを遥かに凌駕しています。しかも、劇中で最もその能力を発揮するシーンが多いであろうサーバルですら、カバなど同じフレンズの中からは「弱い」とみなされているわけですから驚きです。
逆にいえば、今までライオンとヘラジカの合戦で「けが人が出ていない」ということのほうが遥かに驚くべき事実だと言えるでしょう。おそらくは合戦だとはいっても当人たちも相手を傷つけないよう配慮しているか、本気の勝負にはなりにくい状況で戦っていたのかもしれません。
かばんちゃんが考えた「風船割りゲーム」
「けが人が出る前に合戦をやめたい」というライオンの悩みに対して、サーバルは思い出したようにかばんちゃんの知恵を頼りました。もうすっかり「なにか問題が起きたらかばんちゃんの知恵を借りる」というパターンが定着しているようです。
かばんちゃんは少し考えた後「安全な決めごとの中で戦う」という解決策を提案しました。これはいわば「戦争」を「ゲーム」や「スポーツ」に置き換えるような提案だといえるでしょう。合戦=戦争には、人が傷ついたり死んだりするリスクがありますが、単に勝ち負けが決まりさえすればいいというのであればより安全なゲームやスポーツで雌雄を決するほうが無難です。
ライオンから具体的な手段を問われたかばんちゃんは、スポーツチャンバラのような「棒で相手の風船を狙い、割り合うゲーム」を提案します。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%A9
狙うのは風船ですから割るのに大した力はいりませんし、相手を攻撃したり身を守ったりするのは今までの合戦とさほど変わらないはずなので従来の合戦と置き換えても部下が反対しにくいのも利点です。
「風船割りゲーム」の発想はどこから生まれたか?
少し疑問なのは、かばんちゃんが「戦争をゲームで置き換える」という発想をどこで得たのかという点と、「風船割りゲーム」のルールをどうやって思いついたのか、という点です。決定的な根拠はないのですが、なんとなく「これではないか?」と思わせる理由ならあります。
それは、最も長く一緒にいる「サーバルを観察した結果」から得られた発想ではないかという説です。わかりやすいのは、サーバルが1話でさばんなちほーのゲートにいるセルリアンと戦ったシーンでしょう。サーバルは「爪」でセルリアンの「石」を砕くことによりセルリアンを倒しました。そのことはかばんちゃんの心に強い印象として残ったことでしょう。
合戦の際、なぜ怪我をする危険があるかといえば「フレンズの技を相手のフレンズ受けてしまう可能性がある」からでしょう。特に、そうげんのフレンズはアラビアオリックスやオーロックスを始めとして武器を持っています。あれらの武器で叩かれれば無傷ではすみません。つまり、「武器やフレンズの技を封じること」が安全を確保するための第一条件になるということです。
次に、武器やフレンズの技を使わないなら「勝敗をどうやって決めるのか?」が問題になります。サーバルの戦いを思い返してみると、セルリアンの弱点である石を砕いたことでセルリアンは行動不能になっています。これは石がセルリアンの急所に当たるからですが、もしそうでなくとも「ここを攻撃されたら負け」というポイントを決めて目印を付けておけば勝負を決められるはずです。
ライオンの優れた理解力と決断力
ライオンはかばんちゃんの提案に大いに関心を示し、斬新な発想をしたかばんちゃんを褒め称えました。かばんちゃんは照れくさそうに喜びの表情を見せます。
この時点までのライオンの心理を想像すると、「部下のせいで怖い思いをさせてしまったお客に軽く謝っておこう」というくらいの気持ちだったはずです。ところが、たまたま合戦への悩み事を話したところ、思わぬ解決法を提案され「早速やってみよう!」という気持ちに変化したわけです。
気になるポイントは、ライオンの理解力と決断力の高さでしょう。今まで、かばんちゃんは随所で斬新なアイデアを提案してきましたが、多くのフレンズはアイデアが完成するまでかばんちゃんの意図が理解できなかったり、5話のアメリカビーバー、オグロプレーリードッグのように最初は乗り気でないフレンズもいました。
しかし、ライオンはかばんちゃんのアイデアが「けが人を出さずに勝負を決める」という自らの要望を満たすものであることを瞬時に理解し、しかもそれを試してみるということもせずにいきなり「部下に提案させる」ことを即決しています。これもライオンの高い知性とリーダーとしての素養を見せるシーンだと言っていいでしょう。